宅建士 参考書|第2章 権利関係

遺産分割・遺言・遺留分

相続開始と遺産共有

相続人が複数いるとき、相続財産は遺産分割まで共同相続人の共有となり、各共同相続人は原則として相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。配偶者と子が相続人なら配偶者と子全体の法定相続分は各2分の1であり、子が複数いれば子の2分の1を子同士で分けます。配偶者と子一人が常に同じ割合になる、子同士と配偶者との割合が常に同じになる、という意味ではありません。

遺産分割が終わる前に共同相続人の一人が死亡した場合、その地位はその死亡した相続人の相続人へ承継されます。承継する者は子に限られず、その人の配偶者なども相続人となり得ます。

共同相続した権利のうち、法定相続分を超える部分を第三者に対抗するには、登記などの対抗要件が必要です。一方、法定相続分の範囲で承継した部分については、この制限とは区別して考えます。

共同相続人が被相続人の連帯債務を承継するときは、各相続人は相続分に応じて分割された額を承継し、その額について債権者との関係では連帯債務者として責任を負います。

遺産分割までは遺産共有。各相続人は原則として相続分に応じて権利義務を承継します。

遺産分割の方法と効力

共同相続人は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合を除き、協議によって遺産の全部または一部を分割できます。協議がまとまらない、または協議できないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求できます。

被相続人は遺言で、遺産分割の方法を指定したり、第三者に指定を委託したりできます。また、相続開始から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止できます。

成立した遺産分割協議は、相続人全員の合意によって合意解除し、改めて分割することができます。

遺産分割は原則として相続開始時にさかのぼって効力を生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません。したがって「分割協議が成立した時から初めて所有権を取得する」とする説明は誤りです。

遺産分割は原則として相続開始時へ遡及。ただし第三者の権利は害せません。

預金と相続後の賃料

預貯金債権は、現在は遺産分割の対象となるため、相続開始と同時に各相続人へ当然に完全分割されるものとして扱いません。ただし、遺産分割前でも、各共同相続人は法定の範囲で単独払戻しを受けられる制度があります。

これに対し、相続開始後から遺産分割までに賃貸不動産から発生した賃料債権は別に考えます。判例は、各共同相続人がその相続分に応じて確定的に取得し、後の遺産分割の影響を受けないとしています。

例えば、相続開始後6か月間に生じた賃料について、後の遺産分割で一人がその賃貸不動産を取得しても、その一人が相続開始時にさかのぼって6か月分の賃料全部を当然に取得するわけではありません。遺産分割後に発生する賃料は、その時点の不動産所有者に帰属します。

分割前の賃料は各相続人が相続分で確定取得し、後の遺産分割では変わりません。

遺言の方式

遺言は法律で定められた方式によって行います。15歳に達した者は遺言をすることができます。

自筆証書遺言では、原則として遺言者が遺言本文・日付・氏名を自書し、押印します。ただし、添付する財産目録は自書しなくてもよく、パソコンで作成した目録などを利用できます。その場合は、財産目録の各頁に遺言者の署名・押印が必要です。

公正証書遺言では証人2人以上が必要です。未成年者、推定相続人、受遺者、これらの配偶者・直系血族などは証人になれません。

特別な方式として、船舶が遭難し、その船舶内で死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立会いで口頭により遺言をすることができます。

遺贈を受ける者に対して、利害関係人などが相当期間を定めて承認するか放棄するかを催告した場合、期間内に回答がなければ遺贈を承認したものとみなされます。放棄したものとは扱いません。

自筆証書遺言でも財産目録は自書不要。無回答の受遺者は承認したものとみなします。

遺留分と侵害額請求

遺留分は、一定の相続人に確保された最低限の取り分です。遺留分を持つのは兄弟姉妹以外の相続人であり、兄弟姉妹には遺留分がありません。

相続人の構成遺産全体に対する総体的遺留分
直系尊属だけ3分の1
それ以外2分の1

各相続人の具体的な遺留分は、この総体的遺留分に各自の法定相続分を掛けて求めます。

遺留分が侵害されても、贈与や遺贈そのものが当然に無効になるわけではありません。遺留分権利者は、受遺者や受贈者に対して侵害額に相当する金銭の支払を請求します。

遺留分侵害額請求権は、相続開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年行使しないと時効で消滅し、相続開始から10年を経過した場合も行使できなくなります。

相続開始前に遺留分を放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。遺留分を放棄しても相続人でなくなるわけではありません。また、一人の遺留分放棄によって他の共同相続人の遺留分が増えるわけでもありません。相続放棄そのものは、被相続人の生前にはできません。

兄弟姉妹に遺留分なし。侵害時は物を取り戻すのでなく金銭請求です。

配偶者居住権

配偶者居住権は、被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、遺産分割や遺贈などによって取得し、その建物全部を無償で使用・収益できる権利です。ただし、相続開始時に被相続人がその建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、この制度による配偶者居住権を取得できません。

存続期間は原則として配偶者の終身です。ただし、遺産分割協議・遺言・家庭裁判所の審判で別の期間を定めたときは、その期間になります。例えば20年と定めれば、20年の満了で消滅します。

配偶者居住権は譲渡できません。配偶者が第三者へ建物を賃貸するなど、第三者に使用・収益させるには建物所有者の承諾が必要です。

建物所有者は、配偶者に配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負います。配偶者居住権を建物の取得者など第三者に対抗するには登記が必要で、単に住み続けているだけでは足りません。

居住建物の通常の必要費は配偶者が負担します。配偶者居住権は配偶者本人のための権利なので、その配偶者が死亡すれば相続人へ承継されません。

配偶者居住権は原則終身・譲渡不可・第三者対抗には登記が必要です。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

遺言について正しいものはどれか。

  1. 遺言は撤回することができない
  2. 遺言は常に公正証書によらなければ効力がない
  3. 15歳に達した者は遺言をすることができる
  4. 自筆証書遺言は財産目録も含め全文を本人が自筆しなければならない
答えと解説を見る

正解: 15歳に達した者は遺言をすることができる

自筆証書遺言(民法968条):本文・日付・氏名は原則として自書し、押印が必要である。ただし、添付する財産目録については自書を要しない(パソコン等での作成や、記名押印のある不動産登記事項証明書等の添付でも可)という例外がある。15歳に達した者は遺言をすることができる(民法961条)。

基本の問題(まなクエの問題集から)

遺留分について正しいものはどれか。

  1. 配偶者の遺留分は常に相続財産の4分の1である
  2. 遺留分の割合は、相続人の構成にかかわらず常に相続財産の2分の1である
  3. 兄弟姉妹にも遺留分がある
  4. 直系尊属のみが相続人の場合、遺留分は相続財産の3分の1である
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正解: 直系尊属のみが相続人の場合、遺留分は相続財産の3分の1である

遺留分(民法1042条):相続人が直系尊属のみである場合、総体的遺留分は相続財産の1/3。それ以外の場合(配偶者や子が相続人に含まれる場合等)は1/2。兄弟姉妹に遺留分はない。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

夫Aが死亡し、妻Bは相続開始時からA単独所有の建物に居住していた。遺産分割によりBが期間を定めない配偶者居住権を取得し、長男Cが建物所有権を取得した。この場合の説明として正しいものはどれか。

  1. 配偶者居住権は期間の定めがなければ20年間存続する
  2. BはCの承諾を得なくても建物全体を第三者に賃貸できる
  3. CはBに配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負う
  4. Bが死亡すると配偶者居住権はBの相続人に承継される
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正解: CはBに配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負う

配偶者居住権は原則として配偶者の終身存続し、譲渡できず、第三者に使用・収益させるには所有者の承諾が必要です。建物所有者には設定登記を備えさせる義務があります。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方