登録販売者 参考書|第2章 人体の働きと医薬品
精神神経系・消化器系・呼吸器系の副作用
精神神経症状は通常量でも起こる
医薬品の副作用で中枢神経系が影響を受けると、物事に集中できない、落ち着きがなくなる、不眠、不安、震え(振戦)、興奮、眠気、うつなどの精神神経症状が現れることがあります。
大量服用や長期連用などの不適正な使用に限って起こるわけではなく、通常の用法・用量でも発生することがあります。症状が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けます。
眠気を催すことが知られている医薬品を使用した後は、乗物や危険な機械類の運転操作に従事しないよう十分注意する必要があります。心臓や血管に作用する医薬品によって、頭痛、めまい、浮動感、不安定感などが生じることもあります。
精神神経症状は通常の用法・用量でも起こり、眠気が出る医薬品の使用後は運転操作を避けます。
無菌性髄膜炎は再発にも注意
無菌性髄膜炎は、髄液に細菌が検出されない髄膜炎です。医薬品の副作用が原因となる場合があり、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、関節リウマチなどの基礎疾患がある人では発症リスクが高いとされています。
多くの場合は急性に発症し、首筋のつっぱりを伴う激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁などが現れます。この場合は原因と考えられる医薬品を直ちに中止し、医師の診療を受ける必要があります。
早期に原因医薬品を中止すれば速やかに回復し、予後は比較的良好であることがほとんどですが、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例もあります。また、過去に軽度の症状を経験した人が同じ医薬品を再度使用すると、再発して急激に進行する場合があります。
無菌性髄膜炎は急性に起こり、同じ医薬品の再使用で再発・急激な進行をすることがあります。
消化性潰瘍は粘膜筋板を超える
消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織が傷害され、その一部が粘膜筋板を超えて欠損した状態です。粘膜表面だけの欠損、あるいは粘膜筋板を超えない状態とする説明は誤りです。
症状には、胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時のみぞおちの痛み、消化管出血に伴う黒い糞便などがあります。
自覚症状が乏しいこともあり、動悸や息切れなどの貧血症状の検査時や、突然の吐血・下血によって発見されることがあります。重篤な病態への進行を防ぐため、原因と考えられる医薬品を中止し、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
消化性潰瘍は粘膜筋板を超える欠損で、無症状に近くても吐血・下血から見つかることがあります。
イレウス様症状は腸管運動の麻痺
イレウスは、腸内容物の通過が阻害された状態です。腸管そのものが閉塞していなくても、医薬品の作用で腸管運動が麻痺し、腸内容物の通過が妨げられるとイレウス様症状が現れます。
主な症状は、激しい腹痛、ガス排出の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘です。腹痛などで水分や食物を摂りにくくなるため、嘔吐がなくても脱水状態になることがあります。
悪化すると、腸内容物の逆流による嘔吐で脱水症状を呈したり、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行したりする可能性があります。小児、高齢者、普段から便秘傾向のある人は発症リスクが高く、下痢治癒後の便秘を放置して悪化することもあります。
初期症状に気付いたら、原因と考えられる医薬品を中止し、早期に医師の診療を受けます。
イレウス様症状は「腸管運動の麻痺→著しい便秘」で、便秘傾向の人ほど発症リスクが高くなります。
その他の消化器症状も対応を区別
消化器への副作用として、吐きけ・嘔吐、食欲不振、腹部の不快感や膨満感、腹痛、口内炎、口腔内の荒れや刺激感などが現れることがあります。これらが現れた場合は原因と考えられる医薬品を中止し、症状によっては医師の診療を受けます。
一方、医薬品によっては一過性の軽い副作用として、口渇、便秘、軟便、下痢などが現れることがあります。浣腸剤や坐剤では、肛門部の熱感などの刺激、異物を注入することによる不快感、排便直後の立ちくらみなどが一過性に現れることがあります。
こうした症状が継続したり、増強した場合には、その医薬品の使用を中止して専門家に相談します。
浣腸剤・坐剤では肛門部の刺激や排便直後の立ちくらみが一過性に現れることがあります。
間質性肺炎は1~2週間程度で起こる
通常の肺炎が気管支または肺胞の細菌感染による炎症であるのに対し、間質性肺炎は肺胞と毛細血管を取り囲んで支える組織である間質の炎症です。
間質性肺炎では肺胞と毛細血管の間のガス交換効率が低下し、血液に酸素を十分取り込めなくなります。その結果、息切れ・息苦しさなどの呼吸困難、空咳、発熱などが現れますが、発熱を伴わないこともあります。
一般的には医薬品の使用開始から1~2週間程度で起こることが多く、1時間以内に起こることが多いわけではありません。初期の息切れは登坂などの運動時に感じられ、進行すると平地歩行や家事などの軽い労作でも意識されます。
症状はかぜや気管支炎と区別しにくいことがあります。自然に回復する場合もありますが、悪化して肺線維症へ移行することもあるため、直ちに原因と考えられる医薬品を中止し、速やかに医師の診療を受けます。
間質性肺炎は間質の炎症で、使用開始から1~2週間程度に多く、空咳・呼吸困難などが現れます。
医薬品による喘息は1時間以内にも発症
アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症成分を含む解熱鎮痛薬などが原因となり、喘息を発症することがあります。原因医薬品の使用後、短時間、1時間以内のうちに鼻水・鼻づまりが現れ、続いて咳、喘鳴、呼吸困難が生じます。
症状は時間とともに悪化し、顔面の紅潮、目の充血、吐きけ、腹痛、下痢などを伴うことがあります。内服薬だけでなく、坐薬や外用薬でも誘発されることがあります。
合併症を起こさない限り、原因となった医薬品の有効成分が体内から消失すれば症状は寛解します。軽症例は半日程度で回復しますが、重症例では24時間以上持続し、窒息による意識消失から死に至る危険もあります。そのような場合は直ちに救命救急処置が可能な医療機関を受診します。
通年性の鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻茸、嗅覚異常などの鼻の疾患を合併している人、成人後に喘息を発症した人、季節に関係なく喘息発作が起こる人などで発症しやすいとされています。これまでに医薬品で喘息発作を起こした人は重症化しやすいため、同種の医薬品を避ける必要があります。
医薬品による喘息は使用後1時間以内にも起こり、坐薬・外用薬でも誘発されます。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
医薬品の副作用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a 精神神経症状は、通常の用法・用量で医薬品を使用していても発生することがある。
- b 医薬品の副作用による無菌性髄膜炎は、早期に原因医薬品を中止すれば予後は比較的良好であることがほとんどで、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例は報告されていない。
- c 消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織の一部が粘膜筋板を超えて欠損した状態である。
- d イレウス様症状は、医薬品の作用により腸管運動が亢進して腸内容物の通過が妨げられることで起こる。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b正 c正 d誤
- a誤 b誤 c正 d正
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正解: a正 b誤 c正 d誤
aは正しいです。精神神経症状は不適正使用に限らず、通常の用法・用量でも発生します。bは誤りです。早期中止で予後は比較的良好なことがほとんどですが、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例も報告されています。cは正しいです。消化性潰瘍では欠損が粘膜筋板を超えます。dは誤りで、イレウス様症状では腸管運動が「亢進」するのではなく「麻痺」します。まちがえやすい点:消化性潰瘍の「粘膜筋板を超える」と、イレウス様症状の「腸管運動が麻痺」を入れ替えないようにします。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a 間質性肺炎は、一般的に原因となる医薬品の使用開始から1~2週間程度で起きることが多い。
- b 間質性肺炎では、発熱を必ず伴うため、発熱のない場合は間質性肺炎とは考えない。
- c 医薬品による喘息は、内服薬のほか、坐薬や外用薬でも誘発されることがある。
- d 医薬品による喘息は、合併症を起こしていなくても、原因となった医薬品の有効成分が体内から消失した後も症状が寛解しない。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
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正解: aとc
正しいのはaとcです。間質性肺炎は医薬品の使用開始から1~2週間程度で起きることが多く、必ずしも発熱を伴いません。医薬品による喘息は内服薬だけでなく、坐薬や外用薬でも誘発されます。合併症を起こさない限り、原因医薬品の有効成分が体内から消失すれば症状は寛解します。まちがえやすい点:間質性肺炎の「1~2週間程度」と、喘息の「1時間以内」を混同しないようにします。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
登録販売者が医薬品の副作用について相談を受けた。次の説明のうち、最も適切なものはどれか。
- 普段から便秘傾向のある高齢者に激しい腹痛、腹部膨満感、著しい便秘が現れた場合、腸管運動の亢進によるイレウス様症状を考える。
- 医薬品の使用開始から1~2週間程度で空咳や息苦しさが現れたが発熱がない場合、間質性肺炎では必ず発熱するため該当しないと考える。
- 医薬品使用後1時間以内に鼻水・鼻づまりに続いて喘鳴と呼吸困難が現れた場合、内服薬でなければ医薬品による喘息は考えない。
- 以前に同じ医薬品で軽度の無菌性髄膜炎を経験した人では、再使用によって再発し、急激に症状が進行する場合があるため、症状が現れたら直ちに使用を中止して医師の診療を受ける。
- 胃のもたれや胃痛がなく自覚症状に乏しい場合には、消化性潰瘍が突然の吐血や下血で発見されることはない。
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正解: 以前に同じ医薬品で軽度の無菌性髄膜炎を経験した人では、再使用によって再発し、急激に症状が進行する場合があるため、症状が現れたら直ちに使用を中止して医師の診療を受ける。
適切なのは、過去に軽度の無菌性髄膜炎を経験した人では同じ医薬品の再使用で再発し、急激に進行する場合があるという説明です。イレウス様症状は腸管運動の「亢進」ではなく「麻痺」で起こります。間質性肺炎は発熱を伴わない場合があります。医薬品による喘息は坐薬や外用薬でも誘発されます。消化性潰瘍は自覚症状が乏しく、突然の吐血・下血で発見されることもあります。まちがえやすい点:副作用ごとに「麻痺/亢進」「発熱は必須か」「剤形」「再発」「自覚症状の有無」の一語を正確に判定します。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方