宅建士 参考書|第2章 権利関係

請負・委任・贈与

請負と委任の違い

請負は「仕事を完成すること」を約し、その完成した仕事に対して注文者が報酬を支払う契約です。建物の建築のように、単に作業をするだけでなく、約束した結果を完成させることが契約の中心になります。

これに対し、委任は法律行為をする事務の処理を相手に任せる契約です。法律行為でない事務を任せる契約は準委任といい、委任の規定が準用されます。したがって、委任・準委任では仕事の完成そのものを約束するとは限りません。

契約中心となる義務
請負仕事を完成する
委任法律行為である事務を処理する
準委任法律行為でない事務を処理する

請負は完成、委任・準委任は事務処理です。

請負の報酬と途中終了

請負人が仕事を完成できないまま契約が終わっても、すでにした仕事のうち分けることができ、その部分によって注文者が利益を受ける部分は完成したものと扱われます。この場合、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を請求できます。

一方、注文者の責任によって仕事の完成が不能になった場合、注文者は原則として報酬の支払を拒めません。ただし、請負人が残りの仕事をしなくて済んだため材料費などを節約できたときは、その利益を注文者に償還します。

注文者は、仕事が完成する前なら、いつでも損害を賠償して請負契約を解除できます。請負人に債務不履行がなくても、この注文者固有の解除が認められます。

完成前なら、注文者は損害を賠償して解除できます。

請負の契約不適合

完成した目的物が種類や品質について契約内容に適合しないときは、注文者は要件に応じて履行の追完、報酬の減額、損害賠償、契約解除を求めることができます。建物についても、重大な不適合のため建て替えが必要な場合には、判例は要件を満たせば建替費用相当額の損害賠償を認めています。

種類または品質の不適合について、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人へ通知しないと、原則としてこれらの権利を行使できません。ただし、引渡し時に請負人が不適合を知っていたか、重大な過失によって知らなかった場合、この1年の通知制限は適用されません。

不適合が注文者が提供した材料の性質や注文者の指図によって生じた場合、注文者は原則としてその不適合を理由に請負人の責任を追及できません。ただし、請負人が材料や指図が不適当だと知りながら注文者に告げなかったときは、免責されません。

古い過去問には、建物の瑕疵担保責任を「引渡しから何年」とする旧法の規定を前提としたものがあります。現行法では、種類・品質の契約不適合については「知った時から1年以内の通知」を軸に判断します。

請負の種類・品質不適合は、知ってから1年以内に通知です。

委任の注意義務と報酬

受任者は、委任の趣旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負います。無報酬の委任でも、自己の財産と同程度の注意で足りるわけではありません。

受任者が別の人に事務を任せる復受任者を選ぶことができるのは、原則として委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときです。

委任では、特約がなければ受任者は報酬を請求できません。報酬を受ける約束があり、委任が履行の途中で終了した場合には、受任者に終了原因について責任があるかどうかにかかわらず、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます。

委任は無報酬でも善管注意義務、途中終了は履行割合の報酬です。

委任の解除と終了

委任は、委任者・受任者のどちらからでも原則としていつでも解除できます。ただし、相手方に不利な時期に解除した場合などは、やむを得ない事由がない限り損害賠償が必要になることがあります。

委任は原則として、委任者または受任者の死亡、委任者または受任者の破産手続開始、受任者の後見開始によって終了します。受任者の死亡後に、その相続人が当然に受任者の地位を承継して委任事務を続けるわけではありません。

委任はいつでも解除可。死亡・破産などでも原則終了します。

贈与と条件・負担

贈与は、一方が財産を無償で与える意思を示し、相手方が受諾すると成立します。契約の成立自体に書面は必要ありません。

書面によらない贈与は、各当事者が解除できます。ただし、すでに履行が終わった部分については解除できません。したがって、口頭で土地を贈与すると約束したからといって契約そのものが最初から無効になるわけではありません。

受贈者に一定の義務を負わせるものが負担付贈与です。負担付贈与では、贈与者は受贈者の負担の限度で、売主と同じ担保責任を負います。また、受贈者が約束した負担を履行しないときは、贈与者が契約解除を主張できる場合があります。

「資格試験に合格したら土地を贈与する」のような約束は停止条件付贈与です。原則として、条件が成就した時から効力が生じ、契約時まで当然にさかのぼるわけではありません。ただし、当事者が遡及させる意思を示した場合はその意思に従います。

条件が成就するか未定の間も、当事者は、条件成就によって相手方が得る利益を害してはいけません。贈与者が故意に目的物を壊すなどした場合、条件が成就すれば損害賠償の問題となります。

口頭贈与は履行済み部分を除き解除可。停止条件は成就時から効力です。

本番の形で解いてみる

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

AはBに住宅の増築工事を請け負わせた。工事中、Aが一方的な都合から契約を終了させたいと考えた。この場合の説明として、民法上最も適切なものはどれか。

  1. 仕事が完成するまでは、Aは損害を賠償すれば請負契約を解除できる
  2. Bに債務不履行がなければ、Aは仕事完成前でも解除できない
  3. Aはいつでも無条件で解除でき、Bに生じた損害を賠償する必要もない
  4. 工事の半分を超えていれば、Aからの解除は一切認められない
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正解: 仕事が完成するまでは、Aは損害を賠償すれば請負契約を解除できる

注文者は、請負人が仕事を完成しない間であれば、損害を賠償して請負契約を解除できます。請負人の債務不履行は必要ありません。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

AがBに事務を委任し、報酬を支払う特約をした。その後、委任事務の途中で契約が終了した。この場合の受任者Bの報酬について、民法上最も適切なものはどれか。

  1. 途中で終了した以上、Bは一切報酬を請求できない
  2. Bに終了原因について責任がある場合は、既に履行した部分についても報酬を請求できない
  3. Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる
  4. Bは事務の完成の有無にかかわらず、常に約定報酬の全額を請求できる
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正解: Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる

委任が履行途中で終了したときは、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます。現行法では、受任者の帰責事由の有無だけでこの請求が否定されるわけではありません。

事例で判断する問題(この節のために作った問題)

AはBに「Bが来年の宅建試験に合格したら、A所有の土地を贈与する」と約束し、Bも承諾した。特別な合意はない。この契約について、民法上正しいものはどれか。

  1. 贈与の効力は契約締結時から当然に発生する
  2. Bが試験に合格すると、贈与の効力は原則として合格時から生じる
  3. 停止条件付贈与は無効である
  4. Bが試験に合格すると、贈与の効力は必ず契約締結時までさかのぼる
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正解: Bが試験に合格すると、贈与の効力は原則として合格時から生じる

これは停止条件付贈与です。停止条件付法律行為は、別段の意思表示がなければ条件が成就した時から効力を生じます。

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出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方