登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
腸の薬
整腸薬と腸の運動を整える成分
整腸薬は、腸の調子や便通を整え、腹部膨満感、軟便、便秘に用いられます。腸内細菌の数やバランスに影響する成分や、腸の活動を促す成分が主に配合されます。
| 成分 | 働き・特徴 |
|---|---|
| ビフィズス菌、アシドフィルス菌、ラクトミン、乳酸菌、酪酸菌等 | 腸内細菌のバランスを整える生菌成分 |
| ケツメイシ、ゲンノショウコ、アセンヤク | 整腸作用を期待して用いられる生薬成分 |
| トリメブチンマレイン酸塩 | 消化管の平滑筋に直接作用し、運動が低下しているときは亢進的に、亢進しているときは抑制的に働く |
トリメブチンマレイン酸塩では、まれに重篤な副作用として肝機能障害が生じることがあります。肝臓病の診断を受けた人は、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。
ケツメイシとゲンノショウコは、日本薬局方収載品では煎薬として整腸、腹部膨満感等に用いられます。
トリメブチンは消化管運動を調整し、重篤な副作用として肝機能障害があります。
止瀉成分は働きごとに区別する
止瀉薬では、収斂、腸内殺菌、吸着、腸管運動の抑制など、異なる仕組みの成分が使われます。成分名と働きを入れ替えないことが重要です。
| 種類・成分 | 働き・特徴 |
|---|---|
| 次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、タンニン酸アルブミン | 収斂作用により腸粘膜を保護する |
| オウバク、オウレン | 収斂作用に加え、抗菌作用、抗炎症作用も期待される |
| ベルベリン塩化物、タンニン酸ベルベリン、アクリノール | 細菌感染による下痢を鎮める腸内殺菌成分 |
| 炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、ヒドロキシナフトエ酸アルミニウム | 腸管内の異常発酵等で生じた有害物質を吸着する |
| 木クレオソート | 過剰な腸管の運動を正常化し、水分や電解質の分泌も抑える |
天然ケイ酸アルミニウムは抗菌成分ではなく吸着成分です。沈降炭酸カルシウムやリン酸水素カルシウムも、有害物質を吸着する目的で用いられます。
タンニン酸ベルベリンは、タンニン酸が収斂作用、ベルベリンが抗菌作用を担う化合物です。消化管内で両者に分かれて、それぞれ止瀉に働くことが期待されます。ベルベリンはオウバクやオウレンにも存在し、抗菌作用のほか抗炎症作用も持つとされます。
腸内殺菌成分を下痢の予防に用いたり、症状が治まった後も漫然と使用したりすると、腸内細菌のバランスを崩すことがあります。下痢の症状がある間だけの使用にとどめます。
タンニン酸は収斂、ベルベリンは抗菌。天然ケイ酸アルミニウムは吸着です。
収斂成分とロペラミドの注意点
収斂成分を主体とする止瀉薬は、細菌性の下痢や食中毒のときに腸の運動を鎮めると、状態を悪化させるおそれがあります。急性の激しい下痢や、腹痛、腹部膨満、吐きけ等を伴う場合は、安易な使用を避けます。
| 成分 | 主な注意・副作用 |
|---|---|
| 次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス等 | 長期連用で精神神経症状の報告があり、1週間以上継続使用しない。服用時は飲酒を避ける。妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避ける |
| タンニン酸アルブミン | まれにショック(アナフィラキシー)。アルブミンは牛乳のカゼインから精製されるため、牛乳アレルギーがある人は使用を避ける |
| ロペラミド塩酸塩 | 腸管運動を低下させ、水分や電解質の分泌も抑える。便秘、まれにイレウス様症状。めまい、眠気もある |
ロペラミド塩酸塩は、食べすぎ・飲みすぎによる下痢と寝冷えによる下痢を対象とし、食あたりや水あたりによる下痢は適用対象ではありません。発熱を伴う下痢、血便、粘液便が続く場合も適用対象でない可能性があり、安易な使用を避けます。
ロペラミド塩酸塩を含む一般用医薬品は15歳未満には適用がありません。使用は短期間にとどめ、2~3日間使用して改善しない場合は医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
腸管運動を低下させるため、胃腸鎮痛鎮痙薬との併用は避けます。また、中枢抑制作用があり、服用後は乗物又は機械類の運転操作を避け、服用時は飲酒しません。母乳を与える女性では、使用を避けるか、使用期間中の授乳を避けます。
ロペラミドは食あたり・水あたりには用いず、2~3日で改善しなければ受診します。
刺激性瀉下成分の違い
刺激性瀉下成分は、腸管を刺激して反射的な腸の運動を引き起こします。大量使用では腸管粘膜への刺激が大きくなり、激しい腹痛や炎症を起こすおそれがあります。
| 成分 | 作用部位・仕組み |
|---|---|
| ヒマシ油 | 小腸でリパーゼにより生じる分解物が小腸を刺激する |
| センナ・センノシド | 胃や小腸で消化されず、大腸の腸内細菌により分解され、分解生成物が大腸を刺激する |
| ダイオウ | センノシドを含み、大腸刺激性瀉下成分として用いられる |
| ビサコジル | 特に結腸や直腸の粘膜を刺激し、結腸での水分吸収も抑える |
| ピコスルファートナトリウム | 胃や小腸では分解されず、大腸の腸内細菌によって分解されて大腸を刺激する |
ヒマシ油は、腸内容物を急速に排除するために用いられますが、峻下作用があります。激しい腹痛又は悪心・嘔吐がある人、妊婦又は妊娠していると思われる女性、3歳未満の乳幼児では使用を避けます。
防虫剤や殺鼠剤の誤飲など、脂溶性物質による中毒にはヒマシ油を使用しません。ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出し、中毒症状を増悪させるおそれがあるためです。ヒマシ油と駆虫薬の併用も、駆虫成分の吸収を高めて全身性副作用の危険を増すため避けます。
センナ及びセンノシドが配合された瀉下薬は、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けます。センナ、センノシド、ダイオウは乳汁中へ移行することが知られ、母乳を与える女性では使用を避けるか、使用期間中の授乳を避けます。
ビサコジルの腸溶性製剤は、胃内で溶け出すのを避けるため、服用前後1時間以内は制酸成分を含む胃腸薬や牛乳を避けます。大腸刺激性瀉下薬は服用後数時間で効くものが多く、就寝前に服用して起床時の効果を求める使い方があります。
ヒマシ油は小腸、センノシド・ピコスルファートは大腸で作用します。
水分を増やす瀉下成分を整理する
瀉下薬には、腸を直接刺激するものだけでなく、糞便中の水分量やかさを増やして排便を促す成分があります。
| 種類・成分 | 働き |
|---|---|
| 酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム | 腸内容物の浸透圧を高め、糞便中の水分量を増し、大腸を刺激して排便を促す |
| カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、プランタゴ・オバタの種子又は種皮 | 腸管内で水分を吸収し、糞便のかさを増やして柔らかくする |
| ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS) | 腸内容物へ水分を浸透しやすくし、糞便中の水分量を増して柔らかくする |
| マルツエキス | 麦芽糖が腸内細菌により発酵して生じるガスで便通を促す |
無機塩類は浸透圧を下げるのではなく、高めます。マグネシウムを含む成分は一部が吸収されて尿中に排泄されるため、腎臓病の診断を受けた人では高マグネシウム血症のおそれがあり、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。
硫酸ナトリウムは、血液中の電解質のバランスを損ない、心臓への負担を増して心臓病を悪化させるおそれがあります。心臓病の診断を受けた人は使用前に医師又は薬剤師へ相談します。
膨潤性瀉下成分は、効果を高めるため十分な水分摂取が重要です。マルツエキスは主に乳幼児の便秘に用いられますが、水分不足に起因する便秘には効果を期待できません。
無機塩類は浸透圧を高め、膨潤性成分は水を吸って便のかさを増やします。
瀉下薬の連用・併用と漢方処方製剤
瀉下薬を複数併用すると、激しい腹痛を伴う下痢や脱水症状を生じるおそれがあります。どの種類の瀉下成分であっても、瀉下薬を使用している間は他の瀉下薬を使用しません。
大腸刺激性瀉下成分を毎日漫然と連用すると、腸の運動が緩慢になり、薬の量を増やさないと効きにくくなることがあります。便秘時の頓服として用い、毎日の排便が滞る場合は大腸刺激性瀉下成分だけに依存しない方法を指導します。
| 漢方処方製剤 | 手引きに示された適する状態 |
|---|---|
| 桂枝加芍薬湯 | 体力中等度以下で、腹部膨満感のあるもののしぶり腹、腹痛、下痢、便秘 |
| 大黄甘草湯 | 体力に関わらず使用でき、便秘及び便秘に伴う頭重、のぼせ、湿疹・皮膚炎、ふきでもの、食欲不振、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔など |
| 大黄牡丹皮湯 | 体力中等度以上で、下腹部痛があって便秘しがちなものの月経不順、月経困難、月経痛、便秘、痔疾 |
| 麻子仁丸 | 体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状なものの便秘及び便秘に伴う諸症状 |
桂枝加芍薬湯と麻子仁丸は適する状態が異なります。桂枝加芍薬湯は腹部膨満感を伴うしぶり腹、腹痛、下痢、便秘に用いられ、麻子仁丸は、ときに便が硬く塊状となる便秘に適すとされます。
大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、麻子仁丸はダイオウを含みます。これらでは他の瀉下薬との併用に注意し、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、麻子仁丸を使用している間は他の瀉下薬を避ける必要があります。
麻子仁丸は「体力中等度以下・ときに便が硬く塊状な便秘」が目印です。
下痢・便秘で受診を勧める場面
下痢は、腸管内の有害な物質を排出する防御反応でもあります。止瀉薬で無理に下痢を止めることで状態が悪化することがあるため、原因や随伴症状を確認します。また、下痢では水分と電解質の補給も重要です。
- 発熱を伴う下痢では、腸内感染症等の可能性があるため、安易に止瀉薬で症状を抑えません。
- 血便がある場合は腸管出血の可能性があるため、早期の受診が必要です。
- 粘液便が続く場合は腸の炎症性疾患の可能性があり、早期の受診が必要です。
- 原因が明確でない下痢や便秘が医薬品の使用中に生じた場合は、その医薬品を中止して医師や薬剤師などに相談します。
便秘では生活習慣の改善が重要で、瀉下薬の使用は一時的なものにとどめます。特に刺激性瀉下成分は、繰り返し使用すると腸管の感受性が低下して効きにくくなるため、常用を避けます。
著しい腹痛や、便秘に伴う吐きけ・嘔吐がある場合は、安易に瀉下薬を使用しません。急性腹症の可能性があり、瀉下成分の刺激で悪化するおそれがあるため、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
発熱・血便・続く粘液便では下痢を止めるより受診を優先します。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
腸の薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せを一つ選んでください。
- a タンニン酸ベルベリンは、タンニン酸の収斂作用とベルベリンの抗菌作用による止瀉作用を期待して用いられる。
- b 天然ケイ酸アルミニウムは、細菌感染による下痢を鎮める抗菌作用を目的として用いられる。
- c ピコスルファートナトリウムは、胃や小腸では分解されず、大腸の腸内細菌によって分解されて大腸を刺激する。
- d 酸化マグネシウムは、腸内容物の浸透圧を低下させることにより糞便中の水分量を増す。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aは正しいです。タンニン酸ベルベリンでは、タンニン酸が収斂作用、ベルベリンが抗菌作用を示します。bは誤りです。天然ケイ酸アルミニウムは腸管内の有害物質を吸着する成分です。cは正しいです。ピコスルファートナトリウムは胃や小腸では分解されず、大腸の腸内細菌で分解されます。dは誤りです。酸化マグネシウム等の無機塩類は腸内容物の浸透圧を高めます。まちがえやすい点:『抗菌と吸着』『浸透圧を高める・低める』の入れ替えに注意します。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
瀉下薬及び止瀉薬に関する次の記述のうち、正しいものの組合せを一つ選んでください。
- a ヒマシ油は、防虫剤や殺鼠剤を誤飲した場合のような脂溶性物質による中毒で、腸内容物を速やかに排除するために用いる。
- b センノシドは、胃や小腸で消化されず、大腸に生息する腸内細菌によって分解される。
- c ロペラミド塩酸塩は、食あたりや水あたりによる下痢を主な適用対象とする。
- d タンニン酸アルブミンに含まれるアルブミンは牛乳のカゼインから精製されるため、牛乳にアレルギーがある人では使用を避ける。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- bとd
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正解: bとd
正しいのはbとdです。aは誤りで、ヒマシ油は脂溶性物質による中毒では使用を避けます。ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出し、中毒症状を増悪させるおそれがあります。bは正しく、センノシドは胃や小腸では消化されず、大腸の腸内細菌で分解されます。cは誤りで、ロペラミド塩酸塩は食あたりや水あたりによる下痢には適用されません。dは正しいです。まちがえやすい点:ヒマシ油の『中毒時に使う』という記述だけで判断せず、脂溶性物質では避けることまで確認します。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
寝冷えによる下痢のため、ロペラミド塩酸塩を含む一般用医薬品を購入しようとしている人から相談を受けました。最も適切な説明を一つ選んでください。
- 食あたりや水あたりによる下痢にも同じように使用できると説明する
- 腹痛を伴う場合は、胃腸鎮痛鎮痙薬を併用するとよいと説明する
- 服用後にめまいや眠気が現れることがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避けるよう説明する
- 1~2週間程度は継続して使用し、それでも改善しない場合に受診するよう説明する
- 服用時に飲酒すると中枢抑制作用が弱まるため、特に制限はないと説明する
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正解: 服用後にめまいや眠気が現れることがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避けるよう説明する
ロペラミド塩酸塩には中枢神経系を抑制する作用があり、副作用としてめまいや眠気が現れることがあるため、服用後は乗物又は機械類の運転操作を避けます。食あたりや水あたりによる下痢は適用対象ではなく、胃腸鎮痛鎮痙薬との併用も避けます。使用は短期間にとどめ、2~3日間使用しても改善しない場合には医師の診療を受けるなどの対応が必要です。飲酒は中枢抑制作用を増強するおそれがあるため避けます。まちがえやすい点:ロペラミドでは『2~3日』『運転しない』『飲酒しない』『鎮痛鎮痙薬を併用しない』をまとめて確認します。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方