登録販売者 参考書|第3章 主な医薬品とその作用
婦人薬
婦人薬が対象とする症状
婦人薬は、月経や月経周期に伴う症状を中心に、女性に現れる血行不順、自律神経系の働きの乱れ、生理機能障害などの全身的な不快症状を緩和し、保健を図るための医薬品です。
効能・効果には、血の道症、更年期障害、月経異常のほか、それらに伴う冷え症、月経痛、腰痛、頭痛、のぼせ、肩こり、めまい、動悸、息切れ、手足のしびれ、こしけ、血色不良、便秘、むくみなどがあります。
血の道症は更年期だけに限られません。月経、妊娠、分娩、産褥、更年期などの生理現象や、流産、人工妊娠中絶、避妊手術などを原因として起こるとされ、更年期障害より広い範囲を指します。
月経前症候群は、月経の約10~3日前に現れ、月経開始と共に消失する腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や、感情の不安定、抑うつなどの精神症状を主体とするものです。
月経前症候群は「月経の約10~3日前に現れ、月経開始と共に消失」です。
配合成分と働きを対応させる
婦人薬では、生薬成分やビタミン成分などについて、成分名と期待される働きの組合せを区別します。
| 成分 | 期待される働き・特徴 |
|---|---|
| サフラン、コウブシ | 鎮静、鎮痛のほか、女性の滞っている月経を促す作用 |
| センキュウ、トウキ、ジオウ | 血行を改善し、血色不良や冷えを緩和。強壮、鎮静、鎮痛等 |
| シャクヤク、ボタンピ | 鎮痛・鎮痙 |
| サンソウニン、カノコソウ | 鎮静 |
| カンゾウ | 抗炎症 |
| オウレン、ソウジュツ、ビャクジュツ、ダイオウ | 胃腸症状に対する効果 |
| モクツウ、ブクリョウ | 利尿作用 |
| ビタミンB1、B2、B6、B12、C | 疲労時に消耗しがちなビタミンの補給 |
| ビタミンE | 血行を促進する作用 |
生薬の基原も区別します。サフランはアヤメ科のサフランの柱頭、コウブシはカヤツリグサ科のハマスゲの根茎を基原とします。センキュウはセリ科のセンキュウの根茎、トウキはセリ科のトウキ又はホッカイトウキの根を、通例、湯通ししたものを基原とします。ジオウはゴマノハグサ科のアカヤジオウ等の根又はそれを蒸したものを基原とします。
コウブシは月経を促す生薬、ソウジュツは胃腸症状、カノコソウは鎮静です。
女性ホルモン成分の注意点
エチニルエストラジオールは、人工的に合成された女性ホルモンの一種で、エストラジオールを補充するものです。膣粘膜又は外陰部に適用されるものがあり、適用部位から吸収されて循環血液中へ移行します。
妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって胎児の先天性異常の発生が報告されているため、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けます。吸収された成分の一部が乳汁中へ移行することが考えられるため、母乳を与える女性でも使用を避けます。
長期連用では血栓症を生じるおそれがあります。また、乳癌や脳卒中などの発生確率が高まる可能性もあるため、継続して使用する場合には医療機関の受診を促します。
エチニルエストラジオールは妊娠中の補充用ではなく、妊婦・授乳婦では使用を避けます。
漢方処方を体質から見分ける
婦人薬に用いられる漢方処方製剤では、体力、冷え・のぼせ、皮膚や貧血の状態、便秘などの組合せから処方を見分けます。
| 処方 | 適すとされる体質・主な特徴 |
|---|---|
| 温経湯 | 体力中等度以下。手足がほてり、唇が乾く。月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれ |
| 加味逍遙散 | 体力中等度以下。のぼせ感、肩こり、疲れやすさ、精神不安やいらだち、ときに便秘。冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症 |
| 桂枝茯苓丸 | 比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷え。月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症など |
| 四物湯 | 体力虚弱。冷え症で皮膚が乾燥し色つやが悪く、胃腸障害がない。月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、貧血、産後又は流産後の疲労回復など |
| 当帰芍薬散 | 体力虚弱。冷え症で貧血傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸など |
四物湯と当帰芍薬散は「体力虚弱」です。一方、桂枝茯苓丸は「比較的体力があり」が目印で、体の虚弱な人には不向きです。
虚弱なら四物湯・当帰芍薬散、比較的体力があるなら桂枝茯苓丸を区別します。
カンゾウ・ダイオウと処方の特徴
婦人薬に用いられる主な漢方処方のうち、温経湯、加味逍遙散、五積散、柴胡桂枝乾姜湯、桃核承気湯はカンゾウを含みます。温清飲、桂枝茯苓丸、四物湯、当帰芍薬散は、この一覧のカンゾウ含有処方には入りません。
| 処方 | 体質・特徴 | 成分・副作用など |
|---|---|---|
| 五積散 | 体力中等度又はやや虚弱で、冷えがある。胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒 | マオウを含む。体の虚弱な人、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向き |
| 柴胡桂枝乾姜湯 | 体力中等度以下。冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の渇き | まれに間質性肺炎、肝機能障害 |
| 桃核承気湯 | 体力中等度以上で、のぼせて便秘しがち。月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘など | ダイオウを含む。虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人では激しい腹痛を伴う下痢等が現れやすい |
| 加味逍遙散 | 体力中等度以下で、のぼせ感、精神神経症状、ときに便秘 | 胃腸の弱い人には不向き。まれに肝機能障害、腸間膜静脈硬化症 |
| 桂枝茯苓丸 | 比較的体力がある | 体の虚弱な人には不向き。まれに肝機能障害 |
桃核承気湯のダイオウについては、妊婦又は妊娠していると思われる女性、授乳婦での使用に留意が必要です。特に授乳婦では、使用を避けるか、使用期間中の授乳を避ける必要があります。
婦人薬に用いる漢方処方製剤は、感冒に用いる五積散と便秘に用いる桃核承気湯を除き、比較的長期間、1ヶ月位服用されることがあります。
カンゾウは温経湯・加味逍遙散・五積散・柴胡桂枝乾姜湯・桃核承気湯です。
併用と受診の判断
内服の婦人薬には複数の生薬成分が配合されることが多く、他の婦人薬や、生薬成分を含む鎮静薬、胃腸薬、内用痔疾用薬、滋養強壮保健薬、漢方処方製剤などを併用すると、同じ生薬成分又は同種の作用を示す生薬成分が重複し、効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがあります。
医師の治療を受けている人では、婦人薬が治療中の疾患へ悪影響を及ぼすことがあります。また、動悸、息切れ、めまい、のぼせなどが治療中の疾患や処方薬の副作用による可能性もあるため、使用前に医師又は処方薬を調剤した薬剤師へ相談します。
内服の婦人薬を1ヶ月位使用しても改善せず、日常生活に支障がある場合は、医療機関の受診などが必要です。月経痛が年月とともに悪化する場合や大量の出血を伴う場合も、病気の可能性があります。
おりものの量が急に増えた場合、膿のようなおりものや血液が混じったおりものが生じた場合には、膣や子宮の炎症・感染症の可能性があります。特に月経以外の不規則な出血がある場合は、速やかに医療機関を受診します。
更年期障害とみられる頭痛、うつ状態、動悸・息切れ、のぼせ、ほてりなどでも、背景に別の病気がある可能性があります。原因となる病気が見つかった場合は、その治療が優先されます。
1ヶ月位で改善しない、不正出血がある、別の病気が疑われるときは受診につなげます。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
婦人薬及びその配合成分等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a エチニルエストラジオールは、人工的に合成された女性ホルモンの一種で、エストラジオールを補充するものである。
- b コウブシは、鎮静、鎮痛のほか、女性の滞っている月経を促す作用を期待して配合されることがある。
- c ソウジュツは、主に鎮静作用を期待して配合されることがある。
- d ビタミンEは、血行を促進する作用を目的として配合されることがある。
- a正 b正 c正 d誤
- a正 b正 c誤 d正
- a正 b誤 c正 d正
- a誤 b正 c誤 d正
- a誤 b誤 c正 d正
答えと解説を見る
正解: a正 b正 c誤 d正
a、b、dは正しい記述です。cが誤りで、ソウジュツは胃腸症状に対する効果を期待して配合される場合があります。鎮静作用を期待して配合される生薬にはサンソウニン、カノコソウ等があります。まちがえやすい点:コウブシは月経を促す作用、ソウジュツは胃腸症状、カノコソウは鎮静です。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a 四物湯は、体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものに適すとされる。
- b 桂枝茯苓丸は、体力虚弱で、冷え症で貧血傾向があり疲労しやすいものに適すとされる。
- c 加味逍遙散は、構成生薬としてカンゾウを含む。
- d 当帰芍薬散は、構成生薬としてカンゾウを含む。
- aとb
- aとc
- aとd
- bとc
- cとd
答えと解説を見る
正解: aとc
正しいのはaとcです。bの体質・症状は当帰芍薬散の特徴で、桂枝茯苓丸は比較的体力がある人に適すとされます。dも誤りで、当帰芍薬散は婦人薬の主要処方のうちカンゾウを含むものには挙げられていません。まちがえやすい点:カンゾウを含むのは温経湯、加味逍遙散、五積散、柴胡桂枝乾姜湯、桃核承気湯です。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
婦人薬を購入しようとしている人から相談を受けた。次のうち、最も適切なものはどれか。
- 体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちな人には、四物湯が適すとされると説明した。
- 比較的体力があり、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどがある人には、桂枝茯苓丸が適すとされると説明した。
- 体力中等度以下で、のぼせ感があり、精神不安やいらだちがあり、ときに便秘傾向のある人には、当帰芍薬散が適すとされると説明した。
- 体力虚弱で、冷え症、貧血傾向があり疲労しやすい人には、柴胡桂枝乾姜湯が適すとされると説明した。
- 体力中等度又はやや虚弱で、冷えがある人に用いる五積散には、構成生薬としてダイオウが含まれると説明した。
答えと解説を見る
正解: 比較的体力があり、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどがある人には、桂枝茯苓丸が適すとされると説明した。
桂枝茯苓丸は、比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものに適すとされます。体力中等度以上でのぼせて便秘しがちは桃核承気湯、のぼせ感・精神神経症状・ときに便秘は加味逍遙散、体力虚弱で冷え症・貧血傾向・疲労しやすいのは当帰芍薬散です。五積散が含むのはマオウです。まちがえやすい点:桂枝茯苓丸は「比較的体力がある」、桃核承気湯は「体力中等度以上で、のぼせて便秘しがち」です。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方