登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用

強心薬・高コレステロール改善薬

動悸・息切れと強心薬

心臓は血液を全身へ送るポンプで、通常は自律神経系によって無意識に調整されています。激しい運動や興奮による動悸・息切れは、健康な人にも起こります。

心臓の働きが低下して十分な血液を送り出せないと、脈拍数を増やして補おうとするため動悸が起こります。また、各部への酸素供給が低下すると、取り込む空気の量を増やそうとして息切れが起こります。

強心薬は、疲労やストレスなどによる軽度の心臓の働きの乱れについて、心臓の働きを整え、動悸や息切れなどを改善する目的で用いられます。主体となるのは、心筋に作用して収縮力を高める強心成分です。

動悸は脈拍増加で補う反応、息切れは酸素不足を呼吸量増加で補う反応です。

強心薬の生薬成分

強心成分にはセンソ、ゴオウ、ジャコウ、ロクジョウなどがあります。名称と作用の組合せを区別します。

成分主な基原・働き
センソヒキガエル科のアジアヒキガエル等の耳腺の分泌物。微量で強い強心作用を示す。
ジャコウシカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物。強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高め、意識をはっきりさせる。
ゴオウウシ科のウシの胆嚢中に生じた結石。強心作用のほか、末梢血管の拡張による血圧降下、興奮を静める作用がある。
ロクジョウシカ科動物の雄鹿の角化していない幼角。強心作用のほか、強壮、血行促進などの作用がある。
リュウノウ中枢神経系の刺激作用による気つけを期待して用いる。
シンジュアコヤガイ、シンジュガイ、クロチョウガイ等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質。鎮静作用などを期待して用いる。

ジンコウ、動物胆、ニンジン、インヨウカクなども配合される場合がありますが、それぞれの作用は別項目を参照して出題する扱いです。

ゴオウは血管拡張・血圧降下、ジャコウは呼吸中枢刺激、ロクジョウは強壮・血行促進です。

センソと苓桂朮甘湯

センソは有効域が比較的狭く、1日用量中5mgを超える医薬品は劇薬です。一般用医薬品では1日用量が5mg以下となるよう定められています。

センソは皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示します。センソを含む丸薬や錠剤などを口中で噛み砕くと舌などが麻痺することがあるため、噛まずに服用します。通常用量でも悪心、嘔吐が現れることがあります。

苓桂朮甘湯は、体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏に適すとされます。

苓桂朮甘湯には強心作用が期待される生薬は含まれず、主に利尿作用によって水毒の排出を促します。構成生薬としてカンゾウを含み、高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人では、グリチルリチン酸による偽アルドステロン症を生じやすいとされています。

センソは5mgが境目、噛まずに服用。苓桂朮甘湯は強心ではなく利尿が主眼です。

強心薬の相談と受診

滋養強壮保健薬には強心薬と同じ生薬成分が配合されることがあります。また、何らかの疾患で医師の治療を受けている場合、強心薬が治療中の疾患へ悪影響を及ぼしたり、動悸・息切れが疾患そのものや処方薬の副作用である可能性があります。

医師の治療を受けている人は、強心薬を使う前に、治療中の医師または処方薬を調剤した薬剤師へ相談します。

一般に5~6日間使用しても改善しない場合は、呼吸器疾患、貧血、高血圧症、甲状腺機能の異常、精神神経系の疾患なども考え、受診を勧めます。

激しい運動をしていないのに突然の動悸・息切れが起こり、意識が薄れる、脈が十分触れない、胸部の痛みや冷や汗を伴う場合は、早めに医師の診療を受ける対応が必要です。

強心薬は5~6日で改善しなければ受診を考え、治療中の人は使用前に相談します。

LDL・HDLと脂質異常症

コレステロールは細胞の構成成分で、胆汁酸や副腎皮質ホルモンなどの産生にも関わります。産生と代謝は主として肝臓で行われます。

コレステロールは水に溶けにくいため、血液中では血漿タンパク質と結合したリポタンパク質として存在します。LDLは肝臓から末梢組織へコレステロールを運び、HDLは末梢組織から肝臓へ運びます。

LDLが多くHDLが少ないと、末梢組織へのコレステロール蓄積を招き、心臓病、肥満、動脈硬化症などにつながる危険性が高くなります。リポタンパク質のバランスの乱れは、生活習慣病を生じる前の段階では自覚症状を伴わないことが多いとされます。

検査値脂質異常症とされる基準
LDL140mg/dL以上
HDL40mg/dL未満
中性脂肪空腹時150mg/dL以上

この3項目はいずれかに該当する状態が脂質異常症とされます。

LDLは肝臓→末梢、HDLは末梢→肝臓。基準は3項目のいずれかです。

高コレステロール改善成分

高コレステロール改善薬は、血中コレステロール異常の改善や、それに伴う末梢血行障害である手足の冷え・痺れの緩和などを目的とします。

成分働き
大豆油不けん化物(ソイステロール)腸管におけるコレステロールの吸収を抑える。
リノール酸コレステロールと結合して代謝されやすいコレステロールエステルを形成し、肝臓でのコレステロール代謝を促す。
ポリエンホスファチジルコリンコレステロールと結合して代謝されやすいコレステロールエステルを形成し、肝臓でのコレステロール代謝を促す。
パンテチンLDL等の異化排泄を促進し、リポタンパクリパーゼ活性を高め、HDL産生を高める。
リボフラビン酪酸エステル等コレステロールの生合成抑制、排泄・異化促進、中性脂肪抑制、過酸化脂質分解の作用があるとされる。
トコフェロール酢酸エステルコレステロールからの過酸化脂質の生成を抑え、末梢血管の血行を促進する。

高コレステロール改善成分では、悪心、胃部不快感、胸やけ、下痢などの消化器系の副作用が現れることがあります。

リボフラビンの摂取で尿が黄色くなることがありますが、使用中止を要する副作用などの異常ではありません。

ソイステロールは吸収抑制、リノール酸は代謝促進、パンテチンはLDL異化とHDL産生です。

生活習慣改善と使用期間

高コレステロール改善薬による対処は、食事療法や運動療法の補助的な位置づけです。糖質や脂質を多く含む食品の過度の摂取を控え、適度な運動を取り入れるなど、生活習慣の改善も図ります。

ウエスト周囲径の目安は男性85cm、女性90cm以上で、この場合は生活習慣病を生じるリスクが高まるとされています。ただし、高コレステロール改善薬は、腹囲を減少させるなどの痩身効果を目的とする薬ではありません。

生活習慣を改善しながら1~3ヶ月使用しても検査値が改善しない場合は、いったん使用を中止し、医師の診療を受ける対応が必要です。

高コレステロール改善薬は生活習慣改善の補助で、1~3ヶ月で改善しなければ受診します。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

強心薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a センソを1日用量中5mgを超えて含有する医薬品は劇薬に指定されている。
  • b ゴオウは、強心作用のほか、末梢血管の収縮による血圧上昇作用があるとされる。
  • c シンジュは、鎮静作用等を期待して用いられる。
  • d 苓桂朮甘湯には、強心作用が期待される生薬が含まれている。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a正 b誤 c誤 d正
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d誤

aは正しい。センソは1日用量中5mgを超えると劇薬です。bは誤りで、ゴオウは末梢血管を拡張して血圧を降下させる作用があるとされます。cは正しい。シンジュは鎮静作用等を期待して用いられます。dは誤りで、苓桂朮甘湯に強心作用が期待される生薬は含まれず、主に利尿作用で水毒の排出を促します。まちがえやすい点:ゴオウの『拡張・降下』と、苓桂朮甘湯の『強心成分なし』を組み替えないことです。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a LDLは、末梢組織のコレステロールを取り込んで肝臓へ運ぶ。
  • b パンテチンは、LDL等の異化排泄を促進し、HDL産生を高める作用があるとされる。
  • c トコフェロール酢酸エステルは、コレステロールの生合成抑制と排泄・異化促進、中性脂肪抑制、過酸化脂質分解作用を有するとされる。
  • d 大豆油不けん化物(ソイステロール)は、腸管におけるコレステロールの吸収を抑える働きがあるとされる。
  1. aとb
  2. aとc
  3. bとc
  4. bとd
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: bとd

正しいのはbとdです。aは誤りで、末梢組織から肝臓へコレステロールを運ぶのはHDLで、LDLは肝臓から末梢組織へ運びます。cは誤りで、この生合成抑制・排泄異化促進・中性脂肪抑制・過酸化脂質分解の作用はリボフラビン酪酸エステル等について述べられています。トコフェロール酢酸エステルは過酸化脂質の生成抑制と末梢血行促進です。まちがえやすい点:パンテチン、ビタミンB2、ビタミンEの働きを入れ替えないことです。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

高コレステロール改善薬を購入しようとしている人から相談を受けた。成分欄には、大豆油不けん化物(ソイステロール)、パンテチン、トコフェロール酢酸エステルが記載されている。説明として最も適切なものはどれか。

  1. ソイステロールは、コレステロールと結合して代謝されやすいコレステロールエステルを形成し、肝臓での代謝を促します。
  2. パンテチンは、LDL等の異化排泄を促進し、リポタンパクリパーゼ活性を高めてHDL産生を高める作用があるとされています。
  3. トコフェロール酢酸エステルは、コレステロールの生合成を抑制し、中性脂肪抑制作用と過酸化脂質分解作用を示すとされています。
  4. 高コレステロール改善薬は、血中コレステロール異常の改善とともに、腹囲を減少させる痩身効果を目的としています。
  5. 生活習慣を改善しながら5~6日間使用して検査値が改善しない場合は、使用を中止して医師の診療を受けます。
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正解: パンテチンは、LDL等の異化排泄を促進し、リポタンパクリパーゼ活性を高めてHDL産生を高める作用があるとされています。

パンテチンは、LDL等の異化排泄を促進し、リポタンパクリパーゼ活性を高め、HDL産生を高める作用があるとされます。ソイステロールは腸管でのコレステロール吸収を抑えます。トコフェロール酢酸エステルは過酸化脂質の生成を抑え、末梢血行を促進します。高コレステロール改善薬は痩身効果を目的とせず、生活習慣改善を図りながら1~3ヶ月使用しても検査値が改善しない場合に、使用を中止して受診します。まちがえやすい点:5~6日は強心薬、1~3ヶ月は高コレステロール改善薬の受診目安です。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方