登録販売者 参考書|第2章 人体の働きと医薬品

消化器系

消化管と消化腺の全体像

消化器系は、飲食物を消化して栄養分として吸収し、残ったものを体外へ排出する器官系です。消化管は口腔から肛門まで続き、平均的な成人で全長約9mあります。

区分含まれる器官
消化管口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門
消化腺唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓など

消化には、消化液に含まれる消化酵素で分解する化学的消化と、咀嚼や消化管の運動によって内容物を細かくし、消化液と混ぜる機械的消化があります。

歯冠の表面はエナメル質で覆われ、その下に象牙質があります。エナメル質は体で最も硬い部分です。

消化管は口腔から肛門まで約9m、歯冠はエナメル質、その下が象牙質です。

口腔・咽頭・食道

唾液腺から分泌される唾液には、デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解するプチアリン(唾液アミラーゼ)が含まれます。唾液は食物を湿らせ、嚥下しやすくするほか、味覚の形成にも関わります。

咽頭は、口腔から食道へ続く食物路と、呼吸器の気道が交わる場所です。嚥下するときは、喉頭蓋が反射的に閉じることで、飲食物が喉頭や気管へ入るのを防ぎます。

食道は喉もとからみぞおち近くまで続く直径1~2cmの管状の器官で、消化液の分泌腺はありません。飲食物は重力だけで落ちるのではなく、食道の運動によって胃へ送られます。

食道の上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が食道や咽頭へ逆流するのを防ぎます。

嚥下では喉頭蓋は閉じ、食道は消化液を分泌せず運動で飲食物を胃へ送ります。

胃と小腸の働き

胃は、内容物が入ると胃壁の平滑筋が弛緩して容積が広がります。これを胃適応性弛緩といいます。胃腺からは胃酸やペプシノーゲンなどが分泌されます。

物質・部位働き
ペプシノーゲン胃酸によってペプシンとなる
ペプシンタンパク質を消化し、半消化状態のペプトンにする
胃粘液胃を胃液から保護し、その成分は小腸でのビタミンB12吸収にも重要

胃での滞留時間は、炭水化物主体の食品では比較的短く、脂質分の多い食品では比較的長いとされます。

小腸は全長6~7mで、十二指腸、空腸、回腸の3部分に分かれます。十二指腸に続く部分は、概ね上部40%が空腸、残り約60%が回腸ですが、明確な境目はありません。

小腸では、炭水化物は単糖類に、タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収されます。小腸の粘膜表面には絨毛があり、さらに細胞表面には微絨毛が密生して吸収効率を高めています。

胃はタンパク質をペプシンで消化し、小腸は十二指腸・空腸・回腸からなります。

消化酵素と膵臓

消化酵素は、どこから分泌され、何を分解するかの組合せが重要です。

成分供給・変化働き
プチアリン唾液腺から分泌デンプンをデキストリンや麦芽糖へ分解
ペプシノーゲン胃から分泌され、胃酸でペプシンになるペプシンがタンパク質を消化
トリプシノーゲン膵液に含まれ、消化管内でトリプシンになる胃で半消化されたタンパク質をさらに細かく消化
アミラーゼ膵液に含まれるデンプンを分解
リパーゼ膵液に含まれる脂質を分解
エレプシン腸管粘膜上の消化酵素半消化されたタンパク質をアミノ酸まで分解
マルターゼ、ラクターゼ等腸管粘膜上の消化酵素炭水化物を単糖類まで分解

膵臓は胃の後下部にある細長い臓器で、弱アルカリ性の膵液を十二指腸へ分泌します。膵臓は、炭水化物、タンパク質、脂質を消化するすべての酵素の供給を担います。

また、膵臓は消化腺であると同時に、インスリンやグルカゴンなど血糖値を調節するホルモンを血液中に分泌する内分泌腺でもあります。

膵液は弱アルカリ性で、膵臓は三大栄養素の消化酵素を供給し、内分泌も行います。

胆嚢と肝臓

胆汁を産生するのは肝臓で、胆嚢は肝臓で作られた胆汁を濃縮して蓄えます。十二指腸に内容物が入ると胆嚢が収縮し、胆汁を腸管内へ送り込みます。

物質・働き内容
胆汁酸塩脂質の消化を容易にし、脂溶性ビタミンの吸収を助ける
胆汁酸塩の腸肝循環大部分は小腸で再吸収されて肝臓へ戻る
ビリルビン赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じる老廃物

肝臓では、小腸で吸収されたブドウ糖がグリコーゲンとして蓄えられます。また、ビタミンA、D等の脂溶性ビタミンだけでなく、ビタミンB6、B12等の水溶性ビタミンも貯蔵します。

肝臓は、有害な物質を代謝して無毒化したり、体外へ排出されやすい形にしたりします。アルコールは肝臓でアセトアルデヒドを経て酢酸へ代謝され、アミノ酸の分解などで生じるアンモニアは尿素へ代謝されます。

ヘモグロビンの分解で生じたビリルビンも肝臓で代謝されます。肝機能障害や胆管閉塞などでビリルビンが循環血液中に滞留すると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸を生じます。

肝臓では、必須アミノ酸以外のアミノ酸を生合成できます。

胆汁は肝臓で産生、胆嚢で濃縮・貯蔵し、肝臓はB6・B12も貯蔵します。

大腸と肛門

大腸は、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなります。大腸の内壁粘膜には絨毛がありません。この点が小腸との区別になります。

大腸では、水分やナトリウム、カリウム、リン酸等の電解質が吸収され、固形状の糞便が形成されます。消化はほとんど行われません。

大腸・腸内細菌の働き内容
食物繊維腸内細菌が発酵分解する
大腸粘膜上皮細胞食物繊維の分解で生じる栄養分を利用する
ビタミンK等腸内細菌が産生する

通常の糞便は大半が水分で、食物の残滓は約5%です。はがれ落ちた腸壁上皮細胞の残骸や腸内細菌の死骸も含まれます。

肛門周囲は肛門括約筋で囲まれ、排便を意識的に調節できます。また、静脈が細かい網目状に通り、周囲の組織がうっ血すると痔の原因となります。

大腸には絨毛がなく、腸内細菌はビタミンK等を産生し、肛門周囲には静脈網があります。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

消化器系に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a 食道には消化液の分泌腺がなく、嚥下された飲食物は食道の運動によって胃へ送られる。
  • b 胃粘液に含まれる成分は、小腸におけるビタミンB12の吸収に重要な役割を果たす。
  • c 膵液は弱酸性で、胃で酸性となった内容物を中和する。
  • d 大腸の内壁粘膜には絨毛があり、栄養分の吸収効率を高めている。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a誤 b正 c誤 d正
  4. a正 b正 c正 d誤
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b正 c誤 d誤

a、bは正しい記述です。cは誤りで、膵液は弱酸性ではなく弱アルカリ性です。dも誤りで、大腸の内壁粘膜には絨毛がなく、絨毛が発達しているのは小腸です。まちがえやすい点:膵液の液性と、小腸・大腸の絨毛の有無を入れ替えないようにします。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a 胆嚢は、肝臓で産生された胆汁を濃縮して蓄える。
  • b 腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は、大腸で再吸収されて肝臓へ戻る。
  • c 肝臓は、ビタミンA、D等に加えて、ビタミンB6、B12等も貯蔵する。
  • d 肝臓では、必須アミノ酸を生合成することができる。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとc

正しいのはaとcです。bは誤りで、胆汁酸塩の大部分は大腸ではなく小腸で再吸収されます。dは誤りで、肝臓で生合成できるのは必須アミノ酸以外のアミノ酸です。まちがえやすい点:胆汁酸塩の再吸収部位と、肝臓が生合成できるアミノ酸の範囲を正確に区別します。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

消化器系について説明を求められた。次の説明のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 唾液に含まれるプチアリンは、デンプンをアミノ酸まで分解する消化酵素である。
  2. 胃から分泌されるペプシノーゲンは、胃酸によって脂質を消化するペプシンとなる。
  3. 小腸は十二指腸、空腸、回腸からなり、十二指腸に続く部分は概ね上部40%が空腸、残り約60%が回腸である。
  4. 膵臓は炭水化物と脂質を消化する酵素を供給するが、タンパク質を消化する酵素は供給しない。
  5. 大腸の腸内細菌は、血液凝固や骨へのカルシウム定着に必要なビタミンDを産生する。
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正解: 小腸は十二指腸、空腸、回腸からなり、十二指腸に続く部分は概ね上部40%が空腸、残り約60%が回腸である。

小腸は十二指腸、空腸、回腸からなり、十二指腸に続く部分は概ね上部40%が空腸、残り約60%が回腸です。プチアリンはデンプンをデキストリンや麦芽糖へ分解します。ペプシンはタンパク質を消化します。膵臓は炭水化物、タンパク質、脂質のそれぞれを消化する酵素を供給します。大腸の腸内細菌が産生するのはビタミンK等です。まちがえやすい点:酵素と消化対象、空腸と回腸の割合、ビタミンKとDの入れ替えに注意します。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方