宅建士 参考書|第1章 宅建業法

重要事項説明②説明事項(取引の種類別)

まず共通事項と取引別事項を分ける

35条の説明事項は、すべての取引で同じではありません。登記された権利、法令上の制限、飲用水・電気・ガス・排水施設、代金・借賃以外の金銭、契約解除、違約金などは広く対象になりますが、私道負担、区分所有建物、既存建物、手付金等の保全、融資あっせん、貸借特有事項は取引の種類で範囲が変わります。

事項売買・交換貸借
登記された権利必要必要
法令上の制限必要必要だが対象規定に差がある
私道負担必要宅地貸借は必要、建物貸借は不要
供給・排水施設必要必要
解除・違約金必要必要

売買代金そのものや建物の引渡時期は、35条の一般的な説明事項として扱うものではありません。登記された抵当権などは、将来抹消する予定であっても、説明時点で登記されている権利として確認します。

35条は「全部の取引で同じ」ではなく、取引の種類ごとに対象を切り替えます。

金銭は7号・10号・11号・12号を分ける

代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭は、その額と目的を説明します。35条では、この項目について授受の時期までを説明事項としていません。

区分説明する内容
代金等以外の金銭額・目的
手付金等の保全保全措置の概要
支払金・預り金保全措置を講ずるか、講ずるなら概要
融資あっせんあっせん内容・不成立時の措置

支払金・預り金からは、受領額が50万円未満のもの、41条・41条の2で保全されている手付金等、売主・交換当事者である宅建業者が登記以後に受領するもの、報酬が除かれます。

融資は、宅建業者が代金または交換差金に関する金銭貸借をあっせんする場合が対象です。単に買主が住宅ローンを利用するだけで常に12号の説明事項になるわけではありません。

このほか、物件が種類・品質に関して契約内容に適合しない場合の責任について、保証保険契約の締結などの措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要も説明します(13号)。

金銭は「額・目的」「手付金保全」「預り金保全」「融資あっせん」を別々に判定し、契約不適合責任の保険等の措置も説明します。

区分所有建物は売買と貸借で範囲が大きく違う

マンションなどの区分所有建物では、売買・交換なら敷地権、共用部分の規約、専用使用権、費用減免、修繕積立金、管理費、管理委託先、維持修繕記録などが説明対象になります。

建物の貸借では範囲が絞られ、規則16条の2の事項のうち、専有部分の用途その他の利用制限と管理の委託先の2つだけです。規約は確定したものだけでなく、法令上対象となる案も説明対象になります。

計画修繕積立金については、売買・交換で規約の定めがあるとき、その内容と既に積み立てられている額を説明します。

区分所有建物の貸借は「専有部分の利用制限」と「管理委託先」をまず押さえます。

既存建物は建物状況調査と保存書類を分ける

既存建物では、建物状況調査を実施しているか、対象となる調査がある場合にはその結果の概要を説明します。対象となる調査は原則として実施後1年以内で、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年以内です。

これとは別に、売買・交換の住宅では、確認済証、検査済証、建物状況調査の結果報告書、既存住宅の建設住宅性能評価書など、建築・維持保全に関する書類の保存状況を説明します。建物の貸借では、この保存書類状況は同じ形では説明事項になりません。

宅建業者が自ら建物状況調査を実施する義務を課す制度ではありません。

既存建物は「調査の有無・結果」と「保存書類の状況」を分けて覚えます。

災害区域・水害・石綿・耐震は対象を切り替える

造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域に物件があるときは、その旨を説明します。水害ハザードマップについては、市町村長が提供する水防法上の図面に物件の位置が表示されているとき、その図面上の所在地を説明します。売買だけでなく貸借も対象です。

建物では、石綿使用の有無の調査結果が記録されているとき、その内容を説明します。記録が不明だからといって宅建業者自身に新たな石綿調査を義務付ける規定ではありません。

耐震診断についても、所定の対象建物が所定の耐震診断を受けているとき、その内容を説明する制度で、宅建業者に自ら診断させる制度ではありません。新築住宅の住宅性能評価を受けた旨は、建物の売買・交換で対象となります。

災害区域と水害は広く対象、石綿・耐震は建物取引で記録・診断結果を説明します。

貸借では設備・期間・精算・管理を追加する

建物の貸借では、台所・浴室・便所などの設備の整備状況を説明します。宅地・建物の貸借では、契約期間と更新、用途その他の利用制限、敷金など契約終了時に精算する金銭の精算方法、管理が委託されている場合の委託先などを説明します。

定期借地権や定期建物賃貸借などに該当するときは、その旨も説明事項です。宅地の貸借では、契約終了時にその宅地上の建物を取り壊すことを定めようとするとき、その内容も説明します。

一方、建物の貸借では私道負担は35条の説明事項から外れます。売買と同じ範囲をそのまま当てはめないことが重要です。

貸借は「設備・期間更新・利用制限・敷金等の精算・管理先」を追加して確認します。

未完成物件は完成後の姿を具体的に説明する

造成・建築工事の完了前の物件では、完成したときの形状・構造などを説明します。未完成宅地では、造成工事完了時に宅地が接する道路の構造・幅員が対象です。

未完成建物では、主要構造部、内装・外装の構造または仕上げ、設備の設置・構造など、完成時の内容を説明します。必要な場合は図面も用います。

割賦販売では、通常の35条事項に加え、現金販売価格、割賦販売価格、引渡しまでに支払う金額、引渡し後の各回の賦払金の額・時期・方法なども説明します。

未完成物件は「今どうなっているか」ではなく「完成時にどうなるか」を説明します。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

売買の重要事項説明において説明が必要な事項として正しいものはどれか。

  1. 買主の年収
  2. 売主の職業
  3. 近隣との人間関係
  4. 登記された権利の種類・内容等
答えと解説を見る

正解: 登記された権利の種類・内容等

重要事項(宅建業法35条):登記された権利の種類・内容等、都市計画法・建築基準法等の法令上の制限、私道負担、飲用水・電気・ガス等の供給施設の整備状況、石綿使用調査の記録等が説明事項となる。代金の額・支払時期・引渡し時期などの取引条件は37条書面の記載事項であり、35条の重要事項説明の対象ではない。

基本の問題(まなクエの問題集から)

35条書面と37条書面について正しいものはどれか。

  1. 35条書面は契約成立前の重要事項説明に用い、37条書面は契約成立後に契約内容を明確にするため交付する。
  2. 35条書面・37条書面とも契約成立後に交付する。
  3. 35条書面は契約成立後、37条書面は契約成立前に交付する。
  4. 35条書面と37条書面の内容が異なる場合は、常に37条書面が優先する。
答えと解説を見る

正解: 35条書面は契約成立前の重要事項説明に用い、37条書面は契約成立後に契約内容を明確にするため交付する。

35条書面(重要事項説明書)は契約成立前に交付・説明し、37条書面(契約書面)は契約成立後に契約内容を明確にするため交付する。両者は交付の時期・目的が異なる書面である。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

宅建業者Aが区分所有建物の一室の賃貸借を媒介する場合、35条の重要事項として説明すべきものはどれか。

  1. その区分所有建物の計画修繕積立金の既積立額
  2. 専有部分の用途その他の利用制限に関する規約の定め
  3. 建物の私道負担に関する事項
  4. 貸主が所有権を取得した時期
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正解: 専有部分の用途その他の利用制限に関する規約の定め

区分所有建物の貸借では、専有部分の用途その他の利用制限に関する規約は説明事項です。修繕積立金の規約内容・積立額などは売買・交換で問題となる事項で、建物貸借では私道負担も35条の説明事項ではありません。

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出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方