宅建士 参考書|第2章 権利関係
所有権・相隣関係・共有
所有権と自力救済
所有権は、法令の制限内で、物を使用・収益・処分できる権利です。所有権を侵害された所有者は、侵害物の返還や妨害の除去などを求めることができます。
ただし、自分に権利があるからといって、裁判などの法的手続を使わず実力で権利を回復することが当然に許されるわけではありません。例えば、賃料を長期間滞納した賃借人を貸主が勝手に締め出したり、残置物を一方的に搬出したりすることは、原則として許されません。
判例は、法律上の手続によったのでは権利の実現が不可能または著しく困難で、現状を維持するため緊急やむを得ない特別の事情があり、その行為が必要な限度を超えない場合には、例外的に自力救済が許されるとしています。
自力救済は原則不可。緊急やむを得ない特別の場合だけ例外です。
隣地を使える場合
土地の所有者は、一定の目的のため必要な範囲で隣地を使用できます。対象となるのは、境界付近の工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査や境界に関する測量、一定の場合の越境枝の切取りです。
使用の日時・場所・方法は、隣地の所有者や実際の使用者にとって損害が最も少ないものを選びます。また、原則として、あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地所有者と隣地使用者に通知します。事前通知が困難なら、使用開始後遅滞なく通知します。
住家の中への立入りには、その居住者の承諾が必要です。境界を調べるためであっても、住家へ当然に立ち入れるわけではありません。隣地所有者や使用者に損害が生じたときは、償金を請求されることがあります。
隣地は必要な範囲で使えるが、住家への立入りには居住者の承諾が必要です。
公道に出られない土地
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道へ出るため、周囲の土地を通行できます。池・河川・水路・海を通らなければ公道へ出られない場合や、崖などで公道との間に著しい高低差がある場合も同様です。
通行場所と方法を自由に選べるわけではありません。通行する土地への損害が最も少なく、かつ通行権者に必要な場所・方法を選びます。自動車による通行も当然に認められるのではなく、この基準に照らして判断されます。
原則として通行地の損害に対する償金が必要です。一方、土地の分割や一部譲渡によって公道に通じない土地が生じた場合は、他の分割者の土地だけを通行でき、この通行について償金は不要です。
この通行権は土地の状態に基づく法定の権利です。これとは別に締結した通路の賃貸借契約上の権利が、土地の売却だけで当然に買主へ移るわけではありません。また、公道に通じない土地を時効取得したからという理由だけで、法定の通行権が否定されるわけでもありません。
袋地の通行は必要かつ損害最小。分割で生じた袋地は分割地を無償通行します。
境界・水・竹木
境界標の設置・保存費用は、相隣者が等しい割合で負担します。ただし測量費用は、土地の広さに応じて分担します。境界線上の境界標・囲障・障壁・溝・堀は、原則として相隣者の共有と推定されます。
二棟の建物の所有者が異なり、その間に空地がある場合、各所有者は共同費用で境界に囲障を設けることができます。共有の障壁は、相隣者の一人が他方の承諾なしでも高さを増すことができますが、増加費用などは工事をした者が負担し、高くした部分はその者の単独所有となります。
高い土地から低い土地へ自然に流れてくる水を、低地の所有者は妨げてはいけません。一方、土地所有者は、屋根などを雨水が直接隣地へ注ぐ構造にしてはいけません。
隣地の竹木の根が境界を越えた場合は、自分で切り取れます。枝はまず竹木の所有者に切除させるのが原則ですが、①催告後も相当期間内に切らない、②所有者または所在が分からない、③急迫の事情がある、のいずれかなら越境された土地所有者が自ら切り取れます。
根は自分で切れる。枝は原則相手に切らせ、3つの例外で自分でも切れます。
持分放棄と共有物分割
共有者が持分を放棄したとき、その持分は他の共有者に帰属します。また、共有者が死亡して相続人がいない場合も、原則としてその持分は他の共有者に帰属します。死亡した共有者の持分が直ちに国庫へ帰属するわけではありません。
各共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求できます。ただし、共有者間で5年を超えない期間、分割しない契約をすることができます。この契約は更新できますが、更新後も1回の期間は5年を超えられません。
協議がまとまらない、または協議できないときは裁判所へ共有物分割を請求できます。裁判所は現物分割や、ある共有者に他の共有者の持分を取得させる方法を用い、それらができない場合や著しく価値が下がる場合には競売を命じることができます。
所在や氏名を知ることができない共有者がいる不動産では、裁判所の手続により、その所在等不明共有者の持分を他の共有者に取得させる制度があります。取得した共有者には時価相当額の支払義務が生じます。対象持分が遺産で共同相続人間の遺産分割を要する場合、原則として相続開始から10年を経過するまではこの制度を利用できません。
遺産共有については通常の共有物分割と区別します。共同相続人間で遺産分割をすべき財産は原則として遺産分割によりますが、一定の場合には相続開始から10年経過後、通常の共有物分割を利用できる仕組みがあります。
共有物は原則いつでも分割請求可。不分割特約は1回5年以内です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
境界と隣地使用について正しいものはどれか。
- 隣地の竹木の枝が境界を越えてきた場合、直ちに自分で切ることができる
- 土地所有者は隣地の竹木の根が境界を越えてきた場合に切り取ることができる
- 隣地の竹木の枝が境界線を越えても、その竹木の所有者に枝の切除を求めることはできない
- 土地の境界は隣地所有者の同意なく確認できない
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正解: 土地所有者は隣地の竹木の根が境界を越えてきた場合に切り取ることができる
境界を越えた竹木の根・枝(民法233条、2023年4月施行改正後):根は、境界線を越えてきた場合、土地所有者が自ら切り取ることができる。枝は、原則として竹木の所有者に切除させる。ただし、①竹木の所有者に切除を催告したが相当の期間内に切除されないとき、②竹木の所有者またはその所在を知ることができないとき、③急迫の事情があるとき、には、越境された土地所有者が自ら枝を切り取ることができる。『枝は絶対に自分で切れない』という旧制度の説明は現行法に合わない。
基本の問題(まなクエの問題集から)
共有物の使用について正しいものはどれか。
- 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
- 各共有者は共有物の全部を単独で使用することはできない
- 共有物の使用には全員の同意が必要である
- 各共有者は持分割合に応じた部分しか使用できない
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正解: 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる(民法249条1項)。持分割合にかかわらず自由に全部を使用できるわけではない。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
A・B・Cが持分各3分の1で建物を共有している。AとBは、この建物を第三者Dに2年間賃貸することに賛成したが、Cは反対している。この場合の説明として正しいものはどれか。
- 共有物の賃貸は常に重大な変更に当たるため、Cの同意がなければできない
- 建物について3年を超えない賃借権等の設定は管理行為として扱うことができ、AとBの持分価格が過半数なので決定できる
- 賃貸は保存行為なので、Aだけでも決定できる
- 共有物について賃借権を設定できるのは裁判所だけである
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正解: 建物について3年を超えない賃借権等の設定は管理行為として扱うことができ、AとBの持分価格が過半数なので決定できる
建物について3年を超えない賃借権等の設定は、共有物の管理として持分価格の過半数で決められます。AとBで3分の2を有するため決定できます。
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宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方