登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
乗物酔い防止薬・小児鎮静薬
乗物酔い防止薬の基本
乗物酔い防止薬は、乗物酔いによるめまい、吐きけ、頭痛を防止・緩和するための医薬品です。抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分などが用いられます。
抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分には、いずれも眠気を促す作用があります。抗コリン成分では、散瞳による目のかすみや異常なまぶしさが現れることもあります。このため、乗物を運転するときは乗物酔い防止薬の使用を控えます。
吐きけを抑える成分が配合されていても、つわりに伴う吐きけへの対処として使用することは適当ではありません。
乗物酔い防止薬は眠気を生じる成分が多く、運転時は使用を控えます。
成分と働きを対応させる
成分名と働きの組合せは入れ替えて問われやすいため、同じ種類の成分でも作用を区別します。
| 成分・分類 | 主な働き・特徴 |
|---|---|
| ジフェニドール塩酸塩 | 前庭神経を調節し、内耳への血流を改善します。抗めまい成分です。 |
| 抗ヒスタミン成分 | 延髄の嘔吐中枢への刺激や、内耳の前庭における自律神経反射を抑えます。 |
| ジメンヒドリナート | ジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名で、専ら乗物酔い防止薬に用いられる抗ヒスタミン成分です。 |
| メクリジン塩酸塩 | 他の抗ヒスタミン成分より作用の発現が遅く、持続時間が長い成分です。 |
| スコポラミン臭化水素酸塩水和物 | 抗コリン成分です。中枢で自律神経系の混乱を軽減し、末梢では消化管の緊張を低下させます。消化管からよく吸収され、他の抗コリン成分より脳内に移行しやすい一方、肝臓で速やかに代謝されるため、抗ヒスタミン成分等より作用時間は短いとされます。 |
| ブロモバレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素 | 不安や緊張を和らげることを目的とする鎮静成分です。 |
| カフェイン・ジプロフィリン | 脳に軽い興奮を起こし、平衡感覚の混乱によるめまいを軽減するキサンチン系成分です。 |
| アミノ安息香酸エチル | 胃粘膜への麻酔作用により嘔吐刺激を和らげ、吐きけを抑える局所麻酔成分です。 |
| ピリドキシン塩酸塩など | 吐きけの防止に働くことを期待して補助的に配合されるビタミン成分です。 |
カフェインには乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待されますが、他の成分による眠気を解消するわけではありません。
メクリジンは遅く長く、スコポラミンは抗コリン、ジプロフィリンは中枢を軽く興奮させます。
副作用・併用・受診の判断
ジフェニドール塩酸塩では、頭痛、排尿困難、眠気、散瞳による異常なまぶしさ、口渇のほか、浮動感や不安定感が現れることがあります。排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがあります。
プロメタジンを含む成分は、外国で乳児突然死症候群や乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制が報告されているため、15歳未満の小児では使用を避けます。アミノ安息香酸エチルを含む場合は、6歳未満への使用を避けます。
かぜ薬、解熱鎮痛薬、催眠鎮静薬、鎮咳去痰薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、アレルギー用薬などは、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分、カフェイン類などが重複することがあるため、併用を避けます。
3歳未満では乗物酔いはほとんど起こらないとされ、3歳未満向けの乗物酔い防止薬はありません。移動中の不機嫌では、気圧変化による耳の痛みなど他の原因も考えます。また、日常生活でめまいを繰り返す場合は、基本的に医療機関の受診が必要です。
3歳未満向け製品はなく、繰り返すめまいは乗物酔いとして扱い続けません。
小児鎮静薬の目的と考え方
小児では、身体的な問題がなくても、夜泣き、ひきつけ、疳の虫などが現れることがあります。乳児では食道と胃の間の括約筋が未発達なため、胃食道逆流によるむずがり、夜泣き、乳吐きが起こることもあります。
小児鎮静薬は、夜泣きなどを鎮めるだけでなく、小児の虚弱体質や消化不良などの改善も目的とする生薬製剤・漢方処方製剤です。原因となる体質の改善を主眼とするものが多く、比較的長期間、1ヶ月位継続して服用されることがあります。
一方、身体的な問題がない夜泣きなどは成長に伴って自然に治まるのが通常です。保護者の安眠を優先して小児鎮静薬を使用することは適当ではありません。
小児の疳に用いる生薬製剤では、鎮静作用に加え、血液の循環を促す作用があるとされる生薬成分が中心です。鎮静と中枢刺激のような相反する作用を期待する成分が一緒に配合されることもあります。
小児鎮静薬は夜泣きを鎮めるだけでなく、体質改善を主眼とするものがあります。
生薬と漢方処方を区別する
| 生薬・処方 | 手引きで示される内容 |
|---|---|
| ゴオウ・ジャコウ | 緊張や興奮を鎮め、血液の循環を促す作用などを期待して用いられます。 |
| レイヨウカク | ウシ科のサイカレイヨウ等の角を基原とし、緊張や興奮を鎮める作用などを期待して用いられます。 |
| ジンコウ | ジンチョウゲ科のジンコウその他同属植物の材、特にその辺材の材質中に黒色の樹脂が沈着した部分を採取したものを基原とし、鎮静、健胃、強壮などを期待して用いられます。 |
| カンゾウ | 小児の疳を適応症とする生薬製剤では主として健胃作用を期待します。他の医薬品等からの分も含め、グリチルリチン酸の総量が継続して多くならないようにします。 |
小児の疳を適応症とする主な漢方処方製剤には、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、小建中湯があります。このうち柴胡加竜骨牡蛎湯以外はカンゾウを含みます。
漢方処方製剤は、適用年齢の下限が用法用量に示されていなくても、生後3ヶ月未満の乳児には使用しません。乳幼児では体格差により体重当たりのグリチルリチン酸摂取量が多くなることがあるため、カンゾウを含む製剤では留意します。
生後3ヶ月未満には漢方処方製剤を使わず、柴胡加竜骨牡蛎湯以外の主な4処方はカンゾウを含みます。
小建中湯と受診の目安
小建中湯は、体力虚弱で疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれず、ときに動悸、手足のほてり、冷え、ねあせ、鼻血、頻尿及び多尿などを伴うものの小児虚弱体質、疲労倦怠、慢性胃腸炎、腹痛、神経質、小児夜尿症、夜なきに適すとされます。
小建中湯はカンゾウを含み、乳幼児では体重当たりのグリチルリチン酸摂取量が多くなることがあります。さらに比較的長期間、1ヶ月位服用することがあるため、特に留意します。
柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏を小児の夜泣きに用い、1週間位服用しても改善しない場合はいったん中止し、専門家に相談して処方が適しているか見直します。
小児鎮静薬を一定期間又は一定回数使用しても改善しない場合は、漫然と続けず医療機関を受診させます。激しい下痢や高熱がある場合、吐いたものが緑色又は血が混じっている場合、吐くときに咳込んだり息を詰まらせたりする場合も、医師の診療が必要です。
小建中湯は1ヶ月位使うことがありますが、夜泣き用の他4処方は1週間改善なしで見直します。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
乗物酔い防止薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a ジフェニドール塩酸塩は、前庭神経を調節するとともに、内耳への血流を改善する作用を示す。
- b メクリジン塩酸塩は、他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが早く、持続時間が短い。
- c スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、抗コリン成分であり、中枢では自律神経系の混乱を軽減し、末梢では消化管の緊張を低下させる。
- d カフェインは、抗ヒスタミン成分などによる眠気を解消する目的で配合される。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aは正しいです。bは誤りで、メクリジン塩酸塩は作用の発現が遅く、持続時間が長い成分です。cは正しいです。dは誤りで、カフェインは脳に軽い興奮を起こしてめまいを軽減する目的などで配合されますが、他の成分による眠気が解消されるわけではありません。まちがえやすい点:ジプロフィリンもキサンチン系で、中枢を抑制する成分ではありません。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤について、次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a 漢方処方製剤は、適用年齢の下限が設けられていない場合でも、生後3ヶ月未満の乳児には使用しない。
- b カンゾウは、小児の疳を適応症とする生薬製剤では主として鎮静作用を期待して用いられる。
- c 小建中湯は、体力虚弱で疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれないものなどの小児虚弱体質、腹痛、神経質、夜なき等に適すとされる。
- d 抑肝散を小児の夜泣きに用いる場合、1ヶ月位服用して改善がなければ使用を見直す。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
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正解: aとc
aとcが正しいです。bは誤りで、小児の疳を適応症とする生薬製剤のカンゾウは主として健胃作用を期待して用いられます。dは誤りで、抑肝散などを小児の夜泣きに用いる場合は1週間位服用しても改善しなければ、いったん中止して専門家に相談します。まちがえやすい点:小児鎮静薬全体では1ヶ月位継続するものがありますが、夜泣きに用いる特定の漢方4処方の見直し目安は1週間位です。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
55歳の購入者が、乗物酔いによる吐きけを防ぐため、ジフェニドール塩酸塩、スコポラミン臭化水素酸塩水和物、無水カフェイン、ピリドキシン塩酸塩を含む乗物酔い防止薬を購入しようとしている。登録販売者の説明として最も適切なものはどれか。
- 無水カフェインは、他の配合成分によって生じる眠気を解消することを目的として配合されています。
- ピリドキシン塩酸塩は、乗物酔いに伴う頭痛を和らげることを目的として配合されています。
- ジフェニドール塩酸塩は、緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談することが望まれます。
- スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しにくく、抗ヒスタミン成分等より作用の持続時間が長いとされています。
- 日常生活でもめまいが度々起こる場合は、乗物酔いと同じ平衡機能の異常として、この薬を継続して用いるのが適切です。
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正解: ジフェニドール塩酸塩は、緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談することが望まれます。
ジフェニドール塩酸塩は、排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあります。無水カフェインは眠気を解消するものではなく、ピリドキシン塩酸塩は吐きけの防止を期待して補助的に配合されます。スコポラミンは他の抗コリン成分より脳内へ移行しやすく、肝臓で速やかに代謝されるため抗ヒスタミン成分等より作用時間は短いとされます。日常的にめまいを繰り返す場合は基本的に医療機関を受診します。まちがえやすい点:カフェインの頭痛緩和作用と、ビタミン成分の吐きけ防止を取り違えないようにします。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方