登録販売者 参考書|第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識
医薬品の本質とリスク評価
医薬品は有益な作用だけを示すとは限らない
医薬品は、多くの場合、人体に取り込まれて作用し、効果を現します。一方で、医薬品は人体にとって異物でもあり、人体に及ぼす作用は複雑かつ多岐にわたり、そのすべてが解明されているわけではありません。
そのため、期待される薬効だけでなく、好ましくない反応である副作用を生じることがあります。医薬品は、疾病の診断・治療・予防に使われたり、身体の構造や機能に影響を及ぼしたりすることを目的とする生命関連製品ですが、有用性が認められていても保健衛生上のリスクを伴います。
医療用医薬品に比べてリスクが相対的に低いと考えられる一般用医薬品でも、この点は同じです。科学的な根拠に基づいて適切に理解・判断し、適正に使用する必要があります。
医薬品は有用性があってもリスクを伴い、人体への作用のすべてが解明されているわけではありません。
人体に直接使わない医薬品も健康に影響する
人体に直接使用しない医薬品であっても、人の健康に影響を与えることがあります。例えば殺虫剤には、誤って人体が曝されると健康を害するおそれがあるものがあります。
また、検査薬では、検査結果について正しく解釈・判断できなければ、医療機関を受診して適切な治療を受ける機会を失うおそれがあります。したがって、「人体に使用しない医薬品なら健康への影響はない」という判断は誤りです。
人体に直接使わない医薬品でも、曝露や誤った判断によって健康に影響することがあります。
医薬品は情報と適正使用があって役割を果たす
医薬品は、効能効果、用法用量、副作用などの必要な情報が適切に伝えられ、購入者等が適切に使用することで、初めて役割を十分に果たします。必要な情報を伴わなければ、単なる薬物に過ぎません。
一般用医薬品には添付文書や製品表示がありますが、一般の生活者がそれを見ただけでは、効能効果や副作用について誤解や認識不足を生じることがあります。そのため販売に専門家が関与し、専門用語を分かりやすく伝えるなどの情報提供を行い、購入者等からの相談に対応することが必要です。
また、市販後にも新たな医学・薬学上の知見や使用成績などに基づいて、有効性や安全性が確認されます。その結果、リスク区分や承認基準、販売時の取扱い、成分分量、効能効果、用法用量、使用上の注意などが見直され、添付文書や製品表示にも反映されます。
販売に従事する専門家は、新たに付加される医薬品情報を継続して把握する必要があります。
添付文書だけで十分とは限らず、専門家の情報提供・相談対応と新しい情報の把握が必要です。
品質確保・回収情報・PL法を区別する
医薬品は人の生命や健康に密接に関係するため、高い水準で均一な品質が保証されていなければなりません。
法では、健康被害が起こる可能性があるかどうかにかかわらず、異物等が混入した医薬品や変質した医薬品を販売等してはならないとされています。販売等を行う者は、そのような製品を扱わないよう注意するとともに、製造販売業者による製品回収等が行われることもあるため、その情報に日頃から留意します。
一般用医薬品として販売される製品は、製造物責任法(PL法)の対象でもあります。製造物の欠陥によって生命、身体、財産に被害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任を定めた法律であり、一般用医薬品が医薬品医療機器等法の対象だからといってPL法の対象外になるわけではありません。
異物混入・変質品は健康被害の可能性に関係なく販売不可で、一般用医薬品はPL法の対象でもあります。
用量-反応関係とLD50を押さえる
医薬品の効果とリスクは、用量と作用強度の関係である「用量-反応関係」に基づいて評価されます。
| 薬物用量の段階 | 意味 |
|---|---|
| 無作用量 | 効果の発現が検出されない量 |
| 最小有効量 | 無作用量の次の段階 |
| 治療量 | 最小有効量を経て至る段階 |
| 中毒量 | 治療量上限を超え、効果よりも有害反応が強く発現する量 |
| 最小致死量 | 中毒量の次に位置する段階 |
| 致死量 | 最小致死量を経て至る段階 |
動物実験によって求められる50%致死量(LD50)は、薬物の毒性を評価する指標として用いられます。LD50はヒトを対象とする臨床試験ではなく、動物実験で求めます。
治療量を超えた量を単回投与すると毒性が現れるおそれが高くなりますが、少量でも長期投与されれば慢性的な毒性が現れる場合があります。また、少量でも発がん作用、胎児毒性、組織・臓器の機能不全を生じる場合があります。
用量は無作用量→最小有効量→治療量→中毒量→最小致死量→致死量、LD50は動物実験による毒性指標です。
GLP・GCP・GPSP・GVPの対応を整理する
新規に開発される医薬品では、個々の医薬品の用量-反応関係に基づいてリスク評価が行われます。名称が似ている基準は、どの段階・何を対象とする基準かで区別します。
| 略称 | 正式名称 | 対象 |
|---|---|---|
| GLP | Good Laboratory Practice | 医薬品の安全性に関する非臨床試験の基準 |
| GCP | Good Clinical Practice | ヒトを対象とした臨床試験の実施の基準 |
| GPSP | Good Post-marketing Study Practice | 製造販売後の調査及び試験の実施の基準 |
| GVP | Good Vigilance Practice | 製造販売後安全管理の基準 |
非臨床段階ではGLPのほか、医薬品毒性試験法ガイドラインに沿って毒性試験が行われます。手引きに挙げられているものには、単回投与毒性試験、反復投与毒性試験、生殖・発生毒性試験、遺伝毒性試験、がん原性試験、依存性試験、抗原性試験、局所刺激性試験、皮膚感作性試験、皮膚光感作性試験があります。
動物実験で安全性が確認された後にヒトを対象とする臨床試験が行われ、GCPに準拠した手順で安全な治療量を設定することが、治験の目標の一つです。製造販売後では、調査・試験がGPSP、安全管理がGVPです。
医薬品には、食品などよりもはるかに厳しい安全性基準が求められています。
GLP=非臨床、GCP=臨床、GPSP=製造販売後の調査・試験、GVP=製造販売後安全管理です。
本番の形で解いてみる
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
医薬品の本質及びリスク評価に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
- a 医薬品が人体に及ぼす作用は複雑かつ多岐にわたり、そのすべてが解明されている。
- b 一般用医薬品として販売される製品は、製造物責任法の対象でもある。
- c 動物実験により求められる50%致死量(LD50)は、薬物の毒性の指標として用いられる。
- d Good Vigilance Practice(GVP)は、製造販売後の調査及び試験の実施の基準である。
- a正 b正 c誤 d誤
- a誤 b正 c正 d誤
- a誤 b誤 c正 d正
- a正 b誤 c正 d誤
- a誤 b正 c誤 d正
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正解: a誤 b正 c正 d誤
aは誤りです。医薬品が人体に及ぼす作用のすべてが解明されているわけではありません。bは正しく、一般用医薬品はPL法の対象でもあります。cも正しく、LD50は動物実験により求められる毒性の指標です。dは誤りで、GVPは製造販売後安全管理の基準です。製造販売後の調査及び試験の実施の基準はGPSPです。まちがえやすい点:GPSPとGVPは、どちらも製造販売後ですが「調査・試験」と「安全管理」で区別します。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
- a 一般用医薬品は添付文書や製品表示を読めば、一般の生活者が効能効果や副作用について誤解や認識不足を生じることはない。
- b 医薬品は、少量の投与でも長期投与されれば慢性的な毒性が発現する場合がある。
- c Good Clinical Practice(GCP)は、ヒトを対象とした臨床試験の実施の基準である。
- d 法では、健康被害の発生の可能性がある場合に限って、異物等の混入や変質がある医薬品の販売等を禁止している。
- aとb
- aとc
- bとc
- bとd
- cとd
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正解: bとc
正しいのはbとcです。aは誤りで、一般の生活者は添付文書や製品表示だけでは効能効果や副作用について誤解や認識不足を生じることがあります。dも誤りで、異物等の混入や変質がある医薬品は、健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず販売等してはなりません。まちがえやすい点:少量なら毒性がないとは限らず、長期投与では慢性的な毒性が現れる場合があります。
本番の形の問題(五肢択一・この節のために作った問題)
登録販売者が医薬品の説明をしている。次の説明のうち、最も適切なものはどれか。
- 「GLPはヒトを対象とした臨床試験の実施の基準で、GCPは非臨床試験の基準です」
- 「GPSPは製造販売後安全管理の基準で、GVPは製造販売後の調査及び試験の実施の基準です」
- 「LD50はヒトを対象とした臨床試験で求められる50%致死量で、薬物の毒性の指標です」
- 「治療量上限を超えると中毒量となり、その後、最小致死量を経て致死量に至ります」
- 「少量の医薬品では、長期投与されても慢性的な毒性が発現することはありません」
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正解: 「治療量上限を超えると中毒量となり、その後、最小致死量を経て致死量に至ります」
適切なのは「治療量上限を超えると中毒量となり、その後、最小致死量を経て致死量に至る」です。GLPは非臨床試験、GCPはヒトを対象とした臨床試験の基準です。GPSPは製造販売後の調査及び試験、GVPは製造販売後安全管理の基準です。LD50は動物実験によって求められます。また、少量でも長期投与されれば慢性的な毒性が発現する場合があります。まちがえやすい点:基準名は英語の語感ではなく、GLP=非臨床、GCP=臨床、GPSP=調査・試験、GVP=安全管理の対応で判断します。
出典: 厚生労働省「登録販売者試験問題の作成に関する手引き(令和8年4月)」(令和4年3月作成・令和8年4月一部改訂)。このページの内容は令和8年4月一部改訂の手引きにもとづきます(確かめた日 2026年10月12日)。過去の試験の出題は、東京都・関西広域連合・福岡県の令和5〜7年度の公開問題から数えました。このページの作り方と確かめ方