登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
解熱鎮痛薬
痛み・発熱とプロスタグランジン
解熱鎮痛薬は、発熱や痛みの原因となる病気や外傷そのものを治す薬ではありません。発熱や痛みを一時的に緩和する対症療法として用います。
プロスタグランジンは、痛みが脳へ伝わるときのシグナルを増幅して痛みを強め、温熱中枢に作用して体温を通常より高く保つほか、炎症にも関与します。多くの解熱鎮痛薬は、このプロスタグランジンの産生を抑えることで作用します。
| 作用する場所・仕組み | 結果 |
|---|---|
| 中枢神経系でプロスタグランジン産生を抑制 | 異常な体温調節を正常に戻し、解熱に働く |
| 腎臓で水分の再吸収を促進 | 循環血流量が増え、発汗が促進される |
| 末梢でプロスタグランジン産生を抑制 | 痛みや炎症を鎮める。ただしアセトアミノフェンは末梢の抗炎症作用を期待できない |
| 末梢でプロスタグランジン産生を抑制 | 腎血流量が減少し、腎機能障害を悪化させるおそれがある |
| 胃酸分泌調節・胃腸粘膜保護作用が妨げられる | 胃酸分泌が増え、胃壁血流量が低下し、胃粘膜障害が起こりやすくなる |
循環血流量の増加は心臓の負担を増やすため、心臓に障害がある場合は悪化のおそれがあります。肝機能障害がある場合にも症状を悪化させるおそれがあり、心臓病、腎臓病、肝臓病、胃・十二指腸潰瘍のある人は、使用前に医師又は薬剤師へ相談することが望まれます。
月経痛は、その発生過程にプロスタグランジンが関与するため解熱鎮痛薬の効能・効果に含まれます。一方、腹痛を含む痙攣性の内臓痛は発生の仕組みが異なり、一部の漢方処方製剤を除いて効果を期待できません。
中枢のPG抑制は解熱、末梢のPG抑制は鎮痛・抗炎症と腎血流量低下につながります。
主な解熱鎮痛成分の違い
解熱鎮痛成分は、成分ごとに小児への使用、妊娠末期、胃腸障害、抗炎症作用などの扱いが異なります。名称と特徴を組み合わせて判断します。
| 成分 | 働き・特徴 | 使用上の重要点 |
|---|---|---|
| アスピリン | サリチル酸系。血液を凝固しにくくする作用もある。医療用では血栓予防薬にも用いられる | 15歳未満は一般用医薬品として使用しない。出産予定日12週間以内は使用を避ける。比較的胃腸障害を起こしやすい |
| サザピリン | サリチル酸系 | 15歳未満は一般用医薬品として使用しない |
| サリチル酸ナトリウム | サリチル酸系 | 15歳未満は一般用医薬品として使用しない |
| エテンザミド | 痛みが神経を伝わるのを抑える働きが比較的強く、他成分との相乗効果を期待して配合されることが多い | 水痘又はインフルエンザにかかっている15歳未満では使用を避ける |
| サリチルアミド | サリチル酸系 | 水痘又はインフルエンザにかかっている15歳未満では使用を避ける |
| アセトアミノフェン | 主として中枢作用で解熱・鎮痛。末梢の抗炎症作用は期待できない | 他の解熱鎮痛成分より胃腸障害が少なく、空腹時に服用できる製品もあるが食後服用が推奨される。小児用坐薬にも配合される |
| イブプロフェン | アスピリン等より胃腸への悪影響が少なく、抗炎症作用も示す | 一般用医薬品では15歳未満に使用しない。出産予定日12週以内の妊婦は服用しない |
| イソプロピルアンチピリン | 解熱・鎮痛作用は比較的強く、抗炎症作用は弱い。一般用医薬品で唯一のピリン系解熱鎮痛成分 | ピリン系成分で薬疹等のアレルギー症状を起こしたことがある人は使用しない |
アセトアミノフェン・カフェイン・エテンザミドの組合せは、頭文字から「ACE処方」と呼ばれます。
アスピリン、サザピリン、サリチル酸ナトリウムの15歳未満への扱いと、エテンザミド・サリチルアミドの扱いは同じではありません。後者は、水痘又はインフルエンザにかかっている15歳未満で使用を避けます。
15歳未満で一律不可はアスピリン・サザピリン・サリチル酸ナトリウム・一般用イブプロフェンです。
副作用・飲酒・胃腸障害
化学的に合成された解熱鎮痛成分には、共通してまれに重篤な副作用として、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、喘息が生じることがあります。
「アスピリン喘息」はアスピリンだけの副作用ではありません。他の解熱鎮痛成分でも生じる可能性があります。
| 項目 | 判断 |
|---|---|
| 胃腸障害 | プロスタグランジンの胃酸分泌調節作用・胃腸粘膜保護作用が妨げられ、胃酸分泌が増加し、胃壁血流量が低下する |
| 空腹時 | 胃への悪影響を軽減するため、なるべく避ける製品が多い |
| 飲酒 | 服用期間中は避ける。胃腸障害を増強し、肝機能障害などの副作用を起こしやすくする |
| 長期連用 | 基礎疾患がなくても、自覚症状がないまま臓器障害が進行するおそれがあるため避ける |
| アセトアミノフェン | 定められた用量を超えた場合や、日頃から酒類をよく摂取する人では、重篤な副作用が起こりやすい |
| イブプロフェン | まれに肝機能障害、腎障害、無菌性髄膜炎を生じる。全身性エリテマトーデス又は混合性結合組織病のある人では無菌性髄膜炎を生じやすい |
胃・十二指腸潰瘍がある人では症状を悪化させるおそれがあります。イブプロフェンでは、胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病の既往歴がある人で再発を招くおそれがあります。
アスピリン喘息はアスピリン特有ではなく、飲酒は胃腸障害や肝機能障害を起こしやすくします。
生薬と補助成分の配合目的
解熱鎮痛薬には、解熱鎮痛成分だけでなく、鎮静、胃腸障害の軽減、筋肉のこりの緩和、鎮痛作用の増強、ビタミン補給などを目的とする成分が配合されることがあります。
| 成分 | 配合目的・働き |
|---|---|
| ジリュウ | フトミミズ科のPheretima aspergillum Perrier又はその近縁動物の内部を除いたものを基原とし、「感冒時の解熱」に用いられる |
| シャクヤク | ボタン科のシャクヤクの根を基原とし、鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し、内臓の痛みにも用いられる |
| ボウイ | ツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓性の茎及び根茎を、通例、横切したものを基原とし、鎮痛、尿量増加(利尿)等を期待する |
| ショウキョウ・ケイヒ | 発汗を促して解熱を助ける |
| ブロモバレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素 | 鎮静成分として解熱鎮痛成分の鎮痛作用を助ける。いずれも依存性がある |
| ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム | 生薬成分を除く解熱鎮痛成分による胃腸障害の軽減 |
| メトカルバモール | 脊髄反射を抑えて骨格筋の緊張を鎮め、「筋肉のこり」を和らげる |
| カフェイン、無水カフェイン等 | 鎮痛作用の増強、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせ、疲労感・倦怠感を和らげる |
| ビタミンB1・B2・C等 | 発熱等によって消耗されやすいビタミンを補給する |
メトカルバモールには鎮静作用があり、眠気、めまい、ふらつきが現れることがあります。そのため、服用後は乗物又は機械類の運転操作をせず、鎮静成分を含む他の医薬品との併用も避けます。
カフェイン類が配合されていても、鎮静成分による眠気が必ず解消されるわけではありません。
水酸化アルミニウムゲルは胃腸障害軽減、メトカルバモールは骨格筋弛緩、カフェインは鎮痛増強です。
鎮痛に用いる漢方処方
鎮痛目的の漢方処方は、処方名だけでなく、体力、冷え、頭痛、関節痛、痙攣などの条件を組み合わせて判断します。
| 処方 | 適すとされる状態 | 不向き・留意点 |
|---|---|---|
| 芍薬甘草湯 | 体力に関わらず使用でき、筋肉の急激な痙攣を伴う痛みのあるもののこむらがえり、筋肉の痙攣、腹痛、腰痛 | 症状があるときのみ服用し連用を避ける。心臓病の診断を受けた人は使用を避ける |
| 桂枝加朮附湯 | 体力虚弱で、汗が出、手足が冷えてこわばり、ときに尿量が少ないものの関節痛、神経痛 | のぼせが強く赤ら顔で体力が充実している人には不向き |
| 桂枝加苓朮附湯 | 体力虚弱で、手足が冷えてこわばり、尿量が少なく、ときに動悸、めまい、筋肉のぴくつきがあるものの関節痛、神経痛 | のぼせが強く赤ら顔で体力が充実している人には不向き |
| 薏苡仁湯 | 体力中等度で、関節や筋肉のはれや痛みがあるものの関節痛、筋肉痛、神経痛 | 体の虚弱な人、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向き |
| 麻杏薏甘湯 | 体力中等度なものの関節痛、神経痛、筋肉痛、いぼ、手足のあれ | 体の虚弱な人、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向き |
| 疎経活血湯 | 体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛 | 胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き |
| 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 | 体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛 | 胃腸の弱い人には不向き |
| 釣藤散 | 体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるもの | 胃腸虚弱で冷え症の人には不向き |
| 呉茱萸湯 | 体力中等度以下で、手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するものの頭痛、頭痛に伴う吐きけ・嘔吐、しゃっくり | — |
呉茱萸湯以外は構成生薬としてカンゾウを含みます。また、芍薬甘草湯以外は比較的長期間、1か月位服用されることがあります。
慢性頭痛・めまい・肩こりは釣藤散、冷えを伴う頭痛・吐きけは呉茱萸湯です。
併用・飲酒と受診の判断
解熱鎮痛薬には複数の有効成分を配合した製品が多いため、他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬、外用消炎鎮痛薬などを併用すると、同じ成分又は同種の作用を持つ成分が重複することがあります。その結果、効き目が強く現れすぎたり、副作用が起こりやすくなったりします。
アセトアミノフェンを含む坐薬と内服薬も互いに無関係ではありません。解熱鎮痛薬やかぜ薬との重複使用を避けます。
| 相談内容 | 判断 |
|---|---|
| 発熱が1週間以上続く | 自己治療を続けず医療機関を受診する |
| 発熱に激しい腹痛、下痢、息苦しさ、排尿時の不快感、発疹・痒みなどを伴う | かぜ以外の感染症や重大な病気の可能性があるため受診する |
| 年月の経過とともに月経痛が悪化する | 子宮内膜症等の可能性が考えられるため受診する |
| 頭痛が頻繁に出て24時間以上続く、又は一般用医薬品で抑えられない | 自己治療の範囲を超えていると判断する |
| 突然の激しい頭痛、手足のしびれ、意識障害を伴う | 生命に関わる重大な病気の可能性があるため受診する |
| 頭痛が起きる前から予防目的で服用する | 適切ではない。症状が軽いうちの服用は効果的だが、症状がないうちに予防的に使用しない |
| 服用すると治るが、しばらくすると再発し薬が手放せない | 薬物依存が形成されている可能性が考えられる |
通常、体温が38℃以下であれば、ひきつけや著しい体力消耗等のおそれはなく、平熱になるまで解熱鎮痛薬を用いる必要はありません。発汗で水分や電解質が失われるため、それらの補給が重要です。
頭痛は症状が軽いうちに使いますが、発症前の予防服用はせず、長引く・悪化する場合は受診します。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
解熱鎮痛薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せを一つ選びなさい。
- a アスピリン喘息はアスピリンに特有の副作用であり、他の解熱鎮痛成分では生じない。
- b アセトアミノフェンは主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらし、末梢における抗炎症作用は期待できない。
- c 一般用医薬品のイブプロフェン製剤は、15歳未満の小児に対して使用してはならない。
- d アリルイソプロピルアセチル尿素は、中枢神経系を刺激して疲労感を和らげる目的で配合される。
- a正 b正 c誤 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a誤 b正 c誤 d正
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a誤 b正 c正 d誤
aは誤りです。アスピリン喘息はアスピリン特有ではなく、他の解熱鎮痛成分でも生じる可能性があります。bは正しい記述です。cも正しく、一般用医薬品のイブプロフェンは15歳未満には使用しません。dは誤りで、アリルイソプロピルアセチル尿素は鎮静成分として脳の興奮を抑え、鎮痛作用を助ける目的で配合されます。中枢神経系を刺激するのはカフェイン類です。まちがえやすい点:鎮静成分とカフェイン類の配合目的を逆にしないようにします。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
解熱鎮痛薬及び鎮痛に用いる漢方処方に関する次のa〜dのうち、正しいものの組合せを一つ選びなさい。
- a 釣藤散は、体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるものに適すとされる。
- b 芍薬甘草湯は、体力中等度以下で、手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するものの頭痛に適すとされる。
- c ボウイは、鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用を期待して用いられる。
- d シャクヤクは、発汗を促して解熱を助ける作用を期待して用いられる。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
答えと解説を見る
正解: aとc
正しいのはaとcです。bの内容は呉茱萸湯の適応で、芍薬甘草湯は体力に関わらず、筋肉の急激な痙攣を伴う痛み、こむらがえり、筋肉の痙攣、腹痛、腰痛に適すとされます。dは誤りで、シャクヤクは鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し、内臓の痛みにも用いられます。発汗を促して解熱を助ける目的で配合されるのはショウキョウやケイヒです。まちがえやすい点:漢方のしばりと、生薬単独の配合目的を入れ替えないようにします。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
25歳の購入者が月経痛のため、エテンザミド、アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素、無水カフェインを含む解熱鎮痛薬を購入しようとしています。登録販売者の説明として最も適切なものを一つ選びなさい。
- アセトアミノフェンは他の解熱鎮痛成分より胃腸障害を起こしやすいため、必ず空腹時を避ける必要があると説明する
- アリルイソプロピルアセチル尿素には依存性がなく、長期連用しても問題ないと説明する
- 無水カフェインは鎮痛作用を増強するほか、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせる目的でも配合されると説明する
- エテンザミドには血液を凝固しにくくする作用があり、医療用では血栓予防薬として用いられると説明する
- 月経痛にはプロスタグランジンが関与しないため、解熱鎮痛薬による効果は期待できないと説明する
答えと解説を見る
正解: 無水カフェインは鎮痛作用を増強するほか、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせる目的でも配合されると説明する
無水カフェインは、解熱鎮痛成分の鎮痛作用を増強するほか、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせ、疲労感・倦怠感を和らげる目的で配合されます。アセトアミノフェンは他の解熱鎮痛成分より胃腸障害が少なく、空腹時に服用できる製品もあります。アリルイソプロピルアセチル尿素には依存性があります。血液を凝固しにくくし、医療用で血栓予防に用いられるのはアスピリンです。月経痛はその発生過程にプロスタグランジンが関与するため、解熱鎮痛薬の効能・効果に含まれます。まちがえやすい点:カフェインは鎮静成分ではなく中枢刺激成分です。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方