宅建士 参考書|第1章 宅建業法

自ら売主の8種制限

8種制限がかかる取引を先に判定する

8種制限は、宅建業者が自ら売主となり、買主が宅建業者ではない宅地・建物の売買に適用されます。買主も宅建業者である業者間取引では適用されません。賃貸借にも使いません。

対象となる主な規制は、自己の所有に属しない物件の売買、クーリング・オフ、損害賠償額の予定等、手付、契約不適合責任の特約、手付金等の保全、割賦販売の解除等、所有権留保等です。

業者間取引で8種制限が外れても、37条書面など別の規定まで当然に不要になるわけではありません。

8種制限は「業者が自ら売主・買主は非業者」の売買に適用します。

他人の物は取得できる根拠があるかを見る

宅建業者は、原則として自己の所有に属しない宅地・建物について、自ら売主となる売買契約を締結できません。

ただし、売主となる宅建業者がその物件を取得する契約を締結しているなど、取得できることが法的に確保されている場合は例外です。取得契約そのものが停止条件付きで、取得できるかまだ確定していない場合は、この例外として扱いません。

工事完了前の物件について所定の手付金等の保全措置を講じる場合にも例外があります。なお、未完成物件は必要な開発許可・建築確認などの処分を受ける前には売買契約を締結できません。

他人物売買は原則禁止。取得契約済みなど、取得できる根拠があるかで判断します。

損害賠償額と手付はどちらも20%が基準

損害賠償額の予定と違約金を定めるときは、合計で代金の20%以下です。20%を超える特約は契約全体が無効になるのではなく、20%を超える部分が無効です。

あらかじめ損害賠償額を予定していない場合、実際に生じた損害の賠償まで20%に制限されるわけではありません。

買主から受け取る手付も代金の20%を超えることはできません。受領した手付は、その名称にかかわらず解約手付として扱われ、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を現実に提供して解除できます。買主に不利な特約は無効です。

手付を貸し付けたり、立て替えたり、後払い・分割払いにして信用を供与し、契約締結を誘引する行為は禁止されます。

予定損害賠償額+違約金は20%、手付額も20%。ただし別々の規制です。

手付金等の保全は未完成5%・完成10%を分ける

手付額が20%以下でも、一定額を超える手付金等を受け取るには、受領前に保全措置が必要です。

物件保全不要となる範囲主な保全方法
未完成物件代金の5%以下かつ1,000万円以下銀行等の保証、保証保険
完成物件代金の10%以下かつ1,000万円以下銀行等の保証、保証保険、指定保管機関による保管

保全不要の範囲を超えるなら、受け取る前に保全します。未完成物件で保全が必要なのに措置がないとき、買主は手付金等の支払いを拒むことができます。

「20%」は手付額そのものの上限、「5%・10%と1,000万円」は保全が必要かを決める基準です。

未完成は5%・完成は10%、どちらも1,000万円以下なら保全不要です。

契約不適合責任は買主に不利な特約を作れない

宅建業者が自ら売主となる場合、目的物の種類または品質が契約内容に適合しないときの売主責任について、民法より買主に不利な特約は原則として無効です。

例外として、買主が契約不適合を通知できる期間を引渡しの日から2年以上とする特約は認められます。したがって「引渡しから1年以内だけ責任を負う」は無効ですが、「引渡しから2年間」とする特約は認められます。

解除を一律に認めない、売主に責任がある場合だけ責任を負う、全部免責するといった買主に不利な特約も、この規制に反する範囲で無効です。

種類・品質の契約不適合は民法より不利にできず、期間特約は引渡しから2年以上です。

割賦販売は30日催告と30%の登記基準で判断する

割賦販売で買主が賦払金の支払いを遅らせても、売主は直ちに契約を解除したり、まだ期限が来ていない残代金を請求したりできません。30日以上の相当な期間を定め、書面で催告し、その期間内に支払いがないことが必要です。

また、引渡し後まで所有権を売主に留保することにも制限があります。引渡しまでに受け取った金額が代金の10分の3以下であれば、原則として10分の3を超える支払いを受けるまで所有権移転登記を遅らせることができます。ただし、買主が残代金を担保する抵当権等を設定する見込みや保証人を立てる見込みがある場合は、所有権を留保する理由にはできません。

割賦金の滞納は30日以上の書面催告、所有権留保は代金30%を基準に見ます。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

自ら売主の規制(宅建業法8種規制)の適用について正しいものはどれか。

  1. 8種規制は賃貸借にも適用される
  2. 宅建業者が売主で相手方が宅建業者の場合でも全規制が適用される
  3. 宅建業者が売主で相手方が一般消費者の場合にのみ一部規制が適用される
  4. 宅建業者が売主で相手方が宅建業者の場合は8種規制が適用されない
答えと解説を見る

正解: 宅建業者が売主で相手方が宅建業者の場合は8種規制が適用されない

8種規制(宅建業法39条等):宅建業者が売主・相手方が宅建業者以外の場合に適用。宅建業者同士は適用除外(宅建業法78条2項)。

基本の問題(まなクエの問題集から)

宅建業者が自ら売主となる場合の手付金の制限について正しいものはどれか。買主は宅建業者ではないものとする。

  1. 宅建業者が自ら売主となる場合、受領できる手付の額は代金の20%を超えることができない
  2. 手付金は代金の30%以内でなければならない
  3. 手付金の額に制限はない
  4. 受領した手付は、その性質を問わず違約手付として扱われる
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正解: 宅建業者が自ら売主となる場合、受領できる手付の額は代金の20%を超えることができない

手付金の制限(宅建業法39条):宅建業者が自ら売主となる場合、買主が宅建業者でないときは、代金の20%を超える手付を受領できない。また、受領した手付は、その性質を問わず解約手付として扱われる。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者ではないBに完成済みの建物を3,000万円で売却する。次のうち宅地建物取引業法に違反しないものはどれか。

  1. 手付として700万円を受領する。
  2. 損害賠償額の予定を450万円、違約金を300万円と定める。
  3. 契約不適合責任について、種類・品質の不適合を通知できる期間を引渡しの日から2年間と定める。
  4. 手付400万円を保全措置なしで受領する。
答えと解説を見る

正解: 契約不適合責任について、種類・品質の不適合を通知できる期間を引渡しの日から2年間と定める。

種類・品質の契約不適合について、通知期間を引渡しから2年以上とする特約は認められます。手付700万円は代金の20%を超え、損害賠償額の予定等750万円も20%を超えます。完成物件で手付400万円は代金の10%を超えるため保全が必要です。

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出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方