宅建士 参考書|第4章 税・価格の評定
所得税と住宅の特例
譲渡所得の基本計算
土地や建物を売ったときの譲渡所得は、原則として譲渡価額-取得費-譲渡費用で計算し、給与所得などとは分けて課税します。
取得費には購入代金や購入手数料だけでなく、その後に支出した設備費・改良費も含まれます。建物は減価償却費相当額を差し引きます。取得費が分からない場合などは、譲渡価額の5%を概算取得費とすることができます。
相続や贈与で取得した土地・建物は、原則として被相続人や贈与者の取得費と取得時期を引き継ぎます。相続時の時価をそのまま取得費にするわけではありません。
個人の不動産業者が棚卸資産である土地を営利目的で継続的に売却して得た所得は、通常の資産譲渡による譲渡所得とは扱いません。また、建物所有目的の土地賃借権設定で受ける権利金が土地価額の2分の1を超える場合は、譲渡所得として扱われます。
譲渡所得は「売値-取得費-譲渡費用」。相続なら元の所有者の取得費・取得時期を引き継ぎます。
短期・長期と50万円控除
土地・建物の譲渡では、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えると長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。実際の譲渡日までの期間で数えない点に注意します。
土地・建物以外の資産などに適用される総合課税の譲渡所得では、特別控除は年間最高50万円です。短期譲渡益と長期譲渡益の両方があるときは、短期譲渡益から先に50万円を控除し、残額があれば長期譲渡益から控除します。
総合課税の長期譲渡所得は特別控除後の金額の2分の1を総所得金額へ算入しますが、短期譲渡所得は全額を算入します。この2分の1課税を土地・建物の短期譲渡所得に当てはめてはいけません。
保養目的の別荘など生活に通常必要でない資産が災害で損失を受けた場合には、一定の範囲でその年分または翌年分の譲渡所得から控除する規定があります。
5年判定は譲渡年1月1日。総合課税の50万円控除は短期から先に使います。
居住用財産の譲渡特例
自分が住んでいる家屋など一定の居住用財産を売った場合、所有期間にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。以前住んでいた家屋でも、原則として住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すれば対象になり得ます。
配偶者や直系血族など一定の特別関係者への譲渡には適用できません。したがって孫への譲渡は、生計を一にしているかどうかにかかわらず対象外です。また、前年・前々年にこの3,000万円控除など一定の居住用財産の特例を受けている場合にも制限があります。
譲渡年の1月1日現在で所有期間が10年を超える一定の居住用財産には、軽減税率の特例があります。3,000万円特別控除と軽減税率は併用できますが、居住用財産の買換えによる課税繰延べの特例と軽減税率は併用できません。
| 組合せ | 扱い |
|---|---|
| 3,000万円特別控除+軽減税率 | 併用できる |
| 収用交換等の5,000万円特別控除+軽減税率 | 一定の場合に併用できる |
| 居住用財産の買換えによる課税繰延べ+軽減税率 | 併用できない |
軽減税率は、その年の前年または前々年に同じ軽減税率特例を受けている場合には適用できません。
3,000万円控除と10年超の軽減税率は併用できます。親子・孫などへの譲渡は対象外です。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、一定の住宅を取得・新築・増改築して居住し、一定の住宅借入金等がある場合に所得税額から控除する制度です。対象となる借入金等は、原則として償還期間10年以上でなければなりません。
控除は、土地を先に取得した年ではなく、住宅を取得・新築して実際に居住の用に供した年分から適用を判断します。土地を前年に買い、翌年に家を建てて入居した場合、前年分から控除できるわけではありません。
一定の新築等では、原則として床面積50㎡以上かつ床面積の2分の1以上を自己居住用とし、控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であることなどが要件です。40㎡以上50㎡未満の一定の住宅では、合計所得金額1,000万円以下など別の要件があります。
居住用財産の3,000万円特別控除や軽減税率など一定の譲渡益の特例を、入居年・その前年・前々年など所定の期間に受けた場合は住宅ローン控除との併用が制限されます。一方、一定の居住用財産の譲渡損失について行う損益通算・繰越控除とは併用できます。
住宅ローン控除は「入居した年から・返済10年以上」。譲渡益の特例との併用制限に注意します。
住宅取得資金の贈与税非課税
令和6年1月1日から令和8年12月31日までに、父母・祖父母など自己の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、一定の住宅の新築・取得・増改築等に充てた場合は、贈与税の非課税特例を利用できます。配偶者の父母は、養子縁組などがない限り自己の直系尊属ではありません。
| 項目 | 要件・限度 |
|---|---|
| 受贈者の年齢 | 贈与年の1月1日に18歳以上 |
| 合計所得金額 | 原則2,000万円以下。床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下 |
| 床面積 | 登記簿上40㎡以上240㎡以下 |
| 居住部分 | 床面積の2分の1以上 |
| 省エネ等住宅の非課税限度 | 受贈者1人につき1,000万円 |
| それ以外の住宅の非課税限度 | 受贈者1人につき500万円 |
父と祖父など複数の直系尊属から贈与を受けても、非課税限度額が贈与者ごとに倍になるわけではありません。また、この特例は住宅そのものの贈与や、既存の住宅ローンを返済するための金銭の贈与には適用されません。
原則として、贈与年の翌年3月15日までに贈与資金の全額を住宅の新築等に充て、その家屋に居住するか、同日後遅滞なく居住することが確実であることが必要です。非課税限度内で贈与税額が0円でも、翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告が必要です。
非課税は18歳以上・所得要件・40〜240㎡。省エネ等1,000万円、その他500万円で申告も必要です。
住宅資金と相続時精算課税
通常の相続時精算課税は、原則として贈与年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の推定相続人または孫などへの贈与について選択する制度です。
住宅取得等資金については特例があり、令和8年12月31日までの一定の贈与なら、贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選択できます。受贈者は贈与年の1月1日に18歳以上で、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫であることなどが必要です。この住宅資金特例には受贈者の合計所得金額による要件はありません。
対象住宅は原則として登記簿上の床面積が40㎡以上で、床面積の2分の1以上を自己の居住用とするものです。この制度では床面積の上限はありません。贈与年の翌年3月15日までに資金全額を住宅の新築等に充てて居住するか、その後遅滞なく居住することが確実であることが必要です。
相続時精算課税を選択した場合、令和6年以後の贈与には毎年110万円の基礎控除があり、さらに贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除があります。住宅取得等資金の非課税特例と併用する場合は、まず住宅取得等資金の非課税額を控除し、その残額などについて相続時精算課税の110万円の基礎控除、2,500万円の特別控除の順に考えます。
この住宅資金の特例を選ぶには、贈与年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書と相続時精算課税選択届出書などを提出します。
住宅資金なら贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選べます。110万円+2,500万円を区別します。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除について正しいものはどれか。
- 居住用財産の譲渡所得から3,000万円を控除できる
- 3,000万円特別控除は毎年適用できる
- 一度も自己の居住の用に供したことがない投資用不動産の譲渡にも、居住用財産の3,000万円特別控除を適用できる
- 3,000万円特別控除の適用に住所要件はない
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正解: 居住用財産の譲渡所得から3,000万円を控除できる
3,000万円特別控除(租税特別措置法35条):居住用財産の売却で譲渡所得から最高3,000万円を控除できる。現在住んでいるマイホームだけでなく、以前に自己が居住していた家屋でも、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する場合など、一定の場合には適用可能である。したがって、『売却時点で住んでいなければ必ず対象外』というわけではない。ただし、一度も自己の居住の用に供したことがない投資用不動産にはこの特別控除は適用できない。前年・前々年に適用した場合は不可(3年に1回)。
基本の問題(まなクエの問題集から)
不動産の譲渡所得の計算方法として正しいものはどれか。
- 収入金額−費用=譲渡所得
- 収入金額×20%=税額
- 収入金額−(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
- 収入金額のみで計算
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正解: 収入金額−(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
譲渡所得の計算(所得税法33条):収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得。短期・長期(5年超)で税率が異なる。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
令和8年中、贈与年の1月1日に19歳で合計所得金額900万円のAが、父から省エネ等住宅の取得資金1,000万円の贈与を受けた。取得する住宅は登記簿上45㎡で、その全部をAの居住用とし、その他の要件も満たしている。住宅取得等資金の贈与税の非課税について正しいものはどれか。
- 床面積が50㎡未満なので、この非課税特例は利用できない。
- 合計所得金額が2,000万円以下ならよいため、45㎡の住宅でもAの所得額に関係なく利用できる。
- 要件を満たせば1,000万円まで非課税となり得るが、税額が0円でも所定期間内の贈与税申告が必要である。
- 父からの贈与であるため、住宅の床面積やAの年齢にかかわらず1,000万円まで非課税になる。
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正解: 要件を満たせば1,000万円まで非課税となり得るが、税額が0円でも所定期間内の贈与税申告が必要である。
40㎡以上50㎡未満の住宅では受贈者の合計所得金額1,000万円以下が必要です。Aは年齢・所得・床面積を満たし、省エネ等住宅なら1,000万円まで非課税となり得ますが、特例適用には申告が必要です。
この内容を問題で確かめる
読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「所得税法」・e-Gov法令検索「租税特別措置法」・e-Gov法令検索「相続税法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方