宅建士 参考書|第2章 権利関係

制限行為能力者

4種類と意思能力を分ける

行為能力とは、自分だけで有効な法律行為をすることができる能力です。民法は、未成年者、成年被後見人、被保佐人、一定の被補助人を制限行為能力者として保護しています。

区分基本
未成年者18歳未満
成年被後見人事理を弁識する能力を欠く常況
被保佐人事理を弁識する能力が著しく不十分
被補助人事理を弁識する能力が不十分

制限行為能力者の行為は、すべて当然に無効になるわけではありません。同意を欠くなど法律の要件を満たした行為について、本人や保護者側から取り消せるのが基本です。

これとは別に、法律行為をした時点で意思能力そのものを欠いていた場合は、その法律行為は無効です。成年被後見人だから当然無効なのではなく、制限行為能力による取消しと意思能力欠如による無効を分けます。

成年年齢は18歳です。したがって18歳になれば、年齢だけを理由に未成年者として扱われることはありません。

制限行為能力は取消し、意思能力なしは無効と分けます。

未成年者は法定代理人の同意

未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意が必要です。同意を得ずにした行為は、未成年者本人または法定代理人などが取り消すことができます。

ただし、単に権利を得る行為や義務を免れる行為には同意は不要です。たとえば、負担のない贈与を受けるだけなら単に権利を得る行為ですが、義務も負う負担付贈与はこの例外には当然には入りません。

法定代理人が目的を定めて処分を許した財産はその目的の範囲で、目的を定めず処分を許した財産は未成年者が自由に処分できます。

また、法定代理人から一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業については成年者と同一の行為能力を有します。その営業に属する契約については、未成年であることを理由に取り消すことはできません。

未成年者は原則同意が必要ですが、許された営業では成年者と同じ行為能力です。

成年被後見人と成年後見人

成年被後見人がした法律行為は、原則として取り消すことができます。成年後見人が事前に同意していたとしても、成年被後見人本人がした行為を有効に固定することはできません。成年後見人には、成年被後見人の行為についての同意権という仕組みがないからです。

ただし、日用品の購入その他の日常生活に関する行為は取り消せません。

成年後見人は成年被後見人の法定代理人です。成年被後見人がした取消可能な行為について取消権を行使する際、後見監督人がいるというだけで、その同意が必要になるわけではありません。

成年後見人が本人を代理して、本人の居住の用に供する建物またはその敷地を売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権設定その他これらに準ずる処分をするときは、家庭裁判所の許可が必要です。自動車や事業用ビルなど、居住用不動産でない財産についてこの規定による許可が必要になるわけではありません。

成年被後見人は日常生活行為以外を取消可、後見人の居住用不動産処分は家裁許可です。

被保佐人は重要行為に同意

被保佐人は、日常生活に関する行為を除き、民法が定める重要な財産行為について保佐人の同意が必要です。同意を得ずにした対象行為は取り消すことができます。

  • 元本を領収し、または利用すること
  • 借財または保証をすること
  • 不動産その他重要な財産に関する権利を得たり失ったりする行為
  • 訴訟行為
  • 贈与、和解、仲裁合意
  • 相続の承認・放棄、遺産分割
  • 一定の贈与・遺贈に関する行為
  • 新築、改築、増築または大修繕
  • 民法602条の期間を超える賃貸借
  • これらの行為を他の制限行為能力者の法定代理人としてすること

家庭裁判所は、本人などの請求により、日常生活に関する行為を除いて同意を必要とする行為の範囲を追加することもできます。

保佐人は同意権・取消権だけを持つとは限りません。家庭裁判所の審判によって特定の法律行為について代理権を付与することもできます。

保佐は重要行為に同意が必要で、保佐人には特定の代理権も付与できます。

被補助人は指定された行為だけ

被補助人については、補助開始の審判を受けただけで広い範囲の行為が制限されるわけではありません。家庭裁判所が、民法13条1項に掲げる重要行為の一部を特定して同意を必要とする審判をした場合に、その範囲で補助人の同意が必要になります。

必要な同意を得ずにした対象行為は取り消すことができます。また、家庭裁判所は特定の法律行為について補助人に代理権を付与することもできます。

本人以外の者の請求により補助開始の審判や補助人への同意権・代理権の付与をする場合には、本人の同意が必要です。

区分同意の範囲
成年被後見人後見人の同意で本人の行為を確定的に有効にする制度ではない
被保佐人法律で定めた重要行為が基本
被補助人家庭裁判所が特定した重要行為の一部

補助は、家庭裁判所が指定した特定の行為だけが同意の対象です。

取消し・追認・詐術

制限行為能力を理由とする取消しは、制限行為能力者本人、その代理人、承継人または同意をすることができる者が行使できます。相手方が善意無過失であっても、それだけで未成年者などの取消権が失われるわけではありません。

取り消された行為は初めから無効であったものとみなされます。行為をした時に制限行為能力者であった者は、受け取った物や金銭について現に利益を受けている限度で返還します。

追認をすると、その後は取り消せません。原則として、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権があることを知った後に追認する必要があります。未成年者が成年になった後、自分の契約を取消権があると知りながら追認すれば、その後は取り消せません。

追認できる時以後に、取消権者が全部または一部の履行、履行の請求、担保の供与、取得した権利の譲渡などをし、異議をとどめなかった場合は、法定追認となります。成年になる前の未成年者本人の行為を、通常この法定追認の前提となる「追認できる時以後」の行為として扱うことはできません。

制限行為能力者が、自分を行為能力者だと信じさせるため詐術を用いたときは、その法律行為を取り消すことができません。

相手方の善意では取消権は消えず、詐術を使った本人は取消しできません。

催告は相手によって結論が違う

制限行為能力者と契約した相手方は、契約を追認するかどうか確定させるため、一定の者に催告できます。催告では1か月以上の期間を定めます。

催告する相手期間内に確答・通知がないとき
制限行為能力者が行為能力者となった後の本人追認したものとみなす
法定代理人・保佐人・補助人に、その権限内の行為について催告追認したものとみなす
被保佐人または同意権を付与された被補助人本人に、保佐人・補助人の追認を得るよう催告期間内に追認を得た旨の通知がなければ、取り消したものとみなす

特別な方式を必要とする行為について法定代理人などに催告した場合は、期間内に必要な方式を備えた旨の通知がなければ取り消したものとみなされます。

したがって、「返事がなければいつでも追認扱い」でも「いつでも取消し扱い」でもありません。誰に催告したかで結論を決めます。

催告は1か月以上、無回答の効果は催告した相手で決まります。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

制限行為能力者の相手方が行使できる催告権について、正しいものはどれか。

  1. 相手方は法定代理人に対してのみ催告できる
  2. 未成年者の法定代理人に催告した場合、期間内に確答がなければ取消しとみなされる
  3. 制限行為能力者が行為能力者となった後、相手方は1か月以上の期間を定めて、追認するかどうかを確答するよう催告できる
  4. 催告の相手方は法定代理人・保佐人・補助人に限られ、本人には催告できない
答えと解説を見る

正解: 制限行為能力者が行為能力者となった後、相手方は1か月以上の期間を定めて、追認するかどうかを確答するよう催告できる

催告権(民法20条):①制限行為能力者が行為能力者となった後に本人へ催告した場合、期間内に確答がなければ追認したものとみなす。②法定代理人・保佐人・補助人に催告した場合、その権限内の行為について期間内に確答がなければ追認したものとみなす。③行為能力の制限を受けている被保佐人・一定の被補助人本人に対し、保佐人・補助人の追認を得るよう催告した場合、期間内に追認を得た旨の通知がなければ取り消したものとみなす。催告の相手方によってこれらの効果を混同しない。

基本の問題(まなクエの問題集から)

成年被後見人がした法律行為の取消しについて正しいものはどれか。

  1. 成年被後見人の行為は追認によっても有効とならない
  2. 相手方が成年後見人に通知した場合、成年後見人は2週間以内に確答しなければならない
  3. 成年被後見人が行為能力者となった後でなければ取り消すことができない
  4. 日用品の購入その他の日常生活に関する行為を除き、成年後見人は成年被後見人がした法律行為を取り消すことができる
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正解: 日用品の購入その他の日常生活に関する行為を除き、成年後見人は成年被後見人がした法律行為を取り消すことができる

成年後見人は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、成年被後見人がした法律行為を取り消すことができる。なお追認も可能。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

成年後見人Aが、成年被後見人Bを代理してBの財産を処分しようとしている。家庭裁判所の許可について正しいものはどれか。

  1. Bが日常使用する乗用車を売却するには、居住用財産であるため家庭裁判所の許可が必要である
  2. Bが賃貸事業に使用するだけの事業用ビルに抵当権を設定するには、必ず家庭裁判所の許可が必要である
  3. Bが居住している建物に抵当権を設定するには、家庭裁判所の許可が必要である
  4. 成年後見人には法定代理権があるため、Bの居住用建物を売却する場合にも家庭裁判所の許可は不要である
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正解: Bが居住している建物に抵当権を設定するには、家庭裁判所の許可が必要である

成年後見人が成年被後見人を代理して、その居住用建物または敷地を売却・賃貸・賃貸借解除・抵当権設定などするには家庭裁判所の許可が必要です。単なる自動車や事業用不動産は、この規定の対象ではありません。

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読んだところを、問題で思い出してみましょう。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方