宅建士 参考書|第1章 宅建業法
総合問題と関係法令(業者間取引・犯罪収益移転防止法)
業者間でも残る規制
宅建業者が自ら売主となり、買主も宅建業者である取引では、一般消費者を保護するための一部の規制が適用されません。しかし、宅建業法そのものが適用されなくなるわけではありません。
宅建業者相互間では、宅建業法33条の2と37条の2から43条までの規定が適用除外になります。そのため、クーリング・オフ、手付額等の制限、損害賠償額の予定等の制限、契約不適合責任についての特約の制限、手付金等の保全措置などは、業者間取引では原則として適用されません。
一方、35条・37条や、36条の契約締結時期の制限は残ります。したがって、開発許可・建築確認など必要な許可等を受ける前に未完成物件の売買契約を締結してよい、ということにはなりません。また、業者間だから37条書面を交付しなくてよいという判断も誤りです。
相手方が宅建業者である場合、35条の重要事項は宅建士による説明が不要になります(35条6項)。ただし、重要事項を記載した書面の交付(または電磁的方法による提供)は必要です。供託所等に関する説明については、相手方が宅建業者なら不要です。
業者間では33条の2・37条の2~43条が外れますが、35条・36条・37条などは残ります。
総合問題で混ぜられる義務
横断問題では、事務所ごとの義務や媒介業者の義務が別制度と混ぜて問われます。帳簿は各事務所に備え、各事業年度末に閉鎖し、原則として閉鎖後5年間保存します。自ら売主となる新築住宅に係る帳簿は10年間です。
従業者名簿も事務所ごとに備え、最終の記載をした日から10年間保存します。「5年間」は帳簿の原則的な保存期間との取り違えです。
売買・交換の媒介業者が購入申込みを受けた場合、その申込みについて遅滞なく依頼者へ報告しなければなりません。この報告義務をしない旨の特約で免れることはできません。
また、勧誘をする際には、相手方に宅建業者の商号・名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘目的であることを告げずに勧誘することは認められません。
帳簿は各事務所・原則5年、従業者名簿は10年、購入申込みは依頼者へ遅滞なく報告します。
電磁的方法で代えられる書面
宅建業法では、すべての「書面」が電子化できるわけではありません。法律に電磁的方法による提供を認める規定があるものだけを区別します。
| 書面・行為 | 電磁的方法で代替 | 主な条件 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 媒介契約書面 | できる | 依頼者に方法等を示し、あらかじめ承諾を得る | 34条の2第11項 |
| 重要事項説明書 | できる | 相手方等に方法等を示し、あらかじめ承諾を得る | 35条8項 |
| 37条書面 | できる | 交付を受ける者に方法等を示し、あらかじめ承諾を得る | 37条4項 |
| 未完成物件の手付金等保全で交付する保証関係の書面 | できる | 買主に方法等を示し、あらかじめ承諾を得る | 41条5項 |
| 完成物件の手付金等保全で交付する寄託・質権設定関係の書面 | できる | 買主に方法等を示し、あらかじめ承諾を得る | 41条の2第6項 |
| クーリング・オフについて告知する書面 | できない | 37条の2の書面による告知として扱う | 37条の2第1項 |
| 宅建士証の提示 | できない | 重要事項説明の際に宅建士証を提示する義務自体を電子書面の提供で代替しない | 35条4項 |
電子化できる書面でも、宅建業者が一方的に電子ファイルへ変更できるわけではありません。相手方等の事前の承諾が基本です。また、電磁的方法による重要事項説明書の提供と、宅建士が重要事項を説明する義務は別に判定します。
34条の2・35条・37条や一定の保全書面は承諾を得て電子化できますが、すべての書面や提示行為が電子化できるわけではありません。
犯収法は不動産売買が対象
宅建業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律の特定事業者です。宅建業者について中心となる対象は、宅地・建物の売買契約の締結、または売買の代理・媒介です。
| 宅建業者の取引 | 宅建業者についての対象 |
|---|---|
| 宅地・建物の売買 | 対象 |
| 売買の代理・媒介 | 対象 |
| 宅地・建物の賃貸、賃貸の代理・媒介 | 対象外 |
対象となる取引では取引時確認を行います。自然人については、氏名・住居・生年月日の本人特定事項に加え、取引を行う目的と職業を確認します。法人については、名称・本店または主たる事務所の所在地、取引目的、事業内容、実質的支配者などを確認し、実際に取引を行う代表者等についても必要な本人確認を行います。
これは宅建業法35条の重要事項説明とは別制度です。物件の権利関係を説明する制度ではなく、取引相手や取引目的等を確認して犯罪収益の移転を防ぐ制度です。
宅建業者の犯収法では売買・売買の代理媒介が中心で、自然人は氏名・住居・生年月日・目的・職業を確認します。
記録の7年は起算点に注意
取引時確認を行った場合は確認記録を作成し、法定の期間保存します。取引記録とは別の記録です。
| 記録 | 主な内容 | 保存 |
|---|---|---|
| 確認記録 | 本人特定事項、確認方法など | 特定取引等に係る契約が終了した日など法定の起算日から7年 |
| 取引記録 | 取引日、種類、財産の価額、確認記録を検索するための事項など | 取引を行った日から7年 |
したがって、「確認記録も取引の日から7年間保存する」と一括して覚えると誤ります。どちらも7年でも、起算点は同じではありません。
確認記録と取引記録はともに7年保存ですが、確認記録を単純に「取引日から7年」としません。
疑わしい取引は速やかに届出
対象業務について、収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるなど、疑わしい取引に該当すると認めた場合、宅建業者は速やかに所管行政庁へ届け出ます。
宅建業者やその役員・従業者は、疑わしい取引の届出をしようとしていること、または届出をしたことを、その顧客や関係者に漏らしてはいけません。
さらに、取引時確認等を的確に行うため、確認事項を最新の内容に保つ措置を講じます。使用人への教育訓練、社内規程の作成、統括管理者の選任などについては講ずるよう努めることとされています。
疑わしい取引は速やかに届け出て顧客へ知らせず、教育訓練等は取引時確認を的確に行うための措置です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
宅建業者が自ら売主となる場合、買主が宅建業者の場合に適用されないルールとして正しいものはどれか。
- 手付金額の制限(20%超禁止)
- 相手方が宅建業者である場合、35条書面の交付も不要となる
- 37条書面の交付
- 媒介契約の書面交付
答えと解説を見る
正解: 手付金額の制限(20%超禁止)
業者間取引(宅建業法78条2項):宅建業者同士の取引では、手付金の制限・手付金等の保全措置・クーリングオフ等の8種規制は原則として適用除外となる。相手方が宅建業者である場合、重要事項説明(口頭説明)は不要となるが、35条書面の交付義務そのものはなくならない。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
宅建業者Aが宅建業者Bに建物を売却する取引について、正しいものはどれか。
- Bも宅建業者なので、必要な建築確認を受ける前でも未完成建物の売買契約を締結できる
- Bも宅建業者なので、契約成立後の37条書面を提供する必要はない
- Bも宅建業者であっても、必要な許可等を受ける前の契約締結時期の制限は適用される
- Bも宅建業者なので、宅建業法35条から43条までの規定はすべて適用されない
答えと解説を見る
正解: Bも宅建業者であっても、必要な許可等を受ける前の契約締結時期の制限は適用される
業者間取引で適用除外となるのは33条の2および37条の2から43条までです。36条の契約締結時期の制限や37条書面の提供義務は残ります。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
宅建業者Aが媒介契約書面を依頼者へ提供する方法について、正しいものはどれか。
- 依頼者の承諾がなくても、宅建業者が希望すれば電子メールだけで提供できる
- 依頼者に使用する電磁的方法等を示し、あらかじめ承諾を得れば、法定の方法による電磁的提供ができる
- 媒介契約書面だけは電磁的方法による提供が一切認められていない
- 電磁的方法で提供する場合は、37条書面も必ず同じ方法で提供しなければならない
答えと解説を見る
正解: 依頼者に使用する電磁的方法等を示し、あらかじめ承諾を得れば、法定の方法による電磁的提供ができる
媒介契約書面は、依頼者に用いる方法等を示して事前の承諾を得るなど法定の要件を満たせば、電磁的方法で提供できます。各書面について電子化するかはそれぞれ判定します。
この内容を問題で確かめる
読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」・e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方