登録販売者 参考書|第5章 医薬品の適正使用・安全対策

医薬品副作用被害救済制度

制度の目的と判定の流れ

医薬品副作用被害救済制度は、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、副作用によって一定の健康被害が生じた場合に、医療費などを給付して被害者を迅速に救済する制度です。製薬企業の社会的責任に基づく公的制度として、1980年5月から運営されています。

健康被害を受けた本人または家族が給付を請求します。医師や薬剤師が請求者になる制度ではありません。

副作用によるものか、医薬品が適正に使用されたかなど、医学的・薬学的判断を要する事項は、薬事審議会の諮問・答申を経て、厚生労働大臣が判定します。その結果に基づいて各種給付が行われます。

販売に従事する専門家は、対象となると思われる健康被害について、総合機構の相談窓口などを紹介し、相談を促すことが期待されています。

適正使用+一定の健康被害が基本。請求は本人・家族、判定は厚生労働大臣です。

給付の種類と請求期限

給付には7種類あります。医療費と医療手当は名称が似ていますが、内容が異なります。

給付内容請求期限
医療費副作用による疾病の治療に要した費用のうち、健康保険等の給付を差し引いた自己負担分を実費補償対象となる費用の支払いが行われたときから5年以内
医療手当治療に伴う医療費以外の費用負担に着目した定額給付医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内
障害年金一定程度の障害の状態にある18歳以上の人の生活補償等請求期限なし
障害児養育年金一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人への給付請求期限なし
遺族年金生計維持者が副作用により死亡した場合の遺族の生活の立て直し等。最高10年間原則、死亡のときから5年以内
遺族一時金生計維持者以外の人が副作用により死亡した場合の遺族への見舞等遺族年金と同じ
葬祭料副作用により死亡した人の葬祭に伴う出費に着目した定額給付遺族年金と同じ

医療費だけが実費補償で、医療手当は定額です。また、障害年金は18歳以上、障害児養育年金は18歳未満が基準です。

医療費と医療手当の対象となる疾病は、入院治療を必要とする程度のものです。

医療費=実費、医療手当=定額。障害年金18歳以上、障害児養育年金18歳未満です。

どの健康被害が対象になるか

救済給付の対象となるには、添付文書や外箱などに記載された用法・用量、使用上の注意に従って使用されていることが基本です。不適正な使用による健康被害は対象になりません。

疾病については、入院を必要とする程度の医療を受ける場合が対象です。ただし、実際に入院した場合だけではありません。入院治療が必要と認められながら、やむをえず自宅療養を行った場合も対象に含まれます。

副作用による重い後遺障害が残った場合も対象です。一方、適正に使用していても、医療機関での治療を要さずに寛解したような軽度の健康被害は対象に含まれません。

実際の入院の有無ではなく「入院治療を必要とする程度」かどうかで判断します。

対象外となる医薬品とケース

要指導医薬品や一般用医薬品であっても、救済制度の対象とならないものがあります。人体に直接使用するかどうかの入れ替えに注意します。

区分救済制度
殺虫剤・殺鼠剤のうち人体に直接使用しないもの対象外
殺菌消毒剤のうち人体に直接使用しないもの対象外
人体に直接使用する殺菌消毒剤上記の対象外には該当しない
一般用検査薬対象外
一部の日本薬局方収載医薬品(精製水、ワセリン等)対象外
無承認無許可医薬品対象外

無承認無許可医薬品には、いわゆる健康食品として販売されたものや、個人輸入により入手された医薬品も含まれます。

また、製品不良など、製薬企業に損害賠償責任がある場合も、この救済制度の対象から除外されます。

人体に直接使用しない殺菌消毒剤・一般用検査薬・精製水・ワセリン・無承認無許可医薬品は対象外です。

請求書類と制度を支える費用

要指導医薬品または一般用医薬品による副作用被害について救済給付を請求するときは、医師の診断書や、医療費を証明する受診証明書などが必要です。

さらに、その医薬品を販売等した薬局開設者や医薬品販売業者が作成した販売証明書等も必要です。販売に従事する専門家には、販売証明書の発行に円滑に対応することが求められます。

救済給付業務の費用では、給付費に製造販売業者から年度ごとに納付される拠出金が充てられます。事務費については、その2分の1相当額が国庫補助で賄われます。

請求には診断書・受診証明書だけでなく販売証明書等も必要です。

関連する救済制度と医薬品PLセンター

生物由来製品については、2004年4月1日以降、適正に使用したにもかかわらず、それを介して感染等による疾病、障害または死亡が生じた場合に給付を行う生物由来製品感染等被害救済制度があります。

総合機構は、公益財団法人友愛福祉財団からの委託を受け、血液製剤によるHIV感染者・発症者に対する健康管理費用の支給等も行っています。

一方、製品不良など製薬企業に損害賠償責任がある場合は、医薬品副作用被害救済制度ではなく、医薬品PLセンターへの相談が推奨されます。

医薬品PLセンターは、日本製薬団体連合会により、平成7年7月のPL法施行と同時に開設されました。対象は医薬品または医薬部外品に関する苦情で、健康被害以外の損害も含まれます。消費者が製造販売元の企業と交渉するとき、公平・中立な立場で相談を受け、交渉の仲介、調整・あっせんを行い、裁判によらず迅速な解決に導くことを目的としています。

製品不良など企業の損害賠償責任が問題となるときは、医薬品PLセンターへの相談です。

制度創設の背景

サリドマイド事件、スモン事件などを踏まえ、1979年に薬事法が改正されました。市販後安全対策を強化するため、再審査・再評価制度、副作用等報告制度、保健衛生上の危害の発生または拡大を防ぐための緊急命令、廃棄・回収命令などの法整備が行われました。

これらとあわせて、副作用被害を迅速に救済する制度が創設されました。

1979年改正の背景はサリドマイド事件・スモン事件、危害防止は保健衛生上、措置は廃棄・回収です。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

医薬品副作用被害救済制度に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a 医療手当は、副作用による疾病の治療に要した自己負担分を実費補償する給付である。
  • b 障害児養育年金は、一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人に給付される。
  • c 入院治療が必要と認められる疾病について、やむをえず自宅療養を行った場合も救済給付の対象となり得る。
  • d 遺族年金は、最高5年間を限度として給付される。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a誤 b正 c誤 d正
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a誤 b正 c正 d誤

aは誤りです。治療費の自己負担分を実費補償するのは医療費で、医療手当は治療に伴う医療費以外の費用負担に着目した定額給付です。b、cは正しい記述です。dは誤りで、遺族年金は最高10年間を限度とします。まちがえやすい点:医療費と医療手当、遺族年金の5年と10年を入れ替えないようにします。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a 人体に直接使用しない殺菌消毒剤は、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない。
  • b 一般用検査薬は、適正に使用して生じた健康被害であれば救済制度の対象となる。
  • c 個人輸入により入手した無承認無許可医薬品による健康被害は、救済制度の対象となる。
  • d 人体に直接使用する殺菌消毒剤は、殺菌消毒剤であることだけを理由として救済制度の対象外とはされていない。
  1. aとb
  2. aとd
  3. bとc
  4. bとd
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとd

正しいのはaとdです。一般用検査薬は対象外です。個人輸入により入手した無承認無許可医薬品による健康被害も対象外です。殺菌消毒剤は「人体に直接使用するものを除く」とされているため、人体に直接使用するものまで一律に対象外ではありません。まちがえやすい点:「人体に直接使用する/しない」の一語で結論が逆になります。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

一般用医薬品を使用した購入者が副作用と疑われる健康被害を受け、販売店に相談した。次の対応・説明のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 副作用によるものか判断が確定していない段階では給付請求はできないため、医薬品副作用被害救済制度の案内は行わない。
  2. 救済給付を請求する場合、診断書や受診証明書は必要だが、販売した薬局開設者や医薬品販売業者が作成する販売証明書等は必要ない。
  3. 入院治療が必要と認められる程度の疾病であっても、実際に入院せず自宅療養を行った場合は救済給付の対象にならない。
  4. 製品不良など製薬企業に損害賠償責任があるケースでは、医薬品PLセンターへの相談を案内する。
  5. 医薬品PLセンターは、医薬品・医薬部外品・医療機器に関する苦情について、裁判による法的解決へ導くことを目的としている。
答えと解説を見る

正解: 製品不良など製薬企業に損害賠償責任があるケースでは、医薬品PLセンターへの相談を案内する。

製品不良など製薬企業に損害賠償責任がある場合は、医薬品副作用被害救済制度の対象から除外され、医薬品PLセンターへの相談が推奨されます。副作用による健康被害が救済給付の対象となると思われるときは、救済制度や総合機構の相談窓口を紹介して相談を促すことが期待されています。一般用医薬品の請求には販売証明書等も必要です。入院治療が必要と認められ、やむをえず自宅療養した場合も対象に含まれます。医薬品PLセンターは医薬品または医薬部外品に関する苦情を対象とし、裁判によらず迅速な解決に導くことを目的とします。まちがえやすい点:救済制度とPLセンターは、製品不良など企業の損害賠償責任の有無で整理します。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方