宅建士 参考書|第1章 宅建業法
営業保証金
営業保証金は本店1,000万円、支店1か所500万円
保証協会の社員でない宅建業者は、営業保証金を供託します。必要額は主たる事務所1,000万円、その他の事務所1か所につき500万円です。
| 事務所 | 営業保証金 |
|---|---|
| 主たる事務所 | 1,000万円 |
| その他の事務所 | 1か所につき500万円 |
本店1か所と支店2か所なら、1,000万円+500万円+500万円=2,000万円です。支店ごとに別々の供託所へ供託するのではなく、営業保証金は主たる事務所の最寄りの供託所へ供託します。
営業保証金は金銭だけでなく、認められた有価証券を全部または一部に充てることができます。有価証券は額面どおりに評価されるとは限りません。
| 有価証券 | 評価額 |
|---|---|
| 国債証券 | 額面金額の100% |
| 地方債証券・政府保証債 | 額面金額の90% |
| その他の認められた債券 | 額面金額の80% |
たとえば地方債800万円分は720万円として評価されます。これだけでは1,000万円の営業保証金には足りません。
営業保証金は本店1,000万円+支店500万円ずつ、国債100%・地方債等90%・その他の対象債券80%で評価します。
営業開始は「免許→供託→届出」の後
免許を受けただけでは、まだ宅建業を開始できません。営業保証金制度を利用する宅建業者は、次の順に手続をします。
- 宅建業の免許を受けます。
- 主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託します。
- 供託書の写しを添えて、供託した旨を免許権者へ届け出ます。
- 届出後に事業を開始します。
供託しただけで営業を開始することはできません。届出後であることまで必要です。
免許の日から3か月以内に供託した旨の届出をしないと、免許権者は届出をするよう催告します。その催告が到達した日から1か月以内にも届出をしなければ、免許を取り消されることがあります。
| 場面 | 期間 |
|---|---|
| 免許後、供託届がないため催告の対象となる基準 | 免許の日から3か月 |
| 催告後も届出がない場合 | 催告到達から1か月で免許取消しが可能 |
営業開始の順序は「免許→本店最寄りへ供託→免許権者へ届出→営業開始」です。
支店を増やしたら追加供託と届出をしてから営業する
宅建業者が新たに従たる事務所を設置すると、1か所につき500万円を追加して供託する必要があります。追加分も主たる事務所の最寄りの供託所へ供託します。
追加供託には金銭のほか認められた有価証券を使うことができ、金銭と有価証券を組み合わせることもできます。
- 新設した事務所分の営業保証金を追加供託します。
- 供託した旨を免許権者へ届け出ます。
- その後、新設した事務所で営業を開始します。
「支店を設けたら、その支店の近くの供託所へ500万円を供託する」という仕組みではありません。
支店新設は500万円を本店最寄りの供託所へ追加供託し、届出を済ませてから新支店で営業します。
還付の対象は宅建業に関する取引から生じた債権
宅建業者と宅地建物取引業に関して取引をした者は、その取引によって生じた債権について営業保証金から弁済を受けることができます。これが還付です。ただし、取引をした者が宅建業者である場合は還付の対象から除かれます。
売買代金の返還請求権や、宅建業に関する取引上の債務不履行による損害賠償請求権などは対象になり得ます。一方、宅建業者に対する債権なら何でも対象になるわけではありません。
| 債権 | 還付 |
|---|---|
| 宅地・建物の取引から生じた代金返還請求権等 | 対象になり得ます。 |
| 現地案内中の交通事故による損害賠償請求権 | 宅建業に関する取引から生じた債権ではないため対象外です。 |
| 宅建業者が取引相手として有する債権 | 対象外です。 |
| 宅建業と無関係な請負工事代金債権 | 対象外です。 |
還付は「その宅建業者との宅建業に関する取引から生じた債権」が対象で、取引相手が宅建業者なら対象外です。
還付で不足したら2週間以内に補充し、さらに2週間以内に届け出る
還付によって営業保証金が法定額に不足した場合は、そのままにできません。2つの2週間を起算点ごとに分けます。
| 手続 | 期限 |
|---|---|
| 不足額を供託する | 免許権者から還付に関する通知を受けた日から2週間以内 |
| 不足額を供託した旨を届け出る | 不足額を供託した日から2週間以内 |
補充する営業保証金にも、営業保証金と同様に金銭または認められた有価証券を利用できます。
還付後は「通知から2週間以内に不足額を供託」し、「供託日から2週間以内に免許権者へ届出」です。
本店移転で供託所が変わるときは供託物で手続が分かれる
主たる事務所を移転し、最寄りの供託所が変わった場合は、現在の営業保証金が何で供託されているかによって手続が違います。
| 現在の供託 | 手続 |
|---|---|
| 金銭のみ | 遅滞なく費用を予納し、現在の供託所に対して、移転後の本店最寄りの供託所への保管替えを請求します。 |
| 有価証券のみ | 移転後の本店最寄りの供託所へ遅滞なく新たに供託します。 |
| 金銭と有価証券の併用 | 移転後の本店最寄りの供託所へ遅滞なく新たに供託します。 |
つまり、保管替えが使えるのは金銭だけで供託している場合です。有価証券が含まれていれば、新しい供託所へ新たに供託します。
本店移転で供託所が変わるとき、金銭のみなら保管替え、有価証券を含めば新しい供託所へ新たに供託します。
取戻しは原則6か月以上の公告、10年経過なら公告不要
免許の有効期間満了、廃業等による免許失効、免許取消しなどの事由が生じたときは、営業保証金を取り戻せます。また、一部の事務所を廃止して法定額が下がった場合は、その超過額が取戻しの対象になります。
ただし、過去の取引相手の還付請求権を保護するため、原則としてすぐには取り戻せません。営業保証金について権利を有する者に対し、6か月を下らない一定期間内に申し出るよう公告し、その期間内に申出がないことが必要です。
| 場面 | 公告 |
|---|---|
| 通常の取戻し | 原則として6か月以上の申出期間を定めて公告します。 |
| 取戻し事由の発生から10年経過 | 公告をせずに取り戻せます。 |
本店移転に伴って新しい供託所へ新たに供託したため、旧供託所の営業保証金を取り戻す場面は、この原則的な公告を要する取戻しとは別に扱われます。
営業保証金の取戻しは原則6か月以上の公告、取戻し事由から10年を経過すれば公告は不要です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
宅建業者の営業保証金の供託について正しいものはどれか。
- 営業保証金は免許取得後、業務を開始する前に供託する
- 営業保証金は免許申請と同時に供託する
- 営業保証金は免許権者に直接納付する
- 営業保証金の供託後は直ちに業務を開始できる
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正解: 営業保証金は免許取得後、業務を開始する前に供託する
営業保証金(宅建業法25条):免許取得 → 主たる事務所の最寄りの供託所に営業保証金を供託 → 免許権者へ供託した旨を届出 → 業務開始、という順序で行う。
基本の問題(まなクエの問題集から)
営業保証金に関する還付について正しいものはどれか。
- その宅建業者と宅建業に関し取引をし、その取引によって生じた債権を有する者(宅建業者を除く)は、営業保証金から弁済を受けることができる
- 宅建業者自身が他の宅建業者との取引で損害を受けた場合も還付を受けられる
- 営業保証金から還付を受けられるのは宅建業者と取引した者すべて
- その宅建業者と取引していなくても、宅建業に関連して損害を受ければ営業保証金から弁済を受けられる
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正解: その宅建業者と宅建業に関し取引をし、その取引によって生じた債権を有する者(宅建業者を除く)は、営業保証金から弁済を受けることができる
営業保証金の還付(宅建業法27条):その宅建業者と宅建業に関し取引をし、その取引によって生じた債権を有する者(宅建業者を除く)が対象。取引をしていない者が単に損害を受けたというだけでは還付を受けられない。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
宅建業者Aは本店と支店1か所を有し、営業保証金1,500万円を供託している。その後、取引相手への還付によって300万円の不足が生じ、Aは免許権者から還付に関する通知を受けた。この場合のAの手続として正しいものはどれか。
- 通知を受けた日から2週間以内に300万円を供託し、その供託日から2週間以内に免許権者へ届け出る
- 通知を受けた日から1か月以内に300万円を供託すれば、供託後の届出は不要である
- 通知を受けた日から2週間以内に免許権者へ届け出れば、不足額の供託は営業年度末まで猶予される
- 還付を受けた相手が宅建業者でなければ、不足額を補充する必要はない
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正解: 通知を受けた日から2週間以内に300万円を供託し、その供託日から2週間以内に免許権者へ届け出る
還付によって法定額に不足が生じたときは、通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託し、その供託日から2週間以内に免許権者へ届け出ます。2つの2週間は起算点が異なります。
この内容を問題で確かめる
読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行令」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方