登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用

胃の薬

制酸・健胃・消化の違い

胃の薬は、目的によって制酸薬・健胃薬・消化薬などに分けて考えます。胃液の分泌が増えすぎると、胃酸過多、胸やけ、腹部の不快感、吐きけなどが現れます。

種類主な目的
制酸薬胃酸の働きを弱める、又は胃液の分泌を抑え、胃酸過多などの症状を緩和する
健胃薬弱った胃の働きを高める
消化薬消化酵素を補うなどして、胃や腸の内容物の消化を助ける

一般用医薬品には、制酸、胃粘膜保護、健胃、消化、整腸、鎮痛鎮痙、消泡など複数の作用を組み合わせた総合胃腸薬もあります。制酸成分と健胃成分のように相反する作用を期待する成分が同時に配合されることもあります。

制酸は胃酸、健胃は胃の働き、消化は内容物の分解を助けるものです。

制酸成分と無機塩類

制酸成分は、中和反応によって胃酸の働きを弱めます。代表例として、炭酸水素ナトリウム、アルミニウムを含む成分、マグネシウムを含む成分、アルミニウムとマグネシウムの両方を含む成分、カルシウムを含む成分などがあります。

成分・区分働き・注意点
炭酸水素ナトリウム制酸成分(重曹)。アルミニウムを含まない。腎臓病の診断を受けた人では、無機塩類の排泄が遅れるため事前に医師又は薬剤師へ相談する
乾燥水酸化アルミニウムゲルなどアルミニウムを含む制酸成分。透析療法を受けている人では使用を避ける
ケイ酸マグネシウムなどマグネシウムを含む制酸成分
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム胃酸を中和し、胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する

アルミニウムを含む制酸成分は、透析療法を受けている人では使用を避けます。透析を受けていない人でも長期連用は避けます。腎臓病の診断を受けた人では、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの排泄が遅れたり体内に貯留しやすくなるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。

制酸成分を主体とする胃腸薬は、酸度の高い食品と一緒に使うと中和作用が低下することが考えられます。炭酸飲料などで服用するのは適当ではありません。

アルミニウム含有成分は透析中なら避け、炭酸飲料で制酸薬を服用しません。

健胃成分と消化成分

健胃成分には、味覚や嗅覚を刺激して反射的に唾液や胃液の分泌を促す生薬があります。オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン、ケイヒ、ユウタンなどです。

成分働き
センブリ苦味による健胃作用を期待して用いる
リュウタンリンドウ科のトウリンドウ等の根及び根茎を基原とし、苦味による健胃作用を期待して用いる
ユウタンクマ科のUrsus arctos Linné又はその他近縁動物の胆汁を乾燥したものを基原とし、苦味による健胃作用や消化補助を期待して用いる
カルニチン塩化物胃液分泌を促す、胃の運動を高める、胃壁の循環血流を増すなどの作用があるとされ、胃の働きの低下や食欲不振の改善を期待する

生薬成分を配合した健胃薬は、味や香りによる刺激を利用します。散剤をオブラートで包むなど、味や香りを遮る方法では効果が期待できないため、そのような服用方法は適当ではありません。

消化成分には、ジアスターゼ、プロザイム、ニューラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ビオジアスターゼ、タカヂアスターゼなどがあり、炭水化物、脂質、タンパク質、繊維質などの分解に働く酵素を補います。ビオジアスターゼやタカヂアスターゼは健胃成分ではなく、消化成分です。

胆汁末、動物胆、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸には胆汁の分泌を促す利胆作用があるとされ、消化を助けます。肝臓の働きを高める作用もあるとされますが、肝臓病の診断を受けた人では、かえって症状を悪化させるおそれがあるため使用前に医師又は薬剤師へ相談します。

ビオジアスターゼは消化成分、ウルソデオキシコール酸は利胆作用をもつ消化補助成分です。

胃粘膜保護・消泡・分泌抑制

胃薬には、胃粘膜を守る成分、気泡を分離する成分、胃液の分泌を抑える成分も配合されます。成分名と働きの取り違えに注意します。

成分働き・主な注意点
スクラルファート胃粘膜保護・修復成分。アルミニウムを含むため、透析を受けている人では使用を避ける
ソファルコン胃粘膜保護・修復成分。まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある
テプレノン胃粘膜保護・修復成分。腹部膨満感、吐きけ、腹痛、頭痛、皮下出血、便秘、下痢、口渇が現れることがあり、まれに肝機能障害を生じる
セトラキサート塩酸塩体内で代謝されてトラネキサム酸を生じる。血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人では事前に医師又は薬剤師へ相談する
ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)消化管内容物中の気泡の分離を促す消泡成分
ピレンゼピン塩酸塩消化管の運動にはほとんど影響を与えずに胃液の分泌を抑える

ピレンゼピン塩酸塩では、消化管以外への抗コリン作用により排尿困難、動悸、目のかすみが生じることがあります。排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。使用後は乗物又は機械類の運転操作を避けます。

ロートエキスやピレンゼピン塩酸塩を含む胃腸薬は、胃腸鎮痛鎮痙薬や乗物酔い防止薬との併用を避ける必要があります。

消泡はジメチコン、胃液分泌抑制はピレンゼピン塩酸塩です。

胃の不調に用いる漢方

胃の不調を改善する目的では、安中散、人参湯(理中丸)、平胃散、六君子湯などが用いられます。体力の程度や症状の組合せまで含めて区別します。

処方適すとされる人・症状
安中散体力中等度以下で、腹部は力がなく、胃痛又は腹痛があり、ときに胸やけ、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、吐きけ、嘔吐などを伴うものの神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱
人参湯(理中丸)体力虚弱で、疲れやすく手足などが冷えやすいものの胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎
平胃散体力中等度以上で、胃がもたれて消化が悪く、ときに吐きけ、食後に腹が鳴って下痢の傾向があるものの食べすぎによる胃のもたれ、急・慢性胃炎、消化不良、食欲不振
六君子湯体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

人参湯を下痢又は嘔吐に用いる場合は漫然と長期使用せず、1週間位使用しても改善しなければ使用を中止して専門家へ相談します。平胃散を急性胃炎に用いる場合は、5~6回使用しても改善しなければ使用を中止して専門家へ相談します。

六君子湯では、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることが知られています。安中散、人参湯、平胃散、六君子湯はいずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。

安中散・人参湯・平胃散・六君子湯は、体力と症状の組合せで見分けます。

受診の目安と服用方法

一般用医薬品の制酸薬、健胃薬、消化薬は、一時的な胃の不調に伴う症状を緩和する目的で使います。慢性的に胸やけ、胃部不快感、胃部膨満感などが続く場合や、薬をやめると症状がぶり返して手放せない場合は、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

嘔吐に発熱、下痢、めまい、興奮を伴う場合や、胃の中に吐くものがないのに吐きけが治まらない場合も受診が必要です。乳幼児や高齢者で激しい嘔吐がある場合は、脱水症状や吐瀉物による呼吸困難のおそれがあるため、医師の診療が優先されます。

服用時期は製剤の目的によって異なります。消化を助け、胃もたれを改善する効果を主とする製剤は食後服用のものが多く、空腹時や就寝時の胸やけ、ストレスによる胃酸の出すぎを抑える製剤は食間や就寝前のものが多くなっています。両方の効果をもつ製剤では、食後又は食間の服用指示のものが多くなっています。

医療用医薬品を服用している人では、副作用による胃の不快感を防ぐために胃の薬も処方されている場合があります。販売時には、胃の薬が処方されていないか確認します。

症状が慢性化・反復する場合や強い嘔吐では、一般用胃薬だけで対応しません。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

胃の薬の成分等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃酸の中和作用のほか、胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する作用がある。
  • b ジメチルポリシロキサンは、胃液の分泌を抑えることを目的として配合される。
  • c スクラルファートはアルミニウムを含むため、透析を受けている人では使用を避ける必要がある。
  • d ピレンゼピン塩酸塩は、消化管の運動を高めることで胃液の分泌を抑える。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a正 b誤 c誤 d正
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d誤

aとcが正しい。bのジメチルポリシロキサン(ジメチコン)は胃液分泌抑制成分ではなく、消化管内容物中の気泡の分離を促す消泡成分です。dのピレンゼピン塩酸塩は、消化管の運動にはほとんど影響を与えずに胃液分泌を抑えます。まちがえやすい点:ジメチコンは消泡、ピレンゼピン塩酸塩は胃液分泌抑制です。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a センブリは、苦味による健胃作用を期待して用いられる。
  • b リュウタンは、クマ科のUrsus arctos Linné又はその他近縁動物の胆汁を乾燥したものを基原とする。
  • c ウルソデオキシコール酸は利胆作用があるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。
  • d ビオジアスターゼは、味覚や嗅覚を刺激して唾液や胃液の分泌を促す健胃成分である。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
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正解: aとc

aとcが正しい。bで示された基原はリュウタンではなくユウタンです。リュウタンはリンドウ科のトウリンドウ等の根及び根茎を基原とします。dのビオジアスターゼは健胃成分ではなく、消化酵素を補う消化成分です。まちがえやすい点:リュウタンとユウタンの基原、健胃生薬と消化酵素を入れ替えないようにします。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

ある胃腸薬の1日量に、ピレンゼピン塩酸塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、ビオジアスターゼが含まれていた。この成分表についての説明として、最も適切なものはどれか。

  1. ピレンゼピン塩酸塩は、排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談する。
  2. メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、消化管内容物中の気泡の分離を促すことを目的とする成分である。
  3. 炭酸水素ナトリウムは、アルミニウムを含む制酸成分であるため、透析療法を受けている人では使用を避ける必要がある。
  4. ビオジアスターゼは、苦味によって唾液や胃液の分泌を促し、弱った胃の働きを高める健胃成分である。
  5. ピレンゼピン塩酸塩は、消化管の運動を高めながら胃液の分泌を抑える成分である。
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正解: ピレンゼピン塩酸塩は、排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談する。

ピレンゼピン塩酸塩は、排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人で症状悪化のおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは制酸作用と胃粘膜保護作用をもちます。透析療法を受けている人で使用を避けるのは、アルミニウムを含む制酸成分やスクラルファートで、炭酸水素ナトリウムはアルミニウムを含みません。ビオジアスターゼは消化成分です。ピレンゼピン塩酸塩は消化管運動にほとんど影響を与えず胃液分泌を抑えます。まちがえやすい点:成分表問題では、成分名と働き・相談対象を一対一で対応させます。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方