登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
口腔咽喉薬・うがい薬
目的と剤形を区別する
口腔咽喉薬は、口腔内や咽頭部の粘膜に局所的に作用し、炎症による痛みや腫れなどを和らげることを主な目的とします。トローチ剤、ドロップ剤、口腔内に噴霧・塗布する外用液剤などがあります。
殺菌消毒成分を配合し、口腔や咽頭の殺菌・消毒を目的とする製品もあります。一方、鎮咳成分、気管支拡張成分、去痰成分は口腔咽喉薬には配合されません。これらが配合される場合は鎮咳去痰薬に分類されます。
含嗽薬は、口腔や咽頭の殺菌・消毒・洗浄、口臭の除去などを目的として、用時に水で希釈・溶解してうがいに用いるか、患部に塗布した後に水でうがいする外用液剤です。口腔咽喉薬や含嗽薬には、医薬部外品として製造販売されている製品もあります。
局所作用を目的とする薬でも、成分の一部が口腔や咽頭の粘膜から吸収されて循環血流中に入り、全身的な影響を生じることがあります。口内炎などで口腔内にひどいただれがある人では、刺激感だけでなく全身的な影響も生じやすくなります。
局所作用の薬でも全身への影響はあり、鎮咳・気管支拡張・去痰成分は口腔咽喉薬には配合されません。
剤形ごとの正しい使い方
トローチ剤やドロップ剤は、有効成分を口腔内や咽頭部に行き渡らせるため、口中に含み、噛まずにゆっくり溶かします。噛み砕いて飲み込むと効果は期待できません。
噴射式の液剤は、息を吸いながら噴射すると気管支や肺に入るおそれがあります。軽く息を吐きながら噴射するのが望ましい使い方です。
水で用時希釈・溶解する含嗽薬は、濃ければよいわけではありません。濃すぎても薄すぎても十分な効果が得られません。一般には薬液を10~20mL程度口に含み、顔を上向きにして咽頭の奥まで行き渡るようにガラガラとうがいして吐き出し、数回繰り返します。
含嗽薬の使用後すぐに食事をすると、殺菌消毒効果が薄れやすくなります。
トローチは噛まずに溶かす、噴射は息を吐きながら、含嗽薬は指定濃度で使います。
成分と働きを対応させる
口腔咽喉薬・含嗽薬では、成分名と働きの組合せが重要です。特に、アズレンスルホン酸ナトリウムと殺菌消毒成分、グリセリンの取り違えに注意します。
| 成分・分類 | 主な働き |
|---|---|
| グリチルリチン酸二カリウム、トラネキサム酸 | 声がれ、喉の荒れ、不快感、痛み、腫れを鎮める抗炎症成分 |
| アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン) | 炎症を生じた粘膜組織の修復を促す |
| セチルピリジニウム塩化物、デカリニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、ポビドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、チモール | 細菌等の微生物を死滅させたり、その増殖を抑えたりする殺菌消毒成分 |
| グリセリン | 喉の粘膜を刺激から保護する |
| クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 咽頭粘膜に付着したアレルゲンによる喉の不快感等を鎮める抗ヒスタミン成分 |
アズレンスルホン酸ナトリウムは殺菌消毒成分ではなく、粘膜組織の修復を促す成分です。また、喉の粘膜を刺激から保護する成分はグリセリンであり、セチルピリジニウム塩化物やグリチルリチン酸二カリウムではありません。
抗ヒスタミン成分は局所作用を目的としていても、結果的に経口摂取されるため、内服薬と同様の副作用が現れることがあります。また、口腔咽喉薬として配合された場合でも咳に対する薬効を標榜することはできません。
アズレンは粘膜修復、殺菌消毒はセチルピリジニウム塩化物など、局所保護はグリセリンです。
ヨウ素系とクロルヘキシジンの注意
ヨウ素系殺菌消毒成分には、ポビドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素があります。ヨウ素系殺菌消毒成分、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩を配合した製品では、まれにショック(アナフィラキシー)のような全身性の重篤な副作用を生じることがあります。これらの成分に対するアレルギーの既往歴がある人は使用を避けます。
ヨウ素系殺菌消毒成分を口腔内に使用すると、結果的にヨウ素を摂取することになります。ヨウ素は甲状腺でのホルモン産生に影響する可能性があるため、バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患の診断を受けた人は、使用前に治療中の医師または処方薬を調剤した薬剤師に相談します。
妊娠中に摂取したヨウ素の一部は胎児へ移行します。長期間にわたり大量に使用すると、胎児にヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能障害を生じるおそれがあります。摂取したヨウ素の一部は乳汁中にも移行するため、母乳を与える女性も留意します。
ヨウ素系殺菌消毒成分では、口腔粘膜の荒れ、しみる、灼熱感、悪心、不快感が現れることがあります。ポビドンヨード配合の含嗽薬では、銀を含有する歯科材料(義歯等)が変色することがあります。
クロルヘキシジングルコン酸塩配合の含嗽薬は、口腔内に傷やひどいただれがある人では強い刺激を生じるおそれがあるため、使用を避けます。
ヨウ素系は甲状腺への影響、ポビドンヨードは銀製歯科材料の変色、クロルヘキシジンは傷・ただれに注意します。
生薬と漢方処方を整理する
生薬成分では、ラタニアとミルラの作用を区別します。
| 生薬 | 基原と働き |
|---|---|
| ラタニア | クラメリア科のクラメリア・トリアンドラ及びその同属植物の根を基原とし、咽頭粘膜をひきしめる収斂作用により炎症の寛解を促す |
| ミルラ | カンラン科のミルラノキ等の植物の皮部の傷口から流出して凝固した樹脂を基原とし、収斂作用のほか抗菌作用も期待される |
漢方処方製剤では、桔梗湯、駆風解毒散・駆風解毒湯、白虎加人参湯、響声破笛丸などがあります。これらはいずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。
| 処方 | 適すとされるもの・不向きな人 |
|---|---|
| 桔梗湯 | 体力に関わらず使用でき、喉が腫れて痛み、ときに咳がでるものの扁桃炎、扁桃周囲炎。胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き |
| 駆風解毒散・駆風解毒湯 | 体力に関わらず使用でき、喉が腫れて痛む扁桃炎、扁桃周囲炎。体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き |
| 白虎加人参湯 | 体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの喉の渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ。体の虚弱な人、胃腸虚弱で冷え症の人には不向き |
| 響声破笛丸 | 体力に関わらず使用でき、しわがれ声、咽喉不快。胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き |
桔梗湯と駆風解毒散・駆風解毒湯を混同しないようにします。「ときに咳がでる」が付くのは桔梗湯です。白虎加人参湯は扁桃炎・扁桃周囲炎を対象とする処方ではありません。
駆風解毒散・駆風解毒湯は、5~6回服用しても改善しない場合、漫然と続けず使用を中止し、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。響声破笛丸も、5~6日間使用して改善しない場合はいったん中止し、専門家に相談することが望まれます。
桔梗湯は「ときに咳」、駆風解毒散・湯は扁桃炎、白虎加人参湯は熱感と強い口渇、響声破笛丸はしわがれ声です。
相互作用と受診の目安
ヨウ素は、レモン汁やお茶などに含まれるビタミンC等と反応して脱色し、殺菌作用が失われます。そのため、ヨウ素系殺菌消毒成分を配合した含嗽薬では、こうした食品を摂取した直後の使用や、食品との混合を避けることが望まれます。
飲食物を飲み込むときに激しい痛みがある場合は、扁桃蜂巣炎や扁桃膿瘍などの可能性があるため、早期に医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
声がれ、喉の荒れ、不快感、痛みなどはかぜに伴って起こることが多く、通常はかぜの寛解とともに治まります。しかし、喉を酷使していないのに数週間以上続く場合は、喉頭癌等の重大な疾患が原因の可能性もあるため、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
ヨウ素とビタミンC等は組み合わせず、嚥下時の激痛や数週間続く喉症状は受診につなげます。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
口腔咽喉薬・うがい薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a アズレンスルホン酸ナトリウムは、炎症を生じた粘膜組織の修復を促す作用を期待して配合されることがある。
- b トローチ剤は、有効成分を咽頭部に行き渡らせるため、噛み砕いて飲み込むことが重要である。
- c クロルヘキシジングルコン酸塩が配合された含嗽薬は、口腔内に傷やひどいただれがある人では使用を避ける必要がある。
- d 含嗽薬の使用後すぐに食事を摂ると、殺菌消毒効果が高まりやすい。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aは正しいです。アズレンスルホン酸ナトリウムは粘膜組織の修復を促す目的で用いられます。bは誤りで、トローチ剤やドロップ剤は噛まずにゆっくり溶かします。cは正しいです。クロルヘキシジングルコン酸塩配合の含嗽薬は、傷やひどいただれがある人では強い刺激のおそれがあるため使用を避けます。dは誤りで、使用後すぐに食事をすると殺菌消毒効果が薄れやすくなります。まちがえやすい点:噴射式液剤は息を吸いながらではなく、軽く吐きながら使用します。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a ヨウ素系殺菌消毒成分を口腔内に使用すると、ヨウ素の摂取につながり、甲状腺でのホルモン産生に影響する可能性がある。
- b セチルピリジニウム塩化物は、喉の粘膜を刺激から保護する局所保護成分として用いられる。
- c 白虎加人参湯は、体力に関わらず使用でき、喉が腫れて痛む扁桃炎、扁桃周囲炎に適すとされる。
- d ポビドンヨード配合の含嗽薬では、銀を含有する歯科材料が変色することがある。
- aとb
- aとd
- bとc
- bとd
- cとd
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正解: aとd
正しいのはaとdです。bは誤りで、セチルピリジニウム塩化物は殺菌消毒成分です。喉の粘膜を刺激から保護する成分はグリセリンです。cは誤りで、白虎加人参湯は体力中等度以上で、熱感と口渇が強いものの喉の渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみに適すとされます。まちがえやすい点:扁桃炎・扁桃周囲炎に用いられる桔梗湯や駆風解毒散・駆風解毒湯と白虎加人参湯を取り違えないようにします。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
登録販売者が口腔咽喉薬・うがい薬について相談を受けた。最も適切な説明はどれか。
- バセドウ病の治療中の人がポビドンヨード配合の含嗽薬を希望しているため、甲状腺への影響を考慮し、使用前に治療中の医師または処方薬を調剤した薬剤師へ相談するよう説明する。
- 口腔内に噴射する液剤を使う人に、有効成分を咽頭の奥へ届けるため、軽く息を吸いながら噴射するよう説明する。
- 駆風解毒湯を5~6回服用しても症状の改善がみられない人に、二次感染の可能性は低いため、そのまま継続して使用するよう説明する。
- レモン汁を飲んだ直後にヨウ素系殺菌消毒成分を含む含嗽薬を使用する人に、ビタミンC等との反応で殺菌作用が高まるため適した使用法だと説明する。
- 桔梗湯を希望する人に、体力中等度以上で熱感と口渇が強いものの喉の渇き、ほてりに適すとされる処方だと説明する。
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正解: バセドウ病の治療中の人がポビドンヨード配合の含嗽薬を希望しているため、甲状腺への影響を考慮し、使用前に治療中の医師または処方薬を調剤した薬剤師へ相談するよう説明する。
バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患の診断を受けた人は、ヨウ素系殺菌消毒成分を使用する前に、治療中の医師または処方薬を調剤した薬剤師へ相談する必要があります。噴射式液剤は軽く息を吐きながら使用します。駆風解毒散・駆風解毒湯は5~6回服用しても改善しない場合、扁桃炎や扁桃周囲炎から二次感染を生じている可能性もあるため、いったん使用を中止して医師の診療を受けるなどの対応が必要です。ヨウ素はビタミンC等と反応すると殺菌作用が失われます。体力中等度以上で熱感と口渇が強いものに適すのは白虎加人参湯であり、桔梗湯ではありません。まちがえやすい点:漢方処方では対象となる症状だけでなく、「体力に関わらず」「体力中等度以上」などの条件も区別します。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方