登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用

咳止め・痰を出しやすくする薬

鎮咳去痰薬は何に作用するか

咳は、気管や気管支への刺激が中枢神経系へ伝わり、延髄の咳嗽中枢の働きによって起こります。痰は、気道粘膜から分泌された粘液に異物や粘膜上皮細胞の残骸などが混じったものです。

鎮咳去痰薬は、咳を鎮める、痰の切れを良くする、喘息症状を和らげることを目的とする医薬品です。主な配合成分は、鎮咳成分、気管支拡張成分、去痰成分、抗炎症成分などに分けて考えます。

区分主な働き代表例
中枢性鎮咳成分延髄の咳嗽中枢に作用して咳を抑えるコデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、ノスカピン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物など
気管支拡張成分気管支を拡張して呼吸を楽にするメチルエフェドリン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、メトキシフェナミン塩酸塩、ジプロフィリンなど
去痰成分粘液分泌、痰の粘性低下、線毛運動促進などで痰を出しやすくするグアイフェネシン、カルボシステイン、ブロムヘキシン塩酸塩など
抗炎症成分気道の炎症を和らげるトラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム

咳嗽中枢・気管支・痰・炎症のどこに作用する成分かを対応させます。

鎮咳成分と気管支拡張成分

コデインリン酸塩水和物とジヒドロコデインリン酸塩は、作用本体がモルヒネと同じ基本構造を持ち、依存性があるため、麻薬性鎮咳成分とも呼ばれます。長期連用や大量摂取では、倦怠感、虚脱感、多幸感などが現れ、薬物依存につながるおそれがあります。

コデイン類は、妊娠中に摂取すると成分の一部が血液-胎盤関門を通過して胎児へ移行します。母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告もあるため、授乳中の人は服用しないか、授乳を避けます。胃腸運動を低下させ、便秘が現れることもあります。また、コデイン類を含む一般用医薬品は、12歳未満の小児には使用しないこととされています。

一方、ノスカピン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物などは非麻薬性鎮咳成分です。

メチルエフェドリン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、メトキシフェナミン塩酸塩などは、交感神経系を刺激して気管支を拡張します。心臓病、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用前に医師又は薬剤師へ相談します。

ジプロフィリンなどのキサンチン系成分は、自律神経系を介さず、気管支の平滑筋へ直接作用して弛緩させます。心臓刺激作用により動悸が現れることがあり、甲状腺機能障害又はてんかんの診断を受けた人では使用前に医師又は薬剤師へ相談します。

コデイン類は麻薬性、メチルエフェドリン類は交感神経刺激、ジプロフィリンは平滑筋へ直接作用です。

去痰・抗炎症・抗ヒスタミン成分

去痰成分は、痰を出しやすくする仕組みが成分ごとに異なります。成分名と働きを入れ替えた記述に注意します。

成分働き
グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウムなど気道粘膜からの粘液分泌を促進する
エチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステインなど痰の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させる
カルボシステイン粘液成分の含量比も調整して痰の切れを良くする
ブロムヘキシン塩酸塩分泌促進、溶解・低分子化、線毛運動促進の作用を示す
トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム気道の炎症を和らげる
クロルフェニラミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩など抗ヒスタミン作用により鎮咳成分などの働きを助ける

抗ヒスタミン成分は、気道粘膜での粘液分泌を抑制し、痰が出にくくなることがあります。痰の切れを良くしたい場合には、抗ヒスタミン成分との併用に注意します。

口腔咽喉薬の効果を兼ねたトローチ剤やドロップ剤では、セチルピリジニウム塩化物などの殺菌消毒成分が配合されることがあります。これは口腔内と咽頭部に局所的に作用するため、口中で噛まずにゆっくり溶かして使用します。

カルボシステインは粘性低下と含量比調整、ブロムヘキシンは分泌・溶解・線毛運動です。

生薬は基原と作用を対応させる

生薬では、基原となる植物の部位と期待される作用の組合せを整理します。

生薬基原主な位置付け
キョウニンバラ科のホンアンズ、アンズ等の種子代謝物の一部が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静するとされる
ナンテンジツメギ科のシロミナンテン又はナンテンの果実知覚神経・末梢運動神経に作用して咳止めに効果があるとされる
ゴミシマツブサ科のチョウセンゴミシの果実鎮咳作用を期待して用いる
オウヒバラ科のヤマザクラ又はカスミザクラの樹皮去痰作用を期待して用いる
キキョウキキョウ科のキキョウの根痰又は痰を伴う咳に用いる
セネガヒメハギ科のセネガ又はヒロハセネガの根去痰作用を期待して用いる
オンジヒメハギ科のイトヒメハギの根及び根皮去痰作用を期待して用いる
セキサンヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎去痰作用を期待して用いる
バクモンドウユリ科のジャノヒゲの根の膨大部鎮咳、去痰、滋養強壮等を期待して用いる

セネガとオンジは、摂取によって糖尿病の検査値に影響し、糖尿病が改善したと誤認されるおそれがあります。1日最大配合量がセネガ原生薬として1.2g以上、又はオンジとして1g以上を含む製品では、使用上の注意に成分及び分量に関連する注意として記載されます。

ゴミシは鎮咳、セキサン・セネガ・オンジは去痰、バクモンドウはユリ科です。

漢方処方は症状の組合せで見分ける

処方手引き上の適応の目安
半夏厚朴湯体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、のどのつかえ感に適すとされる
柴朴湯体力中等度で、気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、かぜをひきやすく、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴うものの小児喘息、気管支喘息、気管支炎、咳、不安神経症、虚弱体質に適すとされるが、むくみの症状のある人等には不向き
麦門冬湯体力中等度以下で、痰が切れにくく、ときに強く咳こみ、又は咽頭の乾燥感があるもののから咳、気管支炎、気管支喘息、咽頭炎、しわがれ声に適すとされるが、水様痰の多い人には不向き
五虎湯体力中等度以上で、咳が強くでるものの咳、気管支喘息、気管支炎、小児喘息、感冒、痔の痛みに用いる
麻杏甘石湯体力中等度以上で、咳が出て、ときにのどが渇くものの咳、小児喘息、気管支喘息、気管支炎、感冒、痔の痛みに用いる
神秘湯体力中等度で、咳、喘鳴、息苦しさがあり、痰が少ないものの小児喘息、気管支喘息、気管支炎に用いる

五虎湯、麻杏甘石湯、神秘湯は、いずれも胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人等には不向きで、構成生薬としてマオウを含みます。

甘草湯は構成生薬がカンゾウのみで、体力に関わらず使用でき、激しい咳、咽喉痛、口内炎、しわがれ声などに用いられます。短期間の服用に止め、5~6回使用しても咳や喉の痛みが鎮まらない場合は使用を中止し、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。エキス製剤は乳幼児にも使用されることがありますが、体重あたりのグリチルリチン酸摂取量が多くなることがあるため特に留意します。

異物感は半夏厚朴湯、乾いた咳と切れにくい痰は麦門冬湯、のどの渇きは麻杏甘石湯です。

相互作用と受診が必要な症状

鎮咳去痰薬には複数成分が配合されることが多いため、他の鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用薬、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬、アレルギー用薬などとの併用で、同じ成分又は同種の作用をもつ成分が重複することがあります。その結果、効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなったりします。

鎮咳去痰薬には解熱成分は配合されていないため、発熱を鎮める効果は期待できません。発熱を伴うときは、呼吸器に細菌やウイルス等の感染を生じている可能性があります。

  • 咳がひどく、痰に線状の血が混じる場合や、黄色・緑色の膿性の痰を伴う場合は、一般用医薬品で対処せず早めに医療機関を受診します。
  • 痰を伴わない乾いた咳が続く場合は、間質性肺炎等の初期症状や、医薬品の副作用による可能性があります。
  • 咳、痰、息切れなどが長期間続く場合は、慢性気管支炎や肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患の可能性があるため、医師の診療が必要です。
  • 喘息発作を一般用医薬品で一時的に抑えても繰り返す場合があり、発作が重積すると生命に関わる呼吸困難につながることがあるため、早期に医療機関を受診します。

喫煙は、本人の喫煙だけでなく受動喫煙も、咳や痰などの呼吸器症状を長引かせ、慢性化させる要因となります。喫煙に伴う症状に対して鎮咳去痰薬を漫然と長期間使用することは適当ではありません。

血痰・膿性痰・続く乾いた咳・長引く息切れは、一般用医薬品だけで対処しません。

本番の形で解いてみる

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

鎮咳去痰薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

  • a コデインリン酸塩水和物は、延髄の咳嗽中枢に作用し、依存性がある麻薬性鎮咳成分とされる。
  • b メチルエフェドリン塩酸塩は、自律神経系を介さずに気管支の平滑筋へ直接作用して弛緩させる。
  • c カルボシステインは、痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化するとともに、粘液成分の含量比を調整する。
  • d トラネキサム酸は、気道粘膜からの粘液分泌を促進する去痰成分である。
  1. a正 b正 c誤 d誤
  2. a正 b誤 c正 d誤
  3. a誤 b正 c正 d誤
  4. a正 b誤 c誤 d正
  5. a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る

正解: a正 b誤 c正 d誤

aとcが正しい記述です。bの平滑筋へ直接作用するのはジプロフィリン等のキサンチン系成分で、メチルエフェドリン塩酸塩は交感神経系を刺激して気管支を拡張します。dのトラネキサム酸は気道の炎症を和らげる抗炎症成分です。まちがえやすい点:気管支拡張成分でも、アドレナリン作動成分とキサンチン系成分では作用の仕方が異なります。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

鎮咳去痰薬に用いられる生薬・漢方処方製剤に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

  • a ゴミシは、マツブサ科のチョウセンゴミシの果実を基原とし、鎮咳作用を期待して用いられる。
  • b オウヒは、バラ科のヤマザクラ又はカスミザクラの根を基原とし、去痰作用を期待して用いられる。
  • c セキサンは、ヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎を基原とし、去痰作用を期待して用いられる。
  • d 麦門冬湯は、体力中等度をめやすとして、咽喉・食道部の異物感を伴う咳などに適すとされる。
  1. aとb
  2. aとc
  3. aとd
  4. bとc
  5. cとd
答えと解説を見る

正解: aとc

正しいのはaとcです。オウヒの基原はヤマザクラ又はカスミザクラの樹皮であり、根ではありません。咽喉・食道部の異物感などを目安とするのは半夏厚朴湯です。麦門冬湯は、体力中等度以下で、痰が切れにくく、ときに強く咳こみ、又は咽頭の乾燥感があるもののから咳などに適すとされ、水様痰の多い人には不向きです。まちがえやすい点:生薬は植物名だけでなく、果実・樹皮・根・鱗茎などの部位まで確認します。

本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)

鎮咳去痰薬を求めて来店した購入者への対応として、最も適切なものはどれか。購入者は授乳中で、成分表にはジヒドロコデインリン酸塩が記載されている。

  1. ジヒドロコデインリン酸塩は非麻薬性鎮咳成分なので、そのまま服用するよう案内する
  2. 母乳への移行は知られていないため、定められた用法用量なら授乳を続けたまま使用できると案内する
  3. 母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があるため、服用しないか授乳を避ける必要があると説明する
  4. ジヒドロコデインリン酸塩は胃腸の運動を亢進させて下痢を起こすことがあるが、授乳中でも定められた用量なら使用できると説明する
  5. ジヒドロコデインリン酸塩は気管支の平滑筋へ直接作用する成分なので、授乳中かどうかにかかわらず使用できると説明する
答えと解説を見る

正解: 母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があるため、服用しないか授乳を避ける必要があると説明する

ジヒドロコデインリン酸塩は麻薬性鎮咳成分で、母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があります。授乳中の人は服用しないか、授乳を避ける必要があります。また、胃腸の運動を低下させ、副作用として現れるのは便秘です。まちがえやすい点:ジヒドロコデインリン酸塩は中枢性鎮咳成分であり、気管支平滑筋へ直接作用するキサンチン系成分ではありません。

出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方