宅建士 参考書|第2章 権利関係
その他の民法(条件・期限・失踪宣告・親族・総合問題)
条件と期限の違い
条件は、将来起こるかどうかが不確実な事実に法律行為の効力をかからせるものです。停止条件では、条件が成就すると効力が生じます。解除条件では、条件が成就すると効力が失われます。
これに対して期限は、将来到来することが確実な事実に効力をかからせるものです。始期が付いた法律行為は期限が来るまで履行を請求できず、終期が付いた法律行為は期限が来ると効力を失います。
条件の成就による効果は原則として成就時から生じ、当然に契約時までさかのぼるわけではありません。ただし、当事者が成就の効果をさかのぼらせる意思を表示していたときは、その意思に従います。
条件成就によって不利益を受ける当事者が信義則に反して成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができます。反対に、条件成就によって利益を受ける当事者が信義則に反して条件を成就させたときは、相手方は成就しなかったものとみなすことができます。
停止条件が初めから成就不能なら、その法律行為は無効です。解除条件が初めから成就不能なら、条件のない法律行為となります。また、停止条件が債務者の意思だけにかかる場合は無効です。
条件は「起こるか不確実」、期限は「来ることが確実」です。
期間の計算
日・週・月・年で期間を定めたときは、期間計算のルールを使います。日を単位とする期間は、午前0時から始まる場合を除き、初日は算入しません。
週・月・年で期間を定めたときは、暦に従って計算します。期間の初めが週・月・年の初めでないときは、最後の週・月・年において、その起算日に応当する日の前日に満了します。応当する日がない月では、その月の末日に満了します。
| 例 | 満了 |
|---|---|
| 8月31日から1か月 | 9月30日 |
| 期間の初日が午前0時から始まらない | その日を数えない |
| 末日が休日で、その日に取引をしない慣習がある | 翌日に満了 |
末日が休日なら前日に繰り上げるというルールではありません。休日のため取引をしない慣習がある場合は、翌日に延びます。
期間は「初日不算入・暦で計算・応当日なしは月末」が基本です。
婚姻と夫婦の財産
婚姻によって生じた姻族関係は、離婚によって終了します。配偶者が死亡しただけでは当然には終了せず、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思表示をすると終了します。
離婚した夫婦の一方は、相手方に財産分与を請求できます。財産分与は夫婦が婚姻中に形成した財産などを清算する制度であり、相手方に不貞などの有責行為がなければ請求できない制度ではありません。
婚姻前から持っていた財産や、婚姻中に自己の名で得た財産は、その者の特有財産です。一方、夫婦のどちらに属するか明らかでない財産は夫婦の共有に属するものと推定されます。
未成年後見人は親族から選ばなければならないわけではありません。家庭裁判所は、未成年者の心身の状態や生活・財産の状況、候補者との関係などを考慮して選任します。
帰属不明の夫婦財産は共有推定、配偶者死亡だけで姻族関係は切れません。
不在者の財産管理と失踪宣告
不在者の財産管理と失踪宣告は別の制度です。不在者が従来の住所・居所を去り、財産管理人を置いていないときは、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求により、財産管理について必要な処分を命じることができます。生死不明が7年間続くことは要件ではありません。
不在者自身が管理人を置いていても、不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求により、その管理人を改任できます。
管理人は、財産の保存行為と、財産の性質を変えない範囲での利用・改良を行えます。これを超える処分をするには家庭裁判所の許可が必要です。したがって、自宅の修理は保存行為としてできますが、不動産の売却には原則として許可が必要です。
判例は、不在者を被告とする建物収去・土地明渡請求を認めた第一審判決に対する控訴は、不在者の財産を守る保存行為に当たり、家庭裁判所の許可なしでできるとしています。
| 失踪の種類 | 期間 | 死亡したとみなす時 |
|---|---|---|
| 普通失踪 | 生死不明7年 | 7年間が満了した時 |
| 危難失踪 | 危難が去った後1年 | 危難が去った時 |
失踪者が生存していることなどが証明されれば、本人または利害関係人の請求により家庭裁判所は失踪宣告を取り消します。取消し前にされた法律行為を守るには、その行為について善意であることが必要です。売買のような双方行為では、当事者双方が善意であることが必要とされています。
財産管理に7年は不要。7年は普通失踪の失踪宣告です。
選択債権
選択債権とは、複数の給付のうち一つを選んで履行する債権です。当事者に別段の定めがなければ、選択権は債務者に属します。
第三者に選択権を与えた場合、その第三者は債権者または債務者のどちらか一方に意思表示をすれば選択できます。第三者が選択できない、または選択する意思がないときは、選択権は債務者へ移ります。債権者へ移るわけではありません。
複数の給付のうち一つが後から不能となったときは、誰の過失で不能になったかで分けます。不能が選択権を持つ者の過失によるときは、債権は残った給付について存在します(選択の余地はなくなります)。たとえば売主に選択権があり、売主自身の過失で一方を給付不能にしたときは、残った方の給付に特定されます。これに対し、不能が選択権を持たない当事者の過失などによるときは、残った給付に当然に特定されるわけではなく、選択権を持つ者は不能となった給付を選ぶこともできます。
選択権は原則債務者、第三者が選べなければ債務者へ移ります。
債務引受と当事者の死亡
併存的債務引受では、元の債務者は債務を負ったまま、引受人も債務者と連帯して同じ内容の債務を負います。債権者と引受人の契約ですることができ、この場合に元の債務者の承諾は要りません。
債務者と引受人の契約で併存的債務引受をするときは、債権者が引受人に承諾した時に効力が生じます。
免責的債務引受では、引受人が債務を負い、元の債務者は債務を免れます。債権者と引受人の契約でする場合は、債権者が元の債務者へ契約をした旨を通知した時に効力が生じます。債務者と引受人の契約でする場合は、債権者が引受人に承諾した時に効力が生じます。
契約当事者が死亡しても、すべての契約が終了するわけではありません。売買の売主が死亡すれば、その権利義務は原則として相続され、死亡したことだけで売買が無効になるわけではありません。賃借人が死亡した場合も、賃貸借は死亡だけを理由として当然には終了しません。
一方、委任は委任者または受任者の死亡によって終了し、この規定は準委任にも準用されます。使用貸借は借主の死亡によって終了しますが、貸主の死亡だけでは終了しません。
死亡の効果は契約ごとに判断し、委任・準委任と使用貸借を区別します。
条文の有無を問う横断問題
古い過去問で「民法に条文があるか」を問われた論点には、債権法改正によって現在は結論が変わったものがあります。過去問の当時の正誤をそのまま覚えないようにします。
| 現在の民法 | 判断 |
|---|---|
| 協議を行う旨を書面等で合意した場合の時効完成猶予 | 明文の規定があります |
| 袋地などから公道へ出るための他の土地の通行 | 明文の規定があります |
| 売主が買主に権利移転の対抗要件を備えさせる義務 | 明文の規定があります |
| 賃借人の原状回復から通常損耗・経年変化を除くこと | 明文の規定があります |
| 無効な行為に基づいて給付を受けた者の原状回復義務 | 明文の規定があります |
| 代理権濫用について一定の場合に無権代理とみなすこと | 明文の規定があります |
| 未成年者の法律行為に法定代理人の同意を要する原則と例外 | 明文の規定があります |
隔地者間の契約について、承諾を「発信した時」に成立させる旧来の特則はありません。現在は意思表示の到達に関する一般原則と、契約成立の規定によって判断します。
条文有無問題は、改正前過去問の正誤ではなく現在の条文で判断します。
本番の形で解いてみる
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
Aは8月31日から1か月間、Bに建物を使用させると定めた。期間計算について、民法の原則による記述として正しいものはどれか。
- 期間は9月29日に満了する
- 期間は9月30日に満了する
- 9月に31日がないため期間の定めは無効となる
- 期間は10月1日に満了する
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正解: 期間は9月30日に満了する
月で定めた期間は暦に従い、応当日がない場合はその月の末日に満了します。8月31日から1か月なら9月30日満了です。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
従来の住所を去ったAが財産管理人を置かないまま所在不明となった。民法の規定及び判例による記述として正しいものはどれか。
- 生死が7年間明らかでなければ、初めて不在者の財産管理について家庭裁判所が処分できる
- 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の自宅を保存するために修理するにも家庭裁判所の許可が必要である
- 家庭裁判所が選任した管理人は、権限を超えて不在者の不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可を得ることができる
- 不在者自身が管理人を置いていた場合、その後生死不明となっても家庭裁判所は管理人を改任できない
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正解: 家庭裁判所が選任した管理人は、権限を超えて不在者の不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可を得ることができる
不在者財産管理に7年間の生死不明は不要です。保存行為は権限内ですが、不動産売却など権限を超える行為は家庭裁判所の許可を得て行います。
事例で判断する問題(この節のために作った問題)
AがBに対して負う債務について、Cが債務を引き受ける場合の記述として正しいものはどれか。
- AとCが併存的債務引受の契約をすれば、Bの関与がなくても直ちにBに対して効力を生ずる
- BとCが併存的債務引受の契約をするには、Aの承諾が必要である
- BとCが併存的債務引受の契約をすると、CはAと連帯して同一内容の債務を負う
- 免責的債務引受では、Aは引受後もCと連帯して債務を負う
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正解: BとCが併存的債務引受の契約をすると、CはAと連帯して同一内容の債務を負う
債権者Bと引受人Cは、債務者Aの承諾なしに併存的債務引受をすることができ、CはAと連帯して同一内容の債務を負います。
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読んだところを、問題で思い出してみましょう。
宅建の問題を解く →出典: e-Gov法令検索「民法」。このページの法令は令和8年(2026年)4月1日現在の法令にもとづきます(e-Govで確かめた日 2026年10月11日)。このページの作り方と確かめ方