登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用

眠気を促す薬・眠気を防ぐ薬

睡眠改善薬は一時的な不眠に使う

催眠鎮静薬は、寝つきが悪い、眠りが浅い、いらいら感、緊張感、精神興奮、精神不安などが生じたときに、睡眠を促したり精神の昂ぶりを鎮めたりする目的で用いられます。

抗ヒスタミン成分を主薬とする睡眠改善薬は、一時的な睡眠障害の緩和に用いるものです。慢性的に不眠症状がある人や、医療機関で不眠症と診断されている人を対象とするものではありません。

妊娠中にしばしば生じる睡眠障害は、ホルモンのバランスや体型の変化などが原因であり、睡眠改善薬の適用対象ではありません。妊婦又は妊娠していると思われる女性は、睡眠改善薬の使用を避けます。

小児及び若年者では、抗ヒスタミン成分によって眠気とは反対に神経過敏や中枢興奮が現れることがあります。特に15歳未満の小児では起こりやすいため、抗ヒスタミン成分を含む睡眠改善薬を使用しません。

睡眠改善薬は一時的な不眠向けで、慢性不眠・妊婦・15歳未満には使いません。

鎮静成分の働きと運転・依存

ヒスタミンは、脳の睡眠・覚醒に関わる部位で覚醒の維持や調節に関わっています。脳内のヒスタミン刺激が低下すると眠気が促され、ジフェンヒドラミン塩酸塩は抗ヒスタミン成分の中でも特にこの中枢作用が強い成分です。

成分働き・特徴使用上の要点
ジフェンヒドラミン塩酸塩脳内のヒスタミン刺激を低下させ、眠気を促す服用後は自動車の運転等をしない。目覚めた後にも注意力の低下、寝ぼけ様症状、判断力の低下等の一時的な意識障害、めまい、倦怠感が残ることがある
ブロモバレリル尿素脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする眠気による事故、反復摂取による依存に注意。胎児に障害を引き起こす可能性があるため妊婦等は使用を避ける
アリルイソプロピルアセチル尿素脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする眠気による事故、反復摂取による依存に注意

ブロモバレリル尿素は、かつて不眠症や不安緊張状態の鎮静に頻繁に用いられましたが、大量摂取による自殺が社会問題となり、ベンゾジアゼピン系成分に役割が移ったため、近年は使用量が減少しています。

尿素系鎮静成分は「脳の興奮を抑える・痛覚を鈍くする・運転回避・依存」で整理します。

鎮静に用いる生薬を区別する

神経の興奮・緊張を和らげる目的で、チョウトウコウ、サンソウニン、カノコソウ、チャボトケイソウ、ホップなどが複数配合されることがあります。

生薬基原・薬用部位
チョウトウコウアカネ科のカギカズラ、Uncaria sinensis Haviland又はUncaria macrophylla Wallichの通例とげ
サンソウニンクロウメモドキ科のサネブトナツメの種子
カノコソウオミナエシ科のカノコソウの根及び根茎
チャボトケイソウ南米原産のトケイソウ科植物で、開花期の茎及び葉
ホップヨーロッパ南部から西アジア原産のアサ科ホップHumulus lupulus L.の成熟した球果状の果穂

サンソウニンはサネブトナツメの種子であり、チョウトウコウではありません。この入れ替えに注意します。

生薬成分だけからなる鎮静薬でも、複数の鎮静薬を併用したり、長期に連用したりすることは避けます。

サネブトナツメの種子はサンソウニン、ホップは成熟した球果状の果穂です。

不眠に用いる漢方のしばり

神経質、精神不安、不眠などに用いられる漢方処方製剤は、処方ごとの体力や症状の組合せで判断します。

処方手引きの適用
酸棗仁湯体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症、神経症
加味帰脾湯体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血、不眠症、精神不安、神経症
抑肝散体力中等度をめやすとして、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症
抑肝散加陳皮半夏体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症(神経過敏)、更年期障害、血の道症、歯ぎしり
柴胡加竜骨牡蛎湯体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘
桂枝加竜骨牡蛎湯体力中等度以下で疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの神経質、不眠症、小児夜なき、夜尿症、眼精疲労、神経症

抑肝散・抑肝散加陳皮半夏は、心不全を引き起こす可能性があるため、動くと息が苦しい、疲れやすい、足がむくむ、急に体重が増えた場合は直ちに医師の診療を受けるべきです。

酸棗仁湯は、胃腸が弱い人、下痢又は下痢傾向のある人では悪心、食欲不振、胃部不快感などが現れやすく不向きです。1週間位服用して改善しなければ、漫然と続けず医療機関を受診するなどの対応が必要です。

柴胡加竜骨牡蛎湯は、体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人、瀉下薬を服用している人では、腹痛や激しい腹痛を伴う下痢が現れやすく不向きです。構成生薬としてダイオウを含み、まれに肝機能障害、間質性肺炎を生じることがあります。

酸棗仁湯は体力中等度以下、柴胡加竜骨牡蛎湯は体力中等度以上です。

催眠鎮静薬の併用・飲酒と受診

ジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は、催眠鎮静薬以外の医薬品にも配合されることがあります。これらを含む医薬品と他の催眠鎮静薬を併用すると、効き目や副作用が強まるおそれがあります。

これら3成分を含む催眠鎮静薬を飲酒とともに服用すると、薬効や副作用が増強されるおそれがあるため、服用時は飲酒を避けます。一方、生薬成分のみの鎮静薬や漢方処方製剤では飲酒を避けることとはなっていませんが、アルコールが睡眠の質を下げ、医薬品の効果を妨げることがあります。

カノコソウ、サンソウニン、チャボトケイソウ、ホップなどを含む食品や、他の鎮静作用があるとされるハーブを医薬品と併せて摂取すると、薬効が増強又は減弱したり、副作用のリスクが高まったりすることがあります。

一般用医薬品で対処できるのは、基礎疾患がない人のストレス、疲労、時差ぼけなどによる一時的な不眠や寝つきの悪さです。入眠障害、熟眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などが慢性的に続く場合は、精神神経疾患、身体疾患、催眠鎮静薬の使いすぎなども考え、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

鎮静成分の重複と飲酒で作用が強まり、慢性の不眠は一般用医薬品の対象外です。

カフェインの作用と副作用

眠気防止薬の主な有効成分はカフェインで、脳に軽い興奮状態を起こし、一時的に眠気や倦怠感を抑えます。

作用結果・副作用
脳を興奮させる過剰になると振戦、めまい、不安、不眠、頭痛など
腎臓でナトリウムイオンと水分の再吸収を抑制する尿量が増加する
胃液分泌を亢進する食欲不振、悪心・嘔吐など。胃酸過多や胃潰瘍のある人は服用を避ける
心筋を興奮させる動悸が現れることがある。心臓病のある人は服用を避ける
反復摂取作用は弱いが依存を形成する性質があるため、短期間の服用にとどめ連用しない

摂取されたカフェインの一部は乳汁中へ移行します。乳児は肝臓が未発達なため、カフェインの代謝に時間がかかり、最高血中濃度の半分に低下するまでの時間は、通常の成人が約3.5時間であるのに対し、乳児では約80時間です。授乳中に大量摂取や連用をすると、乳児に蓄積して頻脈や不眠などを起こす可能性があるため、総摂取量が継続して多くならないようにします。

ビタミンB1、B2、B6、B12、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、タウリンなどが配合される場合がありますが、これらは眠気を抑える成分ではなく、眠気による倦怠感を和らげる補助成分です。

カフェインは再吸収を抑制して利尿、胃液分泌は亢進、反復摂取で依存を生じ得ます。

カフェインの摂取上限と使い方

眠気防止薬でのカフェイン摂取量は、1回200mg、1日500mgが上限です。カフェインは、かぜ薬、解熱鎮痛薬、乗物酔い防止薬、滋養強壮保健薬、医薬部外品、お茶やコーヒーなどにも含まれるため、同時に摂取すると過量になり、中枢神経系や循環器系などへの作用が強く現れるおそれがあります。

かぜ薬やアレルギー用薬などによる眠気を抑えるために眠気防止薬を使うのは適切ではありません。眠気が困る場合は、眠気を催す成分を含まない医薬品を選びます。また、それらの医薬品にもカフェインを含むことがあるため、重複摂取を避ける必要があります。

眠気防止薬は、一時的に集中が必要なときの眠気や倦怠感を除くためのもので、疲労を解消したり、睡眠を不要にしたりする薬ではありません。感染時の眠気は生体防御に関わる反応であり、眠気防止薬で睡眠を妨げると治癒を遅らせるおそれがあります。

十分に睡眠を取っていても、眠気防止薬では抑えられない眠気や倦怠感が続く場合には、重大な病気などが原因となっている可能性があるため、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

成長期の小児には睡眠が重要であるため、小児用の眠気防止薬はありません。15歳未満の小児に使用されないよう注意します。

特に内服液剤は、その製剤上の特徴から、本来の目的以外の意図に基づく不適正な使用(乱用)がなされることがあります。

カフェインは1回200mg・1日500mgまで。小児用の眠気防止薬はありません。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

眠気を促す薬及び眠気を防ぐ薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a 抗ヒスタミン成分を主薬とする睡眠改善薬は、一時的な睡眠障害の緩和に用いられる。
  • b ブロモバレリル尿素は、脳内のヒスタミン刺激を低下させることによって眠気を促す。
  • c カフェインは、腎臓におけるナトリウムイオンの再吸収を抑制し、尿量を増加させる。
  • d 眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量は200mg、1日摂取量は500mgが上限とされている。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d正
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a誤 b誤 c正 d正
  5. a正 b誤 c誤 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d正

a、c、dは正しい記述です。bが誤りです。ブロモバレリル尿素は脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする作用があります。脳内のヒスタミン刺激を低下させて眠気を促すのは抗ヒスタミン成分です。まちがえやすい点:カフェインによる利尿はナトリウムイオンの再吸収「抑制」であり、促進ではありません。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a 酸棗仁湯は、体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症、神経症に適すとされる。
  • b 加味帰脾湯は、体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘に適すとされる。
  • c 抑肝散加陳皮半夏は、体力中等度をめやすとして、やや消化器が弱く、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症などに適すとされる。
  • d 柴胡加竜骨牡蛎湯は、体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの貧血、不眠症、精神不安、神経症に適すとされる。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとc

正しいのはaとcです。bの記述は柴胡加竜骨牡蛎湯の適用であり、加味帰脾湯は体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものが対象です。dはその加味帰脾湯の適用を柴胡加竜骨牡蛎湯に入れ替えています。まちがえやすい点:柴胡加竜骨牡蛎湯は「体力中等度以上」、酸棗仁湯と加味帰脾湯は「体力中等度以下」です。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

登録販売者が購入者から相談を受けた。最も適切な説明はどれか。

  1. 15歳未満の子どもが試験勉強中の眠気を訴えているため、無水カフェインを配合した小児用眠気防止薬を勧める。
  2. かぜ薬を服用すると眠くなるため、併用する眠気防止薬はカフェイン1回200mg以内であれば使用できると説明する。
  3. 授乳中の女性が眠気防止薬を希望している場合、カフェインは乳汁中へ移行しないため、1日500mg以内なら乳児への影響を考慮する必要はないと説明する。
  4. 胃潰瘍のある人が眠気防止薬を希望している場合、カフェインには胃液分泌抑制作用があるため服用できると説明する。
  5. 十分に睡眠を取っているのに、眠気防止薬でも抑えられない眠気や倦怠感が続く人には、医療機関を受診するなどの対応が必要だと説明する。
答えと解説を見る

正解: 十分に睡眠を取っているのに、眠気防止薬でも抑えられない眠気や倦怠感が続く人には、医療機関を受診するなどの対応が必要だと説明する。

適切なのは、眠気防止薬で抑えられない眠気や倦怠感が続く場合に受診を勧める説明です。小児用の眠気防止薬はなく、15歳未満には使用されないよう注意します。かぜ薬などによる眠気を抑える目的で眠気防止薬を併用するのも適切ではありません。カフェインは乳汁中へ移行し、胃液分泌は抑制ではなく亢進させます。まちがえやすい点:1回200mg・1日500mgという数値は摂取上限であり、併用してよいことを示す数値ではありません。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方