登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
鼻に用いる薬
鼻炎用点鼻薬が対応する症状
急性鼻炎は、鼻腔内に付着したウイルスや細菌によって起こる鼻粘膜の炎症で、かぜに伴って現れることが多いものです。これに対し、アレルギー性鼻炎は、ハウスダストや花粉などのアレルゲンに対する過敏反応で起こります。
副鼻腔炎は、鼻粘膜の炎症が副鼻腔まで及んだものです。慢性の副鼻腔炎は一般に蓄膿症と呼ばれます。
鼻炎用点鼻薬は、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎または副鼻腔炎による鼻づまり、鼻みず、くしゃみ、頭重を緩和するために鼻腔内へ用いる外用液剤です。配合成分は鼻腔内での局所的な作用を目的としています。
一般用医薬品で対応するのは、急性またはアレルギー性の鼻炎と、それに伴う副鼻腔炎です。蓄膿症など慢性のものは対象ではありません。
一般用点鼻薬は急性・アレルギー性鼻炎とそれに伴う副鼻腔炎まで。慢性の蓄膿症は対象外です。
配合成分と働きを対応させる
鼻炎用点鼻薬では、鼻粘膜の充血を和らげるアドレナリン作動成分を主体に、抗ヒスタミン成分、抗アレルギー成分、局所麻酔成分、殺菌消毒成分、抗炎症成分などが配合されることがあります。
| 成分の種類・成分名 | 主な働き |
|---|---|
| ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩 | 交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させ、充血や腫れを和らげます。 |
| クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩 | ヒスタミンの働きを抑え、くしゃみや鼻汁などを緩和します。 |
| クロモグリク酸ナトリウム | 肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑え、花粉やハウスダストなどによる鼻アレルギー症状を緩和します。 |
| リドカイン、リドカイン塩酸塩 | 局所麻酔成分として、鼻粘膜の過敏性や痛み、痒みを抑えます。 |
| ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物 | 鼻粘膜を清潔に保ち、細菌による二次感染を防止します。 |
| グリチルリチン酸二カリウム | 鼻粘膜の炎症を和らげます。 |
血管収縮=アドレナリン作動、ヒスタミン作用抑制=抗ヒスタミン、遊離抑制=クロモグリク酸です。
殺菌消毒成分の効く相手
ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物はいずれも陽性界面活性成分です。
黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、カンジダなどの真菌類に対して殺菌消毒作用を示します。一方、結核菌やウイルスには効果がありません。
したがって、ベンザルコニウム塩化物を「ウイルスにも効く」、セチルピリジニウム塩化物を「局所麻酔成分」とする記述は、成分と働きの対応が逆です。
殺菌消毒成分は細菌・一部真菌に作用し、結核菌とウイルスには効果がありません。
クロモグリク酸の対象と使用判断
クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンが遊離するのを抑え、花粉やハウスダストなどによる鼻アレルギー症状を緩和します。通常は抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合されます。
アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎には無効です。原因がアレルギーかどうかはっきりしない人は、使用前に専門家へ相談するなど慎重に判断します。
3日間使用しても改善しない場合は、アレルギー以外の原因である可能性があります。また、医療機関で減感作療法などのアレルギー治療を受けている人では、その治療を妨げるおそれがあるため、使用前に医師または薬剤師へ相談する必要があります。
まれに重篤な副作用としてアナフィラキシーを生じることがあります。そのほか、鼻出血や頭痛が現れることがあります。改善していても、2週間を超えて使用した場合の有効性・安全性に関する科学的データは限られています。
クロモグリク酸は鼻アレルギー用。非アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎には無効です。
使いすぎと全身への影響
アドレナリン作動成分は、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させます。しかし、配合された点鼻薬を過度に使うと、鼻粘膜の血管が反応しにくくなり、逆に血管が拡張して二次充血を起こし、鼻づまりがひどくなりやすくなります。
点鼻薬は鼻腔内へ局所的に用いますが、成分は鼻粘膜の血管から吸収されて循環血液中に入りやすいため、全身的な影響を生じることがあります。アドレナリン作動成分では、鼻以外の器官や臓器への影響にも注意が必要です。
アドレナリン作動成分は鎮咳去痰薬、外用痔疾用薬、点眼薬などにも配合される場合があります。抗ヒスタミン成分も、かぜ薬、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬などに配合されることがあり、併用すると同種成分が重複して、作用が強くなったり副作用が現れやすくなったりするおそれがあります。
点鼻薬でも全身作用はあり得ます。アドレナリン作動成分の使いすぎは二次充血を招きます。
使用方法と受診すべき場合
スプレー式鼻炎用点鼻薬は、噴霧した薬液が鼻汁とともに逆流することがあるため、使用前に鼻をよくかみます。使用後は鼻に接した部分を清潔なティッシュペーパーなどで拭き、キャップを閉めて清潔に保管します。
汚染を防ぐため、容器はなるべく直接鼻に触れないようにし、他人と共有しません。
鼻炎用点鼻薬は原因そのものを取り除く薬ではありません。長期連用は避け、3日位使用しても改善しない場合は漫然と継続せず、耳鼻科などの医療機関を受診します。
鼻炎が続くと副鼻腔炎や中耳炎につながることがあり、中耳炎が生じた場合などは受診を勧めます。また、鼻粘膜が腫れてポリープである鼻茸となっている場合は、一般用医薬品で対処するのは適当ではなく、医療機関での治療が必要です。
使用前に鼻をかむ。3日位で改善しなければ受診し、鼻茸は一般用点鼻薬で対処しません。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
鼻炎用点鼻薬とその配合成分に関する次の記述a〜dの正誤について、正しい組合せはどれか。
- a ナファゾリン塩酸塩は、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させ、充血や腫れを和らげる。
- b クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を促進して、鼻アレルギー症状を緩和する。
- c リドカイン塩酸塩は、鼻粘膜の過敏性や痛み、痒みを抑える目的で配合される場合がある。
- d ベンザルコニウム塩化物は、結核菌やウイルスにも殺菌消毒作用を示す。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a誤 b誤 c正 d正
- a正 b誤 c誤 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aとcが正しい記述です。クロモグリク酸ナトリウムはヒスタミンの遊離を促進するのではなく抑えます。ベンザルコニウム塩化物などの殺菌消毒成分は、結核菌やウイルスには効果がありません。まちがえやすい点:抗ヒスタミン成分はヒスタミンの働きを抑え、クロモグリク酸ナトリウムはヒスタミンの遊離を抑えます。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a 一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬は、蓄膿症など慢性の副鼻腔炎も対応範囲に含む。
- b スプレー式鼻炎用点鼻薬は、噴霧後の逆流を防ぐため、使用前に鼻をよくかんでおく。
- c クロモグリク酸ナトリウムは、アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎にも有効である。
- d 点鼻薬の成分は鼻粘膜の血管から吸収され、循環血液中に入って全身的な影響を生じることがある。
- aとb
- aとc
- bとc
- bとd
- cとd
答えと解説を見る
正解: bとd
正しいのはbとdです。一般用点鼻薬の対応範囲は急性またはアレルギー性の鼻炎と、それに伴う副鼻腔炎であり、蓄膿症など慢性のものは対象外です。クロモグリク酸ナトリウムはアレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎には無効です。まちがえやすい点:点鼻薬は局所用でも、成分が血中へ入り全身作用を生じることがあります。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
花粉による鼻症状のため点鼻薬を購入しようとしている人から相談を受けた。成分や使用方法についての説明として、最も適切なものはどれか。
- クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑え、花粉などによる鼻アレルギー症状を緩和する。
- テトラヒドロゾリン塩酸塩は、神経伝導を可逆的に遮断して鼻粘膜の過敏性や痛み、痒みを抑える。
- セチルピリジニウム塩化物は、鼻粘膜の血管を収縮させて充血や腫れを和らげる。
- クロルフェニラミンマレイン酸塩は、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑えることを目的として配合される。
- クロモグリク酸ナトリウムは、3日間使用して改善しなくてもアレルギー性鼻炎と考え、使用を継続する。
答えと解説を見る
正解: クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑え、花粉などによる鼻アレルギー症状を緩和する。
クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンが遊離するのを抑え、花粉やハウスダストによる鼻アレルギー症状を緩和します。テトラヒドロゾリン塩酸塩はアドレナリン作動成分、セチルピリジニウム塩化物は殺菌消毒成分、クロルフェニラミンマレイン酸塩はヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン成分です。クロモグリク酸ナトリウムを3日間使用して改善しない場合は、アレルギー以外の原因が考えられます。まちがえやすい点:クロモグリク酸は「ヒスタミンの遊離」、クロルフェニラミンは「ヒスタミンの働き」を抑えます。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方