宅建士 参考書|第2章 権利関係

意思表示

まず無効と取消しを分ける

意思表示とは、契約の申込みや承諾など、法律上の効果を生じさせようとする意思を外部に示すことです。意思表示に問題があるときは、まず無効なのか、取り消すことができるのかを分けます。

原因基本の効果
意思能力を欠く状態でした行為無効
心裡留保原則有効。一定の場合は無効
通謀虚偽表示無効
錯誤要件を満たせば取消し
詐欺取消し
強迫取消し

意思能力とは、自分の法律行為の意味や結果を判断できる精神上の能力です。意思能力を欠いていた時の法律行為は、取消しを待たず無効です。

これに対し、錯誤・詐欺・強迫による意思表示は当然に無効になるのではなく、取消権を行使することで取り消します。取り消された行為は初めから無効であったものとみなされます。

意思能力なしは無効、錯誤・詐欺・強迫は取消しです。

心裡留保と通謀虚偽表示

心裡留保は、表意者だけが「本心とは違う」と分かっていながら意思表示をする場合です。真意でないことを本人が知っていても、意思表示は原則として有効です。

ただし、相手方が真意でないことを知っていた場合だけでなく、知ることができた場合にも、その意思表示は無効です。したがって、相手方が善意でも過失があれば無効となり得ます。

通謀虚偽表示は、本人と相手方が示し合わせて、実際にはするつもりのない売買などを装う場合です。これは当事者間では無効です。

制度当事者間第三者
心裡留保原則有効。相手方が悪意または有過失なら無効無効を善意の第三者に対抗できない
通謀虚偽表示無効無効を善意の第三者に対抗できない

ここで第三者に必要なのは善意だけです。心裡留保・通謀虚偽表示では、第三者に無過失までは要求されません。

心裡留保・虚偽表示の第三者保護は「善意」で足ります。

錯誤は重要性と重過失を見る

錯誤による意思表示は、勘違いがあれば何でも取り消せるわけではありません。その錯誤が法律行為の目的と取引上の社会通念に照らして重要であることが必要です。

売る土地や売買価格など、意思表示そのものについて重大な勘違いをした場合が対象になります。また、契約をする動機となった事情についての勘違いは、その事情が法律行為の基礎とされていることが相手方に表示されていた場合に取消しの対象になります。

表意者に重大な過失があったときは、原則として取り消せません。ただし、相手方が錯誤を知っていた場合、相手方が重大な過失によって知らなかった場合、または相手方も同じ錯誤に陥っていた場合は、表意者に重大な過失があっても取り消すことができます。

したがって、「重大な錯誤なら、表意者に重大な過失があっても常に取消しできる」は誤りです。反対に、当事者双方が同じ前提を誤っていた場合は、表意者に重大な過失があっても取消しが認められます。

錯誤による取消しは、錯誤について善意かつ無過失の第三者には対抗できません。

錯誤は重要性が必要、重過失なら原則取消不可、第三者は善意無過失です。

詐欺は誰がだましたかを確認

詐欺による意思表示は無効ではなく、だまされた表意者が取り消すことができます。相手方自身が詐欺をした場合は、その相手方に対して取り消せます。

これに対し、契約の相手方ではない第三者が詐欺をした場合は、契約の相手方がその詐欺を知っていたか、知ることができたときに限って取り消せます。相手方が善意無過失なら、第三者にだまされたというだけでは契約を取り消せません。

詐欺による取消しより前に第三者が権利を取得した場合、その第三者が善意かつ無過失なら、表意者は取消しを対抗できません。第三者が詐欺を知っていた、または知らないことに過失があったなら、取消しを対抗できます。

一方、不動産について詐欺による取消しをした後に相手方から権利を取得した第三者との関係では、判例は、取消した者と取消し後の第三者は登記によって優劣を決める対抗関係に立つとしています。

第三者詐欺は相手方の悪意・有過失、取消し前の第三者保護は善意無過失です。

強迫は詐欺より取消しが強い

強迫は、害を加えるなどと告げて相手を畏怖させ、その結果として意思表示をさせることです。強迫による意思表示は取り消すことができます。

第三者が強迫した場合は、詐欺と違い、契約の相手方が強迫を知らなかったとしても取り消すことができます。相手方の悪意・有過失は必要ありません。

また、詐欺について定められている「善意無過失の第三者には取消しを対抗できない」という規定は強迫にはありません。そのため、強迫による取消しは、取消し前に現れた善意無過失の第三者にも対抗できます。

原因第三者詐欺・強迫取消し前の第三者
詐欺相手方が悪意または有過失なら取消し可善意無過失なら保護
強迫相手方の善意・悪意を問わず取消し可善意無過失でも取消しを対抗可

強迫は相手方が善意でも取消しでき、取消し前の第三者にも対抗できます。

取消しの効果と期間

錯誤・詐欺・強迫による取消しは、瑕疵ある意思表示をした者、その代理人または承継人がすることができます。相手方が確定している意思表示を取り消すときは、その相手方に対して取消しの意思表示をします。

取り消された行為は初めから無効であったものとみなされます。すでに給付を受けている場合は、原則として原状回復をすることになります。

取消権は、追認することができる時から5年間行使しないとき、または行為の時から20年を経過したときに消滅します。

意思表示の問題では、「無効か取消しか」「相手方の善意・過失が問題になるか」「第三者には善意だけで足りるか、善意無過失が必要か」の順で整理すると判断できます。

取消しは初めから無効扱い、取消権は5年・20年です。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

錯誤による意思表示について正しいものはどれか。

  1. 錯誤による意思表示は常に無効である
  2. 錯誤による意思表示の取消しは第三者には対抗できない
  3. 錯誤が重要な事項の錯誤であれば、表意者に重大な過失があっても取り消すことができる
  4. 表意者に重大な過失があった場合は、原則として取消しを主張できない
答えと解説を見る

正解: 表意者に重大な過失があった場合は、原則として取消しを主張できない

錯誤取消しは表意者に重大な過失があった場合は原則不可(民法95条3項)。

基本の問題(まなクエの問題集から)

第三者による詐欺について正しいものはどれか。

  1. 第三者が詐欺を行った場合、取消しは一切できない
  2. 第三者が詐欺を行った場合、常に相手方に損害賠償を請求できる
  3. 第三者が詐欺を行った場合、相手方が知っていたか、知ることができた場合に限り取り消すことができる
  4. 第三者が詐欺を行った場合、相手方の善意悪意を問わず取り消すことができる
答えと解説を見る

正解: 第三者が詐欺を行った場合、相手方が知っていたか、知ることができた場合に限り取り消すことができる

第三者詐欺の場合、相手方が悪意または有過失のときに限り取消し可(民法96条2項)。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

AはBから強迫され、所有する土地をBに売却した。Aが売買を取り消す前に、Bは事情を知らず、知らないことにも過失のないCへ土地を売却した。この場合の説明として正しいものはどれか。

  1. Aは、Cが善意無過失であるため、強迫による取消しをCに対抗できない
  2. Aは、Bの強迫による意思表示を取り消すことができ、その取消しをCにも対抗できる
  3. Aは、Bが強迫した場合でも、Cの同意を得なければ意思表示を取り消せない
  4. 強迫による意思表示は最初から当然に無効であり、取消しの意思表示は不要である
答えと解説を見る

正解: Aは、Bの強迫による意思表示を取り消すことができ、その取消しをCにも対抗できる

強迫による意思表示は取消しの対象です。詐欺と異なり、取消し前の善意無過失の第三者を保護する規定はないため、AはCにも取消しを対抗できます。

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読んだところを、問題で思い出してみましょう。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方