宅建士 参考書|第2章 権利関係

物権変動と登記

所有権が移る時と登記の役割

不動産の所有権などの物権は、原則として当事者の意思表示だけで設定・移転します。売買では、当事者が移転時期を別に定めていなければ、契約成立時に所有権が買主へ移ると考えます。登記は所有権を発生させるための要件ではなく、第三者との関係で権利を主張するための対抗要件です。

そのため、売主と買主の間では、買主がまだ登記をしていなくても所有権を主張できます。他方、同じ不動産について権利を取得した第三者と争うときは、原則として登記を備えた者が優先します。

取得時効が完成すると、その効力は占有を始めた時にさかのぼります。他人の不動産を買っただけでは、買主が善意・無過失でも即時取得は成立しません。不動産登記には公信力がないため、無権利者名義の登記を信じただけでも所有権は取得できません。

場面結論
売主と買主の間原則として登記がなくても所有権を主張できます。
177条の第三者との関係原則として登記が必要です。
無権利者から購入登記をしても、それだけでは所有権を取得しません。
他人物売買の売主が後に所有権を取得特段の合意がなければ、その取得時に買主へ所有権が移ります。契約時までさかのぼって取得するわけではありません。

所有権は意思表示で移り、登記は原則として第三者との優劣を決めます。

177条の第三者と二重譲渡

Aが同じ土地をBとCに売った二重譲渡では、BとCは互いに民法177条の第三者です。契約が早い方ではなく、先に所有権移転登記を備えた方が他方に所有権を対抗できます。先の買主が代金を支払っていても、それだけで後の買主に優先するわけではありません。

177条の第三者とは、登記がないことを主張する正当な利益を持つ者です。二重譲受人や、所有権と両立しない権利を取得した者は典型例です。一方、不法占拠者は登記の欠缺を主張する正当な利益を持たないため、所有者は未登記でも所有権に基づいて明渡しを求められます。

二重譲渡は「第三者に当たるか」を確認し、当たれば原則として登記の先後で決めます。

悪意者と背信的悪意者

後の買主が、先に別の買主への売却があったことを知っていたというだけでは、177条の第三者から外れません。単なる悪意者でも、原則として先に登記を備えれば未登記の先買主に対抗できます。

これに対し、先買主に登記がないことを利用して不当に利益を得ようとするなど、信義則上その登記欠缺を主張させるべきでない事情がある者を背信的悪意者といいます。判例は、背信的悪意者は177条の第三者に当たらず、先買主は登記がなくても対抗できるとしています。

背信的悪意者からさらに不動産を取得した転得者は、自分自身が背信的悪意者に当たるかで判断します。前の取得者が背信的悪意者だったという理由だけで、転得者まで当然に第三者から外れるわけではありません。

知っているだけなら悪意者、信義則上登記欠缺を主張させない者が背信的悪意者です。

解除・取消しと第三者

解除では、第三者が解除前に現れたか、解除後に現れたかを分けます。解除前に買主から不動産を取得した第三者は、登記を備えていれば解除した元売主に権利を主張できます。善意・悪意だけで結論は変わりません。

解除後に、解除された契約の買主がさらに第三者へ譲渡した場合は、元売主への所有権復帰と第三者への譲渡が競合します。判例は、元売主と解除後の第三者の優劣を登記の先後で決めています。

取消し前の第三者では、原因が詐欺か強迫かを分けます。詐欺による意思表示の取消しは、取消し前に利害関係を取得した善意かつ無過失の第三者には対抗できません。強迫による取消しにはこの第三者保護がないため、善意・無過失の第三者にも取消しを対抗できます。

詐欺・強迫のいずれでも、取消し後に相手方から不動産を取得した第三者との関係は、判例上、登記の先後で決めます。取消しによる権利の復帰は初めから無効だった状態に戻す効果を持ちますが、取消し後の対抗関係では登記を忘れないことが重要です。

場面判断
解除前の第三者第三者が登記を備えていれば保護されます。
解除後の第三者元の権利者と第三者の登記の先後で決めます。
詐欺取消し前の第三者善意・無過失なら取消しを対抗されません。
強迫取消し前の第三者善意・無過失でも取消しを対抗されます。
取消し後の第三者登記の先後で決めます。

解除・取消しは「第三者が前か後か」、取消し前ならさらに詐欺か強迫かを見ます。

取得時効と登記

取得時効が完成した者と登記名義人との関係では、第三者が時効完成の前に権利を取得したか、完成後に取得したかで結論が変わります。

時効完成前に第三者が所有権を取得し登記をしていた場合、その第三者は時効完成時の所有者です。時効取得者は、その者に対して時効取得を主張するために登記を必要としません。時効完成時の元の所有者やその単独相続人に対しても同様です。

これに対し、時効が完成した後に元の所有者から第三者が不動産を取得した場合、時効取得者と第三者の関係は対抗関係となり、原則として登記の先後で決めます。

占有している不動産を他人に賃貸して直接占有を失っても、賃貸人として間接占有を続けるため、それだけで取得時効のための占有が途切れるわけではありません。また、占有を奪われても、占有回収の訴えによって占有を回復したときは、占有は中断しなかったものと扱われます。二重売買の存在を知っただけで、直ちに所有の意思が失われるわけでもありません。

時効完成前からいる所有者には登記不要、完成後に現れた第三者とは原則として登記勝負です。

相続と立木の対抗要件

共同相続では、各相続人は法定相続分に相当する権利について、登記がなくても第三者に対抗できます。これに対し、遺産分割や遺言などによって法定相続分を超えて取得した部分は、登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません。

たとえば法定相続分が2分の1の相続人が遺産分割で不動産全部を取得した場合、自己の2分の1については登記なしで第三者に対抗できますが、それを超える2分の1は登記が必要です。

土地上の樹木を土地とは別に譲渡する場合も対抗要件が問題になります。立木に関する法律による登記を受けた立木は独立した不動産として扱われます。それ以外の樹木を土地とは別に譲渡した場合、判例上、札や表示などにより第三者から所有者を認識できる状態にする明認方法が対抗要件となります。

明認方法は一度行えば足りるのではなく、第三者が利害関係を取得する時にも外部から認識できる状態で存在している必要があります。土地を譲渡しながら樹木の所有権だけを売主に留保する場合も、第三者にその樹木所有権を対抗するには明認方法などの公示が必要です。

相続は法定相続分を超える部分に登記が必要、未登記の樹木は明認方法で公示します。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

不動産の物権変動の対抗要件について正しいものはどれか。

  1. 不動産の物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できない
  2. 不動産の売買においては売買契約の締結により所有権が移転し登記なしに対抗できる
  3. 不動産の物権変動は登記なくして誰にでも対抗できる
  4. 不動産の物権変動の対抗要件は占有である
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正解: 不動産の物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できない

不動産物権変動の対抗要件は登記(民法177条)。売買契約により所有権は移転するが、登記がなければ第三者に対抗できない。

基本の問題(まなクエの問題集から)

取消しと登記について正しいものはどれか。

  1. 強迫による意思表示を取り消す前に現れた善意の第三者には、取消しを対抗できない
  2. 詐欺による取消し後に出現した第三者には、登記なしに取消しを対抗できない
  3. 強迫による取消し後に出現した第三者には、登記なしに取消しを対抗できる
  4. 詐欺による取消し前に出現した第三者には、常に取消しを対抗できる
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正解: 詐欺による取消し後に出現した第三者には、登記なしに取消しを対抗できない

取消しと第三者(民法96条3項・判例):詐欺による取消しの後に利害関係を取得した第三者との関係は、不動産の場合は登記の先後で優劣を決める(判例)。だから取消し後の第三者には、登記なしに取消しを対抗できない。なお、取消し前の第三者については、詐欺は善意無過失の第三者に対抗できない(96条3項)が、強迫は善意・悪意にかかわらず対抗できる。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

A所有の土地をBが時効取得するため占有していた。時効完成前にAがこの土地をCへ売却し、Cは所有権移転登記をした。その後、Bの取得時効が完成した。この場合の説明として正しいものはどれか。

  1. BはCより先に占有を始めていても、登記がない限りCに時効取得を対抗できない。
  2. Bは時効完成時の所有者であるCに対し、所有権移転登記がなくても時効取得を対抗できる。
  3. CがBの占有を知っていた場合に限り、Bは登記なく時効取得を対抗できる。
  4. Bの取得時効が完成しても、その効果が占有開始時にさかのぼることはない。
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正解: Bは時効完成時の所有者であるCに対し、所有権移転登記がなくても時効取得を対抗できる。

Cは時効完成前に所有権を取得しており、時効完成時の所有者です。BはCに対し登記がなくても時効取得を主張できます。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方