登録販売者 参考書|第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識

小児・高齢者・妊婦などへの配慮

年齢区分と小児の体の特徴

年齢区分のおおよその目安は、新生児が生後4週未満、乳児が生後4週以上1歳未満、幼児が1歳以上7歳未満、小児が7歳以上15歳未満です。ただし、一般的に15歳未満を小児とすることもあり、具体的な年齢が明らかなときは「3歳未満の小児」などと表現される場合があります。

小児は、医薬品を受けつける生理機能が未発達です。大人と比べて身体の大きさに対して腸が長いため、服用した医薬品の吸収率が相対的に高くなります。また、血液脳関門が未発達なので、循環血液中に移行した成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすくなります。

小児の特徴医薬品への影響
身体の大きさに対して腸が長い服用した医薬品の吸収率が相対的に高い
血液脳関門が未発達成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響する医薬品で副作用を起こしやすい
肝臓・腎臓の機能が未発達代謝・排泄に時間がかかり、作用が強く出過ぎたり、副作用がより強く出ることがある

小児は「腸が長い・血液脳関門が未発達・肝腎機能が未発達」と押さえます。

小児へ使うときの実務上の判断

成人用医薬品の量を減らして小児へ与えるような使い方は避け、年齢に応じた用法用量が定められたものを使用するよう説明します。医薬品によっては形状などが小児向けでないため、小児には使用しないよう注意を促している場合もあります。

錠剤やカプセル剤は、小児、特に乳児ではそのまま飲み下すことが難しいことがあります。5歳未満の幼児に使用される錠剤やカプセル剤などでは、服用時に喉につかえやすいことへの注意が添付文書に記載されています。喉につかえると、咳き込んで吐き出して苦しみ、その体験から乳幼児が服用を嫌がるようになることがあります。

乳児向けの用法用量が設定されていても、乳児は医薬品の影響を受けやすく状態も急変しやすいため、基本的には医師の診療を優先し、一般用医薬品による対処は夜間など診療を受けにくい場合の最小限にとどめるのが望ましいとされています。

乳幼児は体調の変化を適切に伝えることが難しいため、使用後は保護者等が状態をよく観察します。変わった兆候があれば早めに医療機関を受診させます。大量に飲み込んだ、目に入れたなどの誤飲・誤用では高度な専門的判断が必要となることが多く、関係機関の専門家への相談や医療機関の受診が必要です。

小児には成人量を減らして使わず、年齢に合う用法用量を守ります。

高齢者では作用・嚥下・管理を見る

高齢者のおおよその目安は65歳以上です。一般に生理機能が衰えつつあり、特に肝臓や腎臓の機能が低下していると、医薬品の作用が強く現れやすく、若年時より副作用のリスクが高くなります。

ただし、基礎体力や生理機能の衰えには個人差が大きいため、年齢だけから副作用リスクの増大程度を判断することは困難です。販売時には、実際に使用する高齢者の個々の状況に即して情報提供や相談対応を行います。

高齢者にみられること配慮する理由・対応
肝臓・腎臓の機能低下作用が強く現れやすく、副作用リスクが高くなる
嚥下障害内服薬を喉に詰まらせやすい
副作用による口渇誤嚥を誘発しやすくなる
基礎疾患がある一般用医薬品で症状が悪化したり、治療を妨げることがある
複数の医薬品を長期間使用副作用を生じるリスクが高い
理解に時間がかかる・細かい文字が見えにくい情報提供や相談対応に特段の配慮が必要
手先の衰え・取り違え・飲み忘れ家族や介護関係者等の理解や協力も重要

高齢者は65歳以上が目安ですが、リスクは年齢だけでなく個々の状態で判断します。

妊婦では胎児への影響まで考える

妊婦が体の変調や不調を一般用医薬品で緩和したい場合には、胎児への影響がないよう配慮し、そもそも一般用医薬品で対処することが適切かどうかから慎重に考えます。

胎盤には、胎児の血液と母体の血液が混ざらない仕組みである血液-胎盤関門があります。ただし、これによって医薬品成分の胎児への移行がどの程度防がれるかは、未解明のことも多くあります。そのため、多くの一般用医薬品では、妊婦が使用した場合の安全性評価が困難であり、妊婦の使用について「相談すること」としているものが多くあります。

医薬品・成分手引きで示される内容
ビタミンA含有製剤妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると、胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされる
便秘薬配合成分やその用量によっては、流産や早産を誘発するおそれがある

このような医薬品では、適正に使用するか、使用そのものを避ける必要があります。販売時には使用者の状況を把握するための情報収集と、それに基づく情報提供が重要です。一方、妊娠の有無や可能性は他人に知られたくないこともあるため、聞き取りや相談対応では十分に配慮します。

胎盤では母体と胎児の血液は混ざらず、成分移行の程度には未解明な点があります。

授乳中は乳汁への移行を確認する

医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中へ移行し、母乳を介して乳児がその成分を摂取することがあります。

状況必要な対応
乳幼児に好ましくない影響を及ぼすことが知られている授乳期間中の使用を避けるか、使用後しばらく授乳を避けられるよう積極的に情報提供する
乳汁移行は知られているが、通常使用で具体的な悪影響が判明していない相談時に、乳汁へ移行する成分やその作用等を適切に説明する

したがって、「授乳婦が使用した成分は乳汁へ移行しない」「乳汁へ移行しても乳児への影響はない」と一律に判断することはできません。

授乳中は「乳汁へ移行するか」と「乳児への影響が知られているか」を分けて判断します。

治療中・既往歴がある人への対応

生活習慣病などの慢性疾患では、疾患の種類や程度によって、一般用医薬品の使用により症状が悪化したり、治療が妨げられたりすることがあります。治療中の人には、疾患の程度や購入しようとする医薬品の種類等に応じ、問題を生じるおそれがあれば使用を避けられるよう情報提供します。必要に応じてお薬手帳も活用します。

医療機関・薬局で交付された薬剤を使用中の人について、登録販売者が一般用医薬品との併用可否を判断することは困難なことが多いため、その薬剤を処方した医師・歯科医師または調剤した薬剤師へ相談するよう説明します。

現在は治療していなくても、過去に治療歴がある場合には、どのような疾患で、いつ頃かかり、いつ頃治癒したのかを踏まえて、本人が一般用医薬品の使用可否を適切に判断できるよう情報提供します。また、医療機関を受診するときには、使用中の一般用医薬品の情報を医師や薬剤師等へ伝えるよう説明することも重要です。

医療機関で治療を受けていない人でも、医薬品の種類や配合成分によっては、特定の症状がある人が使用するとその症状を悪化させるおそれがあります。「治療を受けていないから注意不要」とは判断しません。

治療薬との併用可否が難しいときは、処方した医師等や調剤した薬剤師への相談につなげます。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

小児及び高齢者への医薬品の使用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a 小児は、大人と比べて身体の大きさに対して腸が長く、服用した医薬品の吸収率が相対的に高い。
  • b 小児は、血液脳関門が発達しているため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しにくい。
  • c 高齢者では、肝臓や腎臓の機能が低下していると、医薬品の作用が強く現れやすく、副作用を生じるリスクが高くなる。
  • d 高齢者の生理機能の衰えの度合いは個人差が小さく、年齢から副作用リスクの増大程度を判断しやすい。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a正 b誤 c誤 d正
  4. a誤 b正 c正 d誤
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d誤

aとcが正しい記述です。小児の血液脳関門は未発達で、成分が脳に達しやすいため、bは誤りです。高齢者の生理機能の衰えには個人差が大きく、年齢だけでリスク増大の程度を判断するのは難しいため、dも誤りです。まちがえやすい点:小児は「脳に達しにくい」ではなく「達しやすい」、高齢者は「個人差が小さい」ではなく「大きい」です。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

妊婦及び授乳婦への医薬品の使用に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a 胎盤には、胎児の血液と母体の血液が混ざらない仕組みである血液-胎盤関門がある。
  • b ビタミンB12含有製剤は、妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると、胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされている。
  • c 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中へ移行することがある。
  • d 乳汁中への移行が知られている医薬品は、通常の使用範囲でもすべて乳児への具体的な悪影響が判明している。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとc

正しいのはaとcです。胎盤では胎児と母体の血液は混ざりません。妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取した場合に胎児の先天異常の危険性が高まるとされるのは、ビタミンA含有製剤であり、ビタミンB12含有製剤ではありません。また、乳汁へ移行することが知られていても、通常使用で具体的な悪影響が判明していないものもあるため、dは誤りです。まちがえやすい点:ビタミン名はAであり、乳汁移行と乳児への悪影響は同じ意味ではありません。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次のうち、一般用医薬品の購入者への対応として最も適切なものはどれか。購入者は現在、医療機関から交付された薬剤を使用しており、一般用医薬品との併用を希望している。

  1. 登録販売者が併用の可否を判断し、問題がなければそのまま使用するよう説明する
  2. 現在治療中であっても、一般用医薬品で症状が悪化することはないため併用を勧める
  3. 交付された薬剤を処方した医師若しくは歯科医師又は調剤を行った薬剤師に、併用について相談するよう説明する
  4. 現在治療中でなければ、過去の疾患の種類や治癒時期を確認する必要はないと説明する
  5. 医療機関で治療を受けていない人では、特定の症状があっても一般用医薬品によって症状が悪化することはないと説明する
答えと解説を見る

正解: 交付された薬剤を処方した医師若しくは歯科医師又は調剤を行った薬剤師に、併用について相談するよう説明する

医療機関・薬局で交付された薬剤を使用している人では、登録販売者が一般用医薬品との併用可否を判断することは困難なことが多いため、その薬剤を処方した医師・歯科医師または調剤した薬剤師に相談するよう説明します。治療中の疾患は一般用医薬品で悪化したり治療を妨げられたりすることがあり、過去の治療歴も確認対象です。また、治療を受けていない場合でも、特定の症状がある人では一般用医薬品によって症状が悪化することがあります。まちがえやすい点:登録販売者が併用可否を自ら確定するのではなく、処方・調剤に関わった医師等や薬剤師への相談につなげます。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方