登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
歯や口中に用いる薬・禁煙補助剤
歯痛薬は痛みを一時的に鎮める
歯痛は、多くの場合、歯の齲蝕(むし歯)と、それに伴う歯髄炎によって起こります。外用の歯痛薬は、齲蝕による歯痛を応急的に鎮める薬であり、齲蝕そのものを修復する薬ではありません。基本は早めに歯科を受診して治療を受けることです。
| 成分・種類 | 働き・目的 |
|---|---|
| アミノ安息香酸エチル、ジブカイン塩酸塩、テーカイン | 露出した歯髄を通る知覚神経の伝達を遮断し、痛みを鎮める |
| メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油 | 冷感刺激によって知覚神経を麻痺させ、鎮痛・鎮痒の効果を期待する |
| フェノール、歯科用フェノールカンフル、オイゲノール、セチルピリジニウム塩化物 | 齲蝕部分での細菌の繁殖を抑える |
| サンシシ | アカネ科のクチナシの果実を基原とし、抗炎症作用を期待する |
殺菌消毒成分は粘膜刺激を生じることがあるため、歯以外の口腔粘膜や唇に付着しないようにします。歯痛薬で一時的に痛みが和らいでも、繰り返し使用すると歯髄組織の壊死など状態悪化につながるおそれがあります。
歯痛薬は応急的な鎮痛であり、むし歯を修復する薬ではありません。
歯槽膿漏薬の成分と働き
歯と歯肉の境目の歯肉溝では細菌が繁殖しやすく、歯肉に炎症を起こします。歯肉炎が重症化して炎症が歯周組織全体に広がったものが歯周炎(歯槽膿漏)です。歯槽膿漏薬は、出血、膿、腫れ、むずがゆさ、口臭、口腔内の粘りなどの緩和を目的とします。
| 成分 | 働き・目的 |
|---|---|
| セチルピリジニウム塩化物、クロルヘキシジングルコン酸塩、イソプロピルメチルフェノール、チモール | 歯肉溝での細菌の繁殖を抑える |
| グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸 | 歯周組織の炎症を和らげる |
| カルバゾクロム | 炎症を起こした歯周組織からの出血を抑える |
| アラントイン | 炎症を起こした歯周組織の修復を促す |
| カミツレ | キク科のカミツレの頭花を基原とし、抗炎症・抗菌などの作用を期待する |
| フィトナジオン(ビタミンK1) | 血液の凝固機能を正常に保つ |
| 銅クロロフィリンナトリウム | 歯周組織の修復を促し、歯肉炎に伴う口臭を抑える |
| ビタミンC | コラーゲン代謝を改善して組織修復を助け、毛細血管を強化して腫れや出血を抑える |
| ビタミンE | 歯周組織の血行を促す |
口腔内に用いるステロイド性抗炎症成分は、含有量にかかわらず長期連用を避けます。クロルヘキシジングルコン酸塩を口腔内に用いた場合には、まれにショック(アナフィラキシー)を生じることがあります。
カルバゾクロムは止血、アラントインと銅クロロフィリンナトリウムは組織修復です。
口内炎用薬と受診の目安
口内炎用薬は、口内炎や舌炎を緩和するために口腔内の患部へ用いる外用薬です。口内炎や舌炎では口腔粘膜に水疱や潰瘍ができて痛み、ときに口臭を伴います。一般用医薬品の副作用として口内炎が現れることもあるため、使用しようとする人の状況を確認することが重要です。
| 成分 | 働き・目的 |
|---|---|
| グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸 | 口腔粘膜の炎症を和らげる |
| アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン) | 口腔粘膜の組織修復を促す |
| セチルピリジニウム塩化物、クロルヘキシジン塩酸塩、アクリノール、ポビドンヨード | 患部からの細菌感染を防止する |
| シコン | ムラサキ科のムラサキの根を基原とし、組織修復促進・抗菌などを期待する |
口内炎や舌炎は通常であれば1~2週間で自然寛解します。一度に複数箇所にでき、食事に著しい支障がある場合、長期間症状が続く場合、再発を繰り返す場合は医療機関の受診が必要です。長引く場合は口腔粘膜の腫瘍、再発を繰り返す場合はベーチェット病などの可能性も考えられます。
内服の茵蔯蒿湯は、体力中等度以上で口渇があり、尿量少なく、便秘するものの蕁麻疹、口内炎、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみに適すとされます。構成生薬としてダイオウを含みます。体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きとされ、まれに重篤な副作用として肝機能障害が起こります。1週間位使用しても改善しないときは使用を中止し、専門家に相談します。
シコンはムラサキの根、茵蔯蒿湯はダイオウを含みます。
口腔内の薬は清浄にして使う
歯痛薬、歯槽膿漏薬などの外用薬は、口腔内に食べ物のかすなどが残った状態では十分な効果を期待できません。口腔内を清浄にしてから使用します。口腔咽喉薬や含嗽薬なども使う場合は、十分な間隔を置きます。
内服の歯槽膿漏薬には、かぜ薬、鎮咳去痰薬、胃腸薬などと同じ又は同種の成分が含まれることがあります。併用すると作用が強すぎたり、副作用が現れやすくなるおそれがあります。
歯周病は軽いうちは自己治療が可能とされますが、歯磨きなどで歯肉溝の細菌の繁殖を抑えることが重要です。歯槽膿漏薬で症状を抑えても、しばらくすると繰り返す場合は医療機関を受診します。
口腔用外用薬は口の中を清浄にしてから使い、他の口腔用薬とは間隔を置きます。
禁煙補助剤の仕組みと使い方
血中ニコチン濃度が低下すると、イライラ感、集中困難、落ち着かないなどのニコチン離脱症状が現れます。ニコチン置換療法は、ニコチンの摂取方法を喫煙以外に換えて離脱症状を軽減しながら徐々に摂取量を減らし、最終的にニコチン摂取をゼロにする方法です。
一般用医薬品の禁煙補助剤には、噛むことでニコチンを放出し、口腔粘膜から吸収させる咀嚼剤と、1日1回皮膚に貼付し、皮膚からニコチンを吸収させるパッチ製剤があります。
咀嚼剤は菓子のガムのように噛み続けるのではなく、ゆっくりと断続的に噛みます。速く噛んで唾液が多く出ると、ニコチンが唾液と一緒に飲み込まれ、口腔粘膜から十分に吸収されず、吐きけや腹痛なども起こりやすくなります。噛みすぎて唾液が出過ぎたときは、飲み込まずティッシュ等に吐き出します。
1度に2個以上の使用は避けます。大量に使用しても禁煙達成が早まるものではなく、ニコチン過剰摂取による副作用のおそれがあります。禁煙補助剤は喫煙を完全に止めたうえで使用します。
咀嚼剤はゆっくり断続的に噛み、禁煙補助剤の使用中は喫煙しません。
禁煙補助剤の使用を避ける人と相互作用
顎の関節に障害がある人は咀嚼剤の使用を避けます。脳梗塞・脳出血等の急性期脳血管障害がある人、3ヶ月以内の心筋梗塞発作がある人、重い狭心症や不整脈と診断された人も、循環器系に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため使用を避けます。
うつ病と診断されたことのある人では、禁煙時の離脱症状でうつ症状が悪化することがあるため使用を避けます。妊婦又は妊娠していると思われる女性、母乳を与える女性も、胎児又は乳児へのニコチンの影響のおそれがあるため使用を避けます。
口腔内が酸性になるとニコチンの吸収は低下します。そのため、コーヒーや炭酸飲料など、口腔内を酸性にする食品を摂取した後しばらくは咀嚼剤の使用を避けます。
ニコチンには交感神経系を興奮させる作用があります。アドレナリン作動成分を含む鎮咳去痰薬、鼻炎用薬、痔疾用薬等と併用すると、その作用を増強させるおそれがあります。また、他のニコチン含有製剤との併用や、使用中・使用直後の喫煙では、ニコチンの過剰摂取となるおそれがあります。
心臓疾患、脳血管障害、バージャー病、高血圧、甲状腺機能障害、褐色細胞腫、糖尿病でインスリン製剤を使用している人、咽頭炎、食道炎、胃・十二指腸潰瘍、肝臓病又は腎臓病と診断された人は、治療薬への影響や症状悪化の可能性があるため、使用前に医師又は処方薬を調剤した薬剤師に相談します。
酸性ではニコチン吸収が低下し、ニコチンは交感神経を興奮させます。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
禁煙補助剤及び歯や口中に用いる薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a ジブカイン塩酸塩は、齲蝕により露出した歯髄を通る知覚神経の伝達を遮断して痛みを鎮める。
- b カルバゾクロムは、炎症を起こした歯周組織の修復を促す。
- c 禁煙補助剤の咀嚼剤は、口腔内が酸性になるとニコチンの吸収が低下する。
- d ニコチンは副交感神経系を興奮させ、アドレナリン作動成分の作用を増強させる。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b誤 c正 d正
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正解: a正 b誤 c正 d誤
aは正しいです。bは誤りで、カルバゾクロムは歯周組織からの出血を抑える成分です。組織修復を促す外用成分はアラントインです。cは正しいです。dは誤りで、ニコチンが興奮させるのは交感神経系です。まちがえやすい点:カルバゾクロム=止血、アラントイン=組織修復を対応させます。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a シコンは、ムラサキ科のムラサキの葉を基原とし、組織修復促進や抗菌作用を期待して用いられる。
- b 銅クロロフィリンナトリウムは、歯周組織の修復を促すほか、歯肉炎に伴う口臭を抑える効果も期待される。
- c 咀嚼剤の禁煙補助剤は、菓子のガムのように連続して噛み、唾液を多く分泌させることが望ましい。
- d 母乳を与える女性は、摂取されたニコチンにより乳児に影響が生じるおそれがあるため、禁煙補助剤の使用を避ける。
- aとb
- aとc
- bとc
- bとd
- cとd
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正解: bとd
正しいのはbとdです。aは基原が誤りで、シコンはムラサキ科のムラサキの根を基原とします。cは誤りで、咀嚼剤はゆっくりと断続的に噛みます。まちがえやすい点:咀嚼剤では唾液を多く出して飲み込むのではなく、口腔粘膜からニコチンを吸収させます。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
禁煙を始める購入者が、ニコチンを有効成分とする咀嚼剤を購入しようとしている。次の説明のうち、最も適切なものはどれか。
- コーヒーや炭酸飲料の摂取後は、口腔内が酸性になるとニコチンの吸収が増加するため、しばらく使用を避けます。
- 咀嚼剤は口腔粘膜からの吸収を高めるため、菓子のガムと同様に速く連続的に噛みます。
- 禁煙補助剤の使用を開始した後も喫煙量を徐々に減らし、喫煙を続けながらニコチン摂取量を減らします。
- 3ヶ月以内に心筋梗塞発作があった人は、循環器系に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため使用を避けます。
- パッチ製剤は、ニコチン濃度を保つため1日複数回貼付する製剤です。
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正解: 3ヶ月以内に心筋梗塞発作があった人は、循環器系に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため使用を避けます。
3ヶ月以内に心筋梗塞発作がある人は、循環器系に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため使用を避けます。口腔内が酸性になるとニコチン吸収は増加ではなく低下します。咀嚼剤は速く連続してではなく、ゆっくり断続的に噛みます。禁煙補助剤は喫煙を完全に止めたうえで使用します。パッチ製剤は1日1回貼付します。まちがえやすい点:酸性=吸収低下、咀嚼剤=断続的、パッチ=1日1回、使用中は禁煙です。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方