宅建士 参考書|第4章 税・価格の評定
不動産鑑定評価基準
価格は最有効使用を前提に考える
不動産の価格は、自然的・社会的・経済的・行政的な要因の影響を受けて形成されます。鑑定評価では、対象不動産だけを見るのではなく、その地域の特性や対象不動産固有の条件を分析して経済価値を判定します。
不動産の価格は、その不動産の最有効使用を前提として把握される価格を標準として形成されます。最有効使用とは、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて良識と通常の使用能力を持つ人による合理的・合法的な最高最善の使用です。現在の利用方法がそのまま最有効使用とは限りません。
また、同一需給圏とは、対象不動産と代替・競争関係が成立して価格形成に相互の影響を及ぼす他の不動産が存在する圏域です。個別的要因は、土地や建物など個々の不動産の価格形成に個別的な影響を与える要因をいいます。
価格は「現在の使い方」ではなく、最有効使用を前提に把握します。
正常・限定・特定・特殊価格
鑑定評価で求める価格は、基本的には正常価格です。正常価格は、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を適正に表示する価格です。
| 価格 | 判断の中心 |
|---|---|
| 正常価格 | 合理的な市場で形成される市場価値 |
| 限定価格 | 隣接地との併合などにより、市場が相対的に限定される場合の市場価値 |
| 特定価格 | 法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提を満たさない場合の経済価値 |
| 特殊価格 | 文化財建造物など一般に市場性を有しない不動産の、利用現況等を前提とする経済価値 |
早く売りたいから通常より安くする価格を、そのことだけで限定価格とはいいません。限定価格は、併合・分割などによって取引市場が相対的に限定されることがポイントです。
賃料では、一般に正常賃料または継続賃料を求めますが、依頼目的と条件に応じて限定賃料を求めることもあります。
限定価格は「早期売却」ではなく、併合などによる市場の限定です。
原価法は再調達原価から減価する
原価法は、価格時点で対象不動産をもう一度調達するとした場合の再調達原価を求め、そこから減価修正をして積算価格を求める手法です。費用性に着目した方法です。
対象が建物または建物とその敷地で、再調達原価の把握と減価修正を適切に行える場合に有効です。土地だけでも、再調達原価を適切に求められるなら原価法を適用できます。したがって「土地のみには原価法を使えない」は誤りです。
対象不動産と同じものの再調達が困難な場合には、同等の有用性をもつ不動産を新たに調達すると想定した置換原価を再調達原価とみなします。
減価修正では、耐用年数に基づく方法と、対象不動産を実際に観察して減価額を求める観察減価法があり、両者を併用します。減価は物理的な老朽化だけでなく、機能的・経済的な要因も対象です。
原価法=再調達原価-減価修正。土地にも適用できる場合があります。
取引事例比較法は補正を区別する
取引事例比較法は、多数の取引事例を集め、適切な事例を選択して補正・比較を行い、比準価格を求める方法です。対象不動産と代替・競争関係にある不動産の取引が行われている場合に有効です。
事例に売り急ぎ・買い進みなどの特殊事情があり、その事情が価格に影響しているときに行うのが事情補正です。一方、事例の取引時点と価格時点が異なり、その間に価格水準が変動しているときに行うのが時点修正です。
さらに、取引事例と対象不動産について地域要因や個別的要因を比較します。「特殊な取引事情を直すこと」を時点修正とはいいません。
事情補正は取引事情、時点修正は時の経過による価格水準の変化です。
収益還元法は自用にも使える
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すと期待される純収益の現在価値の総和から収益価格を求める手法です。賃貸用不動産や事業用不動産の評価に特に有効です。
収益還元法は賃貸中の物件だけに使う方法ではありません。自用の不動産でも、賃貸を想定することにより適用されます。したがって「自宅や自社使用の不動産には適用できない」という説明は誤りです。
| 方法 | 考え方 |
|---|---|
| 直接還元法 | 一期間の純収益を還元利回りで還元する |
| DCF法 | 複数期間の純収益と復帰価格を発生時期に応じて現在価値へ割り引き、その合計を求める |
直接還元法の基本形は「収益価格=一期間の純収益÷還元利回り」です。DCF法では将来の金額をそのまま合計せず、割引率を用いて現在価値に直します。
収益還元法は将来の純収益を基礎とし、自用不動産にも適用できます。
条件設定と手法の適用
鑑定評価では、対象不動産や依頼目的に応じて、適用可能な手法を選びます。いつでも一つの手法だけを選んで評価するわけではなく、対象不動産に応じて複数の手法から得た試算価格を関連づけて鑑定評価額を決定します。
通常の調査では価格への影響を判断するための事実確認が困難な特定の価格形成要因がある場合、一定の要件を満たせば調査範囲等条件を設定できます。ただし、設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断されることが必要です。
証券化対象不動産など、鑑定評価が利用者の利益に重大な影響を及ぼす場合には条件設定が原則として制限されます。ただし、証券化対象不動産について所定の要件を満たす場合には、まだ完成していない建物等について、竣工を前提とした未竣工建物等鑑定評価を行うことができます。
手法は一つ限定ではありません。条件設定には利用者保護の制限があります。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
原価法(積算法)について正しいものはどれか。
- 将来の収益から価格を求める
- 再調達原価から減価修正して積算価格を求める
- 収益と費用の差から価格を求める
- 過去の取引事例から価格を求める
答えと解説を見る
正解: 再調達原価から減価修正して積算価格を求める
原価法(不動産鑑定評価基準):対象不動産の再調達原価を算出し、減価修正を行って積算価格を求める。主に建物評価に有効。
基本の問題(まなクエの問題集から)
取引事例比較法について正しいものはどれか。
- 多数の取引事例から比準価格を求める
- 建物の残存価値から評価する
- 収益から評価する
- 再調達原価から評価する
答えと解説を見る
正解: 多数の取引事例から比準価格を求める
取引事例比較法(不動産鑑定評価基準):多数の取引事例を収集・選択し、事情補正・時点修正・地域要因・個別的要因の比較を行って比準価格を求める。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
自宅として使用中の建物とその敷地を鑑定評価することになった。収益還元法の適用について、不動産鑑定評価基準に照らして正しいものはどれか。
- 現に賃貸されていないため、収益還元法を適用することはできない。
- 自用不動産でも、賃貸を想定することにより収益還元法を適用することができる。
- 自用不動産では、原価法と取引事例比較法のうち必ず一つだけを適用しなければならない。
- 収益還元法は文化財建造物のように一般に市場性を有しない不動産にのみ適用する。
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正解: 自用不動産でも、賃貸を想定することにより収益還元法を適用することができる。
収益還元法は賃貸用・事業用不動産に特に有効ですが、自用不動産でも賃貸を想定して適用されます。現に賃貸中であることは適用の必須条件ではありません。
この内容を問題で確かめる
読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: 国土交通省「不動産鑑定評価基準」(平成26年5月1日一部改正)(2026年10月11日時点で確認)。このページの作り方と確かめ方