宅建士 参考書|第2章 権利関係

代理

代理の基本と顕名

代理では、代理人が本人に代わって意思表示をし、その法律効果を本人に直接生じさせます。基本は、代理権があり、その範囲内で、本人のためにすることを示して行為することです。

本人のためにすることを示すことを顕名といいます。代理人が顕名をしなければ、原則として代理人自身のためにした行為とみなされます。ただし、相手方が本人のためにすることを知っていた、または知ることができたときは、本人に効果が生じます。

代理行為について、詐欺・強迫・錯誤や、ある事情を知っていたかどうかが問題になる場合は、原則として代理人を基準に判断します。ただし、本人が特定の行為をするよう依頼し、本人自身が事情を知っていた、または過失によって知らなかったときは、本人は代理人が知らなかったことを利用できません。

代理人は行為能力者である必要はありません。未成年者などの制限行為能力者を代理人に選んだ本人は、代理人の行為能力の制限だけを理由に代理行為を取り消すことはできません。

代理は「代理権・権限内・顕名」。詐欺などの事情は原則代理人で判断します。

代理権の範囲と消滅

代理権の範囲を定めずに代理権を与えた場合、代理人ができるのは保存行為と、物や権利の性質を変えない範囲の利用・改良行為です。土地の売却のような処分行為まで自由にできるわけではありません。

売買契約を締結する権限を持つ代理人は、その権限の範囲内で契約に関する相手方の意思表示を受けることもできます。そのため、契約の取消しなどの通知を代理人が受領することで本人に対して効力が生じる場面があります。

代理権は、本人の死亡、代理人の死亡、代理人の破産手続開始の決定、代理人の後見開始の審判によって消滅します。委任による代理権は、これらに加えて委任の終了によっても消滅します。

事由本人に生じた場合代理人に生じた場合
死亡代理権消滅代理権消滅
破産手続開始委任終了により任意代理は消滅代理権消滅
後見開始それだけでは消滅しない代理権消滅

代理人の死亡・破産・後見開始で消滅。本人の後見開始だけでは消滅しません。

濫用・自己契約・復代理

代理人が自己または第三者の利益を図る目的で、形式上は代理権の範囲内の行為をした場合でも、相手方がその目的を知っていた、または知ることができたときは、無権代理人がした行為とみなされます。これが代理権の濫用です。

自己契約は代理人自身が相手方となる行為、双方代理は同じ人が契約の両当事者を代理する行為です。どちらも原則として無権代理扱いですが、債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は例外です。したがって、本人があらかじめ許諾していれば、双方代理だからという理由だけで無効になるわけではありません。

委任による代理人が復代理人を選べるのは、本人の許諾があるとき、またはやむを得ない事由があるときです。法定代理人は自己の責任で復代理人を選任できます。復代理人は代理人自身の代理人ではなく、権限の範囲内で本人を代理します。

判例は、復代理人が委任事務によって受け取った物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、本人に対するその受領物の引渡義務も消滅するとしています。

濫用は相手方が悪意・有過失なら無権代理扱い。双方代理も原則無権代理扱いです。

無権代理と追認

代理権がない者や、代理権の範囲を超えた者が本人の代理人として契約した場合を無権代理といいます。本人が追認しない限り、その契約は本人に対して効力を生じません。

本人が追認すると、別段の意思表示がない限り、契約をした時にさかのぼって効力が生じます。ただし、第三者がすでに取得した権利を害することはできません。本人は追認を拒絶することもできます。

相手方の手段内容
本人への催告相当期間を定めて追認するか確答を求める。確答がなければ追認拒絶とみなす
契約の取消し本人が追認するまで可能。ただし契約時に無権代理と知っていた相手方は不可
無権代理人への請求要件を満たせば履行または損害賠償を選べる

無権代理人は、代理権を証明したときや本人の追認を得たときは責任を負いません。相手方が無権代理を知っていた場合も責任を負いません。相手方が過失によって知らなかった場合も原則として責任追及できませんが、無権代理人自身が代理権のないことを知っていたときは別です。

無権代理は追認まで本人に効力なし。追認は原則として契約時へさかのぼります。

無権代理と相続

無権代理人と本人の間で相続が起きると、誰が誰を相続したかによって結論が変わります。判例の結論を場面ごとに分けて覚えます。

相続の場面結論
無権代理人が本人を単独相続本人と無権代理人の地位が同一人に帰属し、無権代理行為は当然に有効となる
本人が無権代理人を相続本人は追認を拒絶でき、契約が当然に有効になるわけではない
無権代理人が他の相続人と本人を共同相続共同相続人全員が共同して追認しない限り当然には有効にならない
本人が生前に追認拒絶した後、無権代理人が本人を相続追認拒絶の効果は覆らず、当然には有効にならない

本人が無権代理人を相続した場合でも、相続によって承継した無権代理人自身の責任が問題となることはあります。「本人が相続したから無権代理行為そのものが当然に有効になる」とは考えません。

無権代理人が本人を単独相続なら当然有効。逆の相続では当然有効ではありません。

表見代理の3つの型

表見代理は、実際には有効な代理権がないのに、本人側の事情によって代理権があるような外観が生じた場合に、一定の相手方を保護する制度です。単に相手方が「代理人だと思った」というだけでは成立しません。

型本人側の事情相手方に必要な事情
代理権授与表示本人が第三者に代理権を与えた旨を表示代理権がないことを知らず、知らないことに過失がない
権限外行為何らかの代理権はあるが、その範囲を超えたその行為について代理権があると信ずべき正当な理由
代理権消滅後以前あった代理権が消滅した消滅を知らず、知らないことに過失がない

代理権授与表示では、実際に基本代理権を与えていなくても成立することがあります。これに対し、権限外行為の表見代理では基礎となる代理権が必要です。

代理権消滅後の行為でも、相手方が消滅を知らなかっただけでは足りず、過失がないことも必要です。以前の権限をさらに超えた行為については、その越えた行為について代理権があると信ずべき正当な理由も問題になります。

表見代理は「授与表示・権限外・消滅後」。相手方の善意だけで足りない型があります。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

代理権の濫用について正しいものはどれか。

  1. 相手方が代理人の目的を知り、または知ることができた場合、その行為は無権代理とみなされる
  2. 代理権の濫用は不法行為を構成しない
  3. 代理人が代理権の範囲内でした行為は相手方の善意悪意を問わず本人に効果が帰属する
  4. 代理人が自己の利益を図る目的でした行為は常に無効である
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正解: 相手方が代理人の目的を知り、または知ることができた場合、その行為は無権代理とみなされる

代理権の濫用(民法107条):相手方が悪意または有過失の場合、無権代理とみなされ本人は責任を負わない。

基本の問題(まなクエの問題集から)

表見代理が成立する場合として正しいものはどれか。

  1. 相手方が代理権がないことを過失なく知らなかった場合に表見代理が成立する
  2. 代理権授与の表示がある場合(民法109条)、相手方は善意であれば足り無過失は不要
  3. 表見代理が成立するためには本人の帰責性は不要である
  4. 代理人に基本代理権がない場合でも表見代理が成立することがある
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正解: 代理人に基本代理権がない場合でも表見代理が成立することがある

代理権授与表示による表見代理(民法109条):実際の代理権が存在しなくても、本人が第三者に代理権を与えた旨を表示し、第三者が代理権がないことについて善意・無過失であれば表見代理が成立し得る。善意だけでなく無過失も必要である。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

Aの代理権を持たないBが、Aの代理人と称してA所有の土地をCに売却した。その後、Aはこの売買の追認を拒絶したが、のちにAが死亡し、BがAを単独で相続した。判例による結論として正しいものはどれか。

  1. BがAを単独相続した時点で、先の追認拒絶にかかわらず売買は当然に有効となる
  2. Aが生前に追認を拒絶しているため、BがAを単独相続しても売買が当然に有効になることはない
  3. BがAを相続した後、Cが改めて追認しなければ売買は有効にならない
  4. 無権代理行為は相続の有無にかかわらず常に無効であり、追認することもできない
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正解: Aが生前に追認を拒絶しているため、BがAを単独相続しても売買が当然に有効になることはない

本人Aが生前に追認を拒絶した場合、その後に無権代理人BがAを相続しても、追認拒絶の効果は覆りません。追認拒絶前に無権代理人が本人を単独相続する場合との違いに注意します。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方