宅建士 参考書|第2章 権利関係

売買と契約不適合責任

売買は申込みと承諾が合致すれば成立する

売買は、売主が財産権を買主へ移転することを約束し、買主が代金を支払うことを約束すると効力を生じます。法令に特別の定めがない限り、契約成立のために書面は必要ありません。

契約は、契約内容を示す申込みに相手方が承諾したときに成立します。承諾の意思表示は原則として相手方に到達した時に効力を生じるため、承諾を発信しただけで当然に契約が成立するわけではありません。

申込み扱い
承諾期間を定めた申込み原則として期間内は撤回できない
期間内に承諾通知が届かない申込みは効力を失う
承諾期間を定めない申込み承諾通知を受けるのに相当な期間は原則撤回できない

申込者が申込みの通知後に死亡しても、それだけで常に申込みが失効するわけではありません。ただし、死亡等が生じれば申込みを失効させる旨を申込者が表示していた場合や、相手方が承諾通知を発するまでに死亡等を知った場合は、申込みは効力を失います。

契約は申込みへの承諾で成立し、承諾は原則として相手方への到達時に効力を生じます。

他人の物でも売買契約は成立する

売主は買主に財産権を移転し、登記など買主が対抗要件を備えるために必要な行為をする義務を負います。買主は代金を支払います。

売主が契約時に目的物の所有者でなくても、売買契約自体は成立します。他人の権利を目的として売買した売主は、その権利を取得して買主へ移転する義務を負います。

また、買主が買い受けた権利の全部または一部を取得できない、または失うおそれがあるときは、その危険の程度に応じて代金の全部または一部の支払を拒むことができます。ただし、売主が相当の担保を供したときは拒めません。

他人物売買も有効で、売主はその権利を取得して買主へ移転する義務を負います。

手付解除は「相手方の履行着手前」まで

買主が売主に手付を交付した場合、別段の意思表示がなければ解約手付として扱われます。

解除する者方法
買主交付した手付を放棄する
売主手付の倍額を現実に提供する

解除できるのは、解除しようとする者の相手方が契約の履行に着手する前までです。自分がすでに履行に着手していても、相手方がまだ履行に着手していなければ手付解除はできます。

判例は、履行の着手について、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部をした場合や、履行に不可欠な前提行為をした場合などを基準に判断しています。手付解除では、手付とは別に解除による損害賠償を請求することはできません。

相手方の履行着手前なら、買主は手付放棄、売主は倍額の現実の提供で解除できます。

契約不適合ならまず4つの救済を区別する

引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合、買主には複数の救済手段があります。いつでも自由に好きな手段を選べるわけではなく、それぞれ要件が違います。

救済中心となる要件
追完請求修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しを求める
代金減額請求原則として相当期間を定めて追完を催告し、追完されないとき
損害賠償請求債務不履行の一般原則に従い、売主に帰責事由が必要
契約解除催告解除・無催告解除の要件を満たすことが必要

追完請求について、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは請求できません。代金減額請求も同様です。

代金減額は、追完が不能、売主が追完を明確に拒絶、定めた時期を過ぎると契約目的を達成できないのに追完されなかった場合、催告しても追完の見込みがないことが明らかな場合には、追完の催告をせず直ちに請求できます。

解除は売主に帰責事由がないことだけを理由に否定されません。一方、損害賠償は売主に帰責事由がなければ請求できません。

追完・減額・解除と損害賠償は要件が異なり、損害賠償には売主の帰責事由が必要です。

種類・品質の不適合は知ってから1年以内に通知する

目的物が種類または品質について契約内容に適合しない場合、買主は原則として、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ通知しなければなりません。

1年以内に通知しないと、その不適合を理由とする追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができなくなります。ただし、引渡し時に売主が不適合を知っていた場合、または重大な過失によって知らなかった場合には、この1年の通知制限は適用されません。

この1年ルールは種類・品質についての規定です。数量不足や移転した権利の不適合を、そのまま同じ1年通知ルールで処理してはいけません。

また、売主が担保責任を負わない特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実や、自ら第三者のために設定・譲渡した権利については責任を免れることができません。

種類・品質の不適合は知った時から1年以内に通知し、売主が悪意・重過失ならこの制限はありません。

宅建業者が自ら売主なら不利な責任制限に注意する

宅地・建物の売買で宅建業者が自ら売主となり、買主が宅建業者ではない場合には、契約不適合責任を民法より買主に不利にする特約が制限されます。

種類・品質の契約不適合について、民法の通知期間より買主に不利な特約は原則として無効です。ただし、目的物の引渡しの日から2年以上となる期間を定める特約は認められます。たとえば「引渡しから1年間だけ責任を負う」という特約は認められません。

この宅建業法上の特則は宅建業者相互間の取引には適用されません。民法上の免責特約のルールと、宅建業者が自ら売主となる場合の特則を分けて判断します。

業者売主・非業者買主では、種類・品質の責任期間を縮めるなら引渡しから2年以上の特約だけが認められます。

引渡し後の双方無責の滅失は買主側の危険になる

売買契約後、引渡し前に、売主・買主双方の責めに帰すことのできない事由で売主の履行が不能になった場合、買主は代金の支払を拒むことができます。

これに対し、契約内容に適合する目的物を引き渡した後に、双方に責任のない原因で目的物が滅失・損傷した場合、買主はその滅失・損傷を理由として追完、代金減額、損害賠償、解除をすることができず、代金支払も拒めません。

時点双方に責任のない滅失等
引渡し前買主は反対給付である代金の支払を拒める
引渡し後その滅失等を理由に代金支払を拒めない

双方無責の滅失は、引渡し前なら代金を拒めますが、引渡し後は買主がその危険を負います。

本番の形で解いてみる

基本の問題(まなクエの問題集から)

手付について正しいものはどれか。

  1. 手付倍返しによる解除は相手方が履行に着手した後でもできる
  2. 手付は常に違約手付として扱われる
  3. 解約手付の場合、相手方が履行に着手するまでであれば解除できる
  4. 手付による解除の場合、損害賠償請求ができる
答えと解説を見る

正解: 解約手付の場合、相手方が履行に着手するまでであれば解除できる

解約手付(民法557条):相手方が履行に着手するまでは、手付を交付した者はその手付を放棄し、手付を受領した者はその倍額を現実に提供することにより、契約を解除することができる。この場合、損害賠償請求はできない。

基本の問題(まなクエの問題集から)

売主の担保責任による救済方法として正しいものはどれか。

  1. 買主は契約解除のみ行使できる
  2. 買主は損害賠償請求のみ行使できる
  3. 買主には、それぞれの要件を満たす場合、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などの救済が認められる
  4. 買主は代金減額請求のみ行使できる
答えと解説を見る

正解: 買主には、それぞれの要件を満たす場合、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除などの救済が認められる

契約不適合責任(民法562条以下):買主には、それぞれの要件を満たす場合に、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除といった救済が認められる。4つの制度があるからといって、買主がいつでも自由に好きなものを選択できるわけではない。たとえば代金減額請求は、原則として追完の催告をしてもなお追完がされないことなど、一定の要件を満たす必要がある。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

AがBに中古建物を売却して引き渡したところ、建物には契約時から品質について契約内容に適合しない部分があった。民法上の契約不適合責任に関する記述として正しいものはどれか。

  1. Bは不適合を知った時から原則として2年以内にAへ通知すればよい。
  2. Aに不適合について帰責事由がなくても、要件を満たせばBは追完請求や契約解除をすることがある。
  3. Aに帰責事由がなくても、Bは当然に債務不履行による損害賠償を請求できる。
  4. 不適合がBの責めに帰すべき事由による場合でも、Bは必ず追完請求をすることができる。
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正解: Aに不適合について帰責事由がなくても、要件を満たせばBは追完請求や契約解除をすることがある。

追完請求や解除は売主の帰責事由がないだけで排除されません。一方、損害賠償には売主の帰責事由が必要で、種類・品質の不適合の通知は原則として知った時から1年以内です。

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出典: e-Gov法令検索「民法」・e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方