宅建士 参考書|第2章 権利関係

債務不履行・解除・危険負担

債務不履行と履行遅滞

債務不履行とは、債務者が約束どおりの履行をしないことです。代表的な形は、履行できるのに期限を過ぎる履行遅滞、履行自体ができなくなる履行不能、履行はしたものの内容が債務の本旨に従っていない不完全履行です。

履行遅滞では、いつから遅滞の責任を負うかが問われます。

期限履行遅滞になる時
確定期限期限が到来した時
不確定期限期限到来後に履行請求を受けた時と、期限到来を知った時の早い方
期限の定めなし履行請求を受けた時

履行不能かどうかは、契約その他の債務発生原因と取引上の社会通念に照らして判断します。契約成立時から履行不能であった場合でも、それだけで債務不履行による損害賠償請求が排除されるわけではありません。

債権者が受領を拒み、または受領できないため履行費用が増加したときは、その増加額は債権者が負担します。また、債務者が履行遅滞中に双方の責任ではない事情で履行不能となったときは、その不能は原則として債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます。

履行遅滞の開始時点は、確定期限・不確定期限・期限なしで分けます。

損害賠償と解除は要件が違う

債務者が債務の本旨に従った履行をせず、または履行不能となったため損害が生じたときは、債権者は損害賠償を請求できます。ただし、その不履行が契約の内容や取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるときは、民法415条の損害賠償は請求できません。

履行不能、債務者が履行を拒絶する意思を明確に示した場合、契約が解除された場合などでは、要件を満たせば履行そのものに代わる損害賠償を請求できます。

これに対し、債務不履行による契約解除には、債務者の帰責事由は原則として必要ありません。ただし、不履行が解除する側である債権者の責めに帰すべき事由によるときは解除できません。

付随的な義務に違反したというだけで、常に契約全体を解除できるわけでもありません。その違反が契約目的の達成を妨げない程度にとどまる場合には、契約全体の解除は認められません。

損害賠償は債務者の帰責事由を確認し、解除とは分けて判断します。

催告解除と無催告解除

債務不履行による解除では、原則として、債権者が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行されないことが必要です。ただし、期間経過時の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません。

次のような場合には、催告せず直ちに契約全部を解除できます。

  • 債務全部の履行が不能になったとき
  • 債務者が全部を履行しない意思を明確に示したとき
  • 一部不能・一部拒絶で、残りだけでは契約目的を達成できないとき
  • 特定の日時・期間に履行されなければ目的を達成できない契約で、その時期を過ぎたとき
  • 催告しても契約目的を達成できる履行がされる見込みがないことが明らかなとき

一部の履行が不能になった場合や、債務者が一部を履行しない意思を明確に示した場合には、その部分だけを催告なしで解除できることがあります。

解除権は相手方への意思表示によって行使し、いったんした解除の意思表示は撤回できません。

解除は催告が原則ですが、全部不能・明確な履行拒絶・定期行為などは無催告です。

解除後は原状回復する

契約が解除されると、各当事者は相手方を契約前の状態に戻す原状回復義務を負います。ただし、解除によって第三者の権利を害することはできません。

金銭を返還するときは受領時から利息を付け、金銭以外の物を返還するときは受領時以後に生じた果実も返還します。解除しても、要件を満たす損害賠償請求は妨げられません。

解除によって双方が負う原状回復義務には同時履行の抗弁の規定が準用され、相手方の返還と引換えに自分も返還する関係になります。法律行為が取り消され、双方に原状回復義務が生じる場合についても、判例は双方の返還義務を同時履行の関係としています。

当事者の一方が複数人いるときは、契約の解除はその全員から、または全員に対して行います。そのうち1人について解除権が消滅すると、他の者についても消滅します。

解除後は原状回復し、双方の返還義務は同時履行の関係になります。

同時履行の抗弁

同時履行の抗弁権とは、双務契約の一方当事者が、相手方が債務の履行を提供するまで、自分の債務の履行を拒める制度です。相手方の債務がまだ弁済期にない場合には、この抗弁を使って履行を拒むことはできません。

二つの債務関係
売買目的物の引渡しと代金支払い同時履行
不動産の所有権移転登記と代金支払い判例上、同時履行
解除後の双方の原状回復同時履行

したがって、売主が目的物の引渡しを提供していないのに、買主だけに代金支払いを求めた場合、買主は原則として引渡しの提供まで支払いを拒めます。

双務契約は「相手が提供するまで自分も拒める」が同時履行の基本です。

危険負担は責任の所在で分ける

危険負担は、双務契約の一方の債務が履行不能になったときに、反対側の給付をどうするかという問題です。

当事者双方の責めに帰することができない事情で履行不能になったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができます。例えば、引渡し前の目的物が双方に責任のない災害で滅失し、売主の引渡しが不能となった場合、買主は原則として代金支払いを拒めます。

一方、履行不能が債権者の責めに帰すべき事由によるときは、債権者は反対給付を拒めません。この場合、債務者が自分の債務を免れたことによって利益を得たときは、その利益を債権者に償還します。

売買では、目的物の引渡し後、または買主が受領を拒み・受領できないため売主が適法に履行を提供した後に、双方の責任ではない事情で目的物が滅失・損傷した場合、買主はその滅失・損傷を理由として代金支払いを拒むことはできません。

双方無責の履行不能なら反対給付を拒め、債権者に責任があれば拒めません。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

契約の解除について正しいものはどれか。

  1. 契約解除には、原則として債務者の帰責事由は必要ない
  2. 催告解除の場合、催告後直ちに解除できる
  3. 解除権は相手方の催告なしに行使できない
  4. 契約の解除は相手方の帰責事由がなければ行使できない
答えと解説を見る

正解: 契約解除には、原則として債務者の帰責事由は必要ない

2020年施行の改正民法では、契約の解除について、原則として債務者の帰責事由を要件としていない(民法541条・542条)。ただし、催告解除において不履行の部分が軽微である場合や、不履行が債権者(解除権を行使する側)の責めに帰すべき事由による場合には解除できない。単純に『債務不履行があれば必ず解除できる』わけではない。

基本の問題(まなクエの問題集から)

売主の担保責任による救済方法として正しいものはどれか。

  1. 買主は契約解除のみ行使できる
  2. 買主は損害賠償請求のみ行使できる
  3. 買主には、それぞれの要件を満たす場合、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などの救済が認められる
  4. 買主は代金減額請求のみ行使できる
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正解: 買主には、それぞれの要件を満たす場合、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などの救済が認められる

契約不適合責任(民法562条以下):買主には、それぞれの要件を満たす場合に、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除といった救済が認められる。4つの制度があるからといって、買主がいつでも自由に好きなものを選択できるわけではない。たとえば代金減額請求は、原則として追完の催告をしてもなお追完がされないことなど、一定の要件を満たす必要がある。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

Aは自己所有の土地をBに売却し、6月30日に所有権移転登記と引渡しをし、Bも同日に代金を支払う約束をした。6月20日、AはBに対し「この契約は一切履行しない」と明確に告げた。Aが履行しない原因はBの責めに帰すべき事由によるものではない。この場合について正しいものはどれか。

  1. 土地の引渡しが物理的には可能である以上、Bは必ず相当期間を定めて催告しなければ解除できない。
  2. Aに帰責事由がない限り、Bは契約を解除することができない。
  3. Bは催告をせずに契約を解除できる。Bが債務不履行による損害賠償も請求する場合には、Aの帰責事由の有無が問題となる。
  4. Bが契約を解除した場合、債務不履行による損害賠償を請求することはできない。
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正解: Bは催告をせずに契約を解除できる。Bが債務不履行による損害賠償も請求する場合には、Aの帰責事由の有無が問題となる。

債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に示したときは、催告なしで解除できます。解除には債務者の帰責事由を原則として要しませんが、民法415条の損害賠償では帰責事由が問題になります。

この内容を問題で確かめる

読んだところを、問題で思い出してみましょう。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方