宅建士 参考書|第2章 権利関係

地上権・地役権・占有権

地上権と土地賃借権

地上権は、他人の土地で工作物や竹木を所有するため、その土地を使用する物権です。土地の賃借権は賃貸借契約から生じる債権なので、両者は土地を利用する点が同じでも権利の性質が違います。

項目地上権土地賃借権
権利の性質物権債権
権利の譲渡原則として土地所有者の承諾不要原則として賃貸人の承諾が必要
抵当権の設定できる賃借権そのものには設定できない
第三者への対抗原則として登記が必要登記のほか借地借家法上の対抗要件が問題になる

地上権は土地所有者から土地を借りる契約そのものではありません。そのため、賃貸借における賃貸人の修繕義務を、そのまま地上権設定者にも認めることはできません。

地上権は物権、土地賃借権は債権。譲渡・抵当権設定の扱いが違います。

地上権と混同

同じ土地について、土地の所有権と地上権が同じ人に帰属すると、地上権は原則として混同により消滅します。

ただし、その土地または地上権が第三者の権利の目的となっているときは消滅しません。たとえば、Bの地上権が先に登記され、その後に土地へCの抵当権が設定された後、Bが土地所有権を取得した場合です。この地上権を消滅させるとCの抵当権の順位関係が変わるため、地上権は残ります。

土地を取得した原因が売買・相続・代物弁済・贈与のどれかではなく、第三者の権利が存在するかで判断します。

所有権と地上権が同一人でも、第三者の権利を守る必要があれば地上権は消滅しません。

地役権の基本

地役権は、設定した目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益のために利用する権利です。便益を受ける土地を要役地、利用される土地を承役地といいます。

たとえば、要役地から道路へ出るため承役地を通行する地役権を設定できます。ただし、地役権は当事者が設定する物権であり、法律上当然に認められる公道に至るための他の土地の通行権とは別の制度です。

地役権は原則として要役地の所有権に従って移転し、地役権だけを要役地から切り離して譲渡することはできません。判例は、要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、その所有権の取得を承役地所有者に対抗できるときは、地役権の取得についても対抗できるとしています。

地役権は「承役地を使って要役地を便利にする権利」で、原則として要役地について回ります。

地役権の時効と工作物

地役権を時効取得できるのは、継続的に行使され、かつ、外形上認識できる地役権に限られます。「継続的」か「外形上認識できる」のどちらか一方だけでは足りません。

また、設定行為やその後の契約で、承役地の所有者が自費で地役権行使のための工作物を設置・修繕する義務を負った場合、その承役地を買い受けた特定承継人もその義務を負います。

地役権は設定目的の範囲でしか行使できません。通行のための地役権を、設定目的を超えて別の用途に利用することはできません。

時効取得は「継続的」かつ「外形上認識可能」の両方が必要です。

占有権と占有の承継

占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することで成立します。所有権があるかどうかとは別に、事実上の支配状態そのものを保護する制度です。

占有者の承継人は、自分の占有だけを主張することも、前の占有者の占有を合わせて主張することもできます。ただし、前の占有を合わせるなら、その占有にあった悪意などの瑕疵も一緒に承継します。

相続では、判例上、被相続人の占有は相続開始と同時に相続人へ承継されます。相続人が死亡の事実をまだ知らなくても結論は変わりません。

前の占有期間を足すなら、その占有の瑕疵も一緒に引き継ぎます。

占有の訴え

占有への侵害には、状態に応じて3つの訴えがあります。

状態訴え主な請求
占有を妨害された占有保持の訴え妨害の停止と損害の賠償
妨害されるおそれがある占有保全の訴え妨害の予防または損害賠償の担保(どちらか)
占有を奪われた占有回収の訴え物の返還と損害の賠償

占有回収の訴えには占有を奪われたことが必要です。占有者がだまされていたとしても、自分の意思で相手に占有を移したなら「侵奪」ではなく、占有回収の訴えによる返還請求はできません。

また、賃貸人が賃借人に建物を引き渡した後、賃借人が入口を閉ざして賃貸人の立入りを拒んだだけでは、判例は賃貸人の間接占有が侵奪されたとはしていません。占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起します。

占有回収の訴えは「意思に反して占有を奪われたか」で判断します。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

地上権と土地の賃借権の違いとして正しいものはどれか。

  1. 土地の賃借権は債権であるが、地主の承諾なく譲渡できる
  2. 地上権は物権であり、地主の承諾なく譲渡・転貸できる
  3. 地上権も土地の賃借権も登記がなければ第三者に対抗できない
  4. 地上権は設定行為(登記)なしに第三者に対抗できる
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正解: 地上権は物権であり、地主の承諾なく譲渡・転貸できる

地上権(物権)は地主の承諾なく譲渡・転貸可能。土地賃借権(債権)は原則として地主の承諾が必要。

基本の問題(まなクエの問題集から)

占有者が占有を引き継いだ場合の取得時効について正しいものはどれか。

  1. 前の占有者の占有期間を合算することはできない
  2. 占有を引き継いだ場合、引継ぎ時から新たに時効が進行する
  3. 前占有者の占有を承継して時効期間に加える場合でも、前占有者の占有の瑕疵は承継しない
  4. 前の占有者の占有を引き継いだ場合、前の占有者の瑕疵も引き継ぐ
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正解: 前の占有者の占有を引き継いだ場合、前の占有者の瑕疵も引き継ぐ

占有の承継(民法187条):前の占有者の占有を併せて主張する場合、前占有者の占有の瑕疵(悪意・過失等)も承継する。自己の占有のみを主張することもできる(この場合は自己の占有のみで判断)。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

A所有の甲土地を便利にするため、隣接するB所有の乙土地について通行地役権が設定された。その後Aが甲土地をCに売却し、Cは甲土地の所有権移転登記をした。設定行為に別段の定めはない。この場合の説明として正しいものはどれか。

  1. 地役権はA個人に与えられた権利なので、甲土地の売却により当然に消滅する。
  2. Cは甲土地の所有権を取得しても、地役権を別途Bから譲り受けなければならない。
  3. 地役権は原則として甲土地の所有権とともにCへ移転し、Cが甲土地の所有権取得をBに対抗できるときは地役権の取得も対抗できる。
  4. 地役権は要役地から分離して自由に第三者へ譲渡できる。
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正解: 地役権は原則として甲土地の所有権とともにCへ移転し、Cが甲土地の所有権取得をBに対抗できるときは地役権の取得も対抗できる。

地役権は原則として要役地の所有権に従って移転します。判例は、要役地の所有権取得を承役地所有者に対抗できる者は、地役権の取得も対抗できるとしています。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方