宅建士 参考書|第1章 宅建業法
業務上の規制と禁止行為
未完成物件は必要な許可・確認等の前は広告も売買契約もできない
宅地の造成や建物の建築が完了する前の物件では、「工事が完成したか」ではなく、工事に必要な開発許可・建築確認などを受けたかで広告・契約の時期を判断します。
| 行為 | 必要な許可・確認等の前 | 受けた後 |
|---|---|---|
| 未完成物件の広告 | できない | できる |
| 売買・交換を自ら締結 | できない | できる |
| 売買・交換の代理・媒介 | できない | できる |
契約締結時期の制限は売買・交換を対象とし、貸借契約を同じように禁止する規定ではありません。したがって、必要な許可・確認等を受ける前でも、未完成建物の貸借の代理・媒介契約を36条だけを理由に違反とはしません。
未完成物件は「完成前か」だけでなく、必要な許可・確認等を受けたかで広告・売買契約の可否を判断します。
取引態様は広告時と注文を受けた時の二段階で明示する
宅建業者が売買・交換・貸借について広告をするときは、自ら当事者となるのか、代理するのか、媒介するのかを明示します。
さらに、注文を受けたときは、遅滞なく、注文者に取引態様の別を明らかにします。広告で取引態様を表示していても、注文を受けた後の明示を省略できません。相手方が宅建業者だから表示・明示が不要になるわけでもありません。
取引態様は広告時に表示し、注文を受けた後も遅滞なく注文者に明示します。
自己所有でない物件を自ら売る契約は原則禁止だが例外がある
宅建業者が自ら売主となる場合、自己の所有に属しない宅地・建物について、原則として売買契約やその予約を締結できません。
ただし、その宅建業者が物件を取得する契約をすでに締結していて取得できることが明らかな場合など、法令上の例外があります。取得契約の効力が停止条件にかかっているだけでは、この例外に当たりません。また、未完成物件で所定の手付金等の保全措置を講じる場合にも例外があります。
この他人物売買の制限は宅建業者が自ら売主となる場面の規制です。買主も宅建業者である業者間取引には適用されません。
他人物を自ら売るのは原則禁止。取得契約済み等の例外と、業者間取引かを確認します。
業務上知った秘密は正当な理由がなければ廃業後も漏らせない
宅建業者は、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を、正当な理由なく他人に漏らしてはいけません。宅建業を営まなくなった後も同じです。従業者についても、業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らさない義務があります。
「理由を問わず一切話せない」わけではありません。本人の承諾がある場合や、法令に基づく裁判上の証言など正当な理由がある場合まで禁止する規定ではありません。
秘密は正当な理由なく漏らせず、廃業後も義務は続きますが、正当な理由がある開示まで禁止されません。
不実告知・断定的判断・再勧誘・威迫などを場面で分ける
勧誘では、相手の判断をゆがめる説明や、断った相手を困惑させる方法が禁止されています。
| 禁止される行為 | 見分け方 |
|---|---|
| 重要事項の故意の不告知・不実告知 | 重要な事実を知りながら隠す、またはうそを告げる |
| 断定的判断の提供 | 「必ず値上がりする」など利益が確実と誤認させる |
| 勧誘者等を告げない勧誘 | 業者名、勧誘者の氏名、勧誘目的を先に告げない |
| 再勧誘 | 契約しない意思・勧誘を受けたくない意思を示した後も続ける |
| 威迫・困惑させる勧誘 | 威迫、迷惑な時間、長時間などで私生活・業務の平穏を害する |
値下げそのものや、手付額を減額することそのものは禁止ではありません。違反かは、うそ・断定・威迫・再勧誘・信用供与など、実際に用いた方法で判断します。
勧誘は「何を告げたか・断った後か・困惑させたか」を分け、単なる値下げと禁止行為を混同しません。
手付の信用供与・預り金返還拒否・不当な履行遅延を区別する
宅建業者は、手付について信用を供与して契約締結を誘引してはいけません。典型は、手付を貸す、立て替える、後払いにする、分割払いにするなどして契約を促す場合です。手付額を単に減額することは、信用供与そのものではありません。
申込みを撤回した者に対し、受領済みの預り金の返還を拒む行為も禁止されています。手付放棄による解除ができる場面で、正当な理由なく解除を拒み、または妨げる行為も別の禁止行為です。
さらに、宅建業者は業務に関して行うべき登記、引渡し、取引に係る対価の支払いを不当に遅らせてはいけません。
| 事例 | 判断 |
|---|---|
| 手付を貸して契約させる | 手付の信用供与による誘引 |
| 手付を分割後払いにして契約させる | 手付の信用供与による誘引 |
| 申込み撤回後も預り金を返さない | 預り金返還拒否 |
| 正当な理由なく建物の引渡しを遅らせる | 不当な履行遅延 |
手付の信用供与、預り金返還拒否、登記・引渡し・対価支払の不当遅延は別々の規制です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
宅建業者による不当な勧誘行為の規制について正しいものはどれか。
- 勧誘行為に関する規制は宅建業法にない
- 電話勧誘は制限なく行える
- 相手方の承諾がなくても、午後9時以降など深夜に自由に電話勧誘することができる
- 相手方が迷惑を覚えるような時間帯・方法による勧誘は禁止
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正解: 相手方が迷惑を覚えるような時間帯・方法による勧誘は禁止
不当勧誘の禁止(宅建業法47条の2):深夜・長時間その他、私生活または業務の平穏を害するような方法により、相手方を困惑させて勧誘する行為は禁止される。単に『深夜だから禁止』という時間だけの一律判断ではない。
基本の問題(まなクエの問題集から)
宅建業者が手付を貸与して契約を締結させる行為について正しいものはどれか。
- 手付の貸与は禁止されていない
- 手付の貸与は許可を受ければできる
- 手付の貸付け、後払い、分割払いなど、手付について信用を供与することにより契約締結を誘引する行為は禁止される
- 買主の資金事情にかかわらず、宅建業者が手付の支払期日を自由に延期して契約を誘引してよい
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正解: 手付の貸付け、後払い、分割払いなど、手付について信用を供与することにより契約締結を誘引する行為は禁止される
手付の貸付け等の禁止(宅建業法47条の2):手付の貸付け、立替え、後払い、分割受領など、手付について信用を供与することにより契約締結を誘引する行為は禁止される。単なる『分割払いの禁止』ではなく、信用供与による契約誘引を広く禁止する規定である。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
宅建業者Aが一般消費者Bに新築住宅の購入を勧誘している。Aの行為のうち、宅建業法上の禁止行為に当たらないものはどれか。
- Bが手付金を用意できないため、Aが手付金を立て替えて契約を勧める。
- Bが購入しない意思を明確に示した後も、Aが繰り返し電話で勧誘する。
- Aが当初予定していた手付金の額を減額し、その額をBが契約時に一括で支払う条件で契約を勧める。
- Aが将来必ず値上がりすると断定して契約を勧める。
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正解: Aが当初予定していた手付金の額を減額し、その額をBが契約時に一括で支払う条件で契約を勧める。
手付額を単に減額すること自体は、手付の貸付け・立替え・後払い・分割払いなどの信用供与ではありません。立替え、拒絶後の再勧誘、利益が確実と誤認させる断定的判断はそれぞれ禁止されます。
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読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方