宅建士 参考書|第2章 権利関係
抵当権と担保物権
抵当権の基本と効力の範囲
抵当権は、債務者または第三者が目的物の占有を移さないまま不動産を担保にし、債権者が他の債権者に先立って弁済を受けるための担保物権です。設定者は抵当権設定後も原則として不動産を使用できます。第三者に抵当権を対抗するには登記が必要です。
抵当権の効力は、原則として抵当不動産に付加して一体となっている物にも及びます。ただし、抵当地上の建物は土地抵当権の効力に当然に含まれません。土地に抵当権があるからといって、その土地上の建物まで自動的に担保になるわけではありません。
被担保債権について不履行が生じると、抵当権の効力は抵当不動産の果実にも及びます。普通抵当権で利息その他の定期金について優先弁済を受けられるのは、原則として満期となった最後の2年分です。
抵当権は占有を移さず設定し、土地抵当権が地上建物に当然及ぶわけではありません。
物上代位と抵当権消滅請求
抵当目的物が売却・賃貸されたり、滅失・損傷して保険金などの請求権に姿を変えたりしたとき、抵当権者はその代わりとなる金銭債権に抵当権を及ぼせることがあります。これが物上代位です。
抵当権には民法304条の物上代位の規定が準用されるため、抵当不動産から生じる賃料債権にも物上代位できます。ただし、賃借人などから設定者へ賃料が払い渡される前に、抵当権者がその債権を差し押さえることが必要です。
抵当不動産を取得した第三取得者は、一定の手続により抵当権者へ金額を提示して抵当権消滅請求をすることができます。主たる債務者や保証人は抵当権消滅請求をすることができません。また、第三取得者は抵当権実行としての競売による差押えの効力が発生する前に請求しなければなりません。
第三取得者自身が被担保債務を弁済すれば、債務の消滅に伴って抵当権も消滅します。抵当権設定者本人を、後から取得した「第三取得者」として扱うことはできません。
物上代位は払渡し前の差押え、抵当権消滅請求は第三取得者が競売差押え前に行います。
法定地上権と一括競売
土地とその上の建物が同じ所有者に属しているときに、土地または建物へ抵当権が設定され、その抵当権の実行によって土地と建物の所有者が別々になった場合、建物のために法定地上権が成立します。地代は、当事者から請求があれば裁判所が定めます。
したがって、抵当権設定時に土地と建物が同一所有者で、土地だけに抵当権が設定された場合でも、競売で土地と建物の所有者が分かれれば法定地上権が成立します。抵当権設定後に建物が第三者へ譲渡されても、設定時の要件を満たしていれば、それだけで法定地上権が否定されるわけではありません。
反対に、更地に土地抵当権を設定した後で建物を建てた場合、抵当権設定時には建物が存在しないため、その建物について法定地上権は成立しません。土地と建物を共同抵当に入れた後、建物を取り壊して再築した場合も、再築建物について当然に法定地上権が成立するわけではありません。
抵当権設定後に抵当地上へ建物が建てられた場合、抵当権者は一定の場合に土地と建物を一括して競売できます。ただし、土地抵当権者が優先弁済を受けられるのは土地の売却代金からであり、建物の売却代金からまで優先弁済を受けられるわけではありません。
法定地上権は「抵当権設定時に土地と建物が同一所有」、更地抵当後の新築には原則成立しません。
抵当権と賃借人
抵当権と賃借権が競合するときは、どちらが先に第三者への対抗要件を備えたかが基本です。抵当権設定登記より前に対抗要件を備えた賃借権は、競売による買受人にも対抗できます。
建物賃貸借では建物の引渡しが対抗要件となるため、抵当権の設定登記前から建物の引渡しを受けていた賃借人は、原則として買受人にも賃借権を主張できます。反対に抵当権に対抗できない建物賃借人は、競売による買受人に賃借権そのものを対抗できません。
ただし、抵当権に対抗できない建物賃借人でも、一定の者には買受人が買い受けた時から6か月間の明渡猶予があります。これは賃借権が買受人に対抗できるという意味ではなく、明渡しだけが猶予される制度です。土地の賃借人について同じ6か月の明渡猶予が当然に認められるわけではありません。
猶予中の建物使用の対価を1か月分以上支払わず、買受人が相当期間を定めてその支払を催告しても履行しない場合は、6か月の明渡猶予を受けられなくなります。
先に対抗要件を備えた賃借権は抵当権に優先し、劣後する建物賃借人には原則6か月の明渡猶予があります。
抵当権の順位と順位の処分
同じ不動産に複数の抵当権が設定された場合、順位は抵当権設定契約の順ではなく登記の前後で決まります。競売代金は、原則として先順位抵当権者から順に被担保債権額まで配当します。
抵当権者は、同じ債務者に対する他の債権者のために、抵当権またはその順位を譲渡・放棄できます。順位の譲渡・放棄の計算問題では、まず処分がなかった場合の各抵当権者の配当額を出し、処分に関係する者の配当枠をまとめて考えます。
| 処分 | 計算の考え方 |
|---|---|
| 順位の譲渡 | 譲渡人と譲受人が本来受ける配当の合計枠から、譲受人が先に自己の債権額まで受け、残額を譲渡人が受けます。 |
| 順位の放棄 | 放棄人と利益を受ける抵当権者が本来受ける配当の合計枠を、両者の債権額の割合で分けます。 |
順位そのものを変更する場合は、各抵当権者の合意が必要で、利害関係人がいればその承諾も必要です。さらに順位変更の登記をしなければ効力は生じません。
順位問題は、まず通常配当を出し、譲渡なら譲受人を先、放棄なら債権額割合で分けます。
根抵当権と普通抵当権
普通抵当権は、原則として特定の債権を担保します。これに対し根抵当権は、継続的な取引などから生じる一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保します。
根抵当権では、元本が確定するまでは、個々の債権が弁済などで消滅しても、それだけで根抵当権そのものが消滅するわけではありません。また、元本確定前に個々の被担保債権が譲渡されても、普通抵当権のように当然に根抵当権が一緒に移るわけではありません。
極度額は、根抵当権者がその根抵当権によって優先弁済を受けられる上限です。普通抵当権の利息について問題となる「最後の2年分」という制限と、根抵当権の極度額による上限を混同しないようにします。
根抵当権は、不特定の債権を極度額まで担保し、元本確定前は個々の債権と独立して動きます。
留置権・先取特権・質権
留置権は、他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで物を留置できる法定担保物権です。債権と物との間に牽連性が必要で、単なる貸金債権があるというだけでは、その相手方の物を留置できません。留置権には、抵当権のように目的物の代金から優先弁済を受ける効力はありません。
先取特権は、法律が定めた一定の債権について、債務者の財産から他の債権者に先立って弁済を受けられる法定担保物権です。一般の貸金債権に、貸金であるという理由だけで先取特権が認められるわけではありません。
質権は、原則として債権者へ目的物を引き渡すことによって成立する約定担保物権です。不動産にも質権を設定できます。不動産質権者は目的不動産を用法に従って使用・収益でき、存続期間は最長10年です。更新はできますが、更新後の期間も更新時から10年を超えられません。
不動産質権者は、原則として債権の利息を請求できません。ただし設定行為に別段の定めがある場合などは別です。一方、抵当権は占有を設定者に残したまま設定でき、法律上の存続期間を10年に限る規定はありません。
| 担保物権 | 基本的な特徴 |
|---|---|
| 留置権 | 物を留め置く。物と債権の牽連性が必要です。 |
| 先取特権 | 法律が定める債権に優先弁済権を与えます。 |
| 質権 | 原則として目的物の引渡しが必要です。 |
| 抵当権 | 目的不動産の占有を移さず設定できます。 |
留置権は留置、先取特権は法定優先、質権は引渡し、抵当権は占有を移さない担保です。
本番の形で解いてみる
基本の問題(まなクエの問題集から)
抵当権と賃借権の優先関係について正しいものはどれか。
- 抵当権の設定登記後に設定された賃借権は常に抵当権に優先する
- 建物の賃借権は引渡しがあれば抵当権に優先する
- 抵当権の設定登記前に対抗要件を備えた賃借権は抵当権に優先する
- 賃借権は登記なしに抵当権に優先する
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正解: 抵当権の設定登記前に対抗要件を備えた賃借権は抵当権に優先する
抵当権と賃借権は対抗要件の先後で優劣を決する。先に対抗要件を備えた方が優先(民法177条・605条)。
基本の問題(まなクエの問題集から)
根抵当権について正しいものはどれか。
- 根抵当権は極度額の範囲内で不特定の債権を担保する
- 根抵当権は普通抵当権と異なり複数の不動産に設定できない
- 根抵当権は担保する債権が消滅しても消滅する
- 根抵当権は被担保債権が特定されている
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正解: 根抵当権は極度額の範囲内で不特定の債権を担保する
根抵当権(民法398条の2)は極度額の範囲内で一定の範囲に属する不特定の債権を担保。附従性がない点が特徴。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
Aが土地とその土地上の建物をともに所有している時に、土地だけにBのための抵当権を設定し登記した。その後も建物は存在したままBが抵当権を実行し、競売により土地をCが取得して土地と建物の所有者が別になった。法定地上権について正しいものはどれか。
- 土地だけに抵当権を設定したので、建物のための法定地上権は成立しない。
- 抵当権設定時に土地と建物が同一所有者であったため、建物のための法定地上権が成立する。
- 建物にも同時に抵当権を設定していなければ、法定地上権は成立しない。
- 土地の競売後に建物所有者とCが地上権設定契約を結んだ場合に限り、地上権が成立する。
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正解: 抵当権設定時に土地と建物が同一所有者であったため、建物のための法定地上権が成立する。
抵当権設定時に土地と建物が同一所有者に属し、土地または建物の抵当権実行により所有者が分かれたときは法定地上権が成立します。土地だけへの抵当権設定でも構いません。
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読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方