宅建士 参考書|第1章 宅建業法
手付金等の保全措置
保全が必要になる取引
手付金等の保全は、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない買主から手付金等を受け取る場面で問題になります。売主が宅建業者でなかったり、買主も宅建業者であったりする取引には、この8種制限としての保全規定は適用されません。
対象となる「手付金等」は、契約締結の日以後、物件の引渡し前に支払われる金銭のうち、代金の全部・一部として支払われるものや、手付金などの名目で支払われて代金に充当されるものです。したがって、「中間金」という名前でも代金に充当されるなら合算します。
必要な保全措置は、手付金等を受け取ってからではなく、受け取る前に講じなければなりません。買主が「保全はいらない」と書面で承諾しても、この義務を外すことはできません。
保全は「業者売主・非業者買主」で、必要なら受領前に講じます。
5%・10%と1,000万円
保全措置が不要となる少額の範囲は、契約時に工事が完了しているかどうかで変わります。
| 物件 | 割合基準 | 金額基準 |
|---|---|---|
| 工事完了前 | 代金の5%以下 | 1,000万円以下 |
| 工事完了後 | 代金の10%以下 | 1,000万円以下 |
割合基準以下で、かつ1,000万円以下なら保全不要です。逆に、割合基準を超えるか、1,000万円を超えるかのどちらか一方でも当てはまれば保全が必要です。
「5%ちょうど」「10%ちょうど」「1,000万円ちょうど」は「以下」に含まれます。たとえば未完成物件の代金が2,500万円なら5%は125万円なので、手付金150万円は5%を超え、1,000万円以下であっても保全が必要です。
未完成は5%、完成は10%。どちらも1,000万円と二重に比べます。
手付金と中間金は合算
基準と比べる金額は、今回受け取る金額だけではありません。すでに受け取った手付金等と、今回受け取ろうとする金額との合計で判定します。
代金3,000万円の未完成物件で、最初に手付金150万円を受け取るだけなら5%ちょうどなので保全不要です。その後、中間金100万円を受け取るなら合計250万円となり5%を超えるため、中間金を受け取る前に保全措置が必要です。
保全が必要となったときは、新たに受け取る部分だけを保全すればよいのではありません。銀行保証や保証保険では、それまでの手付金等を含む返還対象額を保護できる内容にする必要があります。
追加受領のたびに「既受領額+今回分」で5%・10%を判定します。
登記済みなら保全不要
金額が基準を超えていても、買主への所有権移転の登記がされたとき、または買主が所有権の登記をしたときは、手付金等の保全措置を要しません。すでに買主の所有権が登記によって確保されているためです。
この例外と、少額の場合の例外は別に判断します。したがって、手付金等が5%・10%や1,000万円を超えていても、所定の所有権登記が済んでいれば保全不要です。
所有権の登記が買主側に確保された後は、金額が大きくても保全不要です。
未完成と完成の保全方法
未完成物件と完成物件では、利用できる保全方法が異なります。
| 保全方法 | 未完成 | 完成 |
|---|---|---|
| 銀行等との保証委託契約 | 可 | 可 |
| 保険事業者との保証保険契約 | 可 | 可 |
| 指定保管機関による保管 | 不可 | 可 |
銀行等による保証では、手付金等の返還債務の全部を保証する内容とし、保証に関する書面を買主に交付します。保証保険では、保険金額を対象となる手付金等の額に対応させ、保険証券またはこれに代わる書面を買主に交付します。
保証や保険は物件の引渡しまでをカバーする必要があります。未完成物件だからといって「工事が完成する日まで」で終わる保証では足りません。完成後、実際に買主へ引き渡すまでの間も保護が必要だからです。
保証関係の書面の交付に代えて所定の電磁的方法を用いるときは、あらかじめ買主に方法の種類・内容を示して承諾を得る必要があります。業者が一方的に電子交付へ切り替えることはできません。
未完成は保証・保険、完成はさらに指定保管機関による保管も使えます。
保全しなければ支払拒絶
法律上保全措置が必要なのに宅建業者がその措置を講じない場合、買主は手付金等を支払わないことができます。業者が先に受け取って後から保全するという順番にはできません。
また、手付金等の保全措置の概要は、契約前の重要事項説明で説明する事項です。一方、37条書面の法定記載事項として手付金等の保全措置の概要を記載する規定はありません。35条の説明事項と37条書面の記載事項を混同しないようにします。
なお、手付金等の保全と「手付の額の上限」は別の規制です。宅建業者が自ら売主となる場合、非業者である買主から受け取れる手付額は原則として代金の20%を超えることができません。保全措置を講じても、この20%の上限を超える手付を受け取れるわけではありません。
必要な保全がなければ買主は支払拒絶可。保全しても手付20%超は不可です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
宅建業者が自ら売主となる場合の手付金等の保全措置について正しいものはどれか。
- 未完成物件の場合、代金の10%または1,000万円を超える手付金等を受け取る前に保全措置が必要
- 手付金の保全措置は常に不要
- 完成物件の場合、代金の10%または1,000万円を超える手付金等を受け取る前に保全措置が必要
- 完成物件の場合、代金の5%または1,000万円を超える手付金等を受け取る前に保全措置が必要
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正解: 完成物件の場合、代金の10%または1,000万円を超える手付金等を受け取る前に保全措置が必要
手付金等の保全措置(宅建業法41条・41条の2):未完成物件では、原則として、手付金等が代金の5%を超える場合、または1,000万円を超える場合に保全措置が必要。完成物件では、原則として、手付金等が代金の10%を超える場合、または1,000万円を超える場合に保全措置が必要。ただし、買主への所有権移転登記がされた場合等には例外がある。
基本の問題(まなクエの問題集から)
37条書面に記載する「手付金等の保全措置」について正しいものはどれか。
- 保全措置は任意であり記載不要
- 保全措置の記載は37条書面には不要
- 手付金等の保全措置の概要は35条の重要事項説明の対象であり、37条書面の法定記載事項ではない
- 保全措置を講ずる場合はその概要を記載する
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正解: 手付金等の保全措置の概要は35条の重要事項説明の対象であり、37条書面の法定記載事項ではない
手付金等の保全措置の概要は、宅建業法35条1項に基づく重要事項説明の対象事項である。37条書面(契約書面)の必要的記載事項・任意的記載事項のいずれにも、手付金等の保全措置の概要を記載する旨の規定はない。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でないBに代金4,000万円の未完成マンションを売却した。Aは契約時に手付金200万円を受領し、その後、引渡し前に中間金100万円を受領しようとしている。所有権移転登記はまだされていない。手付金等の保全措置について正しいものはどれか。
- 手付金200万円は代金の5%なので、以後どれだけ中間金を受け取っても保全措置は不要である
- 中間金100万円だけについて保全措置を講じれば足り、すでに受領した200万円を保護する必要はない
- 手付金と中間金の合計は300万円となるため、中間金を受領する前に所定の保全措置が必要である
- Bが書面で保全措置を不要と認めれば、Aは中間金を保全せずに受領できる
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正解: 手付金と中間金の合計は300万円となるため、中間金を受領する前に所定の保全措置が必要である
未完成物件では、既受領分を含む手付金等の合計が代金の5%以下かつ1,000万円以下の場合だけ少額の例外となります。200万円は5%ちょうどですが、中間金受領時には合計300万円となるため、その受領前に保全措置が必要です。
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宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行令」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方