宅建士 参考書|第1章 宅建業法

クーリング・オフ

最初に自ら売主・買主・申込み場所の3点を見る

宅建業法のクーリング・オフは、宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買で、宅建業者ではない買主が事務所等以外の場所で買受けの申込みをした場合に問題になります。

買主自身も宅建業者である業者間取引には、この規定は適用されません。

場所を判断するときに見るのは、原則として売買契約を締結した場所ではなく買受けの申込みをした場所です。事務所等で申込みをした後に喫茶店で契約してもクーリング・オフはできません。

  1. 売主は宅建業者自身か
  2. 買主は宅建業者ではないか
  3. 買受けの申込みをした場所は事務所等以外か

場所の判定は契約場所より先に「買受けの申込みをした場所」を見ます。

事務所等になる場所を具体的に分ける

次のように、クーリング・オフができなくなる「事務所等」と、それ以外を分けます。

申込み場所事務所等か
売主である宅建業者の事務所当たる
売主から売却の代理・媒介を依頼された宅建業者の事務所当たる
継続的に業務を行う施設で宅建士を置くべき場所当たる
土地に定着する建物内の分譲案内所等で宅建士を置くべき場所当たる
テント張りの案内所当たらない
喫茶店・ホテルのロビー・融資先の銀行原則として当たらない
買主が自ら申し出た自宅・勤務先当たる
売主側の申出で訪問した買主の自宅・勤務先当たらない

買主が場所を指定しただけで、どこでも事務所等になるわけではありません。買主の申出によって事務所等になるのは買主の自宅または勤務先です。

買主の自宅・勤務先は、買主自身がそこで説明を受けることを申し出たときに事務所等になります。

8日は書面で告げられた日から数える

事務所等以外で申込みをしていても、売主からクーリング・オフできる旨とその方法を書面で告げられた日から起算して8日を経過すると、原則として行使できなくなります。

この告知は、買主の氏名・住所、売主業者の商号・住所・免許証番号、撤回等の方法と効果などを記載した書面を交付して行います。口頭だけの告知では8日の期間は進みません。

契約日や申込日の翌日から8日ではありません。たとえば10月1日に適法な書面で告げられたなら、10月1日が1日目で、10月8日までに発信すれば期間内です。

適法な書面による告知がなければ、この8日の期間は進みません。ただし、後に説明する「引渡しを受け、かつ代金全額を支払った」という別の終了事由はあります。

買主に有利な特約は有効なので、法定の8日より長い14日間を認める特約は有効です。反対に「8日以内に売主へ到達しなければならない」など買主に不利な特約は無効です。

8日は、クーリング・オフできる旨と方法を書面で告げられた日を1日目として数えます。

引渡しと代金全額支払いの両方が終わると使えない

8日を経過していなくても、買主が宅地・建物の引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったときはクーリング・オフできません。

二つの条件は「かつ」です。引渡しだけが済んで代金の一部が残っている場合や、代金全額を支払ったがまだ引渡しを受けていない場合は、この理由だけでクーリング・オフが消えることはありません。

また、通常の手付解除と違い、売主が契約の履行に着手したこと自体は、クーリング・オフを妨げる要件ではありません。場所・8日・引渡しと全額支払いの要件で判断します。

使えなくなるのは「引渡し済み+代金全額支払済み」が両方そろったときです。

書面を発した時に解除の効力が生じる

クーリング・オフによる申込みの撤回または契約解除は書面で行い、その書面を発した時に効力が生じます。売主に到達した時ではありません。

そのため、8日目に書面を発送し、売主への到達が9日目になった場合でも、ほかの要件を満たしていれば期間内の行使になります。「8日以内に到着すること」を求める特約は買主に不利なので無効です。

適法にクーリング・オフされた場合、宅建業者は損害賠償や違約金を請求できません。また、受け取っていた手付金その他の金銭を速やかに返還しなければなりません。

買主があらかじめクーリング・オフを放棄する合意をしても、買主に不利な特約として効力は認められません。

クーリング・オフは書面を発した時に効力が生じ、違約金は取れず、受領金は速やかに返還します。

事例ではこの順番で判断する

複数の条件が組み合わされた問題では、次の順に確認すると結論を出しやすくなります。

  1. 宅建業者が自ら売主か
  2. 買主が宅建業者ではないか
  3. 買受けの申込み場所が事務所等以外か
  4. 適法な書面告知から8日を経過していないか
  5. 引渡しと代金全額支払いの両方が完了していないか
  6. 撤回・解除を書面で発したか

事務所等で申込みをしていれば、書面告知を受けていないことを理由にクーリング・オフできるようにはなりません。最初の場所判定で対象外だからです。

自ら売主→買主属性→申込み場所→8日→引渡しと全額支払い→書面発信の順で判断します。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

宅建業者が自ら売主となる場合のクーリングオフについて正しいものはどれか。買主は宅建業者ではないものとする。

  1. 物件の引渡しを受け、かつ代金全額を支払った後でもクーリングオフできる
  2. 事務所等(宅建業法施行規則に定める場所)で申込みをした場合はクーリングオフできない
  3. いかなる場所で申込みをしても一定期間内はクーリングオフできる
  4. クーリングオフは口頭で通知すれば足りる
答えと解説を見る

正解: 事務所等(宅建業法施行規則に定める場所)で申込みをした場合はクーリングオフできない

クーリングオフ(宅建業法37条の2):事務所・専任宅建士設置の場所・買主が自ら申し出た場合の自宅・勤務先以外での申込み→書面でクーリングオフ可。物件の引渡しを受けただけでは終了せず、「引渡しを受け、かつ代金全額を支払った」ときにクーリングオフできなくなる。

基本の問題(まなクエの問題集から)

クーリングオフの告知と行使期間について正しいものはどれか。

  1. クーリングオフは物件引渡しまで行使可
  2. クーリングオフの告知は口頭でよく、告知後7日間行使可
  3. クーリングオフの告知がなければ期間制限なく行使可
  4. クーリングオフの告知を受けた日から8日間行使可
答えと解説を見る

正解: クーリングオフの告知を受けた日から8日間行使可

クーリングオフ(宅建業法37条の2):書面で告知を受けた日から8日間。告知がない場合はいつでも行使可(物件引渡し・代金全額支払いまで)。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者ではないBに建物を販売した。Bは喫茶店で買受けの申込みをし、その日にAからクーリング・オフできる旨と方法を適法な書面で告げられた。Bはまだ建物の引渡しを受けておらず、告知を受けた日を1日目として8日目に解除の書面を発送し、Aには9日目に到達した。この場合の結論として正しいものはどれか。

  1. 解除書面が8日以内にAへ到達していないため解除できない
  2. Bは8日目に解除書面を発しているため、ほかの要件を満たす限りクーリング・オフできる
  3. Aが契約の履行に着手していれば、8日以内でも必ずクーリング・オフできない
  4. Bが代金を全額支払っていれば、引渡し前でも必ずクーリング・オフできない
答えと解説を見る

正解: Bは8日目に解除書面を発しているため、ほかの要件を満たす限りクーリング・オフできる

クーリング・オフは書面を発した時に効力が生じるため、8日目の発送で足ります。代金全額の支払いだけでは足りず、引渡しも受けた場合に適用除外となります。

この内容を問題で確かめる

読んだところを、問題で思い出してみましょう。

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出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方