宅建士 参考書|第1章 宅建業法

事務所・案内所と専任の宅建士

宅建業法上の事務所

宅建業法上の事務所には、本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設があり、宅建業に係る契約を締結する権限を持つ使用人を置く場所が含まれます。営業所などが商業登記されていなくても、この実態を満たせば事務所になり得ます。

支店は、その支店で宅建業を営む場合に事務所となります。反対に、兼業だけを行い宅建業を営まない支店は、宅建業法上の事務所には当たりません。ただし、支店で宅建業を営んでいる場合は、本店で直接宅建業をしていなくても本店は主たる事務所として扱われます。

案内所は通常、この「事務所」とは別に判定します。事務所に当たるかどうかは、専任宅建士、標識、帳簿などの義務にもつながります。

登記名ではなく、本店・宅建業をする支店・継続施設と契約権限の実態で事務所を判定します。

専任宅建士は5人に1人

宅建業者は、各事務所に成年者である専任の宅建士を置かなければなりません。事務所ごとに、宅建業の業務に従事する者に対する専任宅建士の割合が5分の1以上になる人数が必要です。

その事務所の業務従事者専任宅建士の最低人数
1~5人1人
6~10人2人
11~15人3人

専任とは、その事務所等に常勤し、専ら宅建業の業務に従事できる状態をいいます。主たる事務所にまとめて置くことはできず、従たる事務所にもその事務所の人数に応じて配置します。

事務所は各場所ごとに、業務従事者5人につき専任宅建士1人以上です。

欠員は2週間以内に解消

専任宅建士が退職するなどして、既存の事務所等が法定人数を満たさなくなったときは、宅建業者は2週間以内に必要な措置をとって基準に適合させなければなりません。

「30日以内」ではありません。また、最初から法定数を満たさない事務所等を開設することはできません。

専任宅建士が不足した既存の事務所等は、2週間以内に法定数へ戻します。

契約を扱う案内所等

事務所以外でも、一定の案内所や展示会場などで契約を締結する、または契約の申込みを受ける場合は、成年者である専任宅建士を1人以上置きます。申込みだけを受け、契約自体は事務所で結ぶ場合も対象です。

対象には、事務所以外の継続的な業務施設、10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物を分譲する案内所、他業者のそのような分譲を代理・媒介する案内所、展示会その他これに類する催しの場所があります。

場所契約・申込みあり契約・申込みなし
一定の案内所・展示会場等専任宅建士1人以上・届出・標識専任宅建士と50条2項の届出は不要。ただし所定の場所では標識が必要

代理・媒介業者が設けた案内所でも、売主業者自身がそこで申込みを受けるなら、売主業者についても届出の要否を判定します。

一定の案内所等で契約または申込みを扱うなら、専任宅建士1人以上と届出が必要です。

案内所等の届出と標識

契約・申込みを扱う一定の案内所等については、所在地、業務内容、業務を行う期間、専任宅建士の氏名などを届け出ます。期限は業務開始日の10日前までです。

項目内容
期限業務開始日の10日前まで
届出先免許権者と、その場所を管轄する都道府県知事
専任宅建士成年者である専任宅建士1人以上

所在地を管轄する知事だけに届け出ればよいわけではありません。免許権者と所在地の知事が同一なら提出先は結果として同じですが、両者が異なる問題では区別して判断します。

また、事務所や所定の案内所等には見やすい場所への標識の掲示が必要です。一団の宅地建物を分譲する場合には、分譲する宅地・建物の所在地にも所定の標識を掲示します。案内所で契約や申込みを扱わないことだけを理由に、標識まで不要になるわけではありません。

契約等を扱う案内所等は10日前までに2つの届出先へ、標識は契約等の有無と別に判定します。

案内所とクーリング・オフ

案内所で買受けの申込みをしたからといって、常にクーリング・オフができるわけではありません。

一団の宅地建物の分譲案内所など、専任宅建士を置くべき場所のうち、土地に定着する建物内に設けられた所定の場所は、クーリング・オフでいう「事務所等」に含まれます。そこで申込みをした場合は、事務所等での申込みとしてクーリング・オフの対象外になります。

これに対し、テントなど土地に定着しない場所は、この理由だけで「事務所等」にはなりません。他の要件を満たせばクーリング・オフの対象となります。

専任宅建士を置くべき案内所でも、土地に定着する建物内かどうかがクーリング・オフを分けます。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

宅建業者の事務所について正しいものはどれか。

  1. 本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置く場所も、一定の場合には事務所に含まれる
  2. 事務所には標識の掲示義務はない
  3. 事務所は都市部のみに設置できる
  4. 事務所は本店のみが対象であり、支店は対象外
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正解: 本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置く場所も、一定の場合には事務所に含まれる

事務所(宅建業法3条・施行令1条の2):本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置く場所も、一定の場合には事務所に含まれる。事務所には標識の掲示・専任宅建士の設置・帳簿の備付け等の義務がある。

基本の問題(まなクエの問題集から)

宅建業者の事務所等以外の場所(案内所等)での業務について正しいものはどれか。

  1. 案内所等で契約・申込みの受付をする場合、1名以上の専任の宅建士が必要
  2. 案内所等では宅建士を設置する義務はない
  3. 案内所等での業務開始は免許権者への届出のみで可能
  4. 案内所等での標識掲示は任意である
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正解: 案内所等で契約・申込みの受付をする場合、1名以上の専任の宅建士が必要

案内所等(宅建業法50条2項・31条の3):契約・申込受付をする場合は1名以上の専任宅建士設置+10日前までに届出+標識掲示。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

宅建業者Aは、10戸の新築住宅の分譲案内所を土地に定着しない仮設テントに設ける。この案内所では物件説明だけを行い、売買契約を締結せず、契約の申込みも受けない。この場合の取扱いとして正しいものはどれか。

  1. 専任宅建士を1人以上置き、業務開始日の10日前までに届出をしなければならない
  2. 専任宅建士と案内所の届出は不要であるが、所定の標識は掲示しなければならない
  3. 専任宅建士も届出も標識も不要である
  4. 土地に定着しない案内所では宅建業の業務を一切行うことができない
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正解: 専任宅建士と案内所の届出は不要であるが、所定の標識は掲示しなければならない

契約を締結せず申込みも受けない案内所では、専任宅建士の設置と50条2項の届出は不要です。一方、一団の分譲案内所には所定の標識を掲示します。

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出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行令」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方