登録販売者 参考書|第5章 医薬品の適正使用・安全対策

副作用情報の収集・評価・報告

医薬関係者から副作用情報を集める制度

医薬品・医療機器等安全性情報報告制度では、薬局開設者、病院・診療所などの開設者や、医師、歯科医師、薬剤師、登録販売者などの医薬関係者が報告を行います。医薬品の副作用等によるものと疑われる健康被害を知り、保健衛生上の危害の発生・拡大を防ぐため必要と認めるときは、厚生労働大臣に報告しなければなりません。

実務上は、報告書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(総合機構)に提出します。「法律上の報告先=厚生労働大臣」「実際の提出先=総合機構」の入れ替えに注意します。

この制度は1967年3月、約3000の医療機関をモニター施設に指定し、厚生省(当時)が直接報告を受ける「医薬品副作用モニター制度」として始まりました。1978年8月からは、一般用医薬品について約3000のモニター薬局からも定期報告が行われるようになりました。1997年7月に制度が拡充され、2002年7月の薬事法改正で医薬関係者による副作用等の報告が義務化されました。登録販売者制度の導入に伴い、登録販売者も報告を行う医薬関係者に位置づけられています。

問われる点正しい内容
報告義務を負う医薬関係者登録販売者を含む
法律上の報告先厚生労働大臣
実務上の提出先総合機構
制度の出発点1967年3月、約3000の医療機関を指定した医薬品副作用モニター制度

法律上は厚生労働大臣へ報告し、実務上は総合機構へ提出します。

製造販売業者にも報告義務がある

製造販売業者等は、市販後も医薬品の品質・有効性・安全性に関する情報を収集し、医薬関係者へ必要な情報を提供することが重要です。

製造販売した、または承認を受けた医薬品について、副作用等によるものと疑われる健康被害や、その使用によるものと疑われる感染症の発生等を知ったときは、定められた期限までに厚生労働大臣へ報告する義務があります。実務上の報告書の提出先は総合機構です。

薬局開設者、医療施設の開設者、医薬品の販売業者、医師、歯科医師、薬剤師などの医薬関係者は、登録販売者を含めて、製造販売業者等が行う情報収集に協力するよう努めなければなりません。

血液製剤等の生物由来製品を製造販売する企業には、感染症に関する最新の論文や知見に基づいて安全性を評価し、その成果を定期的に国へ報告する制度があります。「有用な情報が得られたときだけ報告すればよい」というものではありません。

企業は副作用・感染症等を期限内に報告し、登録販売者は企業の情報収集に協力します。

一般用医薬品の承認後調査

一般用医薬品についても、製造販売業者等による承認後の調査が行われ、副作用等の発現状況の収集・評価が承認後の安全対策につなげられます。

対象承認後の取扱い
既存の医薬品と明らかに異なる有効成分を配合したもの10年を超えない範囲で厚生労働大臣が承認時に定める一定期間(概ね8年)、使用成績等を集積して厚生労働省へ提出する再審査制度が適用される
医療用医薬品で使用されていた有効成分をOTC医薬品で初めて配合したもの要指導医薬品に指定され、承認後の一定期間(概ね3年)、安全性に関する調査と調査結果の報告が求められる

「概ね8年」と「概ね3年」、「使用成績等」と「安全性に関する調査」の組合せを取り違えないようにします。

新しい有効成分は概ね8年の再審査、医療用からOTCへ初配合したものは概ね3年の安全性調査です。

集めた情報を評価し安全対策につなげる

収集された副作用等の情報は、まずその医薬品の製造販売業者等で評価・検討され、必要な安全対策が図られます。

各制度で集められた副作用情報は、総合機構が専門委員の意見を聴きながら調査検討します。その結果に基づき、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴き、安全対策上必要な行政措置を講じます。

段階主体・内容
個別医薬品の評価製造販売業者等が評価・検討し、安全対策を図る
制度で集めた情報の調査検討総合機構が専門委員の意見を聴いて行う
行政措置厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて行う

行政措置には、使用上の注意の改訂の指示等による情報提供、効能・効果や用法・用量の一部変更、調査・実験の実施の指示、製造・販売の中止、製品の回収などがあります。

1997年には、血液製剤によるHIV感染被害への反省から健康危機管理体制が整備されました。健康危機管理では、科学的・客観的な評価、幅広い情報収集と分析、対応方針の弾力的な見直し、国民への速やかな情報提供と公表が基本とされています。

総合機構が調査検討し、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて行政措置を行います。

どの健康被害を報告するか

医薬関係者による副作用等報告では、医薬品等によるものと疑われる身体の変調・不調や、日常生活に支障を来す程度の健康被害(死亡を含む)が対象です。入院治療を必要とするものだけに限られません。

医薬品との因果関係が明確でなくても、報告対象となり得ます。また、安全対策上必要と認めるときは、過量使用や誤用等によるものと思われる健康被害も報告する必要があります。

副作用は使用上の注意に記載されているものだけとは限りません。副作用の症状と、その医薬品を使用したもとの症状が見分けにくいこともあるため、販売等に従事する専門家は購入者等の訴えをよく把握することが重要です。

判断事項取扱い
日常生活に支障を来す程度の健康被害報告が求められる
死亡報告対象に含まれる
因果関係が必ずしも明確でない報告対象となり得る
過量使用・誤用等による健康被害安全対策上必要と認めるときは報告する
使用上の注意に記載のない副作用報告対象から除外されない

因果関係が不明でも、過量使用・誤用でも、安全対策上必要なら報告対象になり得ます。

報告書の記入と提出方法

報告様式は総合機構のホームページから入手でき、医学・薬学関係の専門誌等にも掲載されています。記入欄をすべて埋める必要はありません。販売等に従事する専門家は、購入者等から把握できる範囲で報告します。情報提供者となる購入者等は、健康被害を生じた本人に限りません。

複数の専門家が販売等に携わっていても、その薬局・販売業で販売等された医薬品について、副作用等と疑われる健康被害の情報に直接接した専門家1名から報告書が提出されれば十分です。

医薬関係者によるこの報告には特定の報告期限は定められていません。ただし、危害の発生・拡大を防ぐ観点から、報告が必要と判断した場合は適宜速やかに行います。郵送、ファクシミリ、電子メールによる送付に加え、令和3年4月からはウェブサイトへ直接入力する電子的な報告も可能です。

報告者には安全性情報受領確認書が交付されます。

項目正しい取扱い
記入欄すべて埋める必要はなく、把握可能な範囲でよい
複数の専門家が関与直接情報に接した専門家1名からの報告でよい
報告期限特に定められていないが、必要と認めたら適宜速やかに報告する
提出方法郵送、ファクシミリ、電子メール、ウェブサイトへの直接入力
報告後安全性情報受領確認書が交付される

記入は把握できる範囲でよく、必要と判断したら適宜速やかに総合機構へ報告します。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

医薬品の副作用情報等の収集・評価に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a 登録販売者は、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に基づく報告を行う医薬関係者に含まれる。
  • b 医薬関係者による副作用等の報告は、法律上、都道府県知事に対して行う。
  • c 各制度で集められた副作用情報は、総合機構において専門委員の意見を聴きながら調査検討される。
  • d 厚生労働大臣は、総合機構の調査検討結果に基づき、薬事審議会の意見を聴いて必要な行政措置を講じる。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d正
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a誤 b誤 c正 d正
  5. a正 b誤 c誤 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d正

a・c・dは正しい記述です。bが誤りで、医薬関係者は必要があると認めるとき、その旨を厚生労働大臣に報告します。実務上の報告書の提出先は総合機構です。まちがえやすい点:『法律上の報告先=厚生労働大臣』『実務上の提出先=総合機構』を分けて覚えます。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

医薬品の副作用等が疑われる場合の報告に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a 医薬品との因果関係が必ずしも明確でない健康被害も、報告対象となり得る。
  • b 報告様式は、購入者等から把握できない事項を含め、すべての記入欄を埋めて提出する必要がある。
  • c 複数の専門家が販売等に携わっている場合、健康被害の情報に直接接した専門家1名から報告書が提出されれば十分である。
  • d 安全対策上必要と認められる場合でも、医薬品の誤用による健康被害は報告対象とならない。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとc

正しいのはaとcです。bは誤りで、報告様式の全欄を埋める必要はなく、購入者等から把握可能な範囲で報告します。dも誤りで、安全対策上必要と認めるときは過量使用や誤用等による健康被害も報告が必要です。まちがえやすい点:因果関係が不明、誤用による健康被害という理由だけで報告対象から外れるわけではありません。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

登録販売者が、販売した一般用医薬品を使用した購入者の家族から『使用後に本人の身体に変調があり、日常生活にも支障が出ているが、医薬品との因果関係はまだ分からない』との相談を受けた。副作用等報告について最も適切な対応はどれか。

  1. 因果関係が明確になってからでなければ報告対象とならないため、現時点では報告しない。
  2. 健康被害を生じた本人から直接情報を得た場合だけ報告できるため、家族からの情報では報告しない。
  3. 報告する場合は、報告様式のすべての記入欄を完成させてから提出する。
  4. 報告の必要性を認めた場合は、把握できる範囲で報告様式を記入し、適宜速やかに報告する。
  5. 入院治療を必要としない健康被害は報告対象に含まれないため、日常生活への支障だけでは報告しない。
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正解: 報告の必要性を認めた場合は、把握できる範囲で報告様式を記入し、適宜速やかに報告する。

最も適切なのは、把握できる範囲で記入し、必要性を認めたら適宜速やかに報告する対応です。因果関係が必ずしも明確でなくても対象となり得て、情報は健康被害を生じた本人以外の購入者等から把握したものでも構いません。また、日常生活に支障を来す程度の健康被害も報告対象です。まちがえやすい点:『因果関係の確定』『本人からの情報』『全欄記入』『入院の必要』はいずれも報告の条件ではありません。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方