登録販売者 参考書|第2章 人体の働きと医薬品
薬の生体内運命と体内での働き
全身作用と局所作用を分ける
医薬品の作用には、有効成分が吸収されて循環血液中に入り、全身を巡って現れる全身作用と、限られた身体部位で現れる局所作用があります。
内服薬は全身作用を示すものが多い一方、有効成分が消化管内で作用するものでは局所作用となります。逆に、胃腸に作用する薬でも、有効成分が循環血液中に入ってから作用するなら全身作用の一部です。
外用薬は局所作用を目的とするものが多いですが、坐剤や経皮吸収製剤のように、適用部位から成分を吸収させて全身作用を得るものもあります。また、局所作用を目的とした薬でも全身性の副作用を生じることがあります。
作用の分類は「使う場所」ではなく、成分がどこで作用するかで判断します。
内服薬は主に小腸で吸収される
錠剤やカプセル剤などの固形剤は、まず消化管内で崩壊し、有効成分が溶け出してから吸収されます。腸溶性製剤などを除けば、有効成分が胃で溶出するものが大部分ですが、吸収の中心は小腸です。
消化管からの吸収は一般に、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散して起こります。吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用によって変わります。
全身作用を目的としない内服薬でも、消化管を通る間に成分が吸収されることがあります。その成分が循環血液中に移行すると、好ましくない全身作用を生じることがあります。
固形剤は「胃で溶出するものが大部分、小腸で主に吸収」と区別します。
粘膜・皮膚からの吸収を整理する
| 使用部位・剤形 | 吸収と全身への移行 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 坐剤 | 直腸内で溶け、直腸内壁の粘膜から吸収される | 有効成分が循環血液中に入りやすく、内服より全身作用が速やかに現れる |
| 口腔粘膜 | ニトログリセリンの舌下錠・スプレー、ニコチンの咀嚼剤などが口腔粘膜から吸収される | 初めに肝臓で代謝を受けず全身に分布する |
| 点鼻薬 | 鼻腔粘膜から循環血液中に移行しやすい | 一般用医薬品では局所作用が目的だが、全身性副作用を生じることがある |
| 点眼薬 | 鼻涙管を通り、鼻粘膜から吸収されることがある | 眼以外に到達して副作用を起こすことがある |
| 含嗽薬 | 多くは唾液や粘液とともに食道へ流れる | 咽頭粘膜からの吸収による全身副作用は少ないが、アレルギー性副作用は起こり得る |
| 塗り薬・貼り薬 | 皮膚から浸透し、血液中へ移行することがある | 浸透量は皮膚の状態、傷、使用面積・回数・頻度などの影響を受ける |
坐剤や口腔粘膜、鼻腔粘膜、皮膚などから血液中に入った成分は、場合により初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布します。坐剤でも、直腸上部から吸収されると肝臓で代謝を受けます。
加齢などで皮膚のみずみずしさが低下すると、有効成分は浸潤・拡散しにくくなります。皮膚用薬では、アレルギー性副作用が適用部位以外に現れることもあります。
点鼻薬は局所作用目的でも血中へ移行しやすく、皮膚吸収は皮膚状態や傷に左右されます。
代謝と肝初回通過効果
代謝とは、体内で物質の構造が化学的に変化することです。有効成分は代謝によって、作用を失う不活性化、作用が現れる代謝的活性化、または排泄されやすい水溶性の物質への変化などを受けます。
経口投与された薬は、消化管で吸収された後、消化管の毛細血管から血液中へ移行し、門脈を経由して肝臓を通ります。全身循環に入る前に肝臓で代謝されるため、全身循環へ到達する量は、消化管で吸収された量より少なくなります。これが肝初回通過効果です。
肝機能が低下すると代謝能力が低下し、正常な人より全身循環へ到達する有効成分が多くなります。その結果、効き目が過剰に現れたり、副作用が生じやすくなったりします。なお、小腸などの消化管粘膜や腎臓にも代謝活性があります。
経口薬は「消化管→門脈→肝臓→全身循環」、代謝では水溶性になり排泄されやすくなります。
血漿タンパク質と排泄の関係
循環血液中に移行した有効成分は、主として肝細胞の薬物代謝酵素によって代謝されます。多くの有効成分は血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成します。この結合は速やかかつ可逆的です。
血漿タンパク質と結合している有効成分は、薬物代謝酵素によって代謝されず、トランスポーターによって輸送されません。代謝や分布が制限されるため、血中濃度は徐々に低下します。
排泄では、有効成分は未変化体または代謝物として、腎臓から尿中、肝臓から胆汁中、肺から呼気中などへ排出されます。汗中や母乳中への排出もあります。母乳中への移行量は体内からの消失経路としての意義は小さいものの、乳児への副作用という点では軽視できません。
血漿タンパク質との複合体は腎臓で濾過されません。そのため有効成分が循環血液中に長く留まり、作用が持続する原因となります。腎機能が低下すると尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくくなり、効き目が過剰に現れたり副作用が生じやすくなったりします。
血漿タンパク質との結合は可逆的で、複合体は腎臓で濾過されず作用持続につながります。
血中濃度と有効域を読む
循環血液中に移行した有効成分は全身へ運ばれ、多くの場合、標的細胞の受容体、酵素、トランスポーターなどのタンパク質と結合して、その機能を変えることで薬効や副作用を現します。
薬効を発揮するには、作用対象となる器官や組織の細胞外液または細胞内液に、有効成分が一定以上の濃度で分布する必要があります。その目安として血中濃度が用いられます。
薬を使用すると血中濃度が上昇し、最小有効濃度を超えると薬効が現れます。その後、最高血中濃度に達し、代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回ると血中濃度は低下します。最小有効濃度を下回ると薬効は消失します。
血中濃度をさらに高くしても、ある濃度以上では薬効は頭打ちとなります。一方で、副作用や毒性は現れやすくなります。全身作用を目的とする多くの医薬品では、血中濃度が最小有効濃度と毒性が現れる濃度域との間、すなわち有効域に維持されるように使用量と使用間隔が定められています。
トランスポーターは細胞膜を貫く膜貫通タンパク質で、細胞膜の内外へ極性物質やイオンを選択的に運びます。
最小有効濃度を超えると薬効が現れ、濃度を上げすぎても薬効は頭打ちで副作用・毒性が増えます。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
医薬品の吸収、代謝及び排泄に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a 内服薬の有効成分は、一般に消化管の中でも主に小腸で吸収される。
- b 一般用医薬品の点鼻薬は、鼻腔粘膜から成分を吸収させて全身作用を発揮させることを目的としている。
- c 経口投与後に消化管から吸収された有効成分は、全身循環に入る前に門脈を経由して肝臓を通過する。
- d 血漿タンパク質と有効成分との複合体は、腎臓で濾過されやすい。
- a正 b正 c誤 d誤
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a正 b誤 c誤 d正
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b誤 c正 d誤
aは正しいです。有効成分は主に小腸で吸収されます。bは誤りです。一般用医薬品の点鼻薬は鼻腔粘膜への局所作用を目的としていますが、成分が血中へ移行して全身性副作用を生じることがあります。cは正しいです。消化管から吸収された成分は門脈を経て肝臓を通ります。dは誤りです。血漿タンパク質との複合体は腎臓で濾過されません。まちがえやすい点:『鼻粘膜から吸収される』ことと『全身作用を目的とする』ことは別です。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a 有効成分が代謝を受けると、体外へ排泄されやすい脂溶性の物質に変化することがある。
- b 腎機能が低下すると、有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくくなる。
- c 有効成分の血中濃度は、代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回ると低下する。
- d 血中濃度を高くすれば、ある濃度を超えた後も薬効は血中濃度に比例して増強し続ける。
- aとb
- aとc
- bとc
- bとd
- cとd
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正解: bとc
bとcが正しいです。aは『脂溶性』が誤りで、代謝によって排泄されやすい水溶性の物質に変化することがあります。dは誤りで、血中濃度がある濃度以上になると薬効は頭打ちとなる一方、副作用や毒性は現れやすくなります。まちがえやすい点:代謝後は『水溶性』、血中濃度上昇後は『薬効は頭打ち・有害作用は現れやすい』と組で覚えます。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
購入者から薬の使い方について相談を受けた。薬の吸収と体内での働きに関する説明として、最も適切なものはどれか。
- 点眼薬は眼の粘膜に適用するため、成分が鼻粘膜から吸収されることはない。
- 坐剤の有効成分は直腸内壁の粘膜から吸収されるため、一般に内服薬より全身作用が速やかに現れる。
- 皮膚に用いる医薬品では、加齢により皮膚のみずみずしさが低下すると、有効成分は浸潤・拡散しやすくなる。
- 全身作用を目的とする医薬品は、血中濃度が最高血中濃度に達して初めて薬効が現れる。
- 有効成分と血漿タンパク質との複合体は腎臓で濾過されやすいため、尿中へ速やかに排泄される。
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正解: 坐剤の有効成分は直腸内壁の粘膜から吸収されるため、一般に内服薬より全身作用が速やかに現れる。
坐剤は直腸内で溶解し、薄い直腸内壁の粘膜から有効成分が吸収されます。成分が循環血液中に入りやすいため、内服の場合より全身作用が速やかに現れます。点眼薬は鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがあります。加齢などで皮膚のみずみずしさが低下すると成分は浸潤・拡散しにくくなります。薬効は最高血中濃度ではなく最小有効濃度を超えたときに現れます。血漿タンパク質との複合体は腎臓で濾過されません。まちがえやすい点:『最高血中濃度』は血中濃度のピークであり、薬効が現れ始める境界は『最小有効濃度』です。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方