登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
痔の薬・その他の泌尿器用薬
痔の種類と薬の使い分け
痔は、肛門付近の血管がうっ血し、肛門に負担がかかることなどによって生じる病気の総称です。主な病態は痔核、裂肛、痔瘻です。
痔核は、肛門の細かい血管群が部分的に拡張して、いぼ状に腫れたものです。歯状線より上の直腸粘膜にできるものを内痔核といい、直腸粘膜には知覚神経が通っていないため自覚症状が少ないのが特徴です。歯状線より下の肛門出口側にできるものは外痔核で、排便と関係なく出血や痛みを生じることがあります。
裂肛は肛門出口からやや内側の上皮に傷が生じた状態で、一般に切れ痔と呼ばれます。痔瘻は、肛門腺窩に糞便の滓がたまって炎症・化膿を生じた状態です。
一般用医薬品には、肛門部や直腸内に使う外用痔疾用薬と、内服する内用痔疾用薬があります。外用薬だけではありません。
内痔核は歯状線より上、外痔核は歯状線より下です。
外用痔疾用薬の成分と働き
外用痔疾用薬では、成分名と働きの組合せが重要です。似た働きの成分を取り違えないように整理します。
| 成分・分類 | 主な働き |
|---|---|
| リドカイン、リドカイン塩酸塩、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン塩酸塩、プロカイン塩酸塩 | 局所麻酔成分。知覚神経に作用し、刺激の神経伝導を可逆的に遮断して痛み・痒みを和らげる |
| クロタミトン | 熱感刺激によって痒みを抑える |
| カンフル、ハッカ油、メントール | 冷感刺激によって痒みを抑える |
| ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル | ステロイド性抗炎症成分。肛門部の炎症や痒みを和らげる |
| グリチルレチン酸 | 比較的緩和な抗炎症作用 |
| アラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイネート | 組織修復成分。創傷の治癒を促す |
| テトラヒドロゾリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩 | 血管収縮作用による止血 |
| タンニン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、卵黄油 | 粘膜表面に不溶性の膜を作り、粘膜を保護して止血する |
| クロルヘキシジン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物、デカリニウム塩化物、イソプロピルメチルフェノール | 局所の感染を防止する殺菌消毒成分 |
| トコフェロール酢酸エステル | 肛門周囲の末梢血管の血行を改善する |
プレドニゾロン酢酸エステルなどのステロイド性抗炎症成分を含む坐剤・注入軟膏は、含有量によらず長期連用を避けます。リドカインなど一部の局所麻酔成分を含む坐剤・注入軟膏では、まれにショック(アナフィラキシー)を生じることがあります。
アラントインは組織修復、イソプロピルメチルフェノールは殺菌消毒です。
痔に使う生薬と内用薬
痔疾用薬では、生薬の基原と期待される作用の組合せも問われます。
| 生薬 | 基原・主な働き |
|---|---|
| セイヨウトチノミ | トチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の種子。血行促進、抗炎症等を期待する。内用では主に抗炎症作用を期待する |
| オウゴン | シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。主に抗炎症作用を期待する |
| カイカ | マメ科のエンジュの蕾。主に止血効果を期待する |
| カイカク | マメ科のエンジュの成熟果実。主に止血効果を期待する |
内用痔疾用薬には、比較的緩和な抗炎症作用や血行改善作用を目的とする成分のほか、瀉下・整腸成分などが配合されています。外用痔疾用薬と併せて用いると効果的とされています。
カルバゾクロムは毛細血管を補強・強化して出血を抑える働きがあるとされ、止血効果を期待して配合されます。ビタミンEは肛門周囲の末梢血管の血行を促し、うっ血を改善する目的で用いられます。
セイヨウトチノミとオウゴンは抗炎症、カイカとカイカクは止血です。
痔に用いる漢方処方
乙字湯は、体力中等度以上で、大便がかたく便秘傾向のあるものの痔核、切れ痔、便秘、軽度の脱肛に適すとされます。体の虚弱な人や胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きとされます。構成生薬としてカンゾウを含み、通常、ダイオウも含みます。
乙字湯を切れ痔や便秘に用い、5~6日間服用しても改善しないときは、いったん使用を中止して専門家に相談します。まれに肝機能障害、間質性肺炎を生じることがあります。
芎帰膠艾湯は、体力中等度以下で冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの痔出血、貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血に適すとされます。胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きです。1週間位服用しても改善しないときは、いったん使用を中止して専門家に相談します。
乙字湯と芎帰膠艾湯はいずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。
乙字湯は体力中等度以上の便秘傾向、芎帰膠艾湯は体力中等度以下の出血傾向です。
泌尿器用薬の生薬を区別する
その他の泌尿器用薬では、尿路消毒に用いる生薬と、利尿を期待する生薬を区別します。
| 生薬 | 基原・用途 |
|---|---|
| ウワウルシ | ツツジ科のクマコケモモの葉。利尿作用に加え、尿中に排出される分解代謝物の抗菌作用により尿路の殺菌消毒効果を期待する |
| カゴソウ | シソ科のウツボグサの花穂。利尿作用を期待する |
| キササゲ | ノウゼンカズラ科のキササゲ等の果実。利尿作用を期待する |
| サンキライ | ユリ科のSmilax glabra Roxburghの塊茎。利尿作用を期待する |
| ソウハクヒ | クワ科のマグワの根皮。利尿作用を期待する |
日本薬局方収載のウワウルシとカゴソウは、いずれも煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられます。一方、日本薬局方収載のキササゲ、サンキライ、ソウハクヒは、煎薬として尿量減少に用いられます。
サンキライをクマコケモモの葉、ソウハクヒをマグワの樹皮と取り違えないようにします。ウワウルシがクマコケモモの葉、ソウハクヒがマグワの根皮です。
尿路消毒はウワウルシ。ウワウルシとカゴソウは残尿感・排尿時の不快感にも用います。
泌尿器用の漢方と受診判断
| 処方 | 手引き上の適応の特徴 |
|---|---|
| 八味地黄丸 | 体力中等度以下で、疲れやすく四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるもの。排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、軽い尿漏れ等に適すとされる |
| 牛車腎気丸 | 体力中等度以下で、疲れやすく四肢が冷えやすく尿量減少し、むくみがあり、ときに口渇があるもの。排尿困難、頻尿、むくみ等に適すとされる |
| 六味丸 | 体力中等度以下で、疲れやすく尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてり、口渇があるもの。排尿困難、残尿感、頻尿、むくみ、痒み、夜尿症、しびれに適すとされる |
| 猪苓湯 | 体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇くもの。排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適すとされる |
| 竜胆瀉肝湯 | 体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるもの。排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ、頻尿に適すとされる |
八味地黄丸は、胃腸の弱い人、下痢しやすい人では食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢の副作用が現れるおそれがあるため使用を避けます。また、のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人には不向きです。
残尿感や尿量減少は、一時的な体調不良だけでなく泌尿器系疾患の自覚症状として現れることがあります。膀胱炎や前立腺肥大などによる場合は、一般用医薬品で対処することは適当ではありません。
痔では、一定期間薬を使用しても排便時の出血、痛み、肛門周囲の痒みなどが続くときは、重大な病気の可能性も考えて早期に医療機関を受診します。痔の悪化に伴う細菌感染から膿瘍や痔瘻を生じた場合も、すみやかな受診が必要です。
猪苓湯は体力を問わず、竜胆瀉肝湯は体力中等度以上で下腹部に熱感や痛みがある場合です。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
痔疾用薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a リドカインは、局所の知覚神経に作用して刺激の神経伝導を可逆的に遮断し、痔に伴う痛み・痒みを和らげる。
- b アラントインは、血管収縮作用による止血効果を期待して配合される。
- c プレドニゾロン酢酸エステルが配合された坐剤及び注入軟膏は、その含有量によらず長期連用を避ける必要がある。
- d クロルヘキシジン塩酸塩は、比較的緩和な抗炎症作用を期待して配合される。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a誤 b誤 c正 d正
- a正 b誤 c誤 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aとcが正しい。アラントインは組織修復成分で、痔による肛門部の創傷の治癒を促す目的で用いられる。クロルヘキシジン塩酸塩は殺菌消毒成分で、局所の感染防止を目的とする。まちがえやすい点:止血目的の血管収縮成分と、組織修復成分を入れ替えない。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a セイヨウトチノミは、トチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の種子を基原とし、主に抗炎症作用を期待して用いられる。
- b カイカは、マメ科のエンジュの成熟果実を基原とし、主に止血効果を期待して用いられる。
- c ウワウルシは、ツツジ科のクマコケモモの葉を基原とし、尿中に排出される分解代謝物の抗菌作用による尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。
- d サンキライは、クワ科のマグワの根皮を基原とし、利尿作用を期待して用いられる。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
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正解: aとc
aとcが正しい。カイカはエンジュの蕾で、成熟果実はカイカクである。サンキライはユリ科のSmilax glabra Roxburghの塊茎であり、マグワの根皮を基原とするのはソウハクヒである。まちがえやすい点:カイカとカイカク、サンキライとソウハクヒは基原の入替えに注意する。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
排尿に関する相談を受けた。次の対応・説明のうち、最も適切なものはどれか。
- 体力中等度以上で下腹部に熱感や痛みがあり、排尿痛、残尿感、頻尿がある人には、猪苓湯が適すとされると説明した。
- 体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇き、排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿がある人には、猪苓湯が適すとされると説明した。
- 体力中等度以下で疲れやすく四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があり、軽い尿漏れがある人には、牛車腎気丸が適すとされると説明した。
- 残尿感が膀胱炎によると考えられる人にも、日本薬局方収載のウワウルシで一般用医薬品として対処するのが適当であると説明した。
- 日本薬局方収載のサンキライは、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられると説明した。
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正解: 体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇き、排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿がある人には、猪苓湯が適すとされると説明した。
猪苓湯は、体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適すとされる。下腹部に熱感や痛みがあり体力中等度以上なのは竜胆瀉肝湯。軽い尿漏れまで挙げられているのは八味地黄丸である。膀胱炎などによる症状を一般用医薬品で対処するのは適当でない。サンキライは煎薬として尿量減少に用いられ、残尿感・排尿時の不快感に用いられるのはウワウルシとカゴソウである。まちがえやすい点:八味地黄丸・牛車腎気丸・猪苓湯・竜胆瀉肝湯は体力と排尿症状の組合せで区別する。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方