宅建士 参考書|第1章 宅建業法
監督処分と罰則
宅建業者の処分は誰が何をできるかで分ける
宅建業者への主な監督処分は、指示処分、業務停止処分、免許取消処分です。
| 処分 | 内容 | 処分できる者 |
|---|---|---|
| 指示 | 違反の是正などを命じる | 免許権者、または違反した業務地の都道府県知事 |
| 業務停止 | 1年以内で業務の全部または一部を停止 | 免許権者、または違反した業務地の都道府県知事 |
| 免許取消し | 宅建業の免許を取り消す | 免許権者 |
したがって、国土交通大臣免許や他県知事免許の業者でも、ある県内で違反すれば、その県知事が指示・業務停止をすることがあります。ただし、他の行政庁が与えた免許をその県知事が取り消すことはできません。
業務地の知事も指示・業務停止はできますが、免許取消しは免許権者です。
免許取消しは必要的取消しと条件違反を区別する
免許権者は、一定の欠格事由に該当した、不正の手段で免許を受けた、業務停止事由の情状が特に重い、業務停止処分に違反したなど、法律が定める事由に当たるときは免許を取り消さなければなりません。
また、免許後1年以内に事業を開始しない、または引き続き1年以上事業を休止した場合も取消事由です。
一方、免許に付された条件に違反した場合は、直ちに必要的取消しになるのではなく、免許権者が免許を取り消すことができる場合です。
事務所の所在地や業者の所在を確知できない場合は、免許権者が官報または都道府県公報で公告し、公告の日から30日を経過しても申出がないときに免許を取り消すことができます。
不正免許・重い違反・業務停止違反などは必要的取消し。所在不明は公告後30日が基準です。
宅建士は指示・事務禁止・登録消除で整理する
宅建士への主な監督処分は、指示、事務禁止、登録消除です。宅建業者の「業務停止」と、宅建士の「事務禁止」を混同しないようにします。
| 処分 | 内容 |
|---|---|
| 指示 | 宅建士として必要な指示を受ける |
| 事務禁止 | 1年以内、宅建士として行うべき事務を禁止される |
| 登録消除 | 資格登録が消除される |
登録をしている都道府県知事は指示・事務禁止を行えます。また、違反行為があった都道府県の知事も、その宅建士が他県登録であっても指示・事務禁止を行うことがあり、その場合は登録地の知事へ通知します。登録消除は登録をしている都道府県知事が行います。
国土交通大臣が宅建業法71条に基づいて行う指導・助言・勧告の対象は宅建業者であり、同条を根拠にすべての宅建士へ行う制度ではありません。
業者は業務停止、宅建士は事務禁止。登録消除は登録地の知事が行います。
聴聞と公告は処分の種類ごとに結論を出す
指示処分や業務停止処分などの監督処分では、処分前に聴聞が行われます。宅建業法の聴聞の特例では、対象となる監督処分に係る聴聞は公開で行われます。
処分後の公告は、すべての監督処分に付くわけではありません。業務停止処分と免許取消処分は公告の対象ですが、指示処分は公告の対象ではありません。
所在不明を理由に公告後30日で行う免許取消しは、通常の所在が判明している業者に対する監督処分とは手続が異なります。
指示には公告なし。業務停止・免許取消しは公告ありと分けます。
報告拒否・立入検査拒否は50万円以下の罰金
国土交通大臣または都道府県知事は、宅建業者に報告や資料提出を求め、必要に応じて事務所などへ立入検査をすることができます。
報告をしない、虚偽の報告をする、資料を提出しない、虚偽資料を提出する、立入検査を拒む・妨げる・忌避するといった行為は、50万円以下の罰金の対象です。
従業者名簿を備えない、必要事項を記載しない、虚偽記載をする行為も50万円以下の罰金の対象です。従業者がした虚偽記載だから業者に罰則がない、とは判断しません。
報告拒否・虚偽報告・立入検査拒否は50万円以下の罰金です。
刑罰は監督処分とは別に違反ごとの条文で判断する
監督処分は行政上の処分、罰則は刑事上の制裁で、別の制度です。同じ違反について両方が問題になることがあります。
| 主な違反 | 罰則 |
|---|---|
| 不正の手段による免許取得、無免許営業、名義貸しで他人に営業させる、業務停止命令違反 | 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 |
| 重要事項について故意に事実を告げない、または不実のことを告げる | 2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 |
| 不当に高額な報酬を要求する | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科 |
| 誇大広告、不当な履行遅延、手付の信用供与による契約誘引など | 6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科 |
| 報酬の限度額を超えて受領する、名義貸しで他人に表示・広告させるなど | 100万円以下の罰金 |
| 37条書面の不交付、報酬額の掲示義務違反、従業者名簿・帳簿の不備、報告拒否・立入検査拒否など | 50万円以下の罰金 |
「不当に高額な報酬を要求する」(1年以下の拘禁刑等)と、「限度額を超えて受領する」(100万円以下の罰金)は罰則が違います。
35条の重要事項説明をしなかったこと自体には、この表の37条書面不交付と同じ50万円以下の罰金規定はありません。これに対し、37条書面を交付しない行為は罰則の対象です。
監督処分と罰則は別制度。37条書面不交付や報告・検査拒否は50万円以下の罰金です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
宅建業者に対する監督処分として正しいものはどれか。
- 業者の所在地を管轄する都道府県知事は大臣免許業者に対しても指示・業務停止処分ができる
- 免許権者のみが監督処分できる
- 業務停止処分の期間は最長3年間である
- 監督処分に不服があっても審査請求はできない
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正解: 業者の所在地を管轄する都道府県知事は大臣免許業者に対しても指示・業務停止処分ができる
監督処分(宅建業法65条・70条):所在地管轄知事も指示・業務停止処分可。業務停止は1年以内。免許取消は免許権者のみ。
基本の問題(まなクエの問題集から)
37条書面の不交付について正しいものはどれか。
- 37条書面を交付しなくても契約自体は有効
- 37条書面の不交付は行政処分の対象となるが刑事罰はない
- 37条書面を交付しないと契約は無効
- 37条書面の不交付は業務停止処分のみの対象
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正解: 37条書面を交付しなくても契約自体は有効
37条書面不交付(宅建業法37条):契約自体は有効だが、宅建業法違反として監督処分・罰則の対象。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
甲県知事免許の宅建業者Aが乙県内の取引で宅建業法違反をし、乙県知事が監督処分を検討している。次のうち正しいものはどれか。
- 乙県知事はAの免許を取り消すことができる。
- 乙県知事は、要件を満たせばAに指示処分または業務停止処分をすることができる。
- 業務停止処分の期間は最長3年である。
- 指示処分をしたときは、その処分を公告しなければならない。
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正解: 乙県知事は、要件を満たせばAに指示処分または業務停止処分をすることができる。
違反行為があった都道府県の知事は、他の行政庁の免許を受けた業者にも指示・業務停止をすることがあります。免許取消しは免許権者が行い、業務停止は1年以内、指示処分は公告の対象ではありません。
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読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方