登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用

かぜ薬(総合感冒薬)

かぜとかぜ薬の基本

「かぜ」は単一の疾患ではなく、医学的にはかぜ症候群といいます。主にウイルスが鼻や喉などに感染して起こる上気道の急性炎症の総称で、通常は数日~1週間程度で自然寛解し、予後は良好です。

かぜの約8割は、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス感染が原因です。細菌感染による場合もあり、まれに冷気、乾燥、アレルギーなどの非感染性要因によることもあります。原因となるウイルスや細菌の種類は、季節や時期によって異なります。

かぜ薬は、ウイルスの増殖を抑えたり、体内から除去したりする薬ではありません。咳、発熱、鼻水などの諸症状を緩和する対症療法薬です。安静、休養、十分な栄養・水分摂取が基本です。

発熱、咳、鼻水など症状がはっきりしているときは、総合感冒薬ではなく、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎を緩和する薬など、症状に合った薬を選ぶことが望ましいとされています。存在しない症状に対する成分まで服用すると、無意味に副作用のリスクを高めます。

かぜ薬はウイルスを除く薬ではなく、症状を和らげる対症療法薬です。

かぜ以外を疑う症状

かぜに似た症状は、喘息、アレルギー性鼻炎、リウマチ熱、関節リウマチ、肺炎、肺結核、髄膜炎、急性肝炎、尿路感染症などでも現れます。急激な発熱、症状が4日以上続く、症状が重篤という場合は、かぜではない可能性が高くなります。

発熱や頭痛に加えて悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状があり、特に冬場にみられる場合は、いわゆる「お腹にくるかぜ」ではなく、ウイルス性胃腸炎である場合が多いとされています。

インフルエンザもウイルスの呼吸器感染によりますが、感染力が強く、重症化しやすいため、通常のかぜとは区別して扱います。

急激な発熱・4日以上続く症状・重篤な症状では、かぜ以外を疑います。

配合成分と目的を対応させる

かぜ薬では、成分名と配合目的の組合せが問われます。似た名前ではなく、何を抑える成分かで整理します。

目的主な成分
発熱を鎮め、痛みを和らげるアスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン
くしゃみや鼻汁を抑える(抗ヒスタミン)クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、メキタジン、クレマスチンフマル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩
くしゃみや鼻汁を抑える(抗コリン)ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド
鼻粘膜の充血を和らげ、気管・気管支を拡げるメチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、マオウ
咳を抑えるコデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、ノスカピン、チペピジンヒベンズ酸塩、クロペラスチン塩酸塩
痰の切れを良くするグアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、エチルシステイン塩酸塩
鼻粘膜や喉の炎症による腫れを和らげるトラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム
鎮痛作用を補助する鎮静成分ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素
胃酸を中和し胃腸障害を軽減するケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル
鎮痛作用を補助するカフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン

アセトアミノフェンは、主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗炎症作用は期待できません。また、制酸成分は解熱鎮痛成分による胃腸障害の軽減が目的であり、胃腸薬のように胃腸症状への薬効を標榜するものではありません。

メチルエフェドリンは充血・気管支、ノスカピンは咳、グアイフェネシンは痰です。

成分ごとの重要な使用上の注意

サリチルアミドとエテンザミドは、15歳未満の小児で水痘又はインフルエンザにかかっているときは使用を避けます。一方、コデインリン酸塩水和物とジヒドロコデインリン酸塩を含む咳止め成分は、12歳未満の小児には使用禁忌です。

メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、マオウはいずれも依存性があることに留意します。コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩にも依存性があります。ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素も依存性がある鎮静成分です。

トラネキサム酸は、起炎物質の産生を抑えて炎症を抑えますが、凝固した血液を溶解されにくくする働きもあります。血栓のある人や血栓を起こすおそれのある人に使用するときは、治療中の医師又は処方薬を調剤した薬剤師への相談が必要です。

グリチルリチン酸二カリウムの作用本体であるグリチルリチン酸は、ステロイド性抗炎症成分に化学構造が類似し、抗炎症作用を示すと考えられています。大量摂取では偽アルドステロン症のおそれがあります。むくみ、心臓病、腎臓病、高血圧のある人、高齢者が、1日最大服用量でグリチルリチン酸40mg以上となる製品を使用する場合は慎重な判断が必要です。また、対象者を問わず、1日最大服用量が40mg以上となる製品は長期連用を避けます。

15歳未満の水痘・インフルエンザはサリチルアミド等、12歳未満はコデイン類に注意します。

漢方処方は体力と症状で区別する

かぜに用いられる主な漢方処方には、葛根湯、麻黄湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、小青竜湯、桂枝湯、香蘇散、半夏厚朴湯、麦門冬湯があります。半夏厚朴湯を除くいずれもカンゾウを含み、麻黄湯・葛根湯・小青竜湯はマオウを含みます。

処方手引きで示される適する状態
葛根湯体力中等度以上のものの感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み
麻黄湯体力充実して、かぜのひきはじめで、寒気がして発熱、頭痛があり、咳が出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり
小柴胡湯体力中等度で、ときに脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦味があり、舌に白苔がつくものの食欲不振、吐きけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の諸症状
柴胡桂枝湯体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・吐きけなどのあるものの胃腸炎、かぜの中期から後期の症状
小青竜湯体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様の痰を伴う咳や鼻水が出るものの気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症
桂枝湯体力虚弱で、汗が出るもののかぜの初期
香蘇散体力虚弱で、神経過敏で気分がすぐれず胃腸の弱いもののかぜの初期、血の道症

葛根湯は体の虚弱な人、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向きです。麻黄湯は胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向きで、さらに体の虚弱な人は使用を避けます。小青竜湯も体の虚弱な人、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向きです。

小柴胡湯と柴胡桂枝湯では、まれに間質性肺炎、肝機能障害が生じることがあり、膀胱炎様症状が現れることもあります。小柴胡湯は、インターフェロン製剤で治療を受けている人では間質性肺炎のおそれが高まるため、使用を避けます。

葛根湯は汗なしの初期、桂枝湯は虚弱で汗あり、小青竜湯はうすい水様の痰・鼻水です。

副作用・相互作用・受診勧奨

かぜ薬の重篤な副作用は、配合されている解熱鎮痛成分(生薬成分を除く。)によるものが多いとされています。かぜ薬では、まれにショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、喘息、間質性肺炎が起こることがあります。このほか、配合成分によって肝機能障害、偽アルドステロン症、腎障害、無菌性髄膜炎を生じることがあります。

副作用・症状関係する主な成分
眠気・口渇抗ヒスタミン成分
便秘コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩
排尿困難抗コリン成分、抗ヒスタミン成分、マオウ
偽アルドステロン症グリチルリチン酸二カリウム、カンゾウなど

かぜ薬は複数成分を含むことが多いため、他のかぜ薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用薬、アレルギー用薬、鎮静薬、睡眠改善薬などを併用すると、同じ成分や同種の作用が重複し、効き目が強くなりすぎたり、副作用が起こりやすくなったりします。

かぜ薬の服用期間中は飲酒を控えます。アルコールが医薬品成分の吸収や代謝に影響し、肝機能障害などの副作用を起こしやすくするためです。カフェイン類が配合されていても、抗ヒスタミン成分や鎮静成分による眠気が必ず解消されるわけではありません。

一定期間又は一定回数使用しても改善しない場合や、使用後に症状が悪化した場合は、漫然と使用を続けず受診を勧めます。高熱、黄色や緑色に濁った膿性の鼻汁・痰、喉の激しい痛みや腫れ、呼吸困難を伴う激しい咳がある場合、慢性の呼吸器疾患、心臓病、糖尿病などの基礎疾患がある場合も、初めから医療機関を受診することが望ましいとされています。2歳未満の乳幼児では、医師の診断を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させます。

改善しない・悪化する・高熱や呼吸困難などがあるときは、漫然と服用を続けません。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

かぜ及びかぜ薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せを一つ選びなさい。

  • a かぜの約8割はウイルス感染が原因である。
  • b かぜ薬は、原因ウイルスの増殖を抑えて体内から除去することを主な目的とする。
  • c 急激な発熱を伴う場合や、症状が4日以上続く場合は、かぜではない可能性が高い。
  • d 発熱、咳、鼻水など症状がはっきりしている場合でも、不要な成分を避けるより総合感冒薬を選ぶことが望ましい。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a正 b誤 c誤 d正
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d誤

aとcが正しい記述です。bは誤りで、かぜ薬はウイルスの増殖を抑えたり体内から除去したりする薬ではなく、諸症状を緩和する対症療法薬です。dも誤りで、症状がはっきりしている場合は、その症状に合わせた薬を選ぶことが望ましく、不要な成分は副作用のリスクを高めます。まちがえやすい点:総合感冒薬は、かぜなら常に最適という位置づけではありません。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

かぜ薬の配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せを一つ選びなさい。

  • a グアイフェネシンは、痰の切れを良くする目的で配合される。
  • b メキタジンは、発熱を鎮める解熱鎮痛成分として配合される。
  • c メチルエフェドリン塩酸塩は、鼻粘膜の充血を和らげ、気管・気管支を拡げる目的で配合される。
  • d ノスカピンは、炎症による腫れを和らげる抗炎症成分として配合される。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとc

正しいのはaとcです。グアイフェネシンは去痰成分、メチルエフェドリン塩酸塩はアドレナリン作動成分です。bのメキタジンは抗ヒスタミン成分で、くしゃみや鼻汁を抑えます。dのノスカピンは鎮咳成分で、咳を抑えます。まちがえやすい点:抗炎症成分はトラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウムなどです。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

かぜ症状のある購入者が、次の成分を含む一般用医薬品について相談しています。成分:ブロムヘキシン塩酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、メチルエフェドリン塩酸塩、アセトアミノフェン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、リボフラビン。登録販売者の説明として最も適切なものを一つ選びなさい。

  1. ブロムヘキシン塩酸塩は、くしゃみや鼻汁を抑えるために配合されています。
  2. メチルエフェドリン塩酸塩は、痰の切れを良くするために配合されています。
  3. クロルフェニラミンマレイン酸塩が含まれるため、口渇が現れることがあります。
  4. リボフラビンは、胃酸を中和して解熱鎮痛成分による胃腸障害を軽減します。
  5. デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は、依存性に留意が必要な麻薬性鎮咳成分です。
答えと解説を見る

正解: クロルフェニラミンマレイン酸塩が含まれるため、口渇が現れることがあります。

クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミン成分で、眠気や口渇が現れることがあります。ブロムヘキシン塩酸塩は去痰成分、メチルエフェドリン塩酸塩は鼻粘膜の充血を和らげ気管・気管支を拡げる成分です。リボフラビンはビタミンB2であり制酸成分ではありません。デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は非麻薬性鎮咳成分です。まちがえやすい点:制酸成分にはケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムゲルなどがあります。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方