登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
貧血用薬・その他の循環器用薬
鉄製剤が改善する貧血
貧血用薬の鉄製剤は、鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄分を補い、造血機能の回復を図る医薬品です。鉄分は、赤血球が酸素を運搬する上で重要なヘモグロビンの産生に不可欠です。
鉄分が不足し始めても、初期には貯蔵鉄や血清鉄が減るだけで、ヘモグロビン量はすぐには減りません。鉄欠乏が続くとヘモグロビンが減少し、疲労、動悸、息切れ、血色不良、頭痛、耳鳴り、めまいなどの貧血症状が現れます。
鉄欠乏状態は、食事からの鉄分不足や消化管からの吸収障害、消化管出血などで生じます。また、体の成長が著しい年長乳児や幼児、月経血損失のある女性、妊婦、母乳を与える女性では鉄欠乏状態を生じやすいとされます。ただし、症状が出る前から予防目的で鉄製剤を使用することは適当ではありません。
鉄製剤で改善できるのは鉄欠乏性貧血で、症状が出る前の予防使用はしません。
鉄製剤の配合成分を対応で覚える
鉄製剤では、鉄そのものだけでなく、鉄の利用や造血を助ける金属成分、ビタミン成分が配合されることがあります。成分名と働きの入れ替えに注意します。
| 成分 | 働き・目的 |
|---|---|
| フマル酸第一鉄、溶性ピロリン酸第二鉄、可溶性含糖酸化鉄、クエン酸鉄アンモニウム | 不足した鉄分を補充する |
| 硫酸銅 | 銅が鉄の代謝や輸送に関わり、補充した鉄分を利用したヘモグロビン産生を助ける |
| 硫酸コバルト | コバルトがビタミンB12の構成成分として関わり、骨髄での造血機能を高める |
| 硫酸マンガン | マンガンが糖質・脂質・タンパク質の代謝に働く酵素の構成物質となり、エネルギー合成を促進する |
| ビタミンB6 | ヘモグロビン産生に必要 |
| ビタミンB12、葉酸 | 正常な赤血球の形成に働く |
| ビタミンC | 消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つ |
銅・コバルト・マンガンは目的がそれぞれ異なります。コバルトがビタミンB12の構成成分であり、マンガンではありません。
銅は鉄利用、コバルトは造血、マンガンはエネルギー合成、ビタミンCは鉄吸収を助けます。
服用時の副作用と相互作用
鉄製剤の主な副作用は、悪心、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹痛、便秘、下痢などの胃腸障害です。鉄分は空腹時のほうが吸収されやすいとされますが、消化器系への副作用を軽減するため、食後の服用が望ましいとされます。
鉄製剤の服用後に便が黒くなることがあります。これは通常、使用中止を要する異常ではありません。一方、服用前から便が黒い場合は、消化管内出血が貧血の原因となっている可能性があるため、服用前後の便の状況を比べる必要があります。
複数の貧血用薬を併用すると鉄分の過剰摂取となり、胃腸障害や便秘などが起こりやすくなります。また、服用の前後30分に緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿などタンニン酸を含む飲食物を摂ると、鉄の吸収が悪くなることがあるため、この時間帯の摂取を控えます。
医師の治療を受けている人では、鉄分の吸収に影響する薬剤が処方されていることがあります。使用前に、治療中の医師または処方薬を調剤した薬剤師へ相談します。
鉄製剤は食後が望ましく、服用前後30分はタンニン酸を含む飲食物を避けます。
2週間で改善しないとき
鉄製剤で改善できる貧血は鉄欠乏性貧血だけです。食事の偏りによる鉄分不足が考えられる場合は、鉄製剤の使用とともに食生活を改善することが重要です。
食生活を改善し、鉄製剤を2週間程度使用しても症状が改善しない場合は、使用を漫然と続けず医療機関を受診します。月経過多、消化管出血、痔、子宮筋腫などによる慢性的な血液の損失や、鉄欠乏性貧血以外の貧血が原因となっている可能性があるためです。
食生活改善と鉄製剤を2週間程度続けても改善しなければ、使用を続けず受診します。
循環器用薬の成分と働き
その他の循環器用薬では、ユビデカレノン、ヘプロニカート、イノシトールヘキサニコチネート、ルチンなどの働きを区別します。
| 成分 | 働き・特徴 |
|---|---|
| ユビデカレノン(エネルギー代謝) | 肝臓や心臓などに多く存在し、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助け、栄養素からエネルギーが産生される際にビタミンB群とともに働く。別名コエンザイムQ10 |
| ユビデカレノン(心疾患の症状) | 心筋の酸素利用効率と収縮力を高め、血液循環を改善するとされ、軽度な心疾患による動悸、息切れ、むくみに用いられる |
| ヘプロニカート | ニコチン酸が遊離し、その働きで末梢の血液循環を改善する |
| イノシトールヘキサニコチネート | ニコチン酸が遊離し、その働きで末梢の血液循環を改善する |
| ルチン | ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化を期待して用いられる |
ヘプロニカートとイノシトールヘキサニコチネートは、ビタミンEと組み合わせて用いられる場合が多いとされます。
ユビデカレノンの副作用として、胃部不快感、食欲減退、吐きけ、下痢、発疹・痒みがあります。2週間位使用して改善しない場合は、漫然と使用を継続しません。15歳未満の小児向けの製品はありません。
コエンザイムQ10を含む食品を合わせて摂取すると、胃部不快感、吐きけ、下痢などが現れやすくなるおそれがあります。また、作用増強による心臓への負担や副作用のおそれがあるため、強心薬等との併用は避けます。
ユビデカレノンはビタミンB群と働き、2週間位で改善しなければ使用を続けません。
三黄瀉心湯と七物降下湯
| 処方 | 適する人・症状 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 三黄瀉心湯 | 体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などがあるものの高血圧の随伴症状、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症 | 体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人、だらだら出血が長引く人には不向き。ダイオウを含み、使用中は瀉下薬を避ける |
| 七物降下湯 | 体力中等度以下で、顔色が悪く疲れやすく、胃腸障害のないものの高血圧に伴うのぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重 | 胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き。15歳未満の小児への使用を避ける |
三黄瀉心湯を鼻血に用いる場合は、5~6回使用して改善しなければ、いったん使用を中止して専門家に相談します。痔出血や便秘では、1週間位使用して改善しなければ同様に相談します。
高血圧や心疾患に伴う症状を改善する一般用医薬品は、体質の改善や症状の緩和を目的とする補助的なものであり、高血圧や心疾患そのものを治療するものではありません。
三黄瀉心湯は体力中等度以上、七物降下湯は体力中等度以下で条件が異なります。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
貧血用薬(鉄製剤)に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a 硫酸銅は、補充した鉄分を利用してヘモグロビンが産生されるのを助ける目的で配合される場合がある。
- b 硫酸マンガンは、骨髄での造血機能を高める目的で配合される場合がある。
- c ビタミンCは、消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つ目的で用いられる。
- d 鉄製剤は、貧血症状がみられる以前から予防的に使用することが適当である。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b正 c誤 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aとcは正しい記述です。bは誤りで、骨髄での造血機能を高める目的で配合されるのは硫酸コバルトです。硫酸マンガンはエネルギー合成を促進する目的で配合されます。dも誤りで、貧血症状がみられる以前から予防的に鉄製剤を使用することは適当ではありません。まちがえやすい点:銅・コバルト・マンガンの働きを入れ替えないようにします。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a ユビデカレノンは、栄養素からエネルギーが産生される際にビタミンB群とともに働く。
- b 七物降下湯は、体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、便秘傾向のあるものに適すとされる。
- c ヘプロニカートは、ニコチン酸が遊離し、その働きによって末梢の血液循環を改善するとされる。
- d 三黄瀉心湯を使用している間は、瀉下薬を併用することが望ましい。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
答えと解説を見る
正解: aとc
正しいのはaとcです。bの内容は三黄瀉心湯に近く、七物降下湯は体力中等度以下で、顔色が悪く疲れやすく、胃腸障害のないものに適すとされます。dは誤りで、三黄瀉心湯はダイオウを含むため、使用中は瀉下薬の使用を避けます。まちがえやすい点:三黄瀉心湯と七物降下湯は体力条件と症状を一まとまりで区別します。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
35歳の女性が貧血用薬を購入しようとしている。食生活が乱れ気味で、成分には溶性ピロリン酸第二鉄、ビタミンB12、葉酸が含まれている。使用時の説明として最も適切なものはどれか。
- 鉄分は空腹時のほうが吸収されやすいため、消化器系への副作用を軽減する目的でも食前に服用するのが望ましい。
- ビタミンB12は、消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つ目的で配合されている。
- 服用後に便が黒くなった場合は、鉄製剤による異常の可能性があるため、直ちに使用を中止する。
- 服用前後30分に緑茶やコーヒーを摂ると鉄の吸収が高まるため、この時間帯に摂取するとよい。
- 食生活を改善し、鉄製剤を2週間程度続けても症状が改善しない場合は、使用を漫然と続けず医療機関を受診する。
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正解: 食生活を改善し、鉄製剤を2週間程度続けても症状が改善しない場合は、使用を漫然と続けず医療機関を受診する。
適切なのは、食生活を改善し、鉄製剤を2週間程度続けても改善しなければ受診するという説明です。食後の服用は消化器系副作用の軽減に望ましく、ビタミンB12は正常な赤血球形成に働きます。服用後の黒い便は通常中止を要する異常ではありません。服用前後30分のタンニン酸を含む飲食物は鉄の吸収を悪くすることがあるため控えます。まちがえやすい点:空腹時は吸収が高くても、実際の服用は胃腸障害軽減のため食後が望ましいとされます。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方