登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
胃腸鎮痛鎮痙薬・浣腸薬・駆虫薬
抗コリン成分の作用と副作用
急な胃腸の痛みは、主として胃腸が過剰に動く痙攣によって生じます。副交感神経の刺激は消化管運動と胃液分泌を亢進させるため、アセチルコリンと受容体の反応を妨げる抗コリン成分が、胃痛、腹痛、さしこみを鎮める目的で用いられます。胃液分泌も抑えるため、胃酸過多や胸やけへの効果も期待されます。
胃腸鎮痛鎮痙薬に用いられる抗コリン成分には、メチルベナクチジウム臭化物、ブチルスコポラミン臭化物、メチルオクタトロピン臭化物、ジサイクロミン塩酸塩、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、チキジウム臭化物などがあります。ロートエキスも抗コリン作用を示す成分を含む生薬成分です。
| 成分・区分 | 作用・注意点 |
|---|---|
| 抗コリン成分 | アセチルコリンと受容体の反応を妨げ、消化管運動と胃液分泌を抑える |
| ブチルスコポラミン臭化物 | まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じる |
| チキジウム臭化物 | 抗コリン成分であり、口渇、便秘、排尿困難などが現れることがある |
| ロートエキス | 母乳中に成分の一部が移行し、乳児に頻脈を生じるおそれがある。母乳が出にくくなることもある |
抗コリン作用は消化管だけに限られません。散瞳による目のかすみや異常な眩しさ、顔のほてり、頭痛、眠気、口渇、便秘、排尿困難などが現れることがあります。使用後は乗物や機械類の運転操作を避けます。
排尿困難の症状がある人、心臓病又は緑内障の診断を受けた人は、症状が悪化するおそれがあるため使用前に医師又は薬剤師へ相談します。高齢者では排尿困難や緑内障の基礎疾患がある場合が多く、口渇や便秘も現れやすいため慎重に使用します。
抗コリン成分はアセチルコリンを妨げ、胃腸の痙攣と胃液分泌を抑えます。
パパベリン・局所麻酔成分・生薬
パパベリン塩酸塩は、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める成分です。抗コリン成分とは異なり、胃液分泌を抑える作用は見出されていません。
また、自律神経系を介する作用ではありませんが、眼圧を上昇させる作用があります。緑内障の診断を受けた人は症状悪化のおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。
| 成分 | 作用・重要な注意 |
|---|---|
| パパベリン塩酸塩 | 消化管平滑筋に直接作用して痙攣を鎮める。胃液分泌は抑えないが、眼圧を上昇させる |
| アミノ安息香酸エチル | 局所麻酔作用による鎮痛鎮痙。メトヘモグロビン血症のおそれがあるため6歳未満は使用を避ける |
| オキセサゼイン | 局所麻酔作用に加えて胃液分泌を抑える。胃腸鎮痛鎮痙薬と制酸薬の両方の目的で使用される |
| エンゴサク | ケシ科のCorydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y.H.Chou et C.C.Hsuの塊茎を、通例、湯通ししたものを基原とし、鎮痛鎮痙作用を期待して配合される |
局所麻酔成分は痛みを感じにくくするため、重大な消化器疾患や状態の悪化を見過ごすおそれがあります。長期間にわたって漫然と使用することは避けます。
オキセサゼインでは、頭痛、眠気、めまい、脱力感が現れることがあります。妊娠中や小児の安全性は確立されていないため、妊婦又は妊娠していると思われる女性と15歳未満の小児は使用を避けます。
パパベリンは平滑筋に直接作用し胃液は抑えず、オキセサゼインは局所麻酔と胃液分泌抑制の両方を示します。
併用を避ける薬と受診すべき腹痛
胃腸鎮痛鎮痙薬の成分は胃腸以外にも作用するものが多いため、複数の胃腸鎮痛鎮痙薬を併用すると、泌尿器系、循環器系、精神神経系などの副作用が現れやすくなります。使用中は他の胃腸鎮痛鎮痙薬を使用しません。
抗コリン成分は、かぜ薬、乗物酔い防止薬、鼻炎用内服薬などにも配合される場合があります。また、抗コリン作用を併せ持つ成分が、かぜ薬、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬、鎮咳去痰薬、アレルギー用薬などに含まれる場合があります。併用すると、排尿困難、目のかすみや異常な眩しさ、頭痛、眠気、口渇、便秘などが現れやすくなります。
痛みが次第に強くなる、周期的に現れる、嘔吐や発熱を伴う、下痢や血便・血尿を伴う、原因不明の痛みが30分以上続く場合は、基本的に医療機関を受診します。診療までの当座の対処として胃腸鎮痛鎮痙薬を使うと、痛みの部位が不明確になり、原因の特定を難しくすることがあります。
血尿を伴う側腹部痛では腎臓や尿路の病気が疑われ、胃腸鎮痛鎮痙薬の使用は適当ではありません。また、下痢を伴う腹痛は基本的に下痢への対処が優先され、胃腸鎮痛鎮痙薬の適用となる症状ではありません。
原因不明の強い腹痛や30分以上続く痛みでは、鎮痛鎮痙薬で隠さず受診を優先します。
浣腸薬の使い方と配合成分
浣腸薬は、便秘の場合に排便を促す目的で直腸内に用います。注入剤と坐剤があります。繰り返し使用すると直腸の感受性が低下して効きにくくなるため、連用せず、一時的な使用にとどめます。便秘以外のときに直腸内容物を排除する目的で使うことも適当ではありません。
妊婦又は妊娠していると思われる女性では、直腸の急激な動きが流産・早産を誘発するおそれがあるため使用を避けます。腹痛が著しい場合、便秘に伴って吐きけや嘔吐がある場合、排便時に出血がある場合は、浣腸薬を続けず医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
| 成分 | 作用・注意点 |
|---|---|
| グリセリン・ソルビトール | 浸透圧差により腸管壁から水分を取り込み、直腸粘膜を刺激して排便を促す |
| グリセリン | 排便時の血圧低下による立ちくらみが報告されている。粘膜損傷・出血時には血管内に入り、溶血や腎不全を起こすおそれがある |
| 炭酸水素ナトリウム | 直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を生じ、直腸を刺激する |
注入剤は、放出部を肛門に差し込み、薬液だまりを絞って薬液を押し込みます。注入はゆっくり行い、終了後も放出部をゆっくり抜きます。注入直後に排便すると薬液だけが出て十分な効果が得られないため、便意が強まるまでしばらく我慢します。
半量を使う用法でも、残量を再利用すると感染のおそれがあるため廃棄します。坐剤も挿入直後の排便は避け、便意が強まるまでしばらく我慢します。無理に挿入すると直腸粘膜を傷つけるおそれがあります。
グリセリン・ソルビトールは浸透圧、炭酸水素ナトリウムは炭酸ガスで直腸を刺激します。
駆虫薬が効く対象と使い方
一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫です。条虫、吸虫、鉤虫、旋毛虫、鞭虫などの駆除を目的とする一般用医薬品はありません。
駆虫薬は腸管内に生息する虫体に作用します。虫卵や、腸管内以外に潜伏している回虫の幼虫には作用しません。再度駆虫する必要がある場合は、1ヵ月以上間隔を置いて使用します。
複数の駆虫薬を併用しても効果は高まらず、副作用が現れやすくなります。組合せによっては、かえって駆虫作用が弱くなることもあります。駆虫成分が消化管から吸収されると頭痛やめまいなどの全身作用につながるため、吸収は極力少ないことが望ましく、多くの製品は空腹時に使用することとされています。
駆除した虫体などの排出を促すため瀉下薬を併用することがありますが、ヒマシ油は駆虫成分の吸収を高め、副作用の危険を高めるため併用を避けます。
一般用駆虫薬は回虫と蟯虫が対象で、虫卵には作用しません。
駆虫成分ごとの作用を区別する
| 成分 | 作用・主な注意点 |
|---|---|
| サントニン | 回虫の自発運動を抑え、排便とともに排出させる。肝臓病では使用前に相談する。服用後に一時的に物が黄色く見える、耳鳴り、口渇が現れることがある |
| カイニン酸 | 回虫に痙攣を起こさせ、排便とともに排出させる |
| マクリ | フジマツモ科のマクリの全藻を基原とする生薬で、カイニン酸を含む |
| ピペラジンリン酸塩 | アセチルコリン伝達を妨げ、回虫と蟯虫の運動筋を麻痺させて排出させる |
| パモ酸ピルビニウム | 蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫する |
ピペラジンリン酸塩では、痙攣、倦怠感、眠気、食欲不振、下痢、便秘などが現れることがあります。痙攣の症状がある人、貧血や著しい栄養障害、肝臓病、腎臓病の診断を受けた人は、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。
パモ酸ピルビニウムは赤~赤褐色の成分で、尿や糞便が赤く着色することがあります。水に溶けにくく、消化管からの吸収は少ないとされています。空腹時に服用することとはされていませんが、脂質分の多い食事とアルコール摂取は避けます。ヒマシ油との併用も避けます。
ピペラジンは運動筋を麻痺、パモ酸ピルビニウムは蟯虫の呼吸・栄養代謝を抑えます。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
胃腸鎮痛鎮痙薬について、次の記述a〜dの正誤の組合せとして正しいものはどれか。
- a パパベリン塩酸塩は、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮めるが、胃液分泌を抑える作用は見出されていない。
- b ブチルスコポラミン臭化物は、アセチルコリンと受容体の反応を妨げる抗コリン成分である。
- c オキセサゼインは、局所麻酔作用を示すが、胃液分泌を抑える作用はない。
- d アミノ安息香酸エチルは、メトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるため、15歳未満の小児への使用を避ける。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b正 c正 d誤
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b正 c誤 d誤
a・bは正しいです。cは誤りで、オキセサゼインには局所麻酔作用のほか胃液分泌を抑える作用もあります。dも誤りで、アミノ安息香酸エチルで使用を避けるのは6歳未満の小児です。まちがえやすい点:15歳未満を避けるのはオキセサゼインです。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a グリセリンやソルビトールは、浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込み、直腸粘膜を刺激して排便を促す。
- b 炭酸水素ナトリウムは、直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を生じ、直腸を刺激する。
- c グリセリンが配合された浣腸薬は、肛門や直腸の粘膜に損傷があり出血しているときには、組織修復を促す目的で使用する。
- d 注入剤は、薬液をできるだけ速く押し込み、注入後は便意が生じる前に排便を試みる。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
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正解: aとb
a・bが正しいです。cは誤りで、粘膜損傷・出血時にグリセリンが血管内へ入ると溶血や腎不全を起こすおそれがあります。dも誤りで、注入はゆっくり行い、注入後は便意が強まるまでしばらく我慢します。まちがえやすい点:炭酸ガスを発生させるのはソルビトールではなく炭酸水素ナトリウムです。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
購入者から駆虫薬について相談を受けた。説明として最も適切なものはどれか。
- 一般用医薬品の駆虫薬は、回虫、蟯虫及び条虫を対象とし、腸管内の虫体と虫卵の両方に作用する。
- ピペラジンリン酸塩は、アドレナリン伝達を妨げ、回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる。
- パモ酸ピルビニウムは蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示し、脂質分の多い食事やアルコール摂取は避ける。
- 再度駆虫する必要がある場合は、前回の使用から1週間以上間隔を置いて使用する。
- ヒマシ油は駆除した虫体の排出を促し、駆虫成分の吸収を抑えるため併用に適している。
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正解: パモ酸ピルビニウムは蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示し、脂質分の多い食事やアルコール摂取は避ける。
パモ酸ピルビニウムは蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示します。空腹時服用とはされていませんが、脂質分の多い食事やアルコール摂取を避けます。一般用駆虫薬の対象は回虫と蟯虫で、虫卵には作用しません。ピペラジンリン酸塩が妨げるのはアセチルコリン伝達です。再度の駆虫は1ヵ月以上間隔を置き、ヒマシ油との併用は駆虫成分の吸収を高めるため避けます。まちがえやすい点:パモ酸ピルビニウムは空腹時服用が指定されていない点を、他の駆虫薬と混同しないようにします。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方