登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用

漢方処方製剤・生薬製剤

漢方薬は「証」に合う処方を選ぶ

漢方医学は、中国から伝わり日本で発展した日本の伝統医学です。現代中国の中医学で用いられる薬剤は中薬と呼ばれ、漢方薬とは別のものです。

漢方処方は、個々の生薬の作用を単純に足し合わせて考えるのではなく、処方全体を一つの有効成分としてみるのが基本です。使用する人の体質や症状などに適した既成の処方を選びます。

選択の基礎となるのが漢方独自の病態認識である「証」です。証に合えば効果が期待できますが、合わない処方では効果が得られないだけでなく、副作用も生じやすくなります。

漢方処方は生薬の足し算ではなく、処方全体と「証」の適合で判断します。

証は効能効果の「しばり」に表れる

一般用に用いることができる漢方処方は現在300処方程度です。一般用医薬品では「証」という専門用語を避け、効能効果の中に体質や症状を示す「しばり」として表現されています。

漢方の考え方しばりの表現例
実体力が充実して
虚実の中間体力中等度で
虚体力虚弱で
虚実に広く適応体力に関わらず
陰疲れやすく冷えやすいものの
水毒口渇があり、尿量が減少するもの
血虚皮膚の色つやが悪く

用法用量に適用年齢の下限が設けられていない場合でも、生後3ヶ月未満の乳児には使用しません。また、漢方処方製剤には体質改善を主眼とするものが多く、1ヶ月位継続して服用されることがあります。

300処方程度・生後3ヶ月未満は使用しない・水毒は「口渇+尿量減少」です。

肥満症に用いる3処方を区別する

防已黄耆湯、防風通聖散、大柴胡湯はいずれも肥満症に用いられますが、どのような肥満症にも同じように適するわけではありません。体力や腹部の状態、発汗、便秘などの違いで選び分けます。

処方適する体質・症状主な構成生薬・重篤な副作用
防已黄耆湯体力中等度以下で、疲れやすく汗をかきやすい。肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、筋肉にしまりのない水ぶとりの肥満症カンゾウを含む。肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症
防風通聖散体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く便秘がち。高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症、湿疹・皮膚炎、にきび、肥満症カンゾウ、マオウ、ダイオウを含む。肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症、腸間膜静脈硬化症
大柴胡湯体力が充実し、脇腹からみぞおちにかけて苦しく、便秘傾向。胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症ダイオウを含む。肝機能障害、間質性肺炎

防風通聖散は、小児への適用がなく、他の瀉下薬との併用を避けます。便秘に用いて1週間位で改善しないときはいったん中止して専門家に相談します。大柴胡湯も常習便秘や高血圧に伴う便秘に用いる場合は、1週間位で改善しなければ同様に対応します。

肥満症では、食品の過度の摂取を控え、適度な運動を取り入れるなど、生活習慣を改善することも重要です。

水ぶとりは防已黄耆湯、腹部脂肪+便秘は防風通聖散、脇腹〜みぞおちの苦しさ+便秘は大柴胡湯です。

黄連解毒湯と清上防風湯を区別する

処方適する体質・症状不向き・重篤な副作用
黄連解毒湯体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向。鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔い、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎体の虚弱な人には不向き。肝機能障害、間質性肺炎、腸間膜静脈硬化症
清上防風湯体力中等度以上で、赤ら顔で、ときにのぼせがある。にきび、顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、赤鼻胃腸の弱い人には不向き。肝機能障害、偽アルドステロン症、腸間膜静脈硬化症

清上防風湯は構成生薬としてカンゾウを含み、服用によりまれに症状が進行することもあります。胃腸の弱い人では、食欲不振や胃部不快感が現れやすくなります。

黄連解毒湯を鼻出血や二日酔いに用いる場合は、漫然と長期に使用せず、5~6回使用しても改善しないときはいったん中止して専門家に相談します。

赤ら顔+にきび・顔面頭部の皮膚症状は清上防風湯、のぼせ+いらいらは黄連解毒湯です。

生薬製剤は漢方処方製剤と考え方が違う

生薬製剤は、生薬成分を組み合わせた医薬品でも、漢方処方製剤のように体質や症状に合った処方全体を選ぶ考え方ではありません。個々の生薬成分の薬理作用を主に考え、それらを相加的に配合する西洋医学的な基調に立っています。

生薬とは、動植物の薬用とする部分、細胞内容物、分泌物、抽出物、鉱物などです。薬用動植物や薬用鉱物そのものは生薬の素材であるため、生薬名とは区別します。

生薬基原期待される作用
ブシハナトリカブト又はオクトリカブトの塊根を減毒加工したもの心筋の収縮力を高め血液循環を改善、利尿、鎮痛
カッコンマメ科のクズの周皮を除いた根解熱、鎮痙
サイコセリ科のミシマサイコの根抗炎症、鎮痛
ボウフウセリ科のSaposhnikovia divaricata Schischkinの根及び根茎発汗、解熱、鎮痛、鎮痙
ショウマキンポウゲ科のCimicifuga dahurica Maximowicz、Cimicifuga heracleifolia Komarov、Cimicifuga foetida Linné又はサラシナショウマの根茎発汗、解熱、解毒、消炎
ブクリョウサルノコシカケ科のマツホドの菌核で、通例、外層をほとんど除いたもの利尿、健胃、鎮静
レンギョウモクセイ科のレンギョウの果実鎮痛、抗菌
サンザシバラ科のサンザシ又はオオミサンザシの偽果をそのまま、又は縦切若しくは横切したもの健胃、消化促進

サイシンはウマノスズクサ科のウスバサイシン又はケイリンサイシンの根及び根茎を基原とします。モクツウはアケビ科のアケビ又はミツバアケビの蔓性の茎を、通例、横切りしたものを基原とします。薬用部位や類似植物を取り違えると、有害な作用を起こすことがあります。

ブクリョウ=利尿・健胃・鎮静、サイコ=抗炎症・鎮痛、サンザシ=健胃・消化促進です。

併用と改善しない場合の対応

漢方処方では、複数の処方に同じ生薬が含まれることがあります。同じ生薬を含む漢方処方製剤を併用すると、作用が強く現れたり、副作用が生じやすくなるおそれがあります。自己判断で生薬成分を追加すると、生薬の構成が乱れて処方が成立しなくなるおそれもあります。

生薬製剤でも、同じ生薬成分や同種の作用を示す成分を含む医薬品・医薬部外品などを併用すると、作用や副作用が強くなるおそれがあります。食品として流通する生薬成分を一緒に摂取した場合にも、医薬品の効き目や副作用が増強することがあります。

漢方処方製剤も生薬製剤も、作用が穏やかで副作用が少ないとは限りません。一定期間または一定回数使用しても改善しない場合には、処方や製品を漫然と使い続けず、必要に応じて医療機関の受診を促します。

同じ生薬・同種作用の重複は作用や副作用を強め、改善しなければ漫然と継続しません。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

漢方処方製剤に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a 漢方処方は、個々の生薬成分の薬理作用を主に考え、それらが相加的に配合されたものとして扱う。
  • b 漢方薬を使用する場合は、「証」に基づいて用いることが有効性及び安全性を確保するために重要である。
  • c 一般用に用いることができる漢方処方は、現在300処方程度である。
  • d 適用年齢の下限が設けられていない漢方処方製剤は、生後6ヶ月未満の乳児には使用しないこととされている。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a誤 b正 c正 d誤
  3. a誤 b正 c誤 d正
  4. a正 b誤 c正 d誤
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a誤 b正 c正 d誤

aは誤りです。個々の生薬の作用の足し算としてみるのは生薬製剤で、漢方処方は処方全体を一つの有効成分としてみます。b、cは正しい記述です。dは誤りで、適用年齢の下限がなくても使用しないのは生後3ヶ月未満です。まちがえやすい点:漢方処方は300処方程度、生後3ヶ月未満です。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a 防已黄耆湯は、体力中等度以下で、疲れやすく汗をかきやすい傾向があるものの肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症に適すとされる。
  • b 防風通聖散は、体力が充実して脇腹からみぞおちにかけて苦しく、便秘傾向があるものの胃炎、常習便秘、神経症、肥満症に適すとされる。
  • c 大柴胡湯は、構成生薬としてカンゾウ、マオウ、ダイオウを含む。
  • d 清上防風湯は、体力中等度以上で、赤ら顔で、ときにのぼせがあるもののにきび、顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、赤鼻に適すとされる。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとd

aとdが正しい記述です。bの体力充実・脇腹からみぞおちの苦しさ・便秘傾向は大柴胡湯です。防風通聖散は腹部に皮下脂肪が多く便秘がちなものに用います。cのカンゾウ、マオウ、ダイオウを含むのは防風通聖散で、大柴胡湯はダイオウを含みます。まちがえやすい点:3つの肥満症向け処方は体質・腹部所見・構成生薬を入れ替えて問われます。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

購入者から漢方薬・生薬製剤について相談を受けた。最も適切な説明はどれか。

  1. 「口渇があり、尿量が減少するもの」という表現は、漢方の病態認識では血虚を示す。
  2. 防風通聖散を便秘に用いる場合、5~6回使用して改善しなければいったん中止して専門家に相談する。
  3. 黄連解毒湯を鼻出血に用いる場合、1週間位使用して改善しなければいったん中止して専門家に相談する。
  4. 同じ生薬成分を含む医薬品や医薬部外品を併用すると、作用が強く現れたり、副作用が生じやすくなるおそれがある。
  5. 適用年齢の下限が設けられていない漢方処方製剤は、生後6ヶ月未満の乳児には使用しない。
答えと解説を見る

正解: 同じ生薬成分を含む医薬品や医薬部外品を併用すると、作用が強く現れたり、副作用が生じやすくなるおそれがある。

同じ生薬成分や同種の作用を示す生薬成分を含む製品を併用すると、作用が強く現れたり、副作用が生じやすくなるおそれがあります。「口渇があり、尿量が減少するもの」は水毒です。防風通聖散の便秘は1週間位、黄連解毒湯の鼻出血は5~6回が目安です。適用年齢の下限がない漢方処方製剤でも生後3ヶ月未満には使用しません。まちがえやすい点:5~6回は黄連解毒湯の鼻出血・二日酔い、1週間位は防風通聖散などの便秘です。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方